IS~宿命の砲火~『出来損ないと呼ばれしドイツの帝王』(更新停止中) 作:弐式水戦
「『ゴールドウィング』、ISモード、展開!」
カタパルトを爆走し、勢い良く飛び出した俺は、そう叫んだ。
すると、俺は眩い光に包まれ、ゴールドウィングが体に装着されていく感じがした。
光を放ち、ゴールドウィングは一部が変形し、また一部は、本体から切り離されたりして、他の部分として装着されていく。
やはりと言うか、ゴールドウィングの特徴の1つである、鋭い目のようなヘッドライトや、その周りが胸部装甲となる。リアに付けられている、ヘルメットを入れておくケースまで伸びるシートは、二の腕から脇へ、そこから腰辺りまでと、主に体の横部分を覆う。
両サイドに付けられているトランクは平べったくなり、背面の装甲となる。
また、脚部には真っ二つになった後輪が付き、脚部にも勿論、装甲が付けられる。
マフラーは背中に付けられ、今も尚、白い煙を噴き出し、マイバッハエンジンの雄叫びを響かせ続けている。
それから、前輪は後輪と同じように真っ二つになり、今度はショルダーパーツとして両肩から伸びるように付けられる。
フェンダーが伸ばされ、肩から腕の間接辺りまでの装甲となり、それなりの格好となる。ヘッドギアなのか、バイザーのような物が装着されるが、顔全体を覆うようなものではないらしい。だって、顔見えてるし。まあ、良いんだけどさ。
まあ、こんな感じで話していれば、それなりに良さそうな格好になったように思われるが、現実はそう甘くはない。
このISは、元々バイクだったゴールドウィングがIS仕様になっただけのようなもの。つまり、ゴールドウィングの錆びている部分もそのままの状態なのだ。
全体が満遍なく錆びているならまだマシだったかもしれないが、コイツには、錆びが酷い部分と、錆びてはいるが、大したものではない部分もある。それに、バイザーにも一部にヒビいってやがるし。
まあ、別にヨレヨレになってる訳じゃねえから、まあ幾分かマシって感じかな。
そうして、すべての装着が完了すると、俺は脚部のタイヤを仕舞って脚を出し、脚部スラスターを吹かす。
すると、目の前にコイツのデータが浮かび上がる。
ーー特殊IS『ゴールドウィング』ーー
操縦者、黄昏狂夜
コア人格、桜花
支援型AI、氷華
SE,1000
第一形態移行未達成により、武装を機関銃以外封印状態
単一仕様能力《ワンオフ・アビリティー》、稼働率不足により、使用不可
マジかよ、武装が機関銃以外使えねえとか、せめてブレード一本は使わせてくれよ~。
そう思いながら、俺は現在唯一の武装である機関銃のデータを呼び出す。
どうやら、手を3本のマニピュレーターに変形させ、3本の指の付け根のようなものである部分から出ている、口径12,7×99mmの、所謂チェーンガンだそうだ。
これが右手に一挺か…………………こりゃキツいな。
そう考えていると、ゴールドウィングのハイパーセンサーが観客席の様子を映し出す。
ペパロニとアンチョビ、そして、桜花達3人を除いて、後は失笑と言うか、まるで、敗けが確定したできレースに参加させられた新米選手を哀れに思っているかのような笑い方をしている。まあ一言で言えば、『企業のテストパイロット二人相手に錆びたバイクから変形したISなんざ使って勝てるの~ww?蹂躙されるがオチなのにね~(笑)』ってヤツだろうよ。
『ねえ、ちょっと。あれ、さっきまでバイクだったわよね?』
『うん。まさか変形するなんてね』
『まっ、そんなIS使っても、男が女に勝つなんて有り得ない話よ。千冬様の弟君達ならまだしも、ぽっと出で、しかも死んだ筈だった出来損ないじゃあねぇ~』
『てか、よく練習してるの見たけど、結局は無駄な努力になるってこと、どうして分からないのかしらねぇ~』
『てか、あんな錆びだらけのISで勝負なんて出来るの~?』
等々、観客席からの俺の評価は散々な様子だ。あ、ペパロニが怒りを堪えているのが見える。
そうこうしていると、ISの回線で、紅さんが話し掛けてきた。
『黄昏さん、今日はよろしくお願いします』
「あ、ああ。此方こそ……………あ、東風谷さんも、今日はよろしくな」
『は、はい!よろしくお願いします!』
試しに軽く挨拶してみると、東風谷さんはあたふたしながらも返事を返してくれた。恐らくだが彼女は、イイ人なんだけど、ちょっとドジな人って感じの人なんだろうな。
そうしていると、紅さんがまた話し掛けてきた。
『さて、黄昏さん。此処に来てこんなことを言うのもなんですが、ハンデは要りますか?』
「ハンデ?」
『はい。一応、操縦訓練はしていると聞いたから、別に要らないとは思いますが』
その通りだ。それに、ハンデもらってやる試合に何の意味がある?それが許されるのは子供vs大人で何かやる時ぐらいしかねえだろう。はたまたアマチュアとベテランのゲームの通信対戦とかな。あれならまだ分かるが………………
『そーだそーだ!』
『ハンデもらいなさ~い!』
『どうせ直ぐに負けるんだから、少なくとも気休めぐらいにはなるかもよ~』
『いくら出来損ないでも、それぐらいなら分かるでしょ~!』
『女の強さを思い知りなさ~い!』
等々、エトセトラエトセトラ………………数えればキリがないぐらいに、観客席からは勝手なヤジが飛んでくる。
つーか、テメエ等が試合する訳じゃねえだろうが。平和ボケしたガキがギャーギャー喚きやがって。
「生憎と、ハンデもらうほどヤワじゃねえんだよ俺は。それに………」
『『それに?』』
ハンデを断り、それにと言いかけると、二人同時に聞き返してきた。
俺は少しの間目を閉じ、そして見開いて言った。
「たとえ相手がベテランだろうが、勝算があろうが無かろうが、ハンデ無しで全力で向かっていくってのが勝負ってモンだからな」
そう言って、俺は不敵に笑った。そうした瞬間、一瞬二人が顔を赤くしたような気がしたが、まあ多分気のせいだろう。
『それでは、試合開始のカウントダウンを始める』
アナウンスがアリーナ一帯に響き渡り、俺達は臨戦態勢に入った。
『……5……4……3……2……1…………試合開始!!』
そして、クラス代表と、俺の意地を賭けた戦いが始まった。