IS~宿命の砲火~『出来損ないと呼ばれしドイツの帝王』(更新停止中) 作:弐式水戦
さて、オルコットを潰し終えた俺は、ピットに戻ってきた。
邪魔にならない場所にオルコットを横たえて打鉄を解除し、一息ついていると、上白沢先生と長谷川先生が近付いてきた。
「お疲れ様、黄昏君。あっさりとした試合だったな」
「あ、先生。どもっス」
「全く、織斑兄弟との模擬戦の後だし、人を見下すような発言はなくなったかと思っていたのに、今度は訓練機を見下すとは」
上白沢先生は、俺が横たえたオルコットに近付きながら言った。それを見ていると、籠手が光り始め、葛城が出てきた。
「全く、あの娘も訓練機を使っていた時期があったからこそ今があるって言うのに、訓練機への恩恵も忘れるなんて、考えられないわね」
「まあ、専用機貰ったら誰だってそうなるってモンだ」
腕を組み、不機嫌そうに言う葛城の頭を撫でる。すると、葛城が俺を見上げて言った。
「狂夜、貴方だけは、見捨てないわよね?」
「当たり前だ。お前も桜花も氷華も皆、俺にとって大切な存在だ。見捨てる訳あるかよ」
そう言うと、葛城は顔を赤くしながら擦り寄ってきた。
甘えるように頬擦りしてくる葛城の頭を撫でながら、俺は長谷川先生に向き直った。
「そういや先生、織斑ツインズとの試合は何時に?」
「ああ、それなら15分後だ。先に織斑兄と、それからまた15分後に、織斑弟との試合とのことだ」
成る程な、まあ、取り敢えず今は、休憩に専念するとしよう。
そして15分後、ゴールドウィングを展開し、軽く準備運動をしていると、織斑ツインズ側のピットに居る筈だった織斑千冬が歩いてきた。
「おい、黄昏。時間の都合上で予定を変更し、織斑兄弟とお前との2対1で戦ってもらう」
「へえ~、まあ良いですけどね」
そう適当に言うと、織斑千冬は一瞬目を細めた。
「それと、試合を始める前に1つ、お前に言うことがある」
さあ、来ますよ~。
「お前は春馬なのだろう?今まで何処で何をしていた」
ホラ来ましたよ。勝手に人を弟呼ばわりしやがりましたよ。自分で家族なのかを疑って、挙げ句に見捨てて、そして今になってからギャーギャー喚き始める。
勝手が過ぎるよねマジで。
「俺が春馬?貴女は何言ってるんですか?俺は黄昏狂夜であって、織斑春馬なんて名前じゃねーですよ」
「嘘をつけ、そんな訳があるか。お前は春馬だ。私の弟の、織斑春馬だ」
はあ~あ、この横暴教師は何言ってんだろうね?
まあ、こんなアホほっといて、さっさと潰して来るか。
俺は尚も春馬春馬と喚く織斑千冬を無視して、ゴールドウィングの脚部からタイヤを出し、カタパルトを走り抜ける用意を済ませると、上白沢先生と長谷川先生に向き直って言った。
「上白沢先生、長谷川先生、行ってきます」
「ああ」
「好きなだけ暴れて来い」
「Jawhol!では、黄昏狂夜!派手に暴れてやらァ!」
そうして俺は、脚部のタイヤを勢い良く回転させ、マイバッハエンジンの爆音と激しいスキール音を其処ら中に撒き散らしながら爆走し、アリーナへと飛び出した。
『やっと来たようだね、落ちこぼれ』
アリーナへと飛び出すと、其所には既に、織斑ツインズが待機していた。
「待たせて悪かったな。少しばかり、アホの相手をしていたのさ。勝手に人を弟呼ばわりするアホの相手を、な」
そう言うと、織斑ツインズは顔をしかめた。すると、織斑兄が話し掛けてきた。
『ところでだが春馬兄、なんでセシリアをあそこまでボコしたんだ?』
「あ?」
『だから、なんであそこまでボコしたんだって聞いてるんだよ!別にあそこまでする必要なかったろ!春馬兄ならこんなことしなかったろ!』
ふーん?春馬兄なら、ねえ………………
「織斑一夏君さあ、君何か勘違いしてないか?」
『どういうことだよ』
織斑兄が目を細めながら聞いてくる。俺は鼻で笑うと、言葉を続けた。
「君の兄である春馬君なら、本当にしないのかもしれない。だが、今此処に居るのは織斑春馬じゃねえ、黄昏狂夜だ。死んだ筈であるお前等の兄と影を重ねるなアホンダラ。それと、俺がオルコットを潰した理由か?簡単だ。ムカついたから」
『な!?それだけでかよ!?』
「それだけ?あの女は確かに女尊男卑思考を捨てたように見えたさ。だが、実際には見下す対象が男から訓練機に変わっただけ。試合中でも、訓練機を見下す発言を連発していたからな。ちょっとばかりキレちまったのさ」
まあ、そんなモンどうでも良いがなと付け加え、俺は出しっぱなしだった脚部のタイヤをしまう。
『春馬兄、こればかりには本気で許さねえぞ!ぶっ倒してセシリアに謝らせてやる!』
『君の持つ、たかがバイクから変化しただけのISで、僕の白椿と兄さんの白式に勝てるなんて、僕は到底思えないけどね』
ほお~う?随分と自信満々だな弟君は。
そして睨み合っていると、試合開始のアナウンスが響いた。
「うおおおおおおおっ!」
その直後、織斑兄がブレードを振りかぶって突撃してきた。
そしてブレードの攻撃範囲内に入ると、振り上げたブレードを一気に降り下ろしてくる。
「………………ふんっ」
俺は腕を組んで軽く体を捻り、織斑兄の突進をかわす。
そのまま足を掴んで振り回し、織斑弟目掛けてぶん投げる。だが、あまり力は入れてなかったので、直ぐに体勢を立て直し、織斑弟の横に並んだ。
「それなりには出来るようだな、流石はブリュンヒルデ(笑)の弟達だ。では、コイツはとうかな?」
俺はそう言うと、右手を3本指のマニピュレーターに変形させてチェーンガンを出し、左手の荷電粒子砲を向ける。
そして、瞬時加速で二人に襲い掛かった。
「兄さん、右だ!」
「おう!」
織斑弟の合図で、織斑兄が右に、織斑弟が左に散開し、距離を取ろうとする。
だが、残念だったな、どのやり方を選んでも悪手になるのに。
「おらよ、コレでも喰らいやがれ」
俺は織斑兄にチェーンガンを、織斑弟に荷電粒子砲を向け、乱射した。
「ぐおっ!?」
「ガッ!?」
両方共命中し、不運にも織斑兄は、チェーンガンの弾幕の雨に晒されることになる。
「クソッ!」
織斑兄は、瞬時加速で弾幕の雨から脱出する。つか、コイツも使えるようになったんだな。
「中々やるじゃねえか」
『まあね、僕達は君のような出来損ないとは違うんだよ』
『それに、春馬兄は企業のパイロット二人を倒しただけで調子に乗ってるみたいだからな。油断していたらどうなるか、思い知らせてやる!』
調子に乗る、か………………全く、舐めた口聞きやがるガキ共だぜ。
俺は近接ブレード『SCHWARZER SCHWERT』(長いから以降SS)を展開し、肩をトントン叩きながら言った。
「さあ、纏めて来いよ。出来損ないに負ける屈辱を味あわせてやる」
「「上等だ!」」
二人同時に叫び、これまた同時に突進してくる。俺はSSを軽く振るい、二人のブレードを軽くいなす。
暫くの間、そんなつまらない戦いが続いた。二人はかなり息を切らしているが、俺は平気だ。
「こうなったら、これで決めてやる!」
そう言うと、二人は金色のオーラを纏う。それに伴い、二人のブレードも眩い光を発する。
成る程、単一仕様能力か。それに、あのブリュンヒルデ(笑)の弟達の専用機のことだ、どうせ『零落白夜』だろうな。となると、あのブレードは雪片か。
「「うおおおおおおおおおおっ!」」
そうして、二人同時に突撃をかましてくる。
「じゃあ、コイツで始末してやるよ」
俺はそう言って、マルチロックオンシステム搭載式ミサイルを展開し、突撃してくる織斑ツインズ目掛けて発射した。
「うわっ!なんだよコレ!」
「くっ!ミサイルなんて卑怯な手を………………!」
織斑兄は、飛んでくるミサイルに驚愕の表情を浮かべ、織斑弟は忌々しげに此方を見る。
それから二人は散開し、ミサイルを撃墜しようと奮闘するが、全て落とすなんて事は出来ず、結果的に何発か喰らい、アリーナの地面に叩きつけられた。
「ふんっ!随分と自信満々に言ってたのにこうなるとは……………」
俺はそう呟き、アリーナの地面に降り立った。
「よお、人を出来損ない呼ばわりした割には大したことねえな。所詮お前等は、ブリュンヒルデ(笑)の専用機の後継機貰って、コイツで姉さんを守るぜとか思ってただけなんじゃねえの?スッカスカの頭でさ」
「………………ッ!」
織斑兄は悔しそうな顔をするが、俺は気にしない。コイツ等がどうなろうが、知りもしねえし興味もねえ。
俺は右手のチェーンガンをしまって普段通りの5本指に戻し、Panzer rifle タイプ『マウス』を展開し、2つのトリガーに指をかける。
このマウスの銃身は2つあり、1つは56口径128mm、もう1つは36口径75mm、最早ライフルと言うよりキャノン砲だ。
「さあて、コレで終わりだ。オルコット同様に、マジでガッカリしたぜ」
そう言ってトリガーを引こうとした時だった。
「一夏ぁ!秋彦ぉ!」
突然声が響き渡り、何事かと顔を向けると、其所で見たのは………………
「二人共!私も加勢するぞ!」
あまりにも勝手極まりない真似をしやがるモップ女、篠ノ之箒だったのだ。
ヤレヤレ、何たってあの女共の身内は身勝手なんだろうな。