IS~宿命の砲火~『出来損ないと呼ばれしドイツの帝王』(更新停止中) 作:弐式水戦
こりゃ一体どうなってやがる?
アリーナの端で展開された、理解不能なこの状況に、俺は内心かなり戸惑っていた。
打鉄を纏い、織斑ツインズに近寄る篠ノ之箒は、此方を睨み付けると、打鉄の近接ブレード『葵』を向けて言った。
「こんな卑怯で男の風情にも置けん試合、見ていられるか!私も参加させてもらう!」
なんと無茶苦茶な。つか、勝負に横槍入れんのが武士のやり方かよ。
「残念だが、それは許されねえよ。コレは、俺vs織斑ツインズの試合なんだ、部外者は引っ込んでいてもらいたいんだがねえ」
「私は二人の幼馴染みだ!よって部外者などではない!」
そう言って、篠ノ之箒はブレードを振りかぶって突撃してきた。織斑兄のように、ただがむしゃらに向かってくるだけの、単純且つ単調な攻撃だった。
「こんな闇雲な攻撃の仕方が許されんのは初心者までだぜ」
俺は鼻を鳴らし、右脚部のタイヤを出す。左足で踏ん張りながら、右のタイヤを思い切り回す。
砂埃が巻き上がり、俺の後ろへと、地面の土が飛ばされる。
篠ノ之箒が間合いに入り、ブレードを降り下ろそうとした時、俺は勢いをつけた右足で、篠ノ之箒を思い切り蹴り上げる。
「ゲブラァッ!?」
篠ノ之箒は、そんな声を上げながら吹っ飛ばされ、織斑ツインズの頭上を飛び越え、アリーナの壁に勢い良く激突する。
奴等が怯んでいる隙に、俺は上白沢先生に通信を繋げた。
「ちょっと先生、こりゃ一体何の真似ですか?」
『すまないが、これは織斑先生の指金だ。曰く、『私の弟ならこれぐらい対処出来る筈だし、ゴールドウィングのデータ取りにちょうど良い』だそうだ。長谷川先生と話をしていたら、いつの間にか篠ノ之が打鉄を纏って飛び出してな、誠に申し訳無いが、止められなかったよ』
オイオイ、そりゃ無茶苦茶な。つーか、あの女の指金かよ。何処まで腐った煩悩なんだよ、あの名誉ぐらいしか取り柄の無いアホンダラめが……………………って、ちょっと待てよ?彼奴が打鉄纏ってるってことはまさか!?
「ちょい上白沢先生!まさかとは思いますが、あの女、俺の打鉄を!?」
『いや、それについては安心してくれ。君の打鉄は、私がしっかり預かっている』
良かったあ~。もしあの女が使ってたらどうしようかと思ったぜ。
そうして一安心していると、上白沢先生が言った。
『取り敢えず、篠ノ之の処罰は此方で検討するから、君は3人を片付けて来なさい。あわよくば、大破させても構わない』
「はーい」
俺はそう答えて通信を切り、3人に向き直ると言った。
「テメエ等、よくもまあこんな汚い手ェ使ってきやがったなァ……………本来は織斑ツインズVS俺での模擬戦である筈なのにさァ…………無粋な横槍入れやがって。もう怒った。テメエ等3人纏めてスクラップにしてやるよ」
篠ノ之が纏っている打鉄には罪なんて無い訳だが、この際仕方無い。許せ、打鉄。
俺は、右手に大口径2連装機関砲、左手に手持ち式3連装ガトリング砲を展開し、一斉射撃を喰らわせながら突撃した。
雨霰と、横殴りに降り注ぐ弾丸の雨に晒され、3人のISはボロボロ、SEは瞬く間にゼロになり、織斑ツインズのISは強制解除され、篠ノ之のISはあちこちから煙を吹き出し、機能停止した。
ゴメンよ打鉄、君に罪は無い。
恨むなら、あまりにも身勝手が過ぎる篠ノ之箒を恨んでくれ。
『試合終了!勝者、黄昏狂夜!』
一応勝ったけど、マジであの打鉄には悪いことしちまったなあ~、せめて次は、認められる主に出会えよ。
俺はピットに戻りながら、罪無き打鉄に合掌した。南無(チーン)
さてさて、何時かのクラス代表決定戦の時のように、脚部からタイヤを出してカタパルトに着陸し、そのままタイヤを転がしながらピットに戻ってきた俺は、先生二人と話をしていた。
篠ノ之には、クラス対抗戦後に反省文50枚の処分が下されたそうだ。
流石に軽すぎないかと訪ねると、上白沢先生曰く、『委員会が判断したからどうしようもない』だそうだ。
まあ、言わばブリュンヒルデ(笑)と天才(笑)を怒らせたくないんだろうよ。何時かの日本政府のクソ共だって、似たような理由で俺をモルモットにしようとしてたからな。
そして今、上白沢先生は電話中だ。何でも、彼奴等に回収班だとさ。
「………………はい、分かりました。ありがとうございます」
どうやら電話は終わったそうだ。
「3人の回収が終わったそうだ」
にしてもスゲエなあ、態々回収班出すなんて。
俺は、こんな理不尽が過ぎる事態を起こしたクソ女を恨みつつ、そんなことを考えていた。
「す、凄いですね。まさか、3人纏めて、一気にSEをゼロに……………」
「ああ…………(まあ、私の弟だから、コレぐらい出来て当然だがな)」
此処は、織斑兄弟側のピット。
モニターで試合を見ていた二人は、そんなことを話し合っていた。
と言うより、千冬は自分が篠ノ之箒の行動を許したのだが、それが真耶に知られていないのは、恐らく隠れて篠ノ之箒を格納庫へ連れていったのだろう。
「それにしても、狂夜君のISは凄いですね。紅さんと東風谷さんとの模擬戦でもそうでしたが、織斑君達のISのスペックも軽々と上回るスペックですよ、アレは」
真耶がそう言うと、千冬は立ち上がり、呟いた。
「少し、確認する必要があるな」
そうして、千冬は反対側のピット、つまり狂夜達のピットへと向かって歩き出した。
「はあ………………また織斑先生の悪い癖が…………と言うか、狂夜君の入学条件に、『専用機に無闇に関わるな』って書いていたのに………………」
そう呟く1年1組副担任、山田真耶は、深い溜め息をついた。
「狂夜君、2月の事もまるで覚えてないし、このまま織斑先生が変にちょっかい出して狂夜君を刺激して、彼が学園を辞めるなんて言い出したらどうするんですか」
そしてまたしても、真耶は憂鬱そうに溜め息をついた。
それを狂夜が知ることになるのは、まだ先の事になるだろう。
その頃、狂夜達の居るピットへと歩みを進めている千冬は………………
「(あのISは、明らかにスペックが高過ぎる……………強力な火器を備え、一夏や秋彦のIS、白式や白椿に積まれている武器、雪片弐型を軽々と受け止めてしまうブレード…………恐らくだが、ドイツで行方不明になってから……………いや、もしかしたらそれより遥かに前から手に入れていたに違いない。どうしたものか……………)」
「あれ?千冬姉さん」
「おお、一夏に秋彦、それに篠ノ之も。何処へ行くんだ?」
狂夜達の居るピットへと向かう廊下を歩いていた千冬は、一夏、秋彦、そして箒と鉢合わせした。
「彼奴が居るピットだよ。あのISはスペックが高過ぎる。きっと不正でもして改造したんだ」「出来損ないが、一夏や秋彦に敵う筈がありませんからね」
随分と身勝手極まりないことを言う二人に、一夏も同意するかのように頷く。
それから、千冬は秋彦から、先程の戦闘について詳しく聞いた。
3人の纏っていたISのSEを瞬く間にゼロにした、大口径2連装機関砲に、手持ち式3連装ガトリング砲、そして、一夏と秋彦の専用機に共通して積まれている、唯一の武装、雪片弐型を軽々と受け止めてしまうブレード等、千冬が考えていた武装についての話が次々に出てきた。
「そうか………………ちょうど良い。私も彼奴に用がある。彼奴のISの検査をするために渡させる。ついてこい」
そうして千冬が先頭に立って歩き出し、3人も後に続いた。
「(不正、か………………中々使えるキーワードが出てきたな。コレを理由に回収して、あわよくば、一夏か秋彦のどちらかに渡すとしよう。流石に、あんな高スペックなISは、彼奴には勿体無いだろうからな。何故か彼奴に渡った打鉄で十分だろう)」
千冬は先頭を歩きながら、ゴールドウィングを纏って戦う二人の姿を思い浮かべていた。