IS~宿命の砲火~『出来損ないと呼ばれしドイツの帝王』(更新停止中) 作:弐式水戦
「へっへっへ、上手く拉致れましたねえ、アニキ」
「ああ、後は織斑千冬が棄権すりゃ、依頼達成って訳だ」
「まあ、拉致るターゲットが、織斑一夏や織斑秋彦じゃなくて、この出来損ないってのも、おかしな話っスよねえ」
さて、背後から殴られ、気絶しちまった俺は、目覚めた時にはワケ分からん部屋に閉じ込められていた。しっかし意外にも、手足を縛られるなんてことはなく、ただ閉じ込めるだけってのも如何なモンかと思ったのだが、俺を拉致った奴等の話を聞くに、『出来損ないだし、所詮はガキだから縛らんでも良いだろ』って感じだそうだ。
それにどうやら、コイツ等の目的は、俺を人質にして、千冬姉さんを棄権させることらしい。薄汚い手ェ使いやがるモンだ。
にしても、出来損ない出来損ないってうるせえなあ、段々腹立ってきたぞ。
俺は立ち上がると、どっかに出られそうな所はないかと探すが、精々ちっこい窓が1つある程度だ。逃げるのは無理だな。
そうしているうちに、何やらバタバタと足音が響き、男達が何やら話をしていた。最初は男は驚いたように、『はあ!?』だとか、『電話した筈だろ!?なのにか!?』だとか言い合っていたが、次第に落ち着いたのか、ヒソヒソと話をして、ドアの小さな窓から覗く俺を一斉に見ると、ニヤリとゲスイ笑みを浮かべ、一人がラジカセを持ち、近づいてきた。そしてドアが開き、男がラジカセ片手に部屋に入り、ゲスイ笑みを浮かべながら言った。
「よおよお、逃げようったって無理な話だぜ?お前の部屋にあるのはそのちっこい窓だけ、外には俺達が居るんだ。出来損ないのお前に、逃げられるワケがねえわなァ!ギャハハハハ!!」
男が笑い、その後ろに居た男3人もつられて笑う。ムカついて仕方ねえ。
そんな俺の怒りのボルテージが上がっていく中、俺の足元から、何やら俺の周囲を渦巻くように風が吹き上がっている。
その状態を知らない男は、ニヤリと笑いながら、何かを思い出したかのように話した。
「おっと、そういやお前に知らせなきゃらねえことがあるんだ、すっかり忘れてたぜ」
そうして男は、地面にラジカセを置き、スイッチを入れた。ガーガーという音がして、それが完全に消えた時、何やら楽しそうな曲が流れた。
『では、番組の最後に、第二回モンド・グロッソ優勝者、織斑千冬選手にインタビューしたいと思います!』
………………は?
『織斑選手、先ずは第二回モンド・グロッソ優勝、おめでとうございます!相変わらずのスピード勝負でしたねえ』
『ありがとうございます』
え?何故に?千冬姉さん、大会出たのか?
『さて、では今の気持ちを誰に伝えたいですか?』
『今までお世話になった方々と、観客席で見てくれていた、愛する二人の弟達にです』
『弟さんは、3人居ると聞いているのですが?』
『それは違います。私に弟は3人も居ません』
『成る程、ありがとうございました。では皆さん、次のモンド・グロッソでお会いしまsy(ピッ!)』
「………とまあ、そういうワケなのさ。既に勘づいていやがるかと思うが、俺達の目的は、お前を拉致、監禁し、織斑千冬に準決勝を辞退させること。だが、ヤツは試合に出ちまった。コレが何を意味するのか、分かるよなァ?」
俯いてその声を聞きながら、俺は怒りを増幅させていった。
「(家では常に、あの二人と比べ、家族なのかも疑い、家事全般押し付けて使用人扱いしまくって、さらには出来損ない扱い、挙げ句にこうやって見捨て、切り捨てるのか…………テメエからしたら、俺は都合の良い存在でしかなかったんだな……………束さんだって彼奴等ばっか贔屓にしてるし……………上等だよ、もう決別だな、千冬姉さん、いや、クソアマァ……………そして、クズ共がァ!!)」
俺の怒りは、俺が過去を思い出すにつれてボルテージが上がり、足元から吹き上がる風も強さを増し、獣耳のように一部が跳ね上がった髪を揺らす。
「まあ、何はともあれだ。お前は見捨てられたんだよ、出来損ない。そして、俺達の目的を知っちまったお前さんには、死んでもらうしかねえのさ」
そう言うと、男は拳銃を俺に突きつけ、またゲスイ笑みを浮かべながら言った。
「あばよ出来損ない。まあ、精々あの世で、閻魔さんにでも慰められてろや!」
…………………フザケルナ
そう口にしたのか、内心で思ったのか、はっきりとは分からん。だが、俺の怒りは、既にデッドゾーンを振り切っていた。
吹き上がる風のように沸き上がる怒りに耐えかねた俺は、全身から怒りのオーラを撒き散らす。
俺の足元から吹き上がる風は、俺が撒き散らした怒りのオーラにより、無色から燃え上がる炎のように赤くなる。
そこで俺は、初めてイワンと戦った時の姿を思い出す。今の俺は正に、あの時の姿そのものだ。
『将校の気位』。当時のイワンは滅茶苦茶強く、俺でもついていくのがやっとだったのだが、そこで起きた、弱い自分への怒りから吹き上がったオーラからなった、俺の喧嘩スキルだ。
「な、何なんだよ、ソレはァ!?」
俺に拳銃を向けていた男は、俺を指差して叫ぶ。
『さあな………………取り敢えずテメエ等はァ……………一人残さずぶち殺してやらァ!!!』
俺は怒気と殺気を全快にして怒鳴る。
「ちょ、オイ!コイツはヤバイぞ!」
「こ、殺せ!殺せェェェェェェェェッ!!!」
「うわあああああああっ!!!!」
するとどうだろう、3人は錯乱したかのように、ナイフを投げつけてきたり、拳銃を撃ってきたりするではないか。まあ、完全に錯乱してるからか、狙いが滅茶苦茶だがな。
『狙いが定まってねェし、明らかに焦ってンのが丸分かりなんだよクソがァ!!』
「グハアッ!?」
『さあて、くたばりやがれェッ!!』
「ゴバアッ!?」
俺は、一人の男の前に出ると、丁度、顎の下辺りの部分に蹴りを入れ、その男が一瞬宙に浮く。タイミングを見計らい、ソイツの腹に飛び膝蹴りを食らわせ、ソイツを吹っ飛ばす。
その男は、後ろ向きのまま吹っ飛ばされ、少し隙間を開けられていたドアに激突した。
バーン!と、ドアの開け放たれ方に勢いがあり過ぎたからか、壁に勢いよくドアが激突する音が、今俺が監禁され、尚且つ、俺を拉致ったクソ共に絶賛リンチ中である建物の廊下に響き渡る。そして、その男は壁に叩きつけられ、失神した。
『さァて、次はどいつを潰してやろォかなァ…………?』
「ま、待ってくれ!こ、殺さないでくれ!」
「な?な?ちゃんと逃がすし、このことは誰にも言わねえから、たの『黙れ、クズ』がっ!?」
俺は怒り任せに、もう一人の男の頭に踵落としを食らわせる。そうして、ソイツは倒れ伏し、先程のクズ同様、失神した。
『さァ…………ラストはテメエだ、ゴミクソ野郎がァ!!!』
「ひっ!う、うわあああああああっ!」
俺が怒鳴ると、俺にラジカセで不愉快極まりない放送を聞かせてくれやがったクソ野郎は、錯乱したかのように叫びながら逃げ出す。
暫く態と待ってから、俺は、何故か使えるようになっている瞬間移動でクソ野郎の前に回り込み、行く手を塞いだ。どうやら、建物の近くに置かれてある、多分だが俺を拉致るのに使用したのであろう、黒のワゴン車で逃げる気だな。
……………愚かだな。貴様も俺に潰される運命だってのによォ……………
まあ、少し泳がせてから潰すのが面白いんだがな。
『オイ、何処へ行くつもりだァ?』
「ひっ!」
俺が突然現れたことへの驚愕と怯えからか、クソ野郎は尻餅をつく。
『さァて、不愉快極まりねえこと仕出かしてくれやがったテメエはァ…………こうしてやらァ!!!』
俺は、そのクソ野郎の頭を掴んで無理矢理立たせ、黒のワゴン車に狙いを定める。
『さあ!お気に入りの車ン中でおねんねしてやがりなァ!!!』
「ガハッ!?」
俺は軽く飛び上がり、そのクソ野郎の鼻面に全力での回し蹴りを食らわせ、吹っ飛ばす。 そのクソ野郎は、狙い通りにワゴン車目掛けて飛んでいき、窓ガラスを突き破り、頭から突っ込む形で止まった。
『ケッ!ざまあみやがれってンだ』
俺はそう呟き、瞬間移動を使ってワゴン車の直ぐ側へと転移し、後ろのスライドドアをもぎ取り、中から俺がホテルから持ってバッグを持ち出すと、取り敢えず財布を抜き取り、そのワゴン車を持ち上げると、さっきの建物へと向き直り、思い切りワゴン車を投げつけた。
ワゴン車は、物凄い音を立てながら建物へと突っ込み、次の瞬間には大爆発を起こした。
「フンッ!これで満足か?クソアマ共」
俺は『将校の気位』を解き、平常状態に戻ると、未だに使えることから、転生特典の一部がアンロックされたから使えるようになったのだろう瞬間移動を使い、日本の、あの解体所へと転移した。
余談だが、この後クソアマ共がその建物にやって来て、焼死体と焦げたワゴン車を見て泣き崩れていたらしい。
つか、散々ほったらかしにして、今更か。