IS~宿命の砲火~『出来損ないと呼ばれしドイツの帝王』(更新停止中)   作:弐式水戦

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第四十八話~癒しの時間を邪魔しようモンなら……………ワカルヨネ?~

さて、俺に抱きついて泣いていた美鈴と早苗が漸く落ち着いたので、俺達は何時も座っている席に座り、夕食を摂っていた。

メンバーは、俺、ペパロニ、アンチョビのいつメンに、美鈴と早苗、そして山田先生だ。

 

その時にはあれやこれやと話をした。

まあ、主にブリキ野郎共との戦闘についてや、イワンが何者なのかという質問攻めだった。

そんな感じで話しているうちに、俺が医務室に行ってお見舞いをした話になった。すると、不意に美鈴が口を開いた。

 

「そう言えば狂夜さん、鈴仙さんの調子はどうでしたか?」

「ああ、軽く足を捻っただけだとさ」

「そうですか」

 

鈴仙さんに大した怪我がないと知るや、美鈴と早苗は安堵の溜め息をついた。まあ、クラスは違うが、同僚だもんな、心配ぐらいするか。

そんな光景を見ていると、ニヤニヤしたペパロニが話し掛けてきた。

 

「そんで兄貴、他には何もねーの?一応鈴仙のねーちゃん以外に居たんだろ?」

「ああ。まあ他の二人も、大した怪我はないんだとさ」

「なんだ、それだけかよ」

 

そう言って、ペパロニは残念そうな反応をした。てか、お前はどんな話を期待してたのさ。

 

「それにしても、オルコット以外にイギリス代表候補生が居たなんて、思いもしなかったな」

 

そう言って、アンチョビは食後のお茶を啜る。まあ確かに、俺もあの時はビックリしたなあ。

 

まあ、それからは大した話題もなく、ただのんびりした食後の風景が広がる、かと思いきや、俺と山田先生が話しているのを見ていたペパロニに冷やかされ、さらに美鈴と早苗が話に割り込んできて、ちょっとしたドナドナが起き、その後、ペパロニを少しばかりとっちめたというのを付け加えさせてもらおう。

 

 

 

 

 

 

 

「あ~、退屈だぁ~」

 

金曜日の昼、俺以外誰も居ない寮の部屋で、俺はベッドで大の字に寝転がり、そうボヤいていた。

え、学校はどうしたって?お休みです。

 

いやね?何か今回の無人機襲撃事件で怪我した生徒が多かった上、皆かなりの精神的ストレスを感じているそうで、アリーナの修理も兼ねての連休となるんだとさ。

場合によっては、月曜日も休みになるかもという話もあるとかないとか。

まあ、多分無いと思うけどね。

 

まあ、そういう訳で、俺は連休一日目の時を過ごしている。

因にだが、桜花達3人は、ペパロニとアンチョビの部屋に行ってる。なんでも、女子会なるものを開いてるんだそうだ。

「やることねえ~……………………散歩でもするか」

 

そう呟き、俺は部屋を出た。

 

 

 

 

 

 

「あー、やっぱ此処で寝るのは気持ちが良いや」

 

さて、部屋を出てから約10分。俺は、簪や布仏さんに、打鉄弐式を手伝ってくれと頼まれた、あの校舎裏に来ていた。

自販機でコーラを買い、ベンチに腰掛け、そのままのんびりして過ごす。

日陰だからかなり涼しい。こんな場所の存在に、なんでもっと早く気づかなかったのかと思いながら、俺はゴールドウィングの待機形態であるヘッドフォンを外し、久々に、耳に風が直に当たる感触を楽しんでいた。

暫くそうした後、ヘッドフォンをつけ直し、少し転た寝していると、意外なお客さんが現れた。

 

「狂夜」

 

淡々と名前を呼ぶ声に起こされ、本格的に昼寝モードに入ろうとしていた体を何とか我慢させ、閉じていた目を擦り、俺に声を掛けた人物を視界に捉える。

 

「ああ………………Ms.シグトゥーナか……………」

 

風に靡く銀髪に、鮮やかな赤紫の瞳を持つ美少女、ユリエ・シグトゥーナその人だ。

あれ?俺、過大評価しすぎかな?

 

そう思っていると、Ms.シグトゥーナが近づいてきた。

 

「何してるんですか?」

「ああ、少し転た寝してたんだよ……………お前さんは?」

「私は散歩していて、少し休憩しようと思ったんです」

 

そう言って、Ms.シグトゥーナは俺の隣に腰掛けた。

「それはそうと………………」

 

そう言いかけ、Ms.シグトゥーナは此方を見た。

俺は返事代わりに、視線のみMs.シグトゥーナに向ける。

最早眠すぎて、顔もMs.シグトゥーナに向けられるような気力は残っていない。

少々失礼だが………………許せ、Ms.シグトゥーナ。ギムレーのように広い心で!

 

………………何言ってるんだろうね、俺。

 

そう思っていると、Ms.シグトゥーナは立ち上がり、俺の真ん前に来た。

 

「んあ~、どうかしたか~?」

 

そろそろ、いつの間にか始まっていた眠気との戦いに負けそうになっている俺は、大欠伸をしながら言った。

 

「私………………貴方が気になります」

「……………ふぁ?」

 

再び欠伸していた俺は、突然の言葉に欠伸混じりの声を出す。

 

閉じようとしていく目を擦り、何とかして少しでも長く起きようとしている俺は、次のMs.シグトゥーナの行動で、一気に眠気が吹っ飛ぶことになる。

 

なんと、Ms.シグトゥーナはそのまま、俺に近づいてきたのだ。

俺の両肩の直ぐ隣に手をつき、ゆっくりと顔を近づけてくる。

俺は眠気などすっかり忘れ、Ms.シグトゥーナから脱け出そうとするが、相手は非女尊男卑タイプの女子である上、俺が彼女から暴力を振るわれている訳ではないので、下手な抵抗は出来ないのだ。

まあ、瞬間移動すれば済む話だが、その時の俺は、その手段すら思いつかない程パニックになっていた。

 

 

「ち、因にだが、何が気になるのかを教えてくれないか?」

 

パニックでこんがらがっている頭の中で何とか捻り出した言葉を投げ掛けると、Ms.シグトゥーナは顔を近づけるのを止め、離れた。

その後、両手の手首を合わせ、右後ろの腰辺りに構える。そして、前に突き出した。

その様子に何と言えば良いのか分からず、ただぼんやりと見ているだけな俺を見たMs.シグトゥーナは、今度は右手に握り拳を作り、それを大きく振りかぶる。そして、それを勢い良く前に突き出した。

それでも分からずにいると、今度は足を肩幅ぐらいに開き、両腕を曲げ、何やら全身に力を入れていくようなポーズをとる。

 

「試合で見た、狂夜の技です。ずっと気になっていました」

「俺の…………………技?」

 

俺はそう言われ、頭の中で整理する。

Ms.シグトゥーナが見せた3つの行動、俺が試合で使った技……………まさか

 

「もしかして、『帝王拳』や『宿命の砲火』、『帝王の覇気』の事を言ってんのか?」

「ヤー、私に教えてください」

「はい?」

 

いきなり技の伝授を頼まれてしまった。

教えてくれって言われてもなぁ………………コレ、最初のうちは結構体に負担掛かるし、少なくとも女の子がやるような技じゃねえしなぁ……………断るか。

 

「悪いな、それは出来ねえ」

「どうしてですか?」

 

俺が首を横に振りながら断ると、Ms.シグトゥーナは理由を聞いてきた。

 

「俺の技はIS無しでも出せる技だが、体への負担がデカイんだよ。それなりに鍛えたら何ともねえけどな。だが、少なくとも女の子がやるような技じゃねえんだ。多分、やるだけで骨が折れちまう」

「そうですか………………残念です」

 

そう言って、Ms.シグトゥーナは再び隣に座る。

眠気が吹き飛んだ今、やることが無いためどうしようかと思っていると、Ms.シグトゥーナが俺に凭れてきた。

 

「どうかしたのか?」

「すみません………………少し、眠くて……………」

 

あれま、どうやら眠気さんは、ターゲットを俺からMs.シグトゥーナに変えたみたいだ。

仕方ねえや。

 

「じゃあさ、そのまま寝ちまえよ。暫くしたら起こすからさ」

「では………………お言葉に………………甘えま…………す…………」

 

そうして、Ms.シグトゥーナは寝てしまった。

 

疲れて眠くなる程歩き回っていたのか、ただ眠くなっただけなのか、それは俺には分からん。

俺はただ、スヤスヤと眠るMs.シグトゥーナの寝顔で癒されていた。

あ、別に俺、変態とかじゃないからね?コレ大事な。テストに出るぞ?あ、嘘です。出ません。

 

さて、心地よく癒されるために、何やら邪魔しようとしてやがる奴を追っ払うとしますか。

 

 

 

「は~、にしても可愛い寝顔だ。こんなに癒されんのは、桜花と一緒に寝た時以来だな」

 

俺はそう呟きながら、バレないようにゴールドウィングのセンサーで、俺等を見やがってる奴の居場所を見つける。

成る程、自販機の横か。

 

「誰も居ない、風が心地よく吹くこの場所で、こうして寛げるなんて幸せだな」

 

そう呟きながら、俺はゆっくりと、目線を自販機へと向ける。

 

「こんな至福の一時を邪魔されんのは、死ぬ程嫌だわなァ~」

 

そして、止めに黒いオーラを纏い、ドスを効かせた声で言った。

 

『其所で俺等を見やがってる小娘、貴様の存在は筒抜けだ』

「ッ!?」

 

あ、気配が強まった。だが、まだ居座りやがる気だな?ムカついてきたぜ。

まあ、潰す気は無いけどな。

 

『今日は見逃してやる。だが、次また来やがったら、或いは、帰らずにこれ以上近づいてくるつもりなら……………………

 

 

 

 

 

…………………『ブッ殺シテ大阪湾ニ沈メテヤルカラナ?』』

「-------ッ!!!??」

 

思い切り殺気をぶつけてやると、その気配は消えた。

 

それに満足した俺はオーラを消し、Ms.シグトゥーナの寝顔で癒されていたので振り返してきた眠気に身を任せ、眠りにつくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はあっ!はあっ!!はあっ!!…………何なのよ、あのオーラは………………あんな…………規格外な子だったなんて…………聞いていないわよ…………」

 

場所を移して、此処はIS学園生徒会室。

 

狂夜がユリエと昼寝を始めたのと、ほぼ同時刻、少女、更識楯無が生徒会室に転がり込んできた。

 

物凄い勢いでドアを開け放ち、さらにはまた、ドアを勢い良く閉める。

2度にも渡る大きな音に、先程まで机に座り、書類を見ていた眼鏡をかけた少女、布仏 虚は驚き、ドアに凭れ掛かって、あたかも単独フルマラソンを終えた選手のような息をしている楯無に駆け寄った。

 

「お、お嬢様!どうなされました!?」

 

駆け寄った虚から、心配の一言が掛けられる。暫く荒々しく呼吸していた楯無は、漸く呼吸を落ち着かせ、未だに滝のように流れる汗を拭いながら立ち上がり、苦笑いを浮かべながら言った。

 

「な、なんとか………………ありがとね、虚ちゃん。それから、学園では会長って呼んでよ。家での呼び方は流石に止めて」

「それについては申し訳ありません。ですがお嬢様、未だに体は震えていますよ?」

 

そう言って、虚は楯無を抱き締める。傍から見れば、『高校生に抱き締められている高校生 』と映るだろうが、今の彼女等には、そんな事を考えている暇など、まるで無い。

暫くすると、楯無の体の震えは収まり、少しずつ、普段通りの調子を取り戻しつつあった。

 

「それにしても、お嬢様があんなにも怯えるとは………………それ程なんですか?黄昏君は」

「ええ。寧ろ、あんなにも凄い殺気を喰らって平気で要られるのは、多分世界中にも居ないわね。私が負けた、八雲重工のパイロット2人を負かしたのも、納得がいくわね」

 

そう言って、楯無は再び荒れそうになる呼吸を何とか抑える。それを見た虚が口を開いた。

 

「それにしても何故、最初に彼との接触を図ったのですか?」

 

その問いかけに、楯無は少し考えるような仕草を見せた後、虚の方を向いて言った。

 

「ん~、特にコレといった理由は無いのよね~。まあ、強いて言えばなんだけど、狂夜君って今では学園中で人気だけど、入学当初は蔑まれてたじゃない?いくら仲の良い女の子の友達が居ても、心の何処かでは、女性への不信感を感じてしまっていたんじゃないかと思うのよね~。だ・か・ら♪おねーさんが優しくリードしてあげようとしたんだけど……………」

「物の見事に追い返された、という事ですね?」

「ええ。私が接触しようとしたら、いきなり小娘呼ばわりした挙げ句、ドスの効いた声で『居場所は筒抜けだ』とか、『またやったらブチ殺して大阪湾に沈めてやる』、よ?怖い以外の表現の仕方が見当たらないわ」

 

そう言って、楯無は持っていた扇子を広げる。その扇子には、達筆で『狂戦士』と書かれていた。

 

「『狂戦士』、ですか……………かなり的を射た表現ですね」

「?どういう事?」

 

首を傾げながら訊ねる楯無に、虚はある1つのDVDディスクを楯無に見せ、デッキにセットする。

テレビの電源を入れ、チャンネルを合わせると、画面には、とある敷地内に2台の黒いセダン車が突っ込む様子が映し出された。

 

「あら?コレは事故か何か?」

「いえ、本番はこれからです」

 

そう虚が言ってから約10分、動きが現れた。

 

『ふざけてンじゃねェぞ!!!このクソ野郎共がァァァァァアアアアアアッ!!!!!!』

 

画面は相変わらず、突っ込んだまま放置されている2台のセダン車を映しているが、出し惜しみすらせずに出される、怒気と殺気を含んだ怒号はしっかりと拾っていた。

それから強風が吹き荒れ、その敷地内に転がっていたのであろう、空き缶やゴミ箱等が、敷地の外に勢い良く放り出される。

 

それから暫くの間、敷地内からは騒音が響き、時折断末魔のような悲鳴が響き渡る。

最初に、黒いスーツを着た、太った男が吹き飛ばされてきて、1台のセダンにぶつかり、そのセダンが『く』の字にヒン曲がるシーンや、終盤に、最初にセダンにぶつけられた男の手に、狂夜がセダンの1台を勢い良く叩き付け、その男から断末魔のような悲鳴をあげさせるシーンには、楯無や虚は目を疑った。

それから暫くすると、10人の黒いスーツ姿の男達が、狂夜に蹴られながら敷地の外へと追いやられる場面が映し出された。また、幸いにも無傷で済んだセダン車1台を片手で軽々と持ち上げ、そのまま傷だらけの男達の前に叩き付ける場面も映し出された。

 

そして、狂夜がその敷地に入っていったところで、映像は切れた。

 

「…………………と、まあ、黄昏君が『狂戦士』と例えられる事に頷ける理由はこんな感じです。さらに得た情報によると、それからその男達は、全治1年の重傷を負い、1人は片手が無い状態での生活をすることになったそうです。また、クラス対抗戦における、無人機襲撃事件において、黄昏狂夜君はアリーナの観客席と外とを繋ぐゲートを拳による殴打2回で破壊、さらにイワン・ナイジョノフさんと共闘し、無人機全てを生身で残滅しております」

「無理無理無理無理ィ!!?何よ、その規格外っぷりは!?どうやったってそんな規格外が過ぎる人間の制御なんて出来ないってェェェェエエエエ!!?!」

 

虚の口から放たれた狂夜の情報は、楯無を絶叫させるには十分すぎる威力だった。

 

他にも、『帝王拳』や『帝王の覇気』、『帝王爆誕』、『宿命の砲火』といった、一部ではISの単一使用能力《ワンオフ・アビリティー》ではないかと噂されているものが、狂夜自身が生み出した技であるというのもあるが、虚は敢えて、それを言わなかった。

 

何故かって?答えは単純明快。

 

さらに叫ぶからである。

 

 

絶叫する楯無を見ながら、虚は黄昏狂夜という人物について考えた。

 

「(お嬢様をこんなにも狂わせる程の実力者………………そう言えば、確か本音が彼と接触したらしいわね………………その時の彼の人物像について、聞いてみようかしら。黄昏君には、少し悪いけど……………)」

 

そうして、虚は携帯で本音を呼び出し、黄昏狂夜と接触した時の事について聞いたが、『別に~、イイ人だったよぉ~?』と答えた本音の言葉に、さらに頭を悩ませる結果となった。

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