IS~宿命の砲火~『出来損ないと呼ばれしドイツの帝王』(更新停止中) 作:弐式水戦
さて、ドイツにて、俺を拉致ったクソ共を潰した俺は、これから我が家となる黒澤解体所へと帰ってきた。今は昼前、秋の涼しさを感じる時間帯だ。
スクラップだらけの解体所内でも感じる風に当たりながら、俺は、解体所の隅辺りにあるプレハブ小屋へと向かう。
あちこちにスクラップの山が置かれているからか、ある意味迷路のようになっている。だが、何度も通っていた俺にとって、この程度の迷路は造作もない。五分足らずで最後の角を曲がり、プレハブ小屋の前に立つ。
そして、小屋の壁の直ぐ隣に置かれている、錆びれたバイク、ゴールドウィングの前へと歩み寄る。
「よお、待たせたな相棒。と言っても、一日と少し程度しか経ってねえがな」
そう言って、俺はゴールドウィングのヘッドライト部分を撫でる。すると、ライトが独りでにパシッと光る。まるで、桜花以外に、魂みたいな何かが取り憑いてるみたいにだ。
暫くライト部分を撫でていると、背中に軽い衝撃が走る。首だけ後ろに向けると、一日と少しぶりの猫耳と黒髪が視界に入る。
視線を腹部に移すと、赤い和服の袖から覗く、白い肌を持つ腕が、俺を抱き締めている。
「…………バイクにばかり構ってないで、私にも構ってください、マスター」
視線を後ろに戻すと、頬を膨らませながら、上目遣いで此方を見上げる桜花が映った。
「悪い悪い、そう怒るなよ、桜花」
俺はそう言って、抱きつかれている右腕をスルリと抜き、桜花の頭を撫でる。すると、桜花は気持ち良さそうにしだす。猫耳はピコピコ動き、尻尾は嬉しそうに左右に振られる。
「むう……………今回だけは許してあげます」
気持ち良さそうにしていたのが余程恥ずかしいのか、抱きついていた手を退けて頭に乗せていた俺の手を退け、プイッとそっぽを向く。時々こーなるんだよな~。
「まあまあ桜花、家に入ろうぜ。あの映画、見るんだろ?」
「は、はい!」
そうして俺と桜花は、小屋のドアの前へと立つ。俺の荷物は、財布以外は俺を拉致ったクソ共を車ごと火の海にしたため、殆ど無いわけだが、最後まで、ズボンのポケットに入れていた、小屋の鍵とゴールドウィングのイグニッションキーのうち、小屋の鍵を取り出し、鍵穴に差し込み、時計回りに回す。カチャリと音が鳴り、鍵が開く。ドアノブを回して中に入ろうとすると、不意に、桜花が俺の肩を叩き、振り向かせる。
そうして、桜花は今更ながらの言葉を、とても嬉しそうに言った。
「おかえりなさい、マスター」
それを見た俺も、笑って答えた。
「ああ、ただいま。桜花」
それから俺達は、買い置きしていた材料で昼食を作り、食べながら、テレビで桜花が見たがっていた映画を見る。
桜花だったらと思っていたが、予想通り、恋愛もの映画だった。
映画を見終わり、食器を片付けた後、俺は何故か、桜花に膝枕されていた。まあ、桜花の膝枕は心地好いから好きなんだがな。
そうしていると、点けたままだったテレビで、ニュース番組が流れた。
『本日、ドイツで行われた第二回モンド・グロッソは、日本代表、織斑千冬選手の勝利に終わりました。ですが、表彰式が終わった直後、織斑選手は突如、彼女の専用機『暮桜』を纏い、猛スピードで会場を出てていきました。織斑選手は、少し離れた廃墟にて立ち竦んでいるのを見つけられ、話によると、『弟が行方不明だ』と言い、警察が詳しい話を聞いたところ、行方不明になっているのは、『織斑家の出来損ない』と呼ばれた、織斑 春馬君(14)だとされ、織斑選手が立ち竦んでいた建物に車が突っ込み、その中から織斑春馬のものだと思われる荷物が見つかり、建物や車が燃え尽きている状態から、ドイツ警察及び日本政府は、彼が死亡たと考えざるを得ないとした模様です』
あれま、こりゃエライことになったなあ。
「マスター、アレは一体?」
ニュースを見ていた桜花が聞いてくる。じゃあ、話しますか。
「実はな桜花……………
~少年説明中~
………………って訳なのさ」
「…………そう…………だったのですか………」
俺は過去の事から今に至るまでの全てを桜花に話した。
ドイツに行って拉致られ、挙げ句にクソアマに見捨てられたことを話した時には、桜花から溢れ出る殺気が半端なかった。
「まあ、正直あの家には居場所無かったから、今は快適だな。誰にも縛られねえし、お前が居るし」
「ま、マスター…………」
そう言いながら桜花の頭を撫でると、桜花は顔を赤くしながらも嬉しそうにしていた。
それから俺は、解体所に入ってきた主任さんに会い、ニュースであったことについて話した。
そして俺は、主任さんの知り合いで、姓名判断士をしている人に話し、名前を変えることにした。
一応、織斑春馬は死んだということになってるからな。そして俺は、黄昏 狂夜(たそがれ きょうや)となった。
それから、一年と三ヶ月という年月が流れた。あれから俺は学校には通っていない。そのため、本屋で適当に問題集を買い、それを使って勉強している。
そうしているうちに、俺はIS学園という、その名の通りISについて学ぶ女子高で、もし受けたら入試首席で入学できるほどのレベルになってしまっていた。
もう『出来損ない』とは呼ばせんぞ。
そうして俺は、久し振りにツーリングに繰り出そうとするのだが、その時の俺は、まさかあんなことになるとは思いもしなかった。