IS~宿命の砲火~『出来損ないと呼ばれしドイツの帝王』(更新停止中) 作:弐式水戦
ドイツからの帰りから、一年と三ヶ月経った。という訳で、今は二月。冬の寒さが未だに猛威を振るうこの時期、夜は兎に角暗いし寒い。だが、そんな日だからこそ、バイク乗りならば出掛けたくなるってモンさ!
あ、因みに今は夜11時ね。
「という訳で桜花、久々にツーリング行こうぜ!」
夜、今日は少し夜更かしが過ぎたようで、俺達はまだ、風呂に入っていない。
それがチャンスだと言わんばかりに言った俺に、桜花は目をパチクリさせながら言った。
「と、唐突ですね。どういう風の吹き回しですか?」
「ん?いや、特にはないぜ?ただ単に行きたくなっただけ」
「こんな夜に…………ですか?」
「ああ」
俺はそう答え、桜花は唖然としている。
まあ、無理もないか。こんな冬の夜にツーリング行こうぜなんて言う奴なんざ、世界広しと言えど俺ぐらいしか居ねえだろうし。
なんて考えていると、桜花が口を開いた。
「わ、私は構いませんが、和服しか無いので………」
「ああ、確かにそうだな」
そう、桜花は普段、和服で過ごしている。多少のカラーバリエーションはあっても和服は和服。ゴールドウィングのリアシートに乗せるには無理がある。
そこで俺は、1つの打開案を導き出した。
「じゃあ、俺の着れば良いさ。お前でも着れる服、何着かあるし」
そう言いながら、俺は自分の寝室に行き、小さなタンスから桜花でも着れそうな服を持ってきた。
まあコレ、俺がこの解体所に逃げ込んできたとき、主任さんの悪戯心で着せられた服なんだけどな。
何処と無く高貴な雰囲気を感じさせる装束のような服。それに長ズボン。取り敢えず当たり前だが冬用の服だ。今の俺にはギリギリ小さいが、桜花ならまだ着れる筈だ。
「まあ、取り敢えずコレ、着てみ?」
「あ、はい…………」
そうして桜花は、俺の寝室に入って着替え始める。それから約3分後、桜花が居間に入ってきた。
「ど、どうですか?変じゃないですか?」
そう言いながら、桜花は顔を赤くする。尻尾が桜花の腹辺りまで移動し、それを桜花が右手の指で弄る。
可愛い。うん、可愛い。
「似合ってるぜ、ソレ。なんなら家でもそれ着ても良くね?」
「いえ、家では和服で……………」
どうやら、その辺りだけは譲ってくれないようだ。
分かった分かったと伝え、俺は再び自分の寝室に行き、上着を二着持ってくる。一着を桜花に着せ、俺も着る。家中の電気を消し、靴箱に乗っかっているイグニッションキーを手に取り、外へ出る。
かなり寒いが、ガキの頃にワケ分からんままに閉め出された日に比べりゃ大したことはない。
それに少し遅れて、桜花も出てくる。
桜花は寒いのか、少し震えていたので、取り敢えず抱き寄せ、俺に近づける。これで多少は温かくなるだろう。
恥ずかしそうにしながらも、嬉しそうにさらに抱きついてくる桜花を横目に見ながら、俺は、殆どが錆びて銅色に変色している我が愛車、ゴールドウィングにまたがり、イグニッションキーを差し込み、時計回りに回す。
カチッという音と共に、スピードメーターやタコメーターの数字が光り出し、中央の小さなモニターにゴールドウィングのエンブレムマークが映し出される。クラッチを操作するとエンジンがかかり、燃料空っ欠でも重量300kgを越える上に、燃料満タン時には400kgにもなる巨体からは考えられないような、高いマフラーサウンドを撒き散らす。
ギアを入れ、ゆっくりと愛車を前進させ、桜花の直ぐ横に停める。其所では既に、桜花がヘルメットを被り終えていた。
「じゃあ桜花、リアシートに乗ってくれ」
俺はそう言うと、親指でリアシートを指差して言った。だが桜花は、少し不安そうな表情で聞いてきた。
「私が乗っても宜しいのですか?確かマスターは、『リアシートに人を乗せるのは、あまり好きではない』と仰っていましたよね?」
成る程、桜花のヤツ、そんなことを心配してんのか。
まあ、確かに俺、免許取り立ての頃はそんなこと言ってたけどさ………………じゃあ、言っちまうか。かなりの身内贔屓だが、この際知らん。
「ああ、お前は特別だからいーの」
俺がそう言うと、桜花は顔を真っ赤に染め上げた。
え、何故に?つか、今此処で熱出ましたとかマジで勘弁してくれよ?
「じゃあ、そろそろ行きますか」
「は、はい!」
そうして桜花をリアシートに座らせ、俺はアクセルを捻り、久々のツーリングを始めた。
走り出してから15分、ある地点にきたところで、俺はゴールドウィングの速度を緩める。右を見れば、織斑家の標札がある。俺を捨てた、くそったれた家だ。
「マスター、この一家が、マスターを捨てた一家なのですね?」
「ああ……………」
そうしていると、家の中から笑い声が聞こえてくる。
「どうやら、俺の死については大して何とも思ってねえみたいだな」
「……………忌々しい一家ですね。実際にマスターが亡くなった訳ではないとは言え、悲しむような雰囲気もないとは……………っ!」
そうして、俺は再び、ゴールドウィングを発進させ、家の前を通過する。
それから暫く走ると、篠ノ之道場が見える。此処でも結構酷い目に遭わされたな。事ある度に『軟弱だ』とか『稽古だ』とかで竹刀での攻撃喰らいまくったし。
あのモップ女には、いつかはクソアマと愚弟共共々報復してやらなきゃな。
まあ、今となっては、襲われても返り討ちに出来るが。
そうしてアクセルをさらに捻り、速度を上げていく。もう、あの忌々しい標札や道場は一生見たくねえや。
さて、そうこうしてるうちに、俺達は商店街へとやって来ていた。
店は当然ながらほぼ全て閉まっている。そりゃそうなるわな。だって今は、もう次の日になりかけているような時間帯だし。そんな時間でも開いてる店と言えば、コンビニぐらいしか思いつかねえや。
まあ、この商店街でも、俺の理不尽な扱いはあったな。暴力を振るわれたとかは無かったが、明らかに邪魔物扱いだったな。
そのまま誰も居ない商店街を駆け抜け、俺達は、そろそろ家に帰ろうとしていた。
帰る前の休憩として、これまた人気のなく、ただ街灯が一定の間隔毎にポツンポツンとある程度の道に、これまたポツンと置かれていた自販機で温かい飲み物を買い、二人で飲んでいた。
二人共飲み終え、いざ帰ろうとしていた時だった。
「や、やめてください!」
「んおっ!?」
急に聞こえた声に驚き、危うく俺は、持っていた空き缶を落としそうになる。
それを何とか持ち直し、声がした方を向く。
「ねーねー、俺達と遊びに行こうよ~」
「そうそう、退屈させないよ?君以外にも女の子は居るし、何より俺達、女の子の楽しませ方、幾らでも知ってるからさあ」
「そ、そんなの結構です!ひ、人を呼びますよ!?」
見ると、チャラ男三人衆に迫られ、電柱を背に怯えている女の子が居た。
女の子が叫ぶように言うと、チャラ男1号はニヤニヤしながら言い返した。
「ん~、アレなんだよねえ。俺達こんな成でも平和主義だからさあ、なるべく穏便に事を済ませたいんだよねえ~。という訳で、大人しくしていてほしいんだよねえ~。というより、こんな夜中に外出歩く人なんて、誰も居ないと思うけど?」
確かにチャラ男1号の言う通り、"連中の視界には"誰も居ねえだろう。だが残念だったな。既に俺が居ますから。
「うぅぅ…………」
「まあまあ、そんな顔しなくても良いじゃん。行こうよ」
「そうそう、君みたいな可愛い子が来たら皆喜ぶって!」
「い、嫌です!離して!」
ニヤニヤしながら言うチャラ男共に、女の子は抵抗し、チャラ男1号の手を振りほどこうとする。
それを見たチャラ男1号は、表情を若干イラつかせたモノへと変えて言った。
「はあ……………あのねえ、あんまり聞き分け悪いと流石に怒るよ?…………今のご時世のお陰で勝ち組人生進んでる女めがっ!」
「きゃあ!?」
チャラ男1号は、突然怒鳴り出し、あろうことか女の子を突き飛ばした。地面に尻餅をつく女の子にジリジリと近づきながら言う。
「ISが出来て、世の中では女尊男卑の風潮が広まって、お前ら女は俺達男を奴隷扱いしやがる。ただ、ISを男が使えないだけでだ。もうこの際、周囲の目なんざ構うもんか!今此処で、お前を汚してやらァ!」
「た、助けて!!」
………………こればかりには流石にイラついたぞクソが。
それはただの逆恨みじゃねえか。
「……………愚かなものですね。アレが人間の汚い部分………」
桜花も、あのバカ三人衆をゴミを見るような目で睨む。
「桜花、今からあのバカ三人衆を潰してくるわ。お前はバイクに入って待ってろ」
「で、ですが………「良いから入れ」………分かりました。マスター、お気をつけて」
「あいよ」
そうして、桜花が少し光り、直ぐ様バイクに入っていったのを確認し、俺は持っていた空き缶を掴み、今にも女の子に襲い掛かりそうなチャラ男1号を睨み付ける。
さて、やりますか!
「さあて、では早速楽しまs「そして~さ~くれ~つ空き缶SHOT!!」イッテエ!?」
よっしゃ!後頭部に見事命中!ヤッタネ!
「オイコラ!何しやがるんだこのクソガキ!!」
……………さあて、コイツ等を潰して、女の子を助け出すとしましょうかァ!