IS~宿命の砲火~『出来損ないと呼ばれしドイツの帝王』(更新停止中)   作:弐式水戦

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第六十話~今日は色々ある日だな~

さて、アリーナでのプチ騒動から逃げてきた俺は、アリーナの更衣室から寮への散歩を楽しんでいた。

もう夕方だからか、寮へと続く道にある池は、夕日に照らされ、赤く輝いている。

 

俺は寄り道がてらに、その池の柵に近づき、のんびりと、池を眺めていたのだが、突然、後ろから声を掛けられた。

 

「あ、あの………………」

「ん?」

 

首だけ後ろに向けると、其所には一人の女子生徒が立っていた。胸のリボンの色から察するに、どうやら2年生、先輩のようだ。

 

「ど、どうも………………」

 

先輩は、何故か顔を赤くしながら挨拶してきた。

 

「こんにちは、先輩」

 

挨拶をされたら挨拶を返す。それを基本としている俺は、一旦柵から離れ、体を先輩の方へ向ける。

すると、何故か先輩は、顔をさらに赤くする。はて、何かあったのかな?

 

「あ、その………………あのね?」

「はい、何ですか?」

 

先輩は、夕日に照らされて赤く見える顔をさらに真っ赤にして、恥ずかしそうな仕草をしながらも話を切り出そうとするが、中々言葉が出てこないらしく、俺を待たせてるのではないかと焦り始める。

それを見た俺は、なるべく怖がらせないように笑みを浮かべ、先輩に話し掛けた。

 

「先輩、落ち着いてください。別に俺は、少し待たされるぐらいで怒ったりはしませんから、焦ることはありませんよ」

「ッ!う、うん……………」

 

そうして先輩は、1つ深呼吸した後、意を決したかのように目を見開き、先程から持っていた、1枚の可愛らしい手紙を出してきた。

 

「こ、これ!読んでください!」

「ほえ?」

 

いきなりの事に、俺は間の抜けた声を出して呆然としてしまう。ご丁寧に両手で持ち、此方に差し出している手紙は、薄い桃色の手紙で、可愛らしいハート型のシールで封をされている。

俺は、顔を真っ赤にしながら手紙を差し出している先輩と、手紙を交互に見やる。

 

「えっと………………念のためにお訊ねしますが、それって俺宛の手紙ですか?」

 

そう訊ねると、先輩は相変わらず真っ赤な顔で、コクりと頷いた。

俺は手紙に顔を近づける。すると、夕日の光が少なからず反射されていたが故に見れなかったが、ハート型のシールの上に、中々に上手い字で『黄昏 狂夜君』と書かれているのが見える。

どうでも良いが、マジでこの人、字が上手いな。

 

まあ、内容はどうあれ、取り敢えず受け取っておこうと思い、俺は先輩が震える手で持っている手紙を受けとる。

それを見た先輩が、何故か咲いた花のような笑顔を見せたが、何故だ?

 

「そ、それじゃあね!黄昏君!」

 

そうして、先輩は寮の方へ向かって走っていってしまった。

暫く唖然とした後、先輩から受け取った手紙を、グチャグチャにならないように気をつけながら鞄に入れ、池の観賞を再開しようとしていると、急に後ろから足音が聞こえ、それから俺は、また声を掛けられた。

 

 

 

「あ、狂夜君!」

 

なんか久々に聞くような声に振り向くと、其所には山田先生が立っていた。

 

「こんにちは、山田先生」

 

そう挨拶すると、山田先生が近づいてくる。

 

「何していたんですか?」

 

そう聞いてくる山田先生に、俺は答える代わりに視線を池の方へと向ける。

 

「わあ~」

 

俺が視線を池の方へ向けたためか、同じように視線を池の方へと向けた山田先生の口から、感嘆の声が漏れ出す。

 

「暇だったからコレ見ていたんですよ。中々にロマンチックな光景だったんでね」

「そうなんですか~」

 

そう言って、山田先生と俺は、暫くの間池を眺めていた。いつの間にか、山田先生が俺に密着するギリギリ辺りまで近づいてきていたが、この際気にしないことにした。

眺め終えると、俺は寮に帰ることを伝え、寮に向かって歩き出したのだが、それは山田先生によって引き止められた。

 

「何ですか?」

 

そう訊ねると、山田先生は先程の先輩同様、恥ずかしがるような仕草をしながら言った。

 

「狂夜君は、この後の予定は空いているんですか?」

「?…………ええ、特に予定とかはありませんが………何かあるんですか?」

「い、いえ!その…………良かったら、私の部屋で何か話をしたいなあ~って、思ったんですけど……………どうですか?」

 

そう言って、山田先生は上目遣いで聞いてくる。話、ねえ~。正直、話す事なんて特に無いんだが……………まあ、上白沢先生みたいに、生徒思いであるこの先生のことだ。多分、数少ない男子生徒であるという状況の中で、上手くやっていけているかを心配してくれているのだろう。

そんな感じのご厚意なら、受けた方が良さそうだな。

 

「そうですね。では、お邪魔します」

「はい♪」

 

山田先生は嬉しそうに言うと、先に歩き出す。俺も後に続き、山田先生の部屋へと向かった。

 

 

 

 

 

「じゃあ、適当に座って、寛いでいてください」

「は、はあ……………」

部屋に着いた俺は、山田先生に言われるがままに部屋の中に案内され、今現在、俺は和室などでよくある、所謂卓袱台のようなテーブルの前に座っている。山田先生曰く、教員の部屋は大概こんな感じなんだそうだ。それにはある意味驚いた。俺達生徒の部屋は、テーブル+椅子って感じの家具だし、しかも、教員の場合、寝る時は布団なんだとか。

なんだろう、スゲー申し訳ないような気がしてきた。

 

よく分からない罪悪感みたいなのに締め付けられるような気分だが、此処はグッと堪えることにした。

 

 

 

 

 

それから、山田先生はお茶を淹れてきてくれて、そのまま二人での話し合いが始まった。

 

と言っても、俺には何を話せば良いのか分からなかったので、基本的には、山田先生が振ってきた話題について話すだけだった。そうして暫く話は続き、最後の話題が振られてきた。

 

 

 

 

 

「狂夜君、最後に聞きたいことがあるんですが、良いですか?」

「良いですよ」

 

おずおずと聞いてくる山田先生に、俺は微笑みながら返事を返す。

 

「実はコレ、ずっと前から聞こうと思っていたんです」

 

そう言って、山田先生は深く深呼吸した後、口を開いた。

 

 

 

 

「狂夜君、この学園に入学するように上白沢先生と説得しに行く前に、私と会ったことがありますよね?」

「……………はい?」

 

山田先生はいきなり、前に自分と会ったことがあるだろと言い出した。

え、山田先生が上白沢先生と、俺に学園に入学するように説得しに来た時よりさらに前?

会ったっけ?

 

「覚えていませんか?狂夜君は2月のある日の夜、男の人3人に絡まれていた私を助けてくれて、さらにはこの学園に送ってくれたんですよ?」

「………………あ!」

 

思い出した!確かに俺、何かチャラ男3人組に絡まれてた女の子助けたことがあった!

 

「ま、まさか先生が……………!?」

「そう。あの時狂夜君に助けられたのは他の誰でもありません、私なんです」

 

ウッソー((((;゜Д゜)))!?何てこった!通りであの時の女の子に中々会わないなと思ったら、そういうことだったのか!

 

「もしかして、今までずっと気づかなかったんですか?」

 

あの日の夜、チャラ男3人組に絡まれてた女の子が、まさかまさかの先生だったという事実に驚きまくっている俺を見た山田先生が、意地悪そうな笑みを浮かべながら聞いてくる。

その笑みには、『嘘つこうとしても無駄ですよ』とでも言いたそうな感じがした。

俺はすっかり参ってしまい、項垂れながら言った。

 

「はい、全く気づきませんでした」

 

そう言うと、山田先生はクスクスと笑った。

 

「やっぱり。私と上白沢先生とで会いに行った時も、狂夜君は私のこと、何にも覚えていないみたいでしたからね。もう諦めていましたよ」

 

でも、と付け加え、山田先生は嬉しそうな笑顔を浮かべて言った。

 

「思い出してくれたなら、良かった」

 

そう言って微笑む山田先生を見ながら、俺はお茶を啜った。

湯飲みを空にしてテーブルに置くと、山田先生は時計を見て言った。

 

「あ、もうこんな時間………………じゃあ、食堂に行きましょうか」

 

そう言われ、俺も時計を確認する。時計の針は7時を指していた。つか、いつの間にそんな時間が流れたんだろうな?

なんて思いながら、俺は山田先生に立ち上がった山田先生について歩き、食堂へと向かった。

 

 

 

それから俺は、ある意味転生してから物凄いピンチを迎えることになるのだが、その時の俺には、知る由もなかった。

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