IS~宿命の砲火~『出来損ないと呼ばれしドイツの帝王』(更新停止中) 作:弐式水戦
「あ~、ダルい」
事情聴取を終え、寮に戻ってきた俺は、入学してから今日の今まで何度も世話になった、食堂近くの休憩スペースでグダグダしていた。
あの事情聴取で、オルコットと織斑弟は、体に負った怪我やISの損傷具合が酷かったらしく、今回のトーナメントには出ないんだそうだ。
「にしても、なんであんな喧嘩が起きたんかねえ?」
「その質問に答えてあげましょうか?」
不意に声が聞こえ、そちらを向く。すると其所には……………
「よお、鈴じゃねえか」
最近会ってなかった鈴が居た。鈴は俺の真ん前に立ち、見下ろして言った。
「アンタって、こうして見るとオッサンみたいな座り方してるわよね。何か意外だわ」
「そうか?普段はこんな感じだぜ?」
「ヘぇ~」
そう言って、鈴は隣に腰掛ける。俺はそれを横目で見ながら、話を戻した。
「んで?お前は知ってんのか?あの喧嘩の経緯を」
「ええ、知ってるわよ。聞きたい?」
是非、と答え、俺は鈴の話に耳を傾けた。
「あれは、あたしがアリーナに特訓しに行った時の事なんだけど……………
~少女説明中~
……………という訳なのよ」
話の内容はこうだ。
アリーナに特訓しに行った鈴は、其所で偶然、織斑弟とオルコットと会い、2人の模擬戦の審判をすることになったのだが、いざ試合を始めようとした時、ボーデヴィッヒが乱入してきたんだそうだ。それも、模擬戦開始直後に砲弾をぶち込む等という新手の挨拶で。
それに腹を立てた織斑弟とオルコットは抗議したが、当のボーデヴィッヒは聞き流し、逆に2人を挑発し始める始末。ついでとばかりに鈴の事も挑発してきたのが、適当に聞き流してきたんだそうだ。
一応3人には、『面倒事にしたくなけりゃ止めとけ』と言ったらしいが、相変わらず挑発の口を閉じないボーデヴィッヒに、遂に2人はぶちギレ、売られた喧嘩をものの見事に買ってしまったんだそうだ。んで、2vs1でやられてた、と………………
「単なるポカ話じゃんよソレ」
「まあ、あたしも自分で言っといてなんだけど………………本気で同感だわソレ」
「「はあ~あ」」
その日、俺と鈴が揃って気だるげに溜め息をついている様子が、「あややや」が口癖なパパラッチによって撮影されたらしいが、俺と鈴には、そんな事など知る由もなかった。
時間は流れ、今は午後8時。あれからペパロニとアンチョビが合流し、4人で夕飯を食べ、解散した後、俺は寮の部屋には戻らず、ある所に瞬間移動でやって来ていた。
「さて、彼奴は…………………お、居た居た」
俺の視線の先に、真っ黒のIS、《シュヴァルツェア・レーゲン》の前で何やら唸っているボーデヴィッヒの姿が映った。
俺が今、何処に来ているのかの察しはついたか?
そう、今俺は、整備室に来ている。
さて、行動開始だ。
「よお」
「ッ!?」
そう声を掛けると、ボーデヴィッヒは物凄い勢いで顔を此方に向けた。
「な、なんだ貴様か…………驚かすな」
「悪い悪い、そんなまでに反応されるとは思わなくてな」
咎めるような視線を送ってくるボーデヴィッヒに適当な謝り方で謝罪し、俺はシュヴァルツェア・レーゲンの前に立つ。
「……………それで、貴様は何をしに来た?」
「ん?いや、修理手伝いに来た」
「……………は?」
俺が答えると、ボーデヴィッヒは間の抜けた声を出した。
まあ、ISの武器壊した本人が修理手伝いに来たってなりゃ、誰だってそんな反応するわな。
「貴様、何の冗談を」
「いやいや、冗談じゃねえよ。本気だぜ?ホラホラ、ンな所でボサッと突っ立ってないで、さっさと直すぞ」
「あ、ああ……………」
そうして、俺とボーデヴィッヒは、シュヴァルツェア・レーゲンの修理を始めた。ボーデヴィッヒが最初に悩んでた工程などは俺が代わりにやった。
やっぱ、機械弄りが好きなのは前世譲りだな。それと転生特典が加われば、最早最強じゃねえかよ。
つくづくチート化した俺自身に内心苦笑いを浮かべながら、俺はボーデヴィッヒに彼是と指示を出した。
はたまた、俺が直接手を入れたりした。
そうすること1時間、正にあっという間に、ボーデヴィッヒの専用機の修理は終わった。
「じゃあなボーデヴィッヒ、武装潰して悪かった」
「あ、おい!」
俺はそれだけ言って、瞬間移動で部屋に転移した。
「よお兄貴、お邪魔してるぜ!」
「おかえり、狂夜」
部屋に戻ると、ペパロニとアンチョビが寛いでいた。鍵は閉めた筈なんだが…………
「おかえりなさい、マスター」
等と思うのも束の間、桜花が現れた。それから直ぐ、氷華や葛城が現れる。コイツ等、勝手に出てやがったな?まあ、別に良いんだけどさ。
「ああ、いらっしゃいペパロニ、アンチョビ」
そうして、我等いつメンの集まりが始まった。それから10時まで話し、それからペパロニとアンチョビが瞬間移動で部屋に帰るという予定だったのだが、その予定は、思いもよらぬ来客によって変更されることとなる。
-----コンコンッ
「お?」
集まりを始めて20分ぐらいした辺りで、突然ドアがノックされた。出ようとするペパロニを止め、代わりにドアを開ける。
「はいはーい、どちら様で……………なんだ、お前か」
ドアを開けた俺の目の前に居たのは、なんと織斑兄だった。
「何か用かよ?悪いが今取り込み中なんだがな」
俺がそう言うのも構わず、織斑兄は話を切り出した。
「春馬兄、話があるんだ」
「だから、俺は織斑春馬じゃねえって随分前に言っただろうが……………まあ良い。んで?話ってのは?」
「ああ、シャルルの事なんだ」
織斑兄が持ち出してきたのは、意外にもシャルル・デュノアの事だった。否、『意外にも』という言葉を使うには語弊があるかな。
「デュノアの話か…………まさかとは思うが、シャルル・デュノアは実は男じゃなかったみたいな事を言い出すつもりじゃないだろうな?」
「ッ!?な、なんで分かったんだ?」
あ、どうやらその通りらしい。
「まあ、勘かな」
俺がそう言うと、織斑兄は少し唖然とした後、ハッと我に返って言った。
「ああ、その通りだよ」
「フーン…………んで、シャルル・デュノアは実は男じゃなかったから、これからどうすりゃ良いのか考えるから俺にも来いってか?」
「ああ」
どうやら、コイツはどうしても、俺を面倒事に巻き込みたいらしい。
俺は内心溜め息をつきながら、言葉を切り出した。
「断る」
「ッ!?」
平仮名4文字だけの短さだが、拒絶するにはそれなりに高い威力を秘めた単語が、織斑兄にグサリと突き刺さった。
「な、なんでだよ!?」
「大声出すな、喧しい。お前には時間を気にすることすら出来ねえのか?」
そう言って、織斑兄が静かになったのを見てから、俺は再び口を開いた。
「先ず、俺とデュノアは単なる同じ学年程度の関係でしかない。クラスメートだったら未だしも、肝心のクラスが違う。それに、彼奴とは大した接点がない。まあ、俺と彼奴の関係は、所謂赤の他人だ。知らん人間の身の上話をされても困る」
そう言うと、織斑兄は黙ってしまった。だが、退くつもりはないらしい。
俺は溜め息をつきながら、部屋に居るペパロニ達を見やる。
俺の視線に気づいたのか、ペパロニとアンチョビは親指を立てた。
それを見た桜花や氷華、葛城も、力強く頷いている。どうやら行ってこいと言っているようだ。それに、ペパロニは桜花と氷華、葛城と顔を見合わせ、再び此方を見る。
そのニヤついた視線は、『良い作戦があるから任せとけ』とでも言いたげな視線だった。
俺は心の中で礼を言って、頼んだと親指を立てる。そして、織斑兄へと向き直った。
「分かった、行ってやるよ」
そう言うと、織斑兄は何も言わずに歩き出した。俺もその後に続き、ペパロニ達に行ってくると合図を送る。そして、織斑兄に続いて、俺も歩き出した。
「此処だ」
織斑兄の部屋に着くと、織斑兄は部屋のドアを開け、俺に入るように促す。それに従って中に入ると、ジャージ姿で、胸に女子特有の膨らみを見せ、ベッドに腰掛けているデュノアの姿があった。
「(ヤレヤレ、またまた面倒な事になってきましたねぇ………………)」
そんな気持ちを込めて出した、俺が溜め息をつく声は、薄暗いこの部屋に静かに木霊した。