IS~宿命の砲火~『出来損ないと呼ばれしドイツの帝王』(更新停止中) 作:弐式水戦
さて、織斑兄に連れられて、織斑兄の部屋へとやって来た俺は、2つの別途のうちの手前側に腰掛け、俺と向かい合う形で、織斑兄とデュノアが腰掛ける。
部屋は、俺が入った時から何ら変わりなく、暗いままだ。精々、ランタンのように光っているテーブルのランプでマシになっている、とでも言った感じかな。
表現力の低い俺をどうかお許しいただきたい。
「ん?おい、弟さんはどうしたよ?」
「秋彦は保健室だよ。今日1日は保健室で絶対安静だってさ」
「あっそ、気の毒なこった……………んで、シャルル・デュノアについて話があるんだろ?ならさっさと始めようぜ」
「あ、ああ………………そうだな」
俺がどうでも良さそうに言ったのが気に入らなかったのか、一瞬表情をヒクつかせた織斑兄だが、それを何とか抑え、話を始めた。
「まあ、分かってるとは思うが………………シャルルは女の子なんだ」
「ああ、知ってる」
おずおずと口を開いた織斑兄に、俺は淡々と返事を返す。
「お、驚かないんだね」
平然としている俺の様子に、引き気味な笑みを浮かべながら、デュノアが言う。
「いや、これでもかなり驚いてるさ。最初から薄々勘づいていたんだがな…………んで、なんでまた、あんな真似を?」
そう聞くと、デュノアは言いにくそうにしながら言った。
「実家から……………否、正確に言えば、父親からの命令……………って感じかな。僕の父は、デュノア者の社長でね」
「ほ~う……………だけどさあ、どうやって編入したんだ?男装したって、何れはバレて入学前から人生終了ルートまっしぐらだろうに…………」
「さあ、どうなんだろうね。僕自身、あまりその辺りに関する詳しい情報は知らされていないんだ」
「成る程ね」
「なあ、そんな事はこの際良いだろ?大事なのはこれからの事なんだ」
いや、何言ってんだよと言いたくなる気持ちを何とか抑え、織斑兄の話を聞く態勢に入る。
片方は何も知らない、もう片方は何も考えない。何時か破滅するコンビだな。
等と考えていると、デュノアが話を始めた。
「僕はね、父の本妻の娘じゃないんだ」
「じゃあ、愛人の娘か?」
そう訊ねると、デュノアは首を縦に振った。
「僕の母は既に他界しているんだ。それから父の部下がやって来て、デュノア社に連れていかれたんだ。適性検査を受けるためにね。それで、僕の適正値がかなり高かったんだ。Aランクだったんだよ。大体で言えば、代表候補辺りにはなれるぐらいのね。だから僕は、非公式ながら、テストパイロットをすることになったんだ。デュノア社でね」
部下、ねぇ……………せめて迎えぐらいしてやりゃ良かろうに…………
「父親とは話さず終いか?」
「ううん、一応は話したよ。だけど、それはたったの2回だけ。話した時間も、両方足しても1時間にも満たないよ」
短っ!
「まあ、普段は別荘に住んでいるんだけど、その本妻の人には会った瞬間…………殴られたよ」「は?」
いきなりの言葉に、俺は唖然とした。どうでも良いやと半ば高を括っていたが、まさか、こんな予想外の単語と出会すとはな。
「『この泥棒娘が!』ってね。参っちゃったよ」
そう苦笑いしながら言うデュノアに、織斑兄は痛々しげな視線を送っている。
それからと付け加え、デュノアは言葉を続けた。
「デュノア社は経済不振に陥ったんだよ」
それからデュノアは、その簡単な理由を説明し始めた。
曰くフランスは、欧州連合の統合防衛連盟こと、《イグニッション・プラン》とやらから除名されているのもあり、ISの開発が他国より遅れているんだそうだ。
デュノア社は、ラファール・リヴァイヴで世界第3位のシェアを誇るが、所詮ラファール・リヴァイヴは第2世代型。
そのため、第3世代型を新たに開発するのは、あまりにも急務過ぎたんだとさ。
そして、次のトライアルとやらでフランスが選ばれなければ、政府からの支援は全面的にカットされ、単なる武装やシステムの開発会社レベルに成り下がるんだとさ。
「だが、そんな状況に置かれた中で、俺達男性適合者が現れた、って訳だな」
「よく分かったね、その通りだよ」
そう言ってデュノアは、カバンから一台のパソコンを取り出して言った。
「君達男性適合者の流れに乗って来たんだよ。広告塔にもなるしね」
それにと付け加え、デュノアは言葉を続けた。
「男装する事で男性適合者達と接触し、稼働データを盗む事。それからあわよくば、君から八雲重工の情報を聞き出す事。これが、僕に命じられた事なんだ」
成る程な。未だに解析されていない織斑ツインズの専用機なら、ちょっと内容パクるだけで新型機完成だもんな。
「まあ、今一番注目されているのが、黄昏君なんだけどね。君の専用機、確かゴールドウィングって呼んだよね?あれのデータが狙いでもあったらしいよ。まあ、君が学園に出していた入学条件とやらで、僕と君を相部屋にするという目論みは外れたみたいだけどね」
まあ、織斑ツインズの専用機同様、俺のゴールドウィングは無所属だ。パクって勝手にデータ盗んでしまえば、それこそチート機体の出来上がりだけどな。
それに八雲重工の事だって、俺が美鈴や早苗と話していたら、それなりに情報は入るだろうしな。
「今まで黙ってて、ゴメンね」
そう言って、デュノアは頭を下げる。
「いや、構わんさ。それよか、他に大事な事があるんじゃねーのか?お前の未来とか」
俺がそう言うと、織斑兄が少し怒り気味の表情で睨んできた。
「なあ、春馬兄、シャルルに言うのはそれだけか?」
「あ?」
だから春馬兄とか言うなっつーに…………
「今の話を聞いて、何も思わなかったのかよ?」
あー成る程、詰まる所、『シャルルはこんなにも辛い生活してきたのに、何も掛けてやる言葉が無いのかよ』と言いたいんだなコイツ。
「だからさあ、織斑一夏君よぉ~、お前が俺の部屋に来た時、俺は言った筈だよな?『知らん人間の身の上話をされても困る』って」
「そ、それは………………」
そのまま口を閉ざした織斑兄を見据えながら、俺は言葉を続けた。
「まあ、大変だったなぐらいなら言えるだろうが、後は何も言い様がねえよ……………んで?これからどうすんだ?そのままお国にポイって捨てるか?」
「そんな事する訳ないだろ!ちゃんと考えているんだ!」
そう言って織斑兄は、生徒手帳を読み上げた。
「『特記事項第21、本学園における生徒は、その在学中においてあらゆる国家、組織、団体に帰属しない。本人の同意がない場合、それらの外的介入は原則として許可されないものとする』。コレを使うんだ」
「ほ~う………つまり、この学園に居れば少なくとも3年間は安全だから、その間にどうするかを考えるって寸法か」
「そういう事だ。そこで、春馬兄にも協力してもら「断る」な、なんでだよ!?」
ハアー、コイツは知らねえんだな。
自分のやってる事が犯罪で、しかも俺を共犯者にしようとしてるって事を。
「織斑兄、お前はまだ学習しねえのか?男装、スパイ、犯罪、この3つで直ぐに分かるだろうが」
「だ、だけど……………!」
俺が拒否の姿勢を取り、織斑兄が何とか協力させようと言葉を捻り出そうとすると、突然、その出来事は訪れた。
『『『聞いたで~~~~!!!!!』』』
「「ッ!?」」
「おーッス」
ペパロニやアンチョビ、桜花と氷華、そして葛城が、瞬間移動で部屋に現れたのだ。
成る程、あの時コイツ等がニヤニヤしながら俺の方を見たのも、織斑兄を無理に追い返そうとしなかったのも、コレを狙っていたからか。流石にそこまでには頭が回らなかったぜ。
「桜花と待機形態のヘッドフォンを介して会話聞いてみたら……………なァにウチの兄貴を犯罪の道に進ませようとしてやがんだよ、ああ?」
「お前は、あのバカ男と暴力女、そして横暴教師よりかはマシかと思っていたのだが、それは間違いだったようだな………ガッカリしたよ」
「「「マスター(主)(狂夜)を、貴殿方((アンタ等))の都合に巻き込むなんて…………死にたいの(死にたいのですか)?」」」
さあ、なんかスゲー事になってまいりましたよ~!