IS~宿命の砲火~『出来損ないと呼ばれしドイツの帝王』(更新停止中)   作:弐式水戦

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第六十五話~各々の思惑と、動き出す者~

あ、ありのままに今起こったことを話すぜ!

織斑兄が考えた、デュノアを学園に留まらせるための作戦への協力が犯罪的な作戦だったのでそれを拒否っていたら、いきなり我がいつメンのメンバーが瞬間移動で現れたのだ!

な、何言ってんのか分からねえと思うが、俺自身もサッパリ分からねえぜ!

 

……………なぁーんて茶番は置いといて、

 

さてさて、突如として現れた我がいつメンのメンバーに、織斑兄とデュノアは絶句していた。

まあ、無理もない。瞬間移動で人が現れるなんて、アニメぐらいでしかなかったからな。それを実際に出来る人間が居たら、大概の連中は織斑兄やデュノアのような反応をするだろうよ。

 

「え?何なに?何が起きたの?」

 

デュノアは場の状況が飲み込みきれないようで、あたふたしながら俺とペパロニ達を交互に見る。

対して織斑兄は、何も言わずに俺の方を見ていた。心なしか、その目は俺を睨んでいるように見えた。

そんな雰囲気の中でいること5分、漸く織斑兄が口を開いた。

 

「………………どういう事だ」

「あ?」

 

怒気を含んで放たれた言葉に首を傾げると、織斑兄は俺の胸倉を掴んで揺さぶりながら言った。

 

「だから、これはどういう事なんだ!お前、まさかコイツ等に今までの話全部聞かせていたんじゃないだろうな!?」

 

そう言って織斑兄は、ペパロニ達を指差して言った。

そういやどうでも良い事だが、この寮の部屋って防音設備付きなんだな。織斑兄の怒鳴り声に誰も苦情言いに来ないし。つーか指差すなよ指、失礼だろうが。

 

「何だよ、何か問題あったか?」

「ありまくりで何から言えば良いのか分からんわ!つーか、盗み聞きさせるなんて汚い事しやがって!」

 

そう織斑兄が俺を怒鳴り付けると、呆れ顔のアンチョビが口を挟んだ。

 

「汚い?それはお前の口で言えた事か?クラス対抗戦で、桜花達を勝手にテロリストに仕立て上げて暴力を振るおうとした連中に加担し、さらにはISも持っていない、丸腰のナイジョノフさんにISで襲い掛かろうとするお前が」

「うぐぐ………………」

 

アンチョビの一言が、織斑兄の心にグサリと突き刺さった。正論すぎて反論出来ないのか、織斑兄は恨めしそうにアンチョビを睨む。

それを一瞥したアンチョビは腕を組み、どこ吹く風と言わんばかりに鼻を鳴らした。

 

そして、次はペパロニが口を開いた。

 

「んで?なんでまた、こんな真似しやがったんだ?シャルル・デュノアちゃんよ?」

「おい!盗み聞きしてたなら、それぐらい分かるだろ!」

 

織斑兄が怒鳴るが、ペパロニがそれを一睨みして黙らせた。

 

「ならば質問を変えるぜ。何故、データパクるなんて犯罪染みた事を拒否しねえんだ?内部告発しちまえば、黙っとくより罰は軽いかもしれねえし、学園側も配慮してくれたかもしれねえぜ?」

「そ、それは……………」

 

何を言えば良いのかが分からないのか、デュノアは中々口を開かなかった。

否、話そうとはしていた。だが、それを一向に話そうとしなかったのだ。

流石に待たされることに限界を感じたのか、ペパロニは『もう良い』とだけ言って、座っている桜花達の傍に胡座をかいて座った。

 

そうしていることさらに15分、織斑兄が漸く口を開いた。

 

「まあ、もうこの際盗み聞き云々は置いておこう。だけど、5人も春馬兄同様、シャルルの話を聞いたんだ。悪いけど、お前達にも、俺の案に協力してもらう」

「勝手ばかり言わないでください」

 

織斑兄が言った事に、桜花が反駁した。

 

「先程から黙って聞いていたら、私達を散々な目に遭わせ、それを『誤解だったから仕方ない』の一言で正当化した身の上で、私達を無理矢理協力させるなど……………姉に似て、随分と横暴なんですね」

「それに、さっきから主を春馬兄って呼んでるけど、彼は織斑春馬じゃない、黄昏狂夜なのよ?簡単に人の名前を間違えといて協力しろだなんて、図々しいわ」

「織斑春馬って子は死んだんでしょ?第2回モンド・グロッソで、あの横暴暴力教師に捨てられて」

「そ、それは……………」

 

桜花達の正論攻めに、織斑兄は圧倒されていた。そして極めつけに、桜花がこんな一言を放った。

 

「貴殿方織斑家で、織斑春馬殿の死を悲しんだ者は一人も居ないんでしょう?これが証拠ですから逃げられませんよ?」

 

桜花はそう言って、俺の元に近づいてくる。

 

「マスター、少し失礼致します」

 

そう言って桜花は、俺のヘッドフォンに手を触れ、織斑兄、デュノアと、我がいつメンのメンバーとの間にホログラフィー映像を映し出した。

 

「これは?」

 

そう訊ねるペパロニに、桜花は振り向いて言った。

 

「これは、ある日の夜、マスターとツーリングに出掛けた際、偶然通り掛かった織斑家から聞こえたものです。その次に、篠ノ之家です」

 

暫く映像を見ていると、映し出された織斑家から楽しそうな笑い声が聞こえてきていた。続いて映し出された篠ノ之家でも、織斑春馬の死について触れられたものは無い。

 

「どうです?こんな事をしておいて、まだ春馬兄等と喚くおつもりですか?マスターは黄昏狂夜様なのに」

 

可愛らしい顔から放たれる絶対零度の視線に、織斑兄は凍りついたかのように動かなくなった。

それを一瞥し、桜花は視線で、『帰りましょう』と伝えてくる。

俺は立ち上がり、ペパロニの隣に立つ。

 

そして、瞬間移動で帰ろうとすると、氷華が少し待つように言って、デュノアへと近づいて言った。

 

「シャルル・デュノア、これを言っちゃ悪いけど、貴女に私達のデータを盗み見るのは無理よ」

「ど、どういう意味なの?」

 

そう聞いてくるデュノアに、氷華は答えた。

 

「私と桜花でセキリュティーを強くしていてね、主か、主が認めた者以外がデータを見るには、億単位のパスワードを何度も入力しなければならないの。そして、それを1回でもミスったら……………貴女の人生はそこでおしまいよ。なんせ、パスワードを間違えたり、無理矢理にでもデータを見ようとしたら、雷レベルの電流が流れるようにしてあるもの。貴女達なら一瞬で黒焦げね」

「なっ!?」

 

氷華が何の戸惑いもなく放った『死』に関する言葉。それは、多分織斑兄にも響いただろうな。今後、無理矢理ゴールドウィングを押収しようとしたら、自分達は殺されるという事を遠回しに言われたようなモンだからな。現に、今は2人共絶句してるし。

 

「じゃあ兄貴、アタシ等は先に帰るぜ」

 

そう言って、ペパロニとアンチョビは先に帰っていった。俺は桜花達を一旦待機形態に戻し、デュノアの方を向いて言った。

 

「まあ、そういう事だ。学園に留まるかは好きにしろよ。ただ、デュノア社の社長が何か喚き散らすならこう言っとけ、『そんなにデータが欲しいなら、何時死んでも良いって奴を送り込んでこい』ってな!」

 

俺はそう言って、瞬間移動でとある人の部屋に行ってその事について相談し、それからちょっとした話し合いの後、瞬間移動で部屋に帰り、眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時を同じくして、此処は政府が所有する、とある建物の会議室。その部屋では、何人もの黒いスーツ姿の男達が座っていた。

その最前に、1人の男が立ち、ホワイトボードに2枚の写真を貼る。

その写真のうちの1枚には、獣耳のような、変わったヘアスタイルをした黒髪を持ち、ヘッドフォンを着けた男と、その男とよく似たヘアスタイルをした銀髪に、ナイフのような鋭さを持つ目をした、1枚目の写真に写る男より、長身であると推測出来る男が写されていた。

 

 

 

「黄昏狂夜とイワン・ナイジョノフの捕縛はどうなっている?」

「はい。黄昏狂夜については、彼が常に学園に居るので手出し出来ません。さらにイワン・ナイジョノフは、そもそもそんな人間の戸籍自体が存在していません。ただ、名前と、黄昏狂夜の親友であるという事しか分からない状態です」

「そうか……………ならば、黄昏狂夜の専用機ならばどうだ?」

「それについても、黄昏狂夜が常に待機形態を身に付けているため、黄昏狂夜本人同様、不用意に手出し出来ない状態です」

 

等と、彼等の口からは、黄昏狂夜やその専用機、イワン・ナイジョノフの捕縛についての話になっている。

 

彼等が2人と、その片割れの専用機を狙う理由は簡単、2人の戦闘能力と、片割れの専用機のデータに目をつけているからだ。

 

クラス対抗戦における、無人機襲撃事件。その際、黄昏狂夜はISを展開することなく、アリーナの観客席と外とを繋ぐゲートを、拳による殴打2回で破壊、さらに、ISを纏わないまま、突如として現れたイワン・ナイジョノフと共闘し、無人機全てを生身で撃破。さらに、その際に負傷した生徒の応急措置をしていた上白沢慧音達を無人機3機さらの集中砲火から見事に守り、さらに本人には傷1つ付いていないという異例。

 

イワン・ナイジョノフについては、黄昏狂夜とほぼ同じくして、無人機3機を生身で撃破、さらに黄昏狂夜同様、腕や足を使うことなく無人機を消し飛ばした。

それだけでも、インパクトはあまりにも強すぎる。

 

最後に黄昏狂夜の専用機については、そもそも《ゴールドウィング》というISのコアが未登録で、さらにはそのコア人格、支援型AIが人間の姿で外を出歩くという前代未聞さ。

また、そのコア人格、桜花の決定により、ゴールドウィングの所有権は全て、黄昏狂夜に一任されている。そのため、各国の政府や研究所は、口では寄越すように言えても、実際に行動に移すにはかなりの勇気が要るのだ。

 

「IS学園の今後の行事を確認、黄昏狂夜やイワン・ナイジョノフが共に動いているタイミングを見計らい、捕縛するぞ。先ず手始めに、近いうちに行われる、学年別個人トーナメント都やらを狙うぞ」

 

 

そうして、彼等の会議は夜通し続いた。

 

 

 

 

 

………………それは、彼等自身を、自分で滅ぼす事………………つまり、自ら死にに行くのと同じような事だとは知らず。

 

 

無知な彼等は、彼等が考え付いた、愚か且つ軽率な考えにより、自分達に降り注ぐ悪夢の事等、気にする者は誰も居なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時と場所を移し、この世のものとは思えないような真っ白な空間に、2人の男と、1人の女性が座っていた。

その3人のうちの2人は、男が持っている水晶玉を興味深そうに覗き込んでいる。

 

『どうかな?-----のご両親?』

「ああ、----も、それなりには成長したんだな」

「あの時、貴方や---君との喧嘩に明け暮れていた頃とは大違いね」

「そうだな…………」

 

その男は、狂夜同様に獣耳の如く跳ね上がった髪を揺らしながら立ち上がり、ポケットから1発の銃弾を取り出してタバコのように燻らせ、狂夜と瓜二つの容姿を持ちながら、ナイフのように鋭い目で真っ白な上を見上げながら言った。

 

「だが、この調子じゃあ直ぐに、成長は止まっちまう…………ヤレヤレ、《ドイツの帝王》と呼ばれたコイツも、まだまだガキだな」

「どうするの?」

 

人懐こそうな顔つきで、町中を歩けば10人中間違いなく8人以上には見られるような可愛らしい顔と、大人の女性を思わせる豊満な体を一旦屈ませ、それから立ち上がった女性が、男に聞く。

話を振られた男は、もう1人の男の方を見て言った。

 

「まあ、たまには父親が手助けするってのも悪くねえな。ちょうど、彼奴が転生したって言う世界にも遊びに行きてえし…………」

 

その視線を感じ取った男--神--は、軽く微笑んで言った。

 

『良いよ。時が来たらやってあげるから、暫くは2人でイチャついてなよ』

 

そう言って、神は別の空間へと転移した。

 

 

 

 

『さてさて、君の物語にも思わぬ出来事がやって来たよ。まあ、その辺りも上手くやっていけるよね?

 

 

 

…………………黄昏狂夜君、否、フェルディナンド・ポルシェ君』

 

そう呟く神の顔は、笑みを浮かべていた。

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