IS~宿命の砲火~『出来損ないと呼ばれしドイツの帝王』(更新停止中) 作:弐式水戦
さてさて、遂に迎えたトーナメント当日。アリーナの観客席は、生徒や各国のお偉いさん方で埋め尽くされている。
一応、今日の試合に出る俺やペパロニ含む生徒は、今日のトーナメントで誰と当たるのかを知らせるモニターに対戦相手が映し出されるのを、今か今かと待っていた。
「いや~、楽しみだなあ。この日のためにかなりイメトレしたからな」
壁に凭れ掛かり、頭の後ろで手を組むペパロニが、呑気に言った。
俺達は、トーナメントの申請をした後、ISの軌道等をどうするかについての作戦会議をしていた。
取り敢えずやり方は、連携を取ったり、各自バラバラに動いたりして相手を翻弄し、疲れたところを狙って銃火器や拳をぶち込むという、かなり荒っぽい作戦になった。
流石にそれを一般生徒にやるのは気が引けるので、専用機持ちが相手になったらやるということにした。
そうして待つこと30分、漸く対戦相手が決まったようで、モニターに俺達の対戦相手が映し出された。
《第1回戦 黄昏 狂夜&黒澤 希望(くろさわ のぞみ)vs織斑 一夏&シャルル・デュノア》
「ほお~う……………初戦は奴等か」
「いきなり作戦実行の試合が来ちまったぜ?兄貴」
「だな。まあ、後は頑張るしか言いようがねえや……………ところでペパロニ」
「ん?」
ペパロニが此方を向くと、俺は今更な台詞を口にした。
「お前の名前って、希望(のぞみ)って言うんだな」
「ま、まあな~………」
ペパロニは、顔を少し赤くしながら頬を掻く。名前で呼ばれるのに慣れてないのか?そういや、アンチョビでさえコイツを名前で呼んでないしな。
にしても希望ってのか~、知らなかったなあ~。
え?入学式あった日の自己紹介聞いてなかったのかって?しゃーねえじゃん、色々あったんだし。
まあ、そんな事は置いといて…………
「じゃあ希望、さっさとアリーナに行こうぜ」
「兄貴~、ペパロニって呼んでくれよォ~」
俺は軽くペパロニをイジりながら、アリーナに向かった。
「まさか、あーなるとは思わなかったな」
「だな。アタシはてっきり、あの銀髪ちゃんと当たるかと思ったぜ」
ピットにて、俺とペパロニはそんな事を話していた。
ペパロニは専用機を持ってないので、既にラファール・リヴァイヴを展開している。
アリーナに出るまでには時間があるので、今はリラックス&作戦の確認タイムだ。
「んじゃあ、さっき言った作戦でのやり方で」
「おう!」
俺とペパロニは話し合いを終え、カタパルトに近づいた。
「そういや兄貴、試合ではどれ使うんだ?」
「ああ、打鉄だ。最近使ってなかったから、たまには良いだろう」
「ま、確かにそうだな」
そう言い合いながら、俺は打鉄を展開する。
その姿は、外付けの装備により、若干変わっていた。
主武装は近接ブレードの『葵』とライフルの『焔備』、それから残った拡張領域にはサブマシンガンを追加。
それから、胸元のホルスターに2丁拳銃、それを足にも追加し、背中に青竜刀を付けるという完全武装だ。
「にしてもズルいぞ、兄貴は打鉄改造して、アタシはやってないんだからな?」
「まあ、専用機に整備室の武装取り付けちゃダメなんてルールは無いんだから良いじゃん」
俺はそう言って、出撃の用意をする。それを見たペパロニも、出撃の用意をする。
《それでは、各自アリーナに出て、指定の位置についてください》
そうアナウンスが入り、俺とペパロニは互いに頷き合う。そして、勢い良くアリーナに飛び出した。
アリーナに出ると、其所には既に、織斑兄とデュノアが待機していた。
「よお、待たせて悪かったな」
俺がそう言うと、織斑兄は何故か、表情をしかめた。あれ?何か失礼なこと言ったか?
「春馬兄、それは俺達をナメてるのか?」
「はあ?何言ってんだお前?」
俺はそう言って、首を傾げる。横に居るペパロニを見ると、ペパロニもまた、俺と同じく首を傾げている。
つか、何をどうやったらそんな反応出来るんだよ?
「春馬兄、なんで訓練機なんて使うんだよ?ゴールドウィングとか言うのを使えば良かったのに」
成る程、まあ詰まる所、『俺達の専用機を上回るスペックを持つISがあるのになんで凡庸機なんて使うんだよ?』って言いてえのか………………これ、葛城に聞かれてたら殺されるぞ。
そういや、俺今回3人を出してなかったんだよなあ、聞かれてなかったら良いんだが…………
『既に聞こえてるわよ』
あ~りゃまあ、どうやら望む前に望みを絶たれてしまったようだ。
『あのガキ、金髪の小娘みたいな事を言うなんて………これだから専用機貰っただけで調子に乗ってる煩悩は嫌いなのよ』
「(まあまあ落ち着け。試合が全部終わったら何かしてやるからさ)」
『それが数少ない、私の楽しみだわ。なら今夜、私と寝てもらおうかしら』
「(はいはい、それで良いよ。じゃあな)」
そうして、葛城との会話を終えた俺は、織斑兄の方を向いて、溜め息をついてから言った。
「オルコットと同じ事を言いやがるんだな、お前は…………実に愚かだ」
「ッ!」
俺の言ったことが気に障ったのか、織斑兄はさらに顔をしかめ、俺を睨み付ける。
俺は織斑兄の視線に構わず、言葉を続ける。
「オルコットもな、お前と似た事を言って、俺に負けたんだよ。完膚なきまでにな」
「…………」
「専用機が訓練機に負ける筈がないとかバカ言って、結局は負ける。お前や織斑弟と戦った後だから、更正しているのを期待していたんだがなあ……………残念だったよ」
「………だから、セシリアの謝罪を拒んだのか?」
「ああ、まあそれもあるがな」
「ッ!なんでだよ!?春馬兄と戦った後、セシリアは完全に反省していたんだぞ!」
そう言われ、俺は溜め息をつき、空を見上げながら言った。
「…………提出物」
「?」
「提出物ってさあ、何れにしろ提出期限はあるだろ?そして、それを出し遅れたら、普通はどうなる?」
俺はそう言って、織斑兄を見る。答えが思い浮かばないのか、はたまた答えは分かったが言えないのか、織斑兄は黙っていた。
「そう、普通ならもう、提出物を見てくれないんだよ。その提出物が謝罪と、人を見下さない、代表候補生としてあるべき態度、これを求めていたんだよ。あの模擬戦の前にな。だが、オルコットはそれを達成出来なかった。そして俺のクラス代表就任パーティの後、彼奴は謝りに来た。遅れに遅れた提出物を持ってな」
そう言って、俺はまた溜め息をつき、今度は織斑兄の方を向いて言った。
「本当に残念だよ。お前も何だかんだ言って、そうやって他者を見下してるじゃねえか」
「ち、違う!俺は………」
「違う?何が違うんだよ?俺と言う人間を見下してる訳じゃないから、訓練機使ってる事に文句言っても良いとか思ってんのか?ならばどの道、お前も他者を見下してるって事には何ら変わりねえんだよ」
そしてと付け加え、俺は目を細めて織斑兄を睨んだ。
「何度も言うが、俺は黄昏狂夜だ。もし俺の姿が織斑春馬君に似ていたとしても、それはただの人違い、はたまた、ただのそっくりさんだ。間違えんな。それに……………死んでから今更騒ぎ立てるのか?お前は」
「ッ!」
俺がそう言うと、織斑兄は図星を突かれたように、先程の勢いを失う。
「まあ、そんな事はこの際どうでも良い。先ずは試合に勝たなきゃならんからな。それから、訓練機が専用機に負ける筈がないとか考えてるお前のアホ頭に、一発拳骨入れてやらなきゃならんしな」
俺はそう言って、背中に取り付けている青竜刀を右手に取り、バトンのように振り回した後に構える。
《では、試合開始!》
その瞬間、試合開始のアナウンスが流れた。
さあて、俺をモルモットにしようとしてやがるバカ共に、俺の暴れっぷりを見せてやるとしますかね。