IS~宿命の砲火~『出来損ないと呼ばれしドイツの帝王』(更新停止中) 作:弐式水戦
《試合開始!》
「うおおおおおおっ!」
試合開始直後、織斑兄が近接ブレード『雪片弐型』を振りかぶって突撃してくる。
「ヤレヤレ、近接型の機体で武装がそれしかないからって、ただ真っ直ぐ突撃すりゃ良いってモンじゃないって事を、なんで分からねえんだよ」
俺は、今日一日で何度目になるのか、数えるのすら面倒になった溜め息をつき、横向きに勢い良く飛び退く。
織斑兄はそれに気づき、直ぐ様Uターンして向かってくる。俺は上空に逃げ、ペパロニの状態をみる。
「オラオラどうしたぁ!?もっとアタシを楽しませろや!」
「ぐぅ!?」
…………うん、見なかったことにしよう。そう、ペパロニがマシンガン一挺でデュノア相手に圧倒してるトコなんて見なかったんや。
「余所見してる場合か!?」
そう大声で言いながら、織斑兄が迫ってくる。俺が振り向くタイミングが遅れた瞬間を狙い、雪片弐型を降り下ろす。
「もらった!!」
その瞬間、織斑兄は雪片弐型が俺に当たるのを確信したかのように言う。
だがそれは…………
「残念だったな」
「なっ!?」
俺が瞬時に前に出した青竜刀で阻まれた。
本来、青竜刀は『相手を斬る』ではなく、『相手を殴る』もの。つまり、俺のゴールドウィングの近接武装の1つ、戦斧『DEAD AXE』のようなモンだ。
ブレードを防ぐなんてやり方には出来るだけ使いたくなかったか、それもやむなしか。
「ホラよ、これでも喰らえ」
「がっ!?」
俺は、いきなり青竜刀を引っ込め、前のめりになった織斑兄の腹に蹴りを喰らわせる。
織斑兄はそのまま吹っ飛び、地面に叩きつけられる。
「さて、ペパロニは……………お、彼奴早速やる気だな」
俺が目を向けると、デュノアとの接近戦を演じつつ、ニヤリと表情を歪めているペパロニの姿が映った。
俺は青竜刀を背中にしまい、ライフル『焔備』を展開し、上空へ向かって撃ち、ペパロニに合図を送る。
ペパロニはチラリと此方を向くと、空いていた右手の親指を立てた。
「さあて、じゃあ早速見せてやるよ!」
そう言って、ペパロニは隙を突いてデュノアを蹴り飛ばし、デュノアの注意が反れた隙に瞬間移動で上空に転移した。
「さあ喰らえ!兄貴直伝『スパイラル・ダイブ』だ!!」
そう言って、ペパロニはバレルロールをしながら急降下し、右手に展開していたマシンガンに加え、左手に一挺追加して両手持ちとなり、そのまま急降下しながらデュノアに弾丸の雨を降らせる。
一通り降らせたペパロニは、途中で掃射を中止し、瞬間移動で地面に降り立つ。
ペパロニが見せた、恐らくかつての試合では前代未聞なのであろう摩訶不思議な挙動に、観客席の生徒や各国のお偉いさんがどよめく。
「流石だ、ペパロニ。良くやったぞ」
「ヘッヘッヘ!まあ、ざっとこんなモンよォ!」
俺は瞬間移動でペパロニの横に転移して言った。そして、デュノアに止めを差すように言おうとした時だった。
「これ以上シャルルをやらせねえ!!」
突然、織斑兄が突撃してきた。
「彼奴、どっから来やがった?」
俺はそう言いながら、後ろ向きに飛んで織斑の突撃を避ける。
それから、すぐ直線上にペパロニが居るのも構わず、織斑兄は俺を追ってくる。
そうしているうちに、俺達は追撃戦(ドッグファイト)へと洒落込んでいた。
「この!逃げてばっかかよ!」
先程から、バレルロールやブレイクをしながら距離を取り続け、中々攻撃が当たらないことにイラついのか、織斑兄はそう叫ぶ。
まあ、俺がやった攻撃と言えば、織斑兄の腹に蹴りを喰らわせて吹っ飛ばしたことぐらいしかないからな。それも含めてのイラつきなのだろうな………………仕方ねえや。
「そんなに攻撃してほしけりゃ、やってやるよ!」
俺はそう言って、一旦上体を下に向ける。それから勢い良く上へ向けて反らし、その瞬間にスラスターを思いっきり吹かす。
そうして、バック転をするかのような軌道を描きながら、俺は織斑兄の後ろに回り込んだ。
「白のデカウィング野郎が…………コイツでも喰らいやがれ、や!!」
俺は胸元のホルスターと足に備えていた2丁拳銃を出し、実質上4丁拳銃と言ったスタイルで構えると、俺に背中を向けたまま飛び続ける織斑兄目掛けて撃った。
立て続けに銃口から放たれる弾丸は、織斑兄の専用機、白式の様々な部位に被弾していく。
白式の特徴的な部分である、デカイ翼のような非固定浮遊部位(アンロックユニット)や、腕、背中の装甲に当たり、最終的には、スラスターに被弾した。
「ぐわっ!?」
それによってバランスを崩した織斑兄は、左足から黒い煙を吹き出しながら急降下し、アリーナの地面に叩きつけられた。
それを見た俺は、また瞬間移動を使って地上に転移する。
「おおスゲエ!アタシに色々と空中軌道(マニューバ)叩き込んでくれただけの事はあるなあ、流石は兄貴だぜ!」
「はいはい、ありがとよ」
興奮気味に言うペパロニに、俺は適当に礼を言って、織斑兄に近づいた。
「コレで分かったろ?いくら訓練機でも、その気になりゃ専用機持ちを潰すことなんざ容易いモンなんだよ。オラオラ、もっと焦った方が良いぜ?」
俺は悪役のような笑みを浮かべながら、両手に構えていた4丁の拳銃を、各々のホルスターにしまう。
「ちょ………………調子に乗らないでよ!」
そんな声が聞こえた瞬間、起き上がったデュノアがライフルやマシンガンを展開し、撃ちまくりながら突撃してきた。
試合中に一寸した仮説を立ててみたのだが、俺とペパロニが、織斑兄とデュノアのペアをペアとして機能しなくするよう、各々1vs1の状況に引きずり込むと、2人は焦っているように見えた。まるで、2人でのコンビネーション無しでは、発揮出来ない必殺技のような何かがあるように……………
それは何だと考えてみたら、考え付いた仮説がコレだ。
『織斑兄とデュノアは、デュノアがサポートに回ることによる連係プレーで、織斑兄の専用機、白式の単一使用能力(ワンオフアビリティー)、『零落白夜』で相手を戦闘不能にするというやり方をするつもりなのではないか?』と。
それなら、互いにカバーし合える存在が居なくなって焦るのにも、どちらかがどちらかを支援しに行こうとするのにも合点がいく。
つか、今はンな事考えてる場合じゃねえ!
「ペパロニ、散れ!」
「うえ!?あわわわわ!…………あ~あ」
どうやら手遅れのようで、ペパロニはデュノアからの集中砲火を浴び、エネルギー切れとなった。
《黒澤希望、戦闘不能》
そうして、無慈悲にもペパロニの戦闘不能を知らせるアナウンスが響いた。
「あれま…………悪いなペパロニ」
「いやいや、構いやしねえさ。後は頼むぜ?兄貴」
「おうよ、任せとけ」
俺はそう言って、横から突撃してきたデュノアに向き直り、背中にしまった青竜刀を再び構える。
それをバトンのように振り回しながら、デュノアが撃ちまくる弾丸を全て弾く。
そして、いざと言う時の隠し玉として温存していたのであろう、灰色のパイルバンカーを展開し、殴り掛かってくる。
「はああああああっ!!!」
そして、パイルバンカーが俺に当たる瞬間…………
「ホラよ」
俺は瞬間移動でデュノアの背後に転移し、右手にライフルの焔備を展開する。
「残念だったな。コレで終わりだ」
俺はそう言って、勢い余って地面に倒れ、そのままパイルバンカーが抜けなくなったデュノアに焔備を突き付けて言った。
デュノアはゆっくりと此方を向いて、驚愕に染まった表情のまま話し掛けてきた。
「き、君は一体…………………何者なの?」
その問い掛けに、俺は焔備をバットのように肩に担ぎ、左手に近接ブレードの葵を展開し、地面に突き刺して言った。
「さあな……………ただの死に損ねたガキって感じの存在だ、よ!」
「ガハッ!?」
「ぐあああっ!!」
俺は焔備をデュノアに向けて撃ち、さらに先程、地面に突き刺したばかりの葵を直ぐ様引き抜いて、突撃してきた織斑兄を斬りつけ、さらに回し蹴りで吹っ飛ばした。
《織斑一夏、シャルル・デュノアペア、両方共戦闘不能。よって勝者、黄昏狂夜&黒澤希望ペア!》
そのアナウンスが流れ、暫くの間、観客席は沈黙が支配していたが、次の瞬間には……………
『『『『『『『ワアアアアアアアアアッ!!!!!』』』』』』』
物凄い歓声が沸き起こった。つーかスゲー声だ。
「おっつー、兄貴!」
「おう、約束通りに勝ったぜ?」
俺がそう答えると、ペパロニが腰に手を当て、ふんぞり返りながら言った。
「ああ!大義であった!」
「なァに偉そうに言ってやがんだコラァ」
「ハッハッハ!悪い悪い!」
そうして俺達は、ピットへと戻り、やって来た上白沢先生や長谷川先生からのお褒めの言葉を戴いた。