IS~宿命の砲火~『出来損ないと呼ばれしドイツの帝王』(更新停止中) 作:弐式水戦
「でりゃああああ!!」
「ぐっ!?中々やるな、黒澤希望!」
「ヘッ!こちとらアリーナで模擬戦禁止されてから、ずっとイメトレだけで鍛えてたんだ!死に物狂いでのトレーニングしたんだから、簡単に負けられるかってんだ!」
「ソレは俺も同じだがなあ!」
「ガハッ!?…………流石に2vs1は分が悪いか……ッ!」
さて、モップ女を退場させた今、俺とペパロニの2人相手に、ボーデヴィッヒ1人での試合となっている。
前世ではイワンとサシで殴り合いをしていたから、2vs1というのには若干抵抗はあったが、良く考えてみれば、クラス代表決定戦の時も、俺は美鈴と早苗の2人を相手にしていたようなモンだし、その辺りは割り切ることにした。
今、俺とペパロニは、どちらかが先にボーデヴィッヒを攻撃して注意を逸らし、どちらかが奇襲を仕掛けるという戦法を使っている。
ボーデヴィッヒは、代表候補生の中ではかなり強い部類に入るだろうが、流石に2vs1ではキツいようだ。
俺もペパロニも、それなりにSEは削られたが、まだ心配するような程ではない。
ある程度ボーデヴィッヒの動きが遅くなった辺りで、俺とペパロニは攻撃を止めた。
「ペパロニ、最後は俺に譲ってくれね?流石に最後も2人で攻めるのは避けたい」
「ん?別に良いぜ?」
「ありがとよ」
そうしてペパロニは後ろに下がり、代わりに俺は、一歩前に踏み出した。
「スゲエな、ボーデヴィッヒ。俺等2人相手に、あんなに戦えるなんてさ…………正直驚いたぜ」
「ふん、私のシュヴァルツェア・レーゲン相手に生身で挑んできたお前が何を言う」
「おっと、確かにそうだな」
そうして、俺とボーデヴィッヒは互いに笑みを浮かべ、最後の締め括りの態勢に入る。
2人同時になった辺り、どうやらボーデヴィッヒも、俺と同じ事を考えていたようだ。
「さあ、覚悟は良いか?」
「ああ、何処からでも来い」
「うぉっしゃあ!」
そうして、俺は飛び出すと同時に《帝王爆誕》を発動する。
全身に金色のオーラを纏い、ボーデヴィッヒ目掛けて向かっていく。
その最中に発動したからか、途中からアリーナの地面が抉られているが、この戦いを楽しんでいる俺とボーデヴィッヒは、そんな事なんざ気にも留めない。
俺が真っ向から攻撃するつもりでいるのを悟ったのか、ボーデヴィッヒはAICを発動する準備をする。だがな、ボーデヴィッヒ……………
『残念ながら、ソレは無意味だ!!』
「な、なn『《帝王拳》!!』ぐはあっ!?」
俺は瞬間移動でボーデヴィッヒの真ん前に転移し、思いっきり振りかぶった拳を振るい、《帝王拳》を喰らわせた。
モロに喰らったボーデヴィッヒは、勢い良く後方に吹っ飛び、壁に叩きつけられる。
俺は一旦、バク転しながら飛び退き、着地した瞬間に、胸元のホルスターから2丁拳銃を取り出す。
そして、そのままボーデヴィッヒに突撃しながら2丁拳銃を撃ちまくる。所謂ガン・スリンガーだ。
「ぐうっ!?な、ナメるなァ!」
ボーデヴィッヒは反撃とばかりに、肩のキャノン砲をぶっ放してくる。
俺は2丁拳銃での射撃を止め、ホルスターにしまう。そして、本当のシメとして、近接ブレード『葵』を展開し、斬りかかる。
これで勝負が決まれば、互いに気持ち良く、勝負を終われた。
………………そう、『これで勝負が決まれば』、だ。
「ぐ…………ぐぁぁあああぁぁぁああっ!!!」
『ッ!?』
突然、ボーデヴィッヒが苦しそうに頭を抱えながら悲鳴を上げ始めた。そのまま地面に倒れ、もがく。
『ちょ、おいボーデヴィッヒ。どうしたよ?』
あまりにもいきなりの事態に《帝王爆誕》の解除も忘れ、俺はボーデヴィッヒに話し掛けるが、ボーデヴィッヒは答えず、ただ、苦しそうに頭を抱え、悲鳴を上げながらもがくだけ。
ボーデヴィッヒって、何かの持病持ちだったっけ?
そう思いつつ、俺は《帝王爆誕》を解除する。そして、取り敢えずは落ち着かせようと、ボーデヴィッヒに近づこうとした、正にその時だった。
「あ……………あぁ………ァァァァア"ア"ア"ア"ア"アッ!!!!!」
ボーデヴィッヒの悲鳴が、最早断末魔のように聞こえ、ボーデヴィッヒは、黒い液体のようなモノに飲み込まれた。
その液体のようなモノは、ボコボコと音を立てながら粘土のように形を変えていき、ある姿になった。
「あれ、確か……………《暮桜(くれざくら)》………だったか?」
「ちょ、オイオイ兄貴、こりゃ一体全体何がどうなってやがんだ?」
「俺に聞くな。こんなモン見たこともねえから知らn…………ま、まさか…………ッ!?」
「えっちょ?どうしたよ?」
瞬間移動で俺の隣に転移し、黒い暮桜モドキを指差しながら聞いてくるペパロニに、『知らねえよ』と言いそうになった口を、俺は止めてしまった。
そして俺は、この学園に入学する前、桜花と氷華に手伝ってもらい、予習していた時に偶然見つけた、とある違法システムの事を思い出した。
--《VTシステム》--
《ヴァルキリー・トレースシステム》という正式名称を持つこのシステムは、歴代ヴァルキリーやブリュンヒルデ(と言っても、現段階でのブリュンヒルデはクソアマしか居ない)のデータを元に作られた違法システム。
ほぼ無敵の強さを誇るが、その代償として、操縦者に肉体的・精神的にも大きい苦痛を与え、最悪、死に至らしめるという滅茶苦茶なシステムだ。ある意味、《人殺しシステム》とも言えるだろう。
「………………」
『……………』
俺は試しに、暮桜モドキに一歩近づくが、暮桜モドキは何のリアクションもしない。気休めのように言えば、この隙にどうやったらボーデヴィッヒを助け出すかを考える時間があると言えるが、実際で言えば、そうして考えてる間にボーデヴィッヒの命のカウントダウンが0に近づいているだけだとしか言えない。
一旦打鉄を解除してゴールドウィングに変え、高周波ブレード《SS》で真ん中から斬りつけて表面を裂き、其所からボーデヴィッヒを救い出す、か…………もうこれしかない。
そう思い、打鉄を解除しようとした時だった。
「「うおおおおおおっ!!」」
「…………は?」
突然、何処からか声が聞こえたかと思ったら、ピットから織斑ツインズが飛び出してきた。
そのままツインズは暮桜モドキに斬りかかるも、あっさりと殴り飛ばされる。
と言うかそもそも、彼奴等何しに来たんだ?つか、彼奴等のせいでさっきまで大人しかった暮桜モドキが動き出しちまったじゃねえか!
『『『きゃあああああ!!』』』
『『『助けてえええッ!!!』』』
ウワッ!観客席の殆どの生徒が逃げ遅れてやがるし!これ、あのクラス対抗戦での無人機襲撃事件の二の舞とか、もうマジで勘弁してくれよォ!?
と言うかそもそも……………
「テメエ等は何してやがんだよこのアホォ!!」
俺は瞬間移動で、暮桜モドキに斬りかかろうとしていた織斑ツインズの頭をひっ掴んで、一発拳骨を喰らわせた。
「何するんだ!出来損ないの癖に!」
織斑弟が喧しく喚くが、俺はソレを無視して怒鳴り付けた。
「喧しい!テメエ等の勝手極まりねえ行動で、逃げ遅れた生徒に被害が及んだらどうするってんだよ、ああ!?」
「知るか!あれは千冬姉さんを真似している!侮辱しているんだぞ!!」
「それこそ知るかよアホが!そのためなら逃げ遅れた生徒に被害が及んだって良いってのかよ!?」
俺はそう言うが、このバカ2人は離せとかギャーギャー喚き散らす。ええいウザったい!
俺はペパロニの方を向き、叫んだ。
「おいペパロニィ!このバカ2人とモップ女連れてピットに行け!」
「で、でも兄貴!?」
「良いから連れていけ!」
「ッ!…………わ、分かったよ………死ぬんじゃねえぞ?」
「ああっ!分かってらァ!!行け!」
俺がそう叫ぶと、ペパロニはモップ女を脇に抱え、未だに騒ぐバカ2人を殴って気絶させ、瞬間移動でピットに転移した。
「さあ、これで2人になったな、クソアマモドキ」
俺はそう言うが、暮桜モドキは動きを止め、此方を見る。そして、沈黙状態で此方を見詰めてくる。それから暮桜モドキは相変わらず、何のリアクションもしない…………かと思った次の瞬間!
『---ッ!』
「ゴハッ!?」
突然、暮桜モドキは俺目掛けて突進を繰り出してきた。モロに腹に喰らい、俺は後方に吹っ飛ばされる。
何とか体勢を立て直し、着地したのも束の間、暮桜モドキは物凄い勢いで襲い掛かってきた。
「ぐわっ!?………この、粘土野郎が!」
続けざまに暮桜モドキは、恐らく《雪片》なのであろうブレードでの連続攻撃を繰り出してくる。
ソレを葵で何とかいなしながらも、俺は徐々に押されてきていた。多分だが、さっきの戦闘での疲れが溜まってるんだろう。つか、今此処でソレ来ますか普通?それに、さっきから何か腕が痛いと思えば、ブレードが掠めた所から血が出てやがるし!
「喰らいやがれ!」
俺は葵を左手に持ち替え、右手にライフル《焔備》を展開し、ぶっ放す。
『---ッ!』
「(シュッ!)ぐあっ!?」
腐っても流石はブリュンヒルデ、銃の弾丸をブレードで一刀両断しやがった。おまけに、それでブレードが俺の額を掠め、其所から血が出る。恐らく他者から見れば、大概の人がこう言うだろう。『血のカーテンのようだ』と。
「畜生……………何も出来ねえのかよ……………ッ!」
焔備も意味を無くし、収納した俺は、頭の痛みで地面に片膝をつき、左手で血が出る額を抑えながら、右手で地面を殴る。
それは轟音と共に、地響きを鳴らす。
そして、近づいてきた暮桜モドキが、俺目掛けて雪片を振り上げる。どうやら、止めをさすつもりらしい。
万事休すってヤツか……………
そう思った時だった。
『負けちゃダメよ、狂夜!!』
突然、葛城の声が聞こえた。
その声に、俺はハッと我に返る。
『ソイツは所詮作り物よ!そんなのに負けるような狂夜じゃないでしょ!?』
訴えかけるように叫ぶ葛城の声に、誰かの声が重なるような感じがした。
「(この声、まさか……………お袋?)」
そう思った瞬間、俺は久しさを感じられる、眩い光に包まれた。