IS~宿命の砲火~『出来損ないと呼ばれしドイツの帝王』(更新停止中) 作:弐式水戦
「さて、どんな水着があるのかな」
男性用の水着売り場にやって来た俺は、早速店に入り、どんな水着があるのかを見て回っていた。
男物の水着は、女性物の水着よりもレパートリーが大分少ないようだが、それでも俺としては多い。
まあ、水着を着たことなんてほぼ全くない俺だから言える事なのかもしれねえけどな。せめてその辺り、親父やお袋に聞いておくべきだったぜ。あの2人が水着着たことがあるのかどうかは別として。
そう思いながらも、俺は店内を歩き回る。
水着しかないのかと思いきや、ゴーグルやシュノーケルといった、泳ぐ時に使うものが色々と売られていて、見ていて退屈しなかった。
だが、のんびり歩き回って見ている暇も、実を言えばない。こうしてる間にも、6人を待たせているからな。
「さて、急いでそれなりに良さそうな水着を探さなくては………ん?」
そろそろ本気で急がないとヤバイと思い始めていると、1着の水着が目に入った。
全体的に黒で、蒼い炎が模様として描かれている。試しに手に取り、合わせてみると、俺の膝までより少し長い。夏用の短パンのような感じの水着だった。
「ふむ、こんな感じで良いか」
俺はそう呟き、一旦試着室に入って試着し、サイズが自分似合うことを確認し、買った。
出来れば、この場で瞬間移動を使って戻りたいが、流石にこの場でやったら変に目立ってしまう。
俺の中での常識が、この世界の常識とはかなり外れているということをつくづく思い知らされながら、俺は桜花達を待たせている、あの女性用水着売り場へと向かった。
「……だからさあ、なんで俺がこうやって出掛けたりしたら、こういう場面に出会すんだよ?」
女性用水着売り場の直ぐ近くにやって来た俺は、うんざり感を隠しきれず、溜め息をついた。
俺の視線の先では、桜花達6人が、何やらチャラチャラしてそうな男8人に絡まれていた。
「ねーねー、君達女だけで何してんの?」
「暇ならさあ、これからどうよ?俺等と」
リーダーと参謀のような2人が、桜花達に話し掛ける。俺は気配を消しながら、ゆっくりと近づいた。
「結構です、人を待っているので」
「え~?そんなの放っとけばイイじゃん。君等のような可愛い女の子待たせてどっか行っちまうような奴なんてさあ」
美鈴は言うが、男の方もかなり諦めが悪く、放っとけと言い張る。
恐らくだが、比較的気が強い鈴仙や氷華、葛城でも、彼奴等を退かすことは出来ないだろうな。何せ此方側は妖怪やIS、対して相手は普通の人間、変に暴力沙汰にでもなろうモンなら、事態が面倒な事になるのは確実だ。
「おーい、待たせたな~!行こうぜ~」
俺は気配を消すのを止め、鈴仙達に呼び掛けた。
6人は此方を向くと、助かったとばかりの表情を浮かべる。そして6人は此方へ来ようとしたが、そうは問屋が卸さない。
最後尾で向かおうとした桜花の袖を、1人が引っ張って止めた。
「なあなあ、君等が待ってたのって、あのパッとしない奴なの~?あんなのよりも俺等と来た方が楽しいよ~?」
「ちょっと、桜花を放しなさいよ!」
流石に連中の往生際の悪さにキレたのか、氷華が男の腕をひっぱたいた。
「おいおい、何すんだよ?これはマジで付き合ってもらわねえとな」
「ふざけないでよ!先に手を出したのはそっちでしょうが!言っとくけど、彼はアンタ等のようなチャラチャラしたのよりも何億倍も良いわ!」
「ああん?下手に出てりゃこのアマ!」
はあ~あ、話が面倒な事になっちまった。
「あれでキレる氷華も氷華だが、連中の方が一番気に食わねえな…………仕方ねえ」
俺はそう呟き、瞬間移動で氷華とチャラ男の間に割り込んだ。
「おい、もうその辺りにしておけ」
「ああ?何だとこのガキ!」
「俺達は其所のカワイコちゃん達に用があるだよ。さっさと消えろや!!」
「それとも、ピンチの時に駆けつけたヒーロー気取りか?」
「無理無理、そうやってイキがっても、俺等に袋叩きにされて無様を晒すんだからよォ!」
「助けてママ~!ってな!」
『『『ギャハハハハハハ!!』』』
ハア……………見苦しい連中だぜ、最早自分の思い通りにならないからってごねるガキそのものじゃねえかよ。イイ歳こいた大人が情けない、コイツ等の親の顔が見たいぜ。
と言うより最後から2番目、その台詞、そっくりそのままテメエに言わせてやろうか………?
「おいガキ、俺達に感謝しな。今此処で逃げ去れば、許してやっても良いぜ?」
よし、そろそろ本気でムカついた。ちょっくらトラウマ植え付けてやろう。
「おい、さっさとしろよこのガk「五月蝿ェんだよ、ガキはどっちだバカ野郎」ガハッ!?」
俺はチャラ男の言葉を遮り、ソイツの襟首を片手で掴んで持ち上げた。
「平和ボケしたクソガキ風情が、随分と好き勝手ほざいてくれるじゃねえかよ、ああ!?」
そう怒鳴り付けると、俺に持ち上げられているチャラ男が、涙と鼻水で顔をグシャグシャにしながらも、足をジタバタさせてもがく。
「フンッ!テメエみてえに何も出来ねえカス野郎が、人数任せで図に乗りやがって」
「ガハッ!?」
俺はそう言いながら、持ち上げていたチャラ男を他の連中の近くに放り投げる。
「な、何なんだよテメエは!?」
他のチャラ男の中の1人が、俺を指差して叫ぶ。
「そもそも!なんでテメエはそんな女共の肩なんて持ってんだよ!?」
「はあ?何言ってんだテメエ?」
俺は買ってきた荷物を桜花に持ってもらい、チャラ男共に近付く。
「其所の女共の正体は知ってんだよ!ソイツ等、八雲重工のパイロットだろ!」
「だとしたら何だ?」
そう聞くと、1人が叫んだ。そのことばが、俺を本気で怒らせることになるとも知らず。
「八雲重工ってのは、男でもIS使えるようにするメカニズムを研究してんだろ!?でもなあ、その発表から何の進展もねえんだよ!精々試験機が1機だけ出来たって話だけで、しかも、其所のパイロットが全員女なんだよ!どうせ男でもISを使えるようにするってのは建前で、この女尊男卑の風潮をさらに広めようとしてるだけのクソ企業だろ!そんなトコの低俗女なんざ、どうとでもして良いだろ!所詮は裏切り者なんだからよぉ!」
…………ムカついた。
コイツ今何て言いやがった?クソ企業?女尊男卑の風潮を広めようとしてるだけ?どうとでもして良い?低俗女?裏切り者?
………………このガキタダじゃおかねえ。
「おいガキ」
そう言って、俺はクソ忌々しい事を喚きやがったガキを無理矢理立たせ………
………………顔面目掛けて1発殴り付けた。
『ふざけた事抜かしてんじゃねえぞクソガキがァ……………テメエ、本人達の前で頑張りを侮辱するったァ良い度胸してやがんじゃねえかよ、俺は八雲重工の人間じゃねえから、その企業がどんなトコなのかはよく知らねえよ……………』
だがなァ………
『テメエみてえに何も知らねえ癖に文句ばかり抜かして、他人の頑張りを侮辱やがるクソガキは…………俺はゼッテエ許さねえ…………後なァ…………』
そして俺は、一度深く息を吸い込み、そこから思いきり、殺気も怒気も全開にして、いつの間にか発動していた《ナチスの死神》のドス黒いオーラをより一層強め、怒鳴り付けた。
『テメエ等が本気で、俺の大切な人達を傷つけようモンなら…………テメエ等どころか大陸1つが消し飛ぶと思えッッ!!分かったかァッッ!!』
そう怒鳴り付けると、チャラ男共は声にならない悲鳴を上げながら失神した。
それから暫くの間、俺達はその場に佇んでいた。
「はあ~あ、結局この前みてえに遅くなっちまった。恨むぞ、あのクソッタレたチャラ男共めが………」
あれから騒ぎになりそうだったので、俺達はレゾナンスから逃げるように外に出て帰りのモノレールに乗り込み、IS学園前の駅で降り、学園へと向かっていた。
んで、今はその道中なのだが…………………
「なあ、何かお前等、レゾナンス出てから顔真っ赤じゃね?」
『『『き、気のせいよ(です)!!』』』
「さ、さいでっか………」
思わず関西の言葉になってしまったが、レゾナンスを出てから………否、あの騒ぎの後からマジで6人の顔が赤い。
夕日のせいか?はたまた風邪か?もう明後日には臨海学校だってのに、今風邪なんて引いたら、買った水着とかが台無しだぜ?
そう思いながら、俺は桜花達3人を、各々の待機形態へと戻す。
「あ、あの…………狂夜さん……」
「ん?」
そうしてるうちに寮が近くなり、そろそろ瞬間移動を使って部屋に転移しても良い頃だと思い、いざ、部屋に戻ろうとした時、美鈴に呼び止められた。
「どうした?」
そう聞くと、美鈴は夕日に照らされているからか、顔を赤くしながら話を切り出してきた。
「その、今日はありがとうございました…………私達のために、怒ってくれて………」
そう言って美鈴が頭を下げると、早苗と鈴仙が続けざまに頭を下げる。
「いやいや、別に良いよ。俺が勝手にぶちギレてやっただけなんだ、気にすんな」
「で、ですが………」
そう言って、美鈴は尚も食い下がるが、俺は何かを言う代わりに、美鈴の頭を撫でた。
そして次に、早苗と鈴仙の頭も撫でる。
「だから、お前等が気にすることはねえんだよ……………ショックだったんだろ?自分達の企業をあんなに言われた事が」
『『ッ!』』
どうやら当たってるらしく、3人はビクリと反応した。
「あれが、人間の醜い部分なんだよ。自分は何の努力もしない、はたまた、ある人がどんなに頑張ってるのかも知らないそれなのに、偉そうな事を好き勝手に言ったり、少し成果が出なかったり、出るのが遅いってだけであそこまで怒鳴り散らす………マジで醜い部分だぜ」
そう言って、俺は溜め息をつく。そして暫く空を見上げると、視線を戻して話を続けた。
「お前等八雲重工の事については、紫さんから色々と、話は聞いてるよ。中々稼働データが集まらなかったり、試験機の調整とかで手こずって、研究が捗らなくなってるって事もな」
「そ、そこまで聞いていたの?」
「ああ、学年別トーナメントがあったろ?あの日に他の国からの勧誘を受けた時に、紫さんから聞いたのさ」
俺が八雲重工の事情にかなり詳しいことについて鈴仙が聞いてきたのに答え、さらに言葉を続けた。
「お前等八雲重工も、捗らないなりに何とかしようと努力してる筈だ。それを知らずに好き勝手抜かしやがった連中が、スゲームカついてな、ついあそこまでキレちまったって訳さ」
「じゃ、じゃあ狂夜さん…………あの時私達の事を、『大切な人達』って言ったのは…………?」
「ん?あれは言葉通りの意味さ」
顔を赤くしながら聞いてきた早苗にそう答えると、3人は一気に顔を赤くする。もう、これ以上顔赤くならねえんじゃねえの?
「お前等は何だかんだで、俺と仲良くしてくれたからな。桜花達やペパロニ達も居たが、こうやってこの学園で過ごしていられるのは、お前等のおかげでもあるんだ」
『『!』』
「だからな?俺は桜花達同様、お前等の事も、大切な人達だと思ってるって訳よ……………なんて、自分で言っといてなんだが、結構照れくせえな、この台詞は」
そう言って、俺は軽く笑った。美鈴達も、それにつられて笑う。
そうして一頻り笑うと、もう時刻は夜7時になっていた。
「さて、俺等もそろそろ部屋に荷物置いて、食堂に行こうぜ。でねえと席無くなるし、飯も食えなくなっちまうぞ」
俺はそう言って、瞬間移動で部屋に戻ろうとしたが………
『『狂夜(さん)』』
「ん?まだ何かあるのk………『『チュッ♪』』…………ほえ?」
まだ何かあるのかと言いかけながら振り向くと、突然視界が真っ暗になり、それと同時に、額と左右の頬に、しっとりした柔らかい何かが押し付けられた。
暫くの間、その柔らかい感触は続いた。
そして、2分程経ったのだろうか?その感触が離れ、真っ暗になっていた視界に、顔をコレでもかと真っ赤に染めつつも微笑んでいる、美鈴、早苗、鈴仙が映し出される。
「えーと、な、何を…………?」
そう聞くと、3人は一斉にこう言った。
『『お礼です、狂夜(さん)♪』』
「は、はあ…………」
そうして、美鈴達は逃げるように、寮へと帰っていった。
「………まあ、コレで彼奴等も少しは、楽になれた、かな?」
俺はそう呟き、瞬間移動で部屋に転移して荷物を置き、部屋の前を通りかかったペパロニ達と合流し、明後日の臨海学校の話で盛り上がりながら食堂へと向かった。
多分その間も、俺の顔は若干赤かったのかもしれねえな。
それから食堂で美鈴達3人に会ったのだが、3人共未だに、顔を真っ赤にしていたよ。
そして、あっという間に2日の日が流れ、俺達は臨海学校当日を迎えた。