IS~宿命の砲火~『出来損ないと呼ばれしドイツの帝王』(更新停止中) 作:弐式水戦
「えー、着替えよし、水着よし、財布よし、ISよし、筆記具よし、スマホの充電よし、お菓子よし…………よし、これで準備万端だ」
さて、遂に迎えた臨海学校当日。今日はIS学園のゲート前に集合だ。
俺は寮の部屋で、荷物の最終チェックをしていた。まあ、万が一何か忘れ物をしたら、1日目の自由行動の間の時間に取りに帰れば良いだけのはなしなんだが、取り敢えず念を念を入れてのチェックだ。
って、誰に言ってるんだろうな、俺……………
さて、時計を見ると、今は朝6時。出発時刻まで後30分もあるが、取り敢えず俺は、瞬間移動でゲート前へと転移した。
「おはよう黄昏君、早いんだな」
「おはようございます、上白沢先生」
ゲートの前に転移すると、其所には生徒は誰も居らず、代わりに上白沢先生が居た。
「もうすぐバスが来るから、此処で待っていると良い」
「あー、それについては俺、バイクで行こうと思っているんですよ。長い間動かしてないし」
「そうか………まあ良いだろう。だが、シールドバリアぐらいは展開しておきなさい。万が一と言うこともあり得る」
「りょーかいです」
そう返事を返し、俺はバイクとしてのゴールドウィングを展開した。
朝日を浴びて、パールホワイトのボディーが光を反射し、輝きを見せる。ヘルメットを入れておくトランクに描かれた、ナチス・ドイツの鍵十字にも光が当たる。こんなのを見るのは、俺がまだ解体所で暮らしていた頃だったな。
「ああ、そうだ黄昏君、そのゴールドウィングのマークを見て思い出したんだが、少し待っててくれ」
いきなりそう言うと、上白沢先生は寮の方へと走っていった。
それから約10分後、生徒がワラワラと出てきて、バスに乗り込み始める辺りの時間帯に、先生は何かが入った袋を持って戻ってきた。
「昨日の放課後、君宛の宅配便が来ていてね、すっかり渡すのを忘れてたよ」
そう言うと、上白沢先生は俺に、その袋を渡してきた。俺はその袋を見回し、差出人が誰かを見る。
「えーと、差出人は…………レーヴェ・ポルシェとイレーネ・ポルシェ……って、親父とお袋じゃねえかよ」
俺はそう呟きながら、同封されていた便箋から1枚の手紙を取り出し、読むことにした。
「えー、何々………『よお、フェルディナンド。最近元気にしてるか?お前中々家に来ねえから、イレーネも心配してんぞ?夏休みになったらゼッテエ家に来ること。良いな?
それと、お前ん家でのんびりしてたら神様が来てなあ、『お前用のISスーツ代わりの服を作ったから、宅配便で送っといてくれ』って言われたから、そっちに送っといたぜ。
上白沢って人に届いたと思うから、受け取っとくように。
後それから、臨海学校があるんだって?そんなモンちゃんと知らせやがれやアホンダラ。
まあ良いさ、思いきり楽しんでこい』………か、親父も何だかんだで手紙書いたりするんだな」
そう言いながら、俺は袋から1着の服を取り出した。
「コレは………」
取り出したのは、過去に悪戯心が働いた主任さんに着せられた、あの装束のような服だ。
上は、クリーム色の生地に、真ん中に薄紫の線が上から下まで引かれた、黒色の襟つきのノースリーブというシャツに、紫色のスカート……………ん?スカート?
オイオイオイ神様、いくらなんでも俺に女装趣味はねえぞ!?
そう思っていたが、その辺りについては配慮してくれていたらしく、膝下辺りまでのスカートから、踝までの長さを持つジャーマングレーの長ズボンが、スカートと1つになる形で付いていた。
危ない危ない、もうすぐで俺は変態になってしまうところだった。
俺は安堵の溜め息をつきながら、そのスーツ(?)を小さく畳んで鞄に入れる。
そして、ゴールドウィングの左トランクの中に入れ、リアシートの直ぐ後ろにあるトランクからヘルメットを取り出した。
そうこうしてるうちに、時刻は6時30分、生徒全員がバスに乗り込んだ。
バスのエンジンがかかるタイミングを見計らい、俺もヘルメットを装着し、ゴールドウィングのエンジンをかける。
久々に聞く、600馬力を誇るマイバッハエンジンのサウンドが耳に心地良い。
そして、出発したバスのうち、3組が乗っている3号車の後ろにつき、俺は我が愛車を走らせた。
『『『『『海だぁ~~~~~~っ!!!!』』』』』
バスの中で、女子生徒がはしゃいでいるのが聞こえるような感じがする。
視線を少し左に動かすと、其所には青い海が広がっていた。因みに視線を右に動かせば山だ。
上白沢先生が言っていた、『万が一』というのは、女尊男卑思考の塊とも呼べるバカタレな集団、女性権利団体が、こういった移動中に狙撃なり何なりして、俺を殺そうとしているかもしれないということだろうな。まあ、シールドバリアを展開してあるから大丈夫だとは思うが。
そして俺は、壁側にバイクを寄せて走る。暫く走ると高速を降り、海沿いの道に差し掛かった。左方向に弧を描く、緩やかで長いカーブを曲がった先にあるのが、今回の宿舎だそうだ。
この臨海学校中は、学園側で貸しきりだというから楽しみである。
「さて、どんな宿舎なんだろな……………ん?」
ヘルメットのスクリーンから見える景色を、センサーを使って見ると、宿舎の前に、何やら改造感満載の車が1台、駐車場に停められているのが見えた。
『黄昏君、聞こえるか?』
すると突然、上白沢先生からの通信が入った。
「どうしました?」
『ああ、いきなりで悪いんだが、君には宿舎の方へと先行してもらいたいんだ』
「マジでいきなりな話ですね。因みになんで?」
『ああ、宿舎の駐車場に、怪しげな車が1台停まっていてな、本来なら、それには教員が当たることになっているんだが、今日はちょっとしたミスで、動ける教員が居ないんだ』
「あらま…………」
そう苦笑いしていると、すまなさそうに上白沢先生は続けた。
『あの山道からは抜けたから、今のところ、君を狙撃したり出来るような場所はない。君一人でも大丈夫だとは思うんだが、頼めるか?』
「良いですよ。それに何かあったら、瞬間移動で逃げれば良いし」
『ああ、そうだな…………では、頼んだぞ』
「りょーかいです」
そうして通信は切れ、俺は3号車と4号車の間から道路へと出ると、そのまま2号車と1号車を追い抜き、旅館へと飛ばした。
「うへえー、ホントに怪しげだなあコレは」
さて、旅館に着いた俺はエンジンを切ってバイクから降り、ヘルメットをトランクに入れると、停められている例の車に近づき、そんな感想を溢した。
その車は、所謂改造車というもので、マフラーが矢鱈と後ろに伸びていたり、リアウィングがヤケにデカかったり、フロントとリアのバンパーが地面スレスレ辺りになっていたりと、『悪い人です感』が半端ではなかった。
「どんな悪い奴が乗れば、車がこんなザマになるんだよ」
そう呟きながら、俺はゴールドウィングを待機形態にしまう。そして一旦、上白沢先生に通信を入れ、先に旅館に入っておくことにした。
自動ドアが開き、旅館の人が出迎えてくれるのかと思いきや………
「…………Oh,heck」
入って早々、目の前で繰り広げられている情景に、俺は頭が痛くなった。
「だからさあ、一部屋空いてるなら其所に泊めろって言ってんだろ?何度言えば分かるんだよ」
「で、ですから今日は、臨海学校で来る方々のために貸し切りにしていると、先程から何度も申しているではありませんか」
「知るかよ、俺達は客だぞ」
玄関にて、何やら4人のガラの悪そうな男と、この旅館の従業員なのであろう女性がもめていた。
揉め事を聞いてみたところによると、この男4人は、この旅館に泊まりに来たらしいが、IS学園の方で既に貸し切りになっているため、無理だと門前払いを受けたらしいが、どうもこの男4人は諦めが悪く、空いてる部屋があるならその部屋に泊めろと駄々をこねてるんだとさ。
「はあ~あ、迷惑極まりない連中だぜ」
俺はそう呟きながら、その男4人に近づく。
「オイお前等」
「「「「ああん!?」」」」
うへえー、いきなりガラの悪い返事が帰ってきた~。
俺はそう思いつつ、少し殺気を込めて言った。
「邪魔だからさっさと失せろ」
そう言って俺は、男4人もろとも瞬間移動を使い、車が置かれている駐車場に転移すると、今度は車も含めて瞬間移動を使い、全く別の場所へとソイツ等を捨てて再び旅館へと舞い戻った。
「ヤレヤレ、傍迷惑な連中だな全く…………んで、大丈夫ですか?」
「……………」
「ん?おーい」
俺はそう呼び掛けるが、女性は何の声も発することなく、ただ俺を見るばかりだ。
それにしても、この人の茶髪と赤い目、どっかで見たことあるような…………
「あらあら、何事ですか?」
そうこうしていると、奥の方から金髪の女性が現れた。
恐らく騒ぎを聞き付けて来たのだろう。と言うか、アンタ出てくるのおせえよ!もうちょい早く出てこいよ!
そう叫びたくなるのを何とかして堪えつつ、俺は何があったのかをその人に伝えた。
「成る程、それで貴方が、その男性達を?」
「ええ、まあ……」
流石に瞬間移動使ったのはマズったかと思ったが、以外にもその事については触れられず、俺は女性から礼を言われた。
「それにしても、まさかウチの従業員を2度も救っていただくなんて……」
「はい?」
え、2度も?俺、前にこの人に会ったことなんてあったっけ?
「あの、全く身に覚えがないんですけど………」
「何を仰るのです?貴方は買い出しの帰りに男性に絡まれていた彼女を、ウチの旅館にまで送り届けてくれたではありませんか」
そう言って、女性は未だに地面にへたり込んでいる茶髪の女性を見ながら言う。
買い出しの帰り、絡まれていた、俺が助けて送り届けた…………あ!!
「そうか思い出した!あの時の従業員さんと女将さんか!」
「ええ、漸く思い出してくれましたか」
驚きに声を張り上げると、女将さんは嬉しそうに微笑みながら言う。
ちょうどそこへ、IS学園のバスが到着した音が聞こえてきた。
「お、やっと来たか…………んじゃ女将さん、また後で」
「ええ♪」
そうして俺は外に出て、バスから降りてきた3組の方へと向かっていった。