IS~宿命の砲火~『出来損ないと呼ばれしドイツの帝王』(更新停止中)   作:弐式水戦

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第八十二話~サービスにはドキドキがいっぱい~

さて、旅館の従業員さんを困らせていたおバカさん達を退場させ、あの時の従業員さんと女将さんとの意外な再開を果たした俺は、外に出て3組の列に並んでいた。

 

すると、旅館のドアが開き、女将さんが現れる。

 

そして、久々登場(おおメタイ)の織斑千冬が前に出て言った。

 

「本日からお世話になる旅館の方だ。お前達、挨拶しろ!」

『『『『『『はーーーーい!!!』』』』』』

 

女子達が、まるで初の社会見学に来た幼稚園児のように元気な声を出す。それを見た女将さんは軽く微笑んでおり、かく言う俺自身も、和んでいた。

 

まあ、お忘れの方も居るかもしれんが、俺は一応転生者だ。前世での年齢と合わせたら、軽く30歳は超える年齢だからな。そうなるのも仕方ないってモンさ。

 

「あらあら、今年の1年生の皆さんも、元気があってよろしいですね」

 

女将さんは、そう微笑みながら言う。やはり流石は大人の女性だ、女子達が見惚れている。

今時の女子ってのは、こういう人にも靡くのか?俺は時々、今の世代の連中の思考が理解できなくなるぜ。

 

 

さて、そうこうしてるうちに解散となり、女子達は旅館の中へとワラワラ入っていく。

 

俺は先程の騒ぎで忘れていた、ゴールドウィングに入れていた荷物を取り出し、再びゴールドウィングを待機形態のヘッドフォンに戻す。

 

旅館の入り口へ向かおうとすると、上白沢先生に呼び止められた。

 

「黄昏君、君も挨拶しておきなさい」

「はーい」

 

俺はそう返事を返し、軽く制服を整える。そして上白沢先生の横に並んだ。

 

「私が担任を務めている1年3組の、黄昏狂夜君です」

「はい、存じ上げています。ウチの方で、結構お世話になりましたから」

 

そう言って、女将さんは俺の方を向いて微笑んでくる。

反応に困ったが、取り敢えず微笑み返しておいた。

 

上白沢先生は首を傾げていたが、一先ずは話を続けることにした。

 

俺達は女将さんから、この旅館の間取り、夕食の時間、最終消灯時間等についての説明を聞いた。

そして上白沢先生は先に部屋へと向かい、俺も後に続いて部屋に向かおうとすると、今度は女将さんに呼び止められた。

 

「狂夜君は、私についてきてください」

「?まあ、良いですけど…………」

 

俺はそう言って、先に歩き出した女将さんの後に続いた。

 

 

 

 

 

 

「此方が、狂夜君のお部屋となります」

 

女将さんに案内されたのは、『教員室』との貼り紙が貼られた部屋より2部屋分奥の、何やら旅の疲れを癒してくれそうな雰囲気を醸し出している部屋だった。

だが気になったのは…………

 

「あの、女将さん?この貼り紙に書かれてある『+α』ってのは何ですか?」

「それは、この部屋に入ってからのお楽しみですわ」

 

そうして女将さんは、コロコロと笑いながら去っていった。はて、誰が居るのやら……………

 

そう思いつつ、俺は取り敢えず、部屋に入ることにした。

 

その部屋は広く、流石に俺だけで使うのは贅沢過ぎやしないかと思えるような、普通に泊まるならかなり高くなりそうな部屋なのだが、今はその事を心配してる場合ではない。

何故ならその部屋に……………

 

「いらっしゃいませ」

「……………ウェイ?」

 

あの時助けた従業員さんが居たからだ。

まあ、取り敢えず………………

 

「今の状況を説明していただけませんかね?」

 

これやってもらわなきゃ話始まらないよね?

 

 

 

 

 

 

「………………という訳なのです」

「はあ、そういう事で………」

 

話の内容はこうだ。

 

以前、俺がこの従業員さんを助けてこの旅館に送り届け、女将さんに礼代わりの夕食に誘われた時、俺は『次に来た時の貸し』という事で話を保留にして学園に帰ったのだが、それから従業員さんと女将さんは、どうやって借りを返すかという話をしていたらしい。

 

それで、IS学園の臨海学校で俺が来る事を知り、特別な部屋で過ごしてもらおうと言う話になったんだそうだ。

 

「それで、狂夜様のお世話を、私、紫園(しおん)がやらせていただこうという事になったのです」

「ちょいと待ってください、その理屈はおかしいですよ」

 

紫園さんが言った最後の言葉については、流石の俺も寛容しきれず、待ったをかけた。

 

「何でしょう?」

「いや、『何でしょう?』じゃないですよ。紫園さんはこの旅館の従業員さんなんだから、俺なんかよりも仕事優先してください。どうせ俺、これから海行くから暫くこの部屋には居ないし」

「ですが夜になれば、貴方はこの部屋で休みますよね?」

「まあ、そうなんですけどね…………」

「それに、今こうして貴方のお相手をすることが、今の私の仕事なんです」

 

オイオイオイ、それ言われたらもう何も言えねえじゃねえかよ。と言うか、それで良いのかよこの旅館は?一応言っておくが、男と女ですよ?

いや、別に変な真似するつもりは毛頭無いけどさ、流石にコレばかりはマズイだろ。

 

そう言いたいが、仕事だからと言われたら、もうどうしようもない。大人しく従うしかないか。

 

「分かりました。では、宜しくお願いします」

「ええ、此方こそ」

 

そう言って、紫園さんは嬉しそうに微笑んだ。そんなに恩返しがしたかったんだろうか?

 

そう思いながら、俺は部屋に入ってからも尚持ちっぱなしだった鞄を部屋の奥に置き、のんびりと寝転がる。

 

「ふわあ~、やっぱ畳ってのは良いなあ~。ドイツの家でもコレ取り入れたら良かったものを…(トサッ)…………ん?」

「…………」

 

ふと視線を右に向けると、いつの間にか俺の右隣で正座している紫園さんが、何やら膝に乗せた手を動かしている。その手は紫園さんの膝と、俺の頭の直ぐ傍を行き来している。

何故かチラチラと俺を見ているが………………はて、何の用だろうか?

 

……………もしかして、俺がまだ解体所で暮らしていた頃、桜花によくやってもらってた…………

 

「膝枕、とかですか?」

「ッ!……………は、はい」

 

俺は目線のみ紫園さんに向け、声をかける。紫園さんはビクッ!とばかりに反応すると、顔を真っ赤にして、消え入りそうな声で答えた。

 

どうやら、やってくれるようだ。

 

「じゃ、失礼しても良いですかね?」

「…は、はい…………ッ!」

 

紫園さんは嬉しそうに言うと、俺の頭の真後ろに移動した。俺は頭を上げ、少し後ろに移動すると、ゆっくりと頭を下ろす。

 

「今は9時か…………自由行動が始まる時間もあるから10時頃に部屋を出ます」

「承知しました」

 

そしてその間、俺は久々の心地好さを味わっていた。

 

何故か紫園さんの表情が、赤くなりながらも嬉しそうだったのが謎だが、この際それは気にしないことにした。

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