IS~宿命の砲火~『出来損ないと呼ばれしドイツの帝王』(更新停止中)   作:弐式水戦

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第八十六話~どうしたもんかねぇ~

臨海学校2日目の早朝、俺は紫園さんからの抱きつきから解放されている隙に布団から抜け出すと、洗面所でベタベタに濡れた耳を洗い、瞬間移動で旅館の中庭に出ていた。

退屈だった俺はバイクとしてのゴールドウィングを出し、またしても瞬間移動で家から工具箱を持ってきて、バイクの整備をしていた。

流石に、まだ皆が寝ている時間に怪物のようなマフラーサウンドを撒き散らすマイバッハエンジンを起こすわけにもいかないので、緩んだボルトを閉めたり、軽く叩いて異常がないかを確認したりしていた。

 

「良い子はまだ寝てる時間だぜ?フェルディナンド」

 

突然声をかけられて振り向くと、其所にはナチスの軍服姿の親父が立っていた。

 

「ならばこう考えりゃ良い。『悪い子だから起きてるんだ』ってな」

「そりゃ違ぇねえや」

 

そう言って、親父はニヤリと笑った。

 

「そういやフェルディナンド、お前今暇か?」

「ああ」

 

そう答えると、親父は言った。

 

「じゃあさ、この近くにある岬にでも行ってみろや。絶景だぜ?さっき行ってみたが、ありゃドイツじゃ中々見れねえぜ?」

「ほお~……………………じゃあ行ってみっか」

「おう、行け行け。んじゃな~。夏休みにはツラ見せに来いよ~?」

 

そう言って、親父は帰っていった。

 

俺はゴールドウィングを待機形態に戻し、瞬間移動で部屋に戻ると、浴衣から念のために持ってきていた作業着に着替え、親父から送られてきた、ISスーツ(?)の入っている袋から銃弾を取り出してポケットに入れ、バレないように瞬間移動で駐車場に転移すると、バイクとしてのゴールドウィングを出し、親父の言ってた岬へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「へぇ~、こりゃ確かに絶景だァ……………………親父が絶賛するのにも頷けるぜ」

 

俺はそう言いながら、バイクから降りる。

 

ヘルメットをゴールドウィングの後部座席の後ろにあるトランクに入れ、ズボンのポケットから銃弾を取り出すと、煙草のように燻らせる。

前世でもよくやった、俺や親父、イワン特有のスタイルだ。

 

レオパルトの待機形態である籠手を、腕時計のようにすると、今の時刻が立体映像で映し出される。

 

「5時半か……………………結構早いな。朝食まで約1時間半もあるじゃねえか」

 

そう呟きながら、俺はゴールドウィングのシートに腰かける。

スマホを取り出して写真を撮り、後で紫園さんに見せてやろうと思っていると、背後に人の気配を感じた。

 

「(数は1人か…………親父か、それともお袋か?はたまた紫さんか?)」

 

俺はそう思いながら、ゆっくりと背後を振り返った。

 

其所に居たのは…………………………………………

 

 

 

「久し振りだね………………………………はるくん」

 

風に靡く、長い桃色の髪、大人ではあるが、何処と無く幼さを感じさせる顔、大人の割には矢鱈と高い声………………………………

雰囲気こそ昔と違うが、この人が、篠ノ之束。ISの産みの親にして、天才科学者。そして、篠ノ之箒の実の姉だ。

 

『久し振り』と、彼女は言った。

確かにそうだ。最後に話したのは、俺がドイツに行くことになる2、3日前。つまりは、大体2年振りだ。

 

だが、俺は何も言わず、ただ目の前に居る彼女を見る。

何しに来たのかは知らねえが、どの道に転ぼうが、この女は織斑ツインズや妹、そして織斑千冬の方にばかりかまけてきた。

ある程度の時期は、俺でも彼奴等と同じように接してくれたが、中学辺りになれば、若干他人行儀になる。

そんな俺に、今更何の用で来やがった?

 

そう思いながら、俺は銃弾をポケットにしまうと、笑って言った。

 

「これはこれは、篠ノ之束博士ではありませんか。おはようございます」

「えっ……………………」

 

俺が言うと、彼女はショックを受けたような表情を浮かべた。

 

「な、なんでそんな他人行儀なの?はるくんでしょ?私だよ?篠ノ之束だよ?小さい頃、よく一緒に遊んだでしょ?」

 

そう言いながら、彼女はゆっくりと近づいてくる。

俺は何も言わないまま、彼女の行動を見る。

 

攻撃の意思はないみたいだが、信用できる人物かと聞かれれば、そうとも言えない。

てか、なんで俺が織斑春馬だった頃の連中は、皆して今更春馬春馬と喚き出すんだ?

出来ればその反応は、俺が死んだと言う放送が流れた時にしてほしかったぜ。

 

そう思いながら、俺は言った。

 

「はるくん?誰の事を言っているのです?自分は黄昏狂夜です。貴女の言う『はるくん』とやらではありませんよ?」

 

そう言うと、彼女は動きを止める。その表情からすると、かなりショックを受けているようだ。

「なんなら、その証拠を見せてやりますよ。ホラ」

 

俺はそう言うと、ズボンのもう一方のポケットから免許証を取り出して見せる。

篠ノ之束は近づいてくると、除き混むように免許証を見た。

 

「そ、そんな……………………ッ!」

 

表情が驚愕と悲しみに歪み、後退りするが、俺は知らん振りをする。

 

「たとえ容姿が『はるくん』にそっくりでも、俺は『はるくん』ではありません。容姿が似ているからって、死んだ人間と影を重ねられても困るんですよ」

 

そう言うと、篠ノ之束は顔を俯ける。

 

「まあ、他人や平凡な人間には何の興味も示さない貴女からすれば、どうでも良い事かもしれませんがね」

「ッ…………どうして、そんな事言うの……………………?」

 

そう言って、彼女はゆっくりと顔を上げ、涙を流しながら近づいてきた。

 

「ねぇ、どうしてなの?はるくんはそんな事言わなかったじゃない。私の話、色々聞いてくれて、何時だって笑ってくれてた、それがはるくんでしょ?ねぇ、戻っておいでよ!あの織斑家にも篠ノ之家にも行きたくないなら、私とおいでよ!私あれから、八雲重工の社員になったんだよ?ちゃんと人とも話せるよ?……………ねぇ、はるくんってばぁ!」

 

ポロポロと大粒の涙を溢しながら、篠ノ之束は俺の肩を掴んで揺さぶる。

 

「……………………だから何だってんだよ」

 

俺は肩を掴む手を振り払い、低い声で、威嚇するように言った。

 

「ああ、そうだよ。俺は織斑春馬だよ。『織斑家の出来損ない』って呼ばれていた、織斑春馬だよ。だがなぁ、その織斑春馬は、モンド・グロッソで拉致られて、誰にも助けられないまま死んだ。織斑千冬に見捨てられて、衛生ですらジャック出来るアンタにも助けられずにな」

「ち、違ッ!私は!」

「違う?何が違うってんだよ?どの道お前も、優秀な人間にしか興味のなかっただけじゃねえかよ。八雲重工の社員になった?人と話せるようになった?そりゃ良かったな、おめでとう。だがそれが、俺がアンタ等側につく理由にはならねえんだよ」

「……………………」

「黄昏狂夜って名前にしても、あの元愚弟共には俺が織斑春馬だってバレてるから、この先隠し通すのは無理だろうよ。だが、そうだとしても、誰に何と言われようと、俺は黄昏狂夜なんだ。お前の言う織斑春馬こと『はるくん』は死んだんだ。もうこの世には居ねえよ」

 

俺が言葉を吐き捨てていくにつれて、篠ノ之束の元だと思われる嗚咽が聞こえる。

 

「お前には、一応感謝してるよ。女性にしか使えなくしやがったせいで矢鱈と政府の人間に絡まれたが、何のかんの言っても桜花や氷華、葛城というかけがえのない相棒や、ペパロニやアンチョビにも出会えたからな」

 

俺はそう言いながら、泣き伏す篠ノ之束の横を通り過ぎ、バイクに跨がると、イグニッションキーを回す。

そしてクラッチに手を添え、マイバッハエンジンの音で声が掻き消される前に、最後の台詞を吐き捨てた。

 

「だが、もう俺はお前の元に戻るつもりはねえよ。さよなら、束さん」

 

そう言って、俺はエンジンをかけると、泣き伏す篠ノ之束にそう言って、旅館へと戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

『マスター…………』

「(ん?どうした?)」

 

旅館に着き、バイクを待機形態に戻した後、瞬間移動で部屋に戻り、まだ寝ている紫園さんの横で座っていると、桜花が話しかけてきた。

 

『あれで……………………良かったのですか?』

「(……………………正直、俺にも分からねえよ。だが、何と言うか……………………もう、馴れ合えない気がしてな。自分でも最低な事をしたと思ってるよ)」

『そうですか……………………でもマスター、コレだけは覚えておいてください』

「(何だ?)」

 

そう言うと、桜花は一呼吸置いてから言った。

 

『たとえ、貴方が篠ノ之束を受け入れても、そのまま拒絶し続けようと、私達はずっと、貴方と共にあります』

「(ああ、分かったよ……………………ありがとな)」

 

俺はそう言って、時間になるまで部屋から外を見ていた。

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