IS~宿命の砲火~『出来損ないと呼ばれしドイツの帝王』(更新停止中)   作:弐式水戦

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第八十八話~銀の福音だとさ~

旅館のとある一室、恐らく非常事態用の会議室らしき部屋にて……………

 

「2時間前、ハワイ沖で試験稼働中にあった、アメリカ・イスラエル共同開発の軍用IS--銀の福音《シルバリオ・ゴスペル》--こと、以下《福音》が、制御下を離れて暴走し、監視区域より離脱したとの情報が入った。情報によれば、無人のISだと言うことだ」

 

ウィーッス、久しぶりだね皆さん。元気してたかな?黄昏狂夜こと、フェルディナンド・ポルシェだ。

さてさて、久しぶりの再開を心から喜びたいってのに、非常に残念なんですけど、それどころじゃないんですよねぇ~。

理由はまあ、この話からして大半の人が分かってくれると思うんだけど……………はい、緊急事態です。emergencyなんです。

 

いや、何かね?軍用ISが暴走したとかふざけた連絡が入っちゃったんですよ。

つーか待てやコラ、アラスカ条約でISの軍事利用は禁止だろうが。何してんだよアメリカとイスラエル。

 

「その後、衛生による追跡の結果、福音は此処から2キロ先の空域を、今から約50分後に通過する事が判明。IS学園上層部からの連絡により、我々がこの事態に対処する事になった」

 

部屋の壁近くに仁王立ちして言う女、ブリュンヒルデ(笑)こと、織斑千冬が言うと、上白沢先生が何やら操作し、ディスプレイに映像を流して見せた。

 

「教員は、学園の訓練機を使用して、海域、空域の封鎖を行い、福音の撃破は、専用機持ちに担当してもらう」

「……………はい?」

 

織斑千冬の言葉がイマイチ理解出来なかったのか、織斑兄が間の抜けた声を出す。

 

「つまりだな、暴走したISを、我々が止めると言う事だ」

「マジで!?」

「兄さん、一々驚いてたらキリがないよ?少し落ち着いて」

 

ラウラの言葉にオーバーなリアクションを見せる織斑兄を、織斑弟が落ち着かせる。

 

「では、作戦会議を始める。意見・質問がある者は挙手しろ」

 

その言葉に、真っ先にオルコットが手を上げた。

 

「目標ISの詳細なスペックデータを要求します」

「良いだろう。だが、決して口外するな。情報が漏洩すれば、諸君等には査問委員会による裁判、そして最低でも2年間の監視がつけられる」

 

そうして、ディスプレイに福音のデータが次々と表示されていった。

データからするに、オルコットのIS同様、オールレンジ攻撃を可能とした、広範囲残滅型のIS。

おまけに、福音は今も尚、超音速で飛行しているから、アプローチは出来て1回だけ。

 

「つまり、一撃必殺の突破力が必要となる……………」

「なら、僕と兄さんの出番と言う訳だね」

 

デュノアの呟きに、織斑弟が自身有り気に立ち上がって言う。

 

「それと、狂夜さんもですね……………」

 

俺の側に座っていた美鈴も、付け加えるように言う。

つーか、お前居たんだ。早苗やうどんげも居るし。あ、射命丸さんも居た。

 

「なら問題は、この3人をどうやって運ぶか、だね……………」

「えっ!?ちょっと待ってくれよ!俺と秋彦と黄昏でやるのか!?」

『『『『『当然!』』』』』

「ユニゾンで言うな!!」

 

声をハモらせて言う、俺以外の専用機持ちに、織斑兄は思いっきりツッコミを入れる。

ふむ、ビミョーだけど座布団1枚。

 

「織斑兄、これは訓練ではない、実践だ。下手をすれば、命すら危うくなる。覚悟が無いなら無理強いはしない。誰も、それを咎めない」

「ッ!」

 

織斑千冬が言うと、織斑兄はハッとした表情を浮かべた。

そして、数秒程考えるような表情を見せた後……………

 

「やります……………やってみせます!」

 

織斑千冬の方へと振り返り、力強く言う。

 

「念のために聞いておくが、織斑弟……………お前はどうする?」

「愚問です、姉さ……………失礼、織斑先生」

 

ほぅ……………身内には聞くんだな。さて、俺には……………

 

「では、黄昏も参加で良いな」

 

……………は?

 

この女、身内には聞くクセに俺には聞かねえってのか?俺の選択権はねえってのか?

緊急事態だと言うのは分かるが、それなら何故、この2人には聞いた?

 

 

……………ああ、成る程。此処での俺は、ただ力があるだけの傭兵程度か……………結局身内が大事で、俺の場合は勝手に決めればそれで良いってか……………

 

平和ボケした小娘が、ふざけるなよ……もう、我慢の限界だ………ッ!!

 

「では、具体的な作戦の内容を………『……ふざけた事ほざいてんじゃねぇぞ貴様』……………?」

 

俺の喧嘩スキル《ナチスの死神》を発動させ、視線やオーラだけで人を殺せんばかりのドスを効かせた声で言う俺を、この部屋に居る全員が振り向く。

 

『先程から黙って聞いていれば、随分と勝手をほざいてくれるなぁ、織斑千冬……………弟2人には聞くのに、俺には聞かないんだな』

「お前の場合は強制参加だ。この2人が受けた以上、お前にも参加してもらう。良いな」

 

その言葉に、俺は本格的にキレた。

 

『ふざけるなよ、平和ボケした小娘……………もう限界だ』

 

俺はそう吐き捨てると立ち上がり、出口へと歩いた。

 

「きょ、狂夜さん。何処へ?」

 

美鈴がおずおずと聞いてくる。

何処へ行くだと?そんなもの決まっている。

 

『部屋に戻る。こんな茶番劇に付き合ってられるか、貴様等でやってろ』

 

俺はそう吐き捨てると、今度こそ出口へと歩く。

 

「ちょ、ちょっと待ってください!」

 

ガタッ!と椅子が倒れる音がしたかと思うや否や、山田先生と長谷川先生が立ち塞がった。

 

『……………何の用だ貴様等』

「ヒッ……………ッ!?」

 

山田先生は小さく悲鳴を上げ、涙目で後退するが、長谷川先生は何とか持ちこたえたらしく、深々と頭を下げてこう言った。

 

「お前の人権が無視され、怒るのはよく分かる。だが、今はその事を気にしている場合ではない……………お前の力が必要なんだ。愚痴なら後で幾らでも聞いてやる。だから頼む……………残ってくれ」

『……………』

 

そう言われ、俺は目の前の2人を押し退けて進もうとした足を止める。

出来れば言いたくないが、言うしかないか……………

 

『俺の力、ねぇ……………なら、俺に何の力も無かったらどうするつもりだ?』

「え?」

 

頭を上げ、疑問符を浮かべて聞く長谷川先生に、俺は言葉を続けた。

 

『もし、俺に何の力も無く、ただの専用機持ちなだけで、こんなオーラも出さない、生身でISに向かっていけない、ごく普通の人間……………否、それよりももっと無能な人間だったらどうする?今のように止めるか?』

「……………」

 

俺の言葉に、先生は言葉を詰まらせた。

結局のところ、コイツ等の目的は俺のゴールドウィング、或いはレオパルトの参加だ。それによってリスクを少なくしようと言う魂胆だろう。

『俺の専用機は、少なくとも此処に居る誰の専用機よりもスペックが高い。なら、ソイツを使ってやらなくてどうする?』みたいな感じでな。

 

『それに元はと言えば、これはアメリカとイスラエルがバカやらかしたからこうなったのだろう?なら、何故俺達が連中の尻拭いをしなければならない?そもそも、こんな平和ボケしたガキに軍用ISの相手をさせるのを要求するなんて、委員会や学園上層部は気でも狂ったか?太平洋戦争の神風特攻じゃないんだぞ』

 

俺の言葉に、誰一人として言い返す者は居ない……………

 

「ふざけんな!」

 

……………訂正、一人居ました。

 

「春馬兄!これは緊急事態なんだぞ!そんな事言って、結局は自分が助かりたいだけじゃないのかよ!?緊急事態なのに私情を挟むな!」

 

ほぅ……………言いよるな。

俺は感心したような溜め息をつくと、オーラを抑えた。

どうやらこの部屋一帯を威圧していたらしく、全員が安堵の溜め息をついている。

 

「ならば聞こうか。それなら何故、織斑千冬はお前と織斑弟に、やるかやらないかを訊ねた?」

「そ、それは!それは……………」

 

言い淀む織斑兄に、俺はさらに言葉を投げ掛ける。

 

「緊急事態なのだろう?一人でも多くの戦力が必要なのだろう?一々私情を挟んでいられないんだろう?なら、お前等2人も強制参加にするのが妥当と言うものだ……………違うか?」

 

俺がそう言うと、少しの沈黙の末に……………

 

「い、今はそんな事どうでも良いだろ!」

 

強制的に話を終わらせる、『今はそんな事どうでも良いだろ』という言葉を喰らった。

この言葉が意味するのは、まあ簡単な話、『何も言い返す事がありません、全くもってその通りです』と言ってるようなものだ。

 

溜め息をつき、仕方無いと言おうとした時……………

 

「甘ったれた事をほざくな、小僧」

 

その声と共に瞬間移動で現れた、俺と瓜二つの容姿を持つが、イワンのように鋭い目をして、黒髪の俺とは違って銀髪を持つ……………

 

「お、親父!?」

『『『『『『ええっ!?』』』』』』

 

我が父親--レーヴェ・ポルシェ--が腕を組み、イラついたような表情を浮かべて立っていた。

 

取り敢えず親父……………来てくれるのはありがたいが、場合が場合だから、その辺考えてほしかったのだが……………( ̄▽ ̄;)

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