「ねぇねぇ、お凛々。近々学校の駅までの定期券内で祭りがあるらしいんだけどいかない?」
俺は寝ぼけながらトーストを口へと運び何故だか知らんが俺の家の中にいる奴の話を聞き流していた。
「ん、あぁ。そうだな。いんじゃない?」
「えっ、本気で?お凛々がそんな事言うとは思わなかったな……。」
「そうか……?気のせいだろ。」
「うーん……そうかな。」
珍しく唸っていた奴の事を気にも止めず、それ以前に奴が何について話してるかも気にせずに適当に返していた。
「祭りとはどんなことをするのですか?」
魂魄は何やら奴に尋ねていた。
「どんな事……か。まぁ、なんか食べたり縁日とかやったりするんじゃないかな?」
「へぇ……あまり幻想郷の祭りとは大きな差は無いんでしょうか。」
「どうだろか……でもまぁ妖夢さんの元から着てた服って何となくドレスと言う感じじゃ無かったから洋風じゃねぇのかなぁ……。」
とまあブツブツと喋っていた。すると奴は何か思いついたみたいで少し響く様な音を手を叩いてだした。
「祭りと言ったらあれだな浴衣を買わないとな。」
「ゆ、浴衣ですか?そ、それはちょっと……。」
「お凛々が見てくれるってのに?」
「…………やります。」
「そうこなくっちゃな……。」
「ふわぁ……お前らまた何かするのか?」
俺は目を擦りながらも二人の方を見てそう言った。
「あぁ、ちょっと今からその為の服を買ってくるんだよ。あ、お凛々。次の週末空けといてね。」
「へいへい……。」
「それでは私も浴衣を買うためにいってきます。」
「いってら……。」
二人はいつの間に着替えてたのか、バックを持って部屋を出た。
そして俺は朝食を食べ終わった後、歯磨きをして目が冴えた後にある事に気がついた。
「浴衣……だと?」
「それでどんな浴衣がいいと思いますか?」
私はもう乗りなれた電車に揺られながら中村さんへと尋ねました。
「……はっきり言って妖夢さんには何でも似合うと思うんだけど。」
「そうですかね?幽々子様みたいに似合うでしょうか?」
「幽々子って人はスゲェ浴衣が似合うんだな……。」
中村さんはそう言ってくれますがあまり自信はありません。何せ紫様や幽々子様は私に何回か着せて下さった事はありましたが自分でその姿を見たのは庭にある池でしか見た事が無かったからです。その姿でさえ鯉が水面下を泳ぐ際に輪郭すら歪みうまく見る事が出来ませんでした。
「あ、因みに幽々子様は人間ではなく亡霊ですよ?」
「浴衣が似合う……亡霊?」
私はそんな事を思いながら何故か笑った様な困った様な顔をした中村さんを見ていました。
「ここも凄い場所ですね……。」
私が中村さんに連れられて来た場所は幻想郷にある人里に似た様な雰囲気の所でした。しかし幻想郷と違った所は人が物凄くいて、狭い中をひしめきあっている様だったのです。
「はぐれると困るから手を繋いでおくけどいい?」
「あ、はい。分かりました。」
そう言うと彼は私の手を握り、大勢の人がいる中を進んでいきました。
暫く進むと彼は止まって何やらポケットから財布を出して片手で器用にお金を出しました。そして前方にあった屋台にそれを渡すと、私の手の繋いで無い方の手には二本の団子のついた串がありました。
「い、一本とって……。」
「は、はい。どうも。」
彼は片手で何とか持っていた団子を渡すともう一方の団子を咥えてふぅと溜息を出しました。
「あ、あのこれは……。」
「きびだんごだよ?ここのきびだんごは美味しいからね。折角来たんだから食べようと思ってね。」
彼はそう言うと再びきびだんごを咥えて口をもぐもぐと動かしました。私も彼の様子を見た後、同様にきびだんごを口へと運びました。
「……おいしい。」
「それはよかった。」
彼はにんまりとした後に団子のついていた串を前方に指して言いました。
「あそこに浴衣が変える所があるから、行くよ?」
そして私の丁度食べ終わった団子の串をひょいと持ち上げてゴミ箱に捨て、ご馳走様でしたとお店の人に言うと私と握っていた手を少し強く握り私を先導しました。
「ふう、遠かったな。」
「ここがそのお店ですか……。」
私と中村さんは古い建物の着物店に到着しました。少しこぢんまりとしている様に見えますが少ない空間ながらも綺麗に浴衣が飾ってありました。落ち着いた物が多かったのですが、奇抜であったり、派手であったり見たことの無い物までもがありました。
「やぁ、いらっしゃい。」
「こんにちは、あの、彼女に合う服を探しているんですけどありますか?」
「えぇ勿論。貴方と二人で似合う浴衣なんてあるわよ。……それにしても綺麗な方ね、お兄さん大事にしなさいよ。」
「え、えぇ?わっ、私達はそんな関係じゃ……。」
私は急の返答でわたわたとしていると隣の方で軽快な笑い声が聞こえてきました。
「ハッハッハ!馬鹿言わないでください。僕と彼女では釣り合いませんよ。もっとイケメンに生まれたかったなぁ。」
「フフフ、何言ってるの。人間外見じゃなくて中身で勝負よ。」
「そう言えるのはもう少し年取ってからです。若い奴らはイケメンに流れていくのが運命ですよ……」
「……貴方もなかなかな苦労人ね。」
な、なんか始まってしまいました。急な返しに反応できるのはすごい事だと思いますがなんだか話についていけません……
そんな様子を感じ取ってくれたのか中村さんは悲しみに満ちた声を止めて話を早々に切り上げ、話を戻してくれました。
「それで彼女に似合う様な物を用意して下さい。」
「分かったわ。それでは中に案内するわよ。」
「あ、失礼します。」
私は店の方に連れられて奥の方へと入っていきました。
俺は妖夢さんを笑顔で見送った後に祭りの日程や時間、内容などを確認していた。週末な上、都心だし夏休みだから混み混みになってまるで人がゴミのように見えるかもなと思いながらスマホを弄っていた。
それにしても複数人での祭りは久しぶりだな。俺みたいな日陰者には声は掛からないし、塾の講習があるからな。何日に一回しか丸一日は空いてないし、塾帰りによる事も多く、最近アニメが消化し切れないからな。
後、お凛々は人混みが苦手だったはずだ。中学の頃はよくはぐれて拗ねていたのを覚えている。
懐かしいな……
俺はそう思っているとスマホが鳴り出した。
マナーモードだったからバイブレーションだけだったけども。どうやらスマホに電話を掛けてきたみたいで主はお凛々だった。
「もしもーし、純です。」
「おい、お前。今何処だ?」
「何処だって言われても…………
昔、花穂の浴衣を買いに言ったとこ。」
「……帰ったらぶち殺な。」
おお怖い怖い。いつも通り物騒でおっかないね。
「お凛々は相変わらずツンデレだねぇ。後、もうそろそろ塾じゃないの?」
「もう塾の前にいるわ。まぁ気になってかけたんだよ。」
「何の問題も無いよ。ノープロノープロ。」
「宛になんねぇよ。」
「それにしても最近スケジュールギチギチなのによく宿題までやって塾行けるねぇ。」
「……盗み見してたのかよ。」
「いやいやお凛々が今日英語のテキストが書きかけであったから寝落ちしたんだなぁって思ってね。」
お凛々は部活、バイト、勉強とこなして、部活も終わり推薦組の俺とは忙しさが比では無い。昨日も夜遅くまで話しててその上塾の宿題までやってたからな、真面目というか何というか……。
「あっそ……というか今魂魄は試着中?」
「そーそー、どんな浴衣なんだろうなぁ、気になるなぁ。」
「勝手に言ってろ……」
俺は一蹴されたので話題を違う方へ持っていく事にした。
「というかお凛々って進路どうすんだっけ?」
「ん?あぁ、別に考えてはねぇけどさ。親とかの迷惑かけないように特待生みたいな奴にはなる予定かな。」
「じゃあお凛々は国公立とか受けるの?」
「んー……それかそこらの私立の所に入ろうかな。」
「まぁこのご時世高卒よりも大学の方が就職率が圧倒的にいいからね。」
お凛々は暫く唸っていたが急にこう言った。
「違いないな。あ、時間だわ切るな。」
「はいはーい、じゃあ頑張って……もう切れてるじゃん……。」
俺は少し虚しい気持ちになったが軽く息を吐き気にしないようにした。
「やれやれ……お凛々は昔から親しい奴には雑だねぇ。」
俺はその後もブツブツ独り言を喋りながら彼女を待っていた。
彼らが訪れた場所は浅草寺を想像して書いてみました。