そしてあけましておめでとうございます。
そうこうして俺達は近くにあった屋台の行列近くをうろうろとし始めた。たこ焼き、お好み焼き、焼きそばを初めとする定番の物やパスタ?を揚げたやつが売っていたりした。あれって美味いのか?そして一回りしてから何か買おうと提案しようと思ったが奴の姿が無かった。
「おい、何処に行ったんだよ……」
祭りに来てから数分ではぐれるとか馬鹿じゃねぇの?はぁ……と溜息をつくと何やら執拗に肩をポンポンと叩かれた。振り返るとそこには赤い鬼のお面をつけて、手には何本かの焼き鳥を持った長身の男がたっていた。
「……お前、本当に器用だよな。」
「んー?何が。」
「焼き鳥を持ったままお面つけれるなんてな。」
「え?いやいやお面つけて焼き鳥買ったんだよ?」
「うわっ、恥ずかし。帰っていいよ。」
「お凛々……今日も飛ばしてるねぇ。」
その男は俺に焼き鳥を一本、魂魄に一本ずつ渡すと顔につけていたお面を右の方へずらして表情を見せた。
「あぁ、中村さんだったんですね。……美味しいです。」
「ぐるりと回ってから買うなんて非効率的だからさ。こんな大人数の中で悠長にしてなんかいられないからね。」
「非効率的で悪かったな。」
「いやいや、お凛々はその崇高な思想の元、妖夢さんに祭りの紹介をしたんでしょう?」
ここまで気が利くなんて凄いよ!とまぁ俺は奴の手の上で踊らされた気持ちになってウザかったので奴の足を思い切り踏んづけて気を紛らわせた。
祭りの中一人、痛みに悶えてるとかと一緒に居たくないよな。うん。
「……そういえば妖夢さん?今日はあまり元気無さそうだけど何かあったの?」
「えっ!?いえ、別に何もないです……」
「ふうん?そう。あ、りんご飴とか食べる?」
「ええっと、今はいいです……」
「そっかそっか。」
彼はそう言うと近くの店に並び始めました。私は彼の楽しそうに屋台を眺めている顔を見て溜息を吐きました。
「全く……どうしてこんな事になってしまったんでしょう。」
私はこちらの世界で起きた出来事や記憶などを思い出しながらこう呟いていました。
元々こんな筈では無かったのに……
こんな日々が愛おしくなってしまうなんて……
「しかも幻想郷にも帰れそうにもありませんし……一体「はい妖夢さん、あーん。」んぐ!」
そんな事を考えていると口の中に何か入ってきました。それは口の中でどんどん溶けていくのとともに甘味も徐々に伝わってきました。
「美味しい……んんっ!?」
そう思ったのも束の間で頭にキーンと強く痛みが響いていきました。かためを質感の物をぐっと噛み締めながらその痛みに耐えました。
「あの……妖夢さん?取り敢えず口を開けてスプーンを離してくれない?」
その声の主は少し戸惑った様な声で言ったのを聞きました。
「中村さん……?い、一体何を?」
突然の出来事に頭がついていかず辛うじて理解出来た事だけを口に出しました。
「え?い、いやぁ……ちょっと思い詰めてたみたいだったから……頭が冴える物を少しね。」
「急にそんな事しないで下さい!びっくりしたじゃないですか!」
「あはは……ごめんごめん。別に悪気があった訳じゃ……多分ないんだけども、ついやっちゃうんだ☆的な感じで……ね?」
「はぁ……まぁいいでしょう。折角の祭りなんですから楽しんで行きましょうか。」
全く……人の気も知らないでと私は深い溜息をつきました。
もしかして私の気持ちを察してくれたのでしょうか?
ふと彼の方を向いてみると彼はかき氷が発する痛みに頭を悩ませていました。
暫くの間屋台を見回った後彼があることを言いました。
「そういえばお凛々いなくない?」
「……言われてみればいませんね。どこいったんでしょうか?」
私達は暫く周りを見渡してから動揺を声に言葉に出し合いました。
「よく良く考えてみればかき氷を食べてた頃からいなかった気がするし。もうかれこれ一時間近くたったんじゃないかな。」
「そう考えてみると心配ですね。では手分けして探してみましょう。」
「ちょっと?それだと二人ではぐれちゃうんじゃないかな?」
「あっ……」
それもそうでした。このまま三人がはぐれたら本末転倒ですよね。
「それではどうしまょうか?」
「うーん……取り敢えず妖夢さんはここで待機してくれない?俺はぐるぐるとお凛々の事を探すよ。もしお凛々がここを通ったとしたらお凛々に頼んで俺に連絡とってくれないかな。」
「分かりました。それでは暫くの間ここにいればいいでしょうか?」
「そうそう。いや、待って……あそこの橋の上で待っててくれないかな。」
彼はそう言うと少し遠くにある川にかかっている橋を指さしました。
「あそこならお凛々とかが通ると見やすいと思うからそこで待っててくれないかな?」
「成程、それではあそこに向かいます。」
「それじゃあ信号に気をつけて。」
「分かっています。信号機は緑でも青って言うんですよね。」
私は間違えぬよう充分に復唱しながらすぐに橋へと向かいました。
「そこじゃねぇんだけども……」
彼は少し億劫な顔をした後、彼女の歩き出した道と反対の方へ歩き出した。
「屋台の焼きそばもなかなか良い感じだな。」
俺は一人、暗い夜道で焼きそばに手をつけながら人が次々と向かっている方向へと歩いていた。
ここが何処かも分からず何をする宛も無く俺はただただ歩いていた。
「それにしてもどこの駅に向かってんだ……。」
定期券内だからと言っても通過するだけで降りた事もない駅。それに真っ暗だからどこに何があるかはっきりと見る事が出来ない。
「だからと言ってケータイを使うのは……」
俺はポケット之なかで先程からずっと振動している物を取り出して溜息をついた
『着信元 中村 純』
電話に出たら出たでうるさいだろうし出ないと出ないでケータイは鬱陶しいし相変わらず面倒な奴だ。
「折角二人で楽しく祭りを過ごしてんだろうに俺の事をきにかけんじゃねぇよ……」
女性にそんな態度したら迷惑だって事をアイツは分かってるだろうになぁ……と一人愚痴をこぼしつつ俺は歩き続けた。
すると視界の奥の方から随分と低速でバイクが走ってきた。歩行者天国では無いからバイクが走ってはいいのだがこの祭りの為、道路まで人が広がって歩いているせいか殆ど車などとすれ違わなかった。
俺は何か見たことあるバイクだと思いながら通り過ぎようとすると急にそのバイクは止まった。不思議に思い振り返るとそのバイクの運転手は座席の下の物入れからヘルメットを取り出して渡してきた。
その渡されたヘルメットと改めてバイクの車体を見て俺は気がついた。
これ、俺が奴のバイクを借りる時に使うヘルメットじゃん。
俺は取り敢えず、そのヘルメットを被って後部座席に乗ると何故かバイクはUターンしてさっき走ってたスピードよりも速度を上げて走行し始めた。
「……何でお前がここにいるんだよ。」
俺はバイクの運転手にそう聞いた。
「そりゃあお凛々を探して三千里だよ。あ、そうそう上着のポケットにあるケータイの電源さ取り敢えず切ってくれない?」
「は?何で。」
「だってさお凛々に電話掛けながらバイク走らせてたからね。」
馬鹿なの?と思いながら俺は奴の上着の中に手を入れた。
「きゃー、お凛々触り方イヤラシー、へんたーい。」
「ぶん殴るぞ。」
俺は悪態をつきながらも何とか両手を奴の腰から離さないようにして送信拒否ボタンを押した。
「なぁ、電源切るの超面倒いからこのままでいい?」
「んー?あ、そうだ……」
奴は何を思ったのか急にバイクを止めて振り向いてきた。そしてケータイを手に取るとこう言った。
「走ってる最中にそんな事するの危ないから止まってやればよかったね。」
「………………。」
奴はうっかりーてへーとか言いながらアクセルを再び踏んだ。
俺は暴力でも振るって事故を起こすのは嫌だったから代わりに奴の耳元で呪詛を唱えてやった。
何故だかは知らないが露骨にアクセルを強く踏む音が聞こえ、心無しかスピードが上がった。
こんな季節に祭りなんて……と思っても気にしないでください。
作者もそうですから