一人は嫌いじゃありません。
幻想郷にいた時は白玉楼にいる時以外はいつも一人でしたし、別に一人がいいとは言いませんが一人でいる事が嫌だって事もありませんでした。
こちらの世界に来てから私は随分と色んな事を学んだんですね……
「あれ?この子可愛くない!?」
「ん?あぁ!マジで可愛いじゃん!?」
「お一人様っぽいから話しかけてみよーぜ。」
「オッケー俺行ってくる。」
「ねぇねぇ君。可愛いね。名前は何て言うの?」
「……私ですか?」
「そうそう君君。もしかして一人?だったらお兄さん達と遊ぼうよ。」
「え?あの……えとその。私、今人を待ってまして……。」
私はいきなり話しかけてきた男性に驚きながら言葉を続けました。
「人を待ってる?……まぁいいじゃん。そんなの気にしないで行こうぜ。」
「い、いえ。そういう訳にも……」
こちらの世界の人は失礼な方が多いんでしょうか?……紅白の巫女も白黒の魔法使いも変わりありませんか。
「いいからいいから早くついてきて。」
すると一人の男性が浴衣の裾を掴んでひっぱってきました。
「ッ!!止めてください!!」
私は身の危険を感じてその男性を突き飛ばしてしまいました。男性は橋の手摺りの角に体の一部を強打したらしく暫く蹲りました。
「……お前、よくもやってくれたな。」
「えっ……で、ですが。」
二人の男性が私のした事に苛立ちを覚えたのかジリジリと迫ってきました。
「うるさい!調子に乗るのも大概にしろ!!」
そう言って男性の一人が私の肩をとても強く押してきました。私は着物と履いていた下駄の為踏み止まることが出来ずに
突然、浮いたのを感じました。
「あの橋で待ち合わせなのか?」
「そうだよ?」
「さっきの道路、規制されてない道路なのに人めちゃめちゃいるな。」
「確かにね。何でここはスカスカなんだろうな。」
暫くバイクを走らせてると奴が言った橋に辿りついた。
「あーあれが妖夢さんだね。」
「何処……あ、見つけた。というかアイツら誰だ?」
俺達は魂魄を見つける事が出来たが彼女の周りには何かよく分からんが誰かがいる。
「んー……妖夢さんの住んで世界の人か……?いやだとすると服が現代っぽいからただのナンパかな。」
「急げ。」
「大好きな彼女の元に?」
「ぶっ飛ばすぞ。」
「へいへーい。」
そう言って加速した途端
彼女の体は橋から投げ出され川へと落ちていった。
「魂魄!! 」
俺達が川へと着いた時、彼女の体は既に沈んでいて手だけがじゃばじゃばと音を立てて見える状況となっていた。俺は浴衣を来ていたという事も忘れ、飛び込んで彼女の手を掴んだ。何とかして引き摺り上げ、人工呼吸へと移った。
「取り敢えず救急車は呼んどいた。お凛々は妖夢さんをお願い。」
「あ?今やってるから話しかけんな。」
死にものぐるいだった。
俺に関わった奴が皆こんなんなのは耐え難い物だった。
「くそっ……特待生入学でおじさん達に迷惑かけねぇ様にした結果がこれかよっ!」
死ぬな……死なないでくれ!
俺は……俺は…………
気がついた時にはあの忌々しい音が耳元で鳴り響いていた。そんな事もなりふり構わず俺は人工呼吸と胸骨圧迫を続けた。
「うわ……どうすんだよ。」
「どうするって……どうしよう。」
「と、とりあえずここから離れよう。」
「おい何してんだお前ら。」
妖夢を橋から落とした三人組がそそくさと去ろうとしたが純はバイクのライトで三人を照らした。
「やべぇ!逃げるぞ!!」
三人はそれに気がつくとそれぞれ散って行ったが彼は迷いなく三人のうちの一人をバイクで突き飛ばし始めた。
「えっ……。」
残った二人はバイクに乗った男を恐ろしい物を見るかの様だった。足はガクガクと震え、一歩も踏み出せないみたいだった。
「お、お前……自分が何してんのか分かってんのか!?」
「何って……倍返し?」
「こ、こんな事が許されると思ってるのか!!?」
二人はそう吐き捨てていた。彼は彼等を馬鹿にするかの様に鼻で笑い、こう言った。
「全く持って。俺は刹那的に楽しけりゃいいの。大体お前らが逃げなければ和解くらい出来ると思ってたしな。」
飛んだゲス野郎だ。まぁ、俺も人の事言えんがな。彼はそう言い終わると再びアクセルを踏み出した。
「「辞めろ……やだやだやだぁぁぁぁぁ!!!」」
彼らは目の前に迫り来るバイクを前にただ泣き叫ぶ事しか出来ずに気を失った。
純は彼等を寸での所でスルリと躱し、大通りの方へと向かってバイクを走らせた。
「すみません……魂魄は助かるんですか?」
「断言は出来ませんが重症ではありません。心拍数にも未だ問題は無さそうですし、すぐに対応した貴方のおかけです。」
「そうですか……。」
俺はそれを聞くと安心したあまり地べたに崩れ落ちた。その時に丸い石が膝を強打したが気になる事は無かった。
「取り敢えず彼女を病院に運ぼう。君も救急車に乗りなさい。」
「あ、ありがとうございます。」
俺は連れられるがまま救急車に乗って病院に向かった。暫くの間は彼女の心配をして、ずっと顔を見ていたが何時しか目元が霞んでいき……
俺が再び目を覚ましたのは病院内のベットでの事だった。
むくりとベットから起き上がり周りを見渡した。
「俺は一体……」
ふと部屋の片隅に干してある浴衣を見かけると全てを思い出した。
「そうか……そうだったな。」
魂魄の事が急に心配になったがそこまで酷い状態では無いと言っていたのを思い出して心を落ち着かせた。するとすぐに部屋をノックする音が静かに聞こえたと思うと看護師の人が引き戸を僅かに開いてこちらを見てきた。
「あ、九十九様おきていらっしゃったんですね。」
看護師の人は俺が起きているのを確認するとそう言って部屋に入ってきた。
「えぇ、俺は何ともありません。」
「そうでしたか……そう言えば外で待っている方がいましたよ。」
「待っている方?」
俺は立ち上がって部屋の外に座っている奴の姿を見た。
「誰かと思えばお前か。」
「……ひっでぇ、労いの言葉くらいかけてくれてもいいんじゃない?」
「よくやった褒めて遣わす。」
「相変わらずお凛々はツンデレだねぇ。」
寝起き早々だったけど有無や是非を問う前に殴った。
「うう……痛ぇ。」
「あの、そう言えば何ですけど俺と一緒に救急車に運ばれた女の子はいませんか?」
俺は起きてから気になっていた事をやっと切り出す事が出来た。看護師の人は少し首をかしげた後、少々お待ち下さいと言って去って行った。そして数分後、帰ってきた彼女はこう告げた。
「失礼ですが九十九様。貴方はお一人でここに運ばれましたよ?」
「は……?」
俺はそれを聞いた瞬間に凍りついた。
「え、嘘でしょう?」
「いえそんな事はありません。昨日この病院に搬送された患者さんは貴方一人でしたし、貴方と一緒に乗っていた救急隊員もそう言っていましたので間違いありません。」
「…………そんな馬鹿な。」
俺は軽く放心状態になり何も考える事が出来なかった。
「何かお疲れのようですが休んでいってはどうですか?」
「いえいえ、大丈夫です。俺が家まで送るので気にしないでください。」
「そうですか?それではお大事に。」
看護師の人は何やら奴と話して何処かへ行った。
「ほれほれ、帰るよお凛々。」
俺は奴に連れられるまま、バイクに乗り事故なく家へと帰ることが出来た。
だが帰ることが出来たと言っても魂魄が家にいたという訳でも無く、俺は深い喪失感に襲われた。
次回は最終回を予定。