「それでさー、これからどうするつもり?」
純は自分の持ってきたがっつりスタミナ弁当を食べながら聞いてきた。
「どうするっていわれてもな……ひとまずは家にいさせるのが一番だろう。」
俺は何も思うことが無かったのでそう答えた。すると奴は箸をテーブルに置き、やれやれという仕草をしてから言った。はっきり言ってうぜぇ。
「異世界から来たってのに部屋にこもりきりじゃつまんないだろ?三人で出掛けようぜ?」
「こんな格好だと違和感しかないぞ……」
俺は魂魄の姿をちらちらと見た後にそう告げた。
「うわー妖夢さんへの視線が、え、えろいー。」
「ぶん殴って埋めるよ?」
「おお、怖い怖い。」
俺ははぁっと溜息をつく頃には奴は再び弁当を食べだしていた。
「じゃあ何処行こうか?」
「そんなこと言われてもな。思いつかねぇよ。」
「手堅くショッピングってところかな。」
「それにしても目立つと思うんだが……。」
「確かに妖夢さんは綺麗だもんね。」
それを聞いていた魂魄は急に立ち上がり叫び始めた。
「ちょ。ちょっと!いきなりなんて事を言うんですか!」
「あれ?駄目でした?」
「だ、駄目という訳ではないんですが……その。」
「セクハラ犯ざーい。」
彼女の様子を見てによによしている奴にこう言ってやった。
「え、お凛々そんな事してたの?マジ引くわー。」
「おめぇだこのクソ野郎……」
すると奴は半歩後ずさって哀れみの視線を送ってきたので俺は睨みつけながらそう言った。
「あ、そうだよ。こうすればいんじゃね?」
奴は俺の言葉に構わず。食べ終わった容器を入っていた袋に入れ丸め込んだ後に言った。
「久しぶりにここに来たなぁ……。」
「ここはとても大きなところですが、どういった所なんですか?」
「それはもう見てからのお楽しみだよ。」
「はぁ……わかりました。」
「でもそこまで危険なところじゃないからそういう心配をしなくてもいいんだよ?」
「あ、はい。」
「……なぁ。」
「それじゃあ妖夢さん。地下から行く?それとも最上階から行く?」
「地下?もしかして見えてないだけでこの大きな建物の下にも何かあると言うんですか!?」
「さぁ、どうだろうねぇー。どっちがいい?」
「えっと……それは……。」
「なぁ……。」
「決めないなら僕が決めちゃうよー?」
「ちょっと待ってください!ええっと……下からで!」
「おーけー、それじゃあいってみよー。」
「おい!」
俺は勝手に進んでいる話を断ち切って問いかけた。
「本当にこれで良かったのか?」
「何が?」
俺の問いに奴は何も思うことが無かったらしく聞き返してきた。
「いやだってよ…………。
俺の服着せる必要性あるか?」
今彼女が来ている服は夏物の俺の服だった。更に部屋の何処か奥深くに眠っていたであろう黒い帽子被り、完璧に男二人の中に溶け込んでいる。問題があるとすれば身長が低い事だがそれを差し引いても変には見えない。
「しょうがないだろ、あの服は時代にあってなかったんだからさ。今ここで買えばノープロよ。」
特に気にした様子も無く奴はいつも通り答えた。
「おいおい……魂魄はそれでいいのか?」
「これしか手段が思いつかなかったのであればこれでも構いませんよ?」
「お前ら……。」
「それじゃあ出発しんこー!……妖夢さんも声出して。」
「えぇ?お、おー……。」
「…………。」
「ほらほらお凛々も声出s「バキッ。」ギャァァ!」
騒がしい要素を潰して取り敢えず建物の中へ入って行った。
地下1階
「うわぁ……この世界にはこんなにも多くの食べ物が揃っている場所があるのですねぇ……。」
魂魄は食品コーナーの生鮮食品を見て、こう声を漏らした。
「そりゃこの世界は広いしな。言っとくけれどこんな所は幾らでも存在するぞ?」
俺はそんな彼女に声をかけた。
「えぇ!本当ですか?」
「そりゃまぁな。世界には人間が六十億人がいるんだっけか?まぁ何処もかしこもはそういう設備があるって訳ではないが……。」
「そうでしたね……この世界は幻想郷とは全然違いますよ。」
「そうか。」
そんな話をしながら回っていると調味料のコーナーで純が買い物かごにマヨネーズや醤油を始めとする様々なものを入れていた。
「お前……買うのか?」
「まぁね。最初にここへ来たんなら先買っておこうかなってね。母さんにこのショッピングモールに行くって言ったら買って来いってよ……。」
「成程なぁ……。」
久しぶりに奴の疲れた様子を見ていると彼女はトントンと肩を叩いてきた。
「あの……中村さんは一度親に会ってからここに来たんですか?」
「いや、これを使ったんだよ。」
俺の肩を叩いたのに奴は答えながらポケットからスマホを出して言った。
「これは歩きながら暇つぶしにと使っていたのもでは無いですか?」
「そうだよ。これはさっき見せたようにトランプとかパズルゲームとか出来る上に同じ物を持っていて、特定の条件を満たしていれば連絡出来るという優れものなんだよ。」
「そんな物が……。」
彼女は奴の説明を聞いた後に感動し暫くは何故か意味ありげに首を縦に振っていた。
「まぁ取り敢えず上行くか。」
「え、待っててくれないの?」
奴はそう言い出すと棒読みで上目遣いをしながらこっちを見てきた。キショい。
「何でお前を待たなきゃなんねぇんだよ。」
「えー何それーツンデ……いや何でもないっす。」
俺が拳を構えると上目遣いを辞め、溜息を吐いて買い物を再開した。
「そんじゃ終わったら連絡しろよ?」
「おーけー。先に行っときーや。」
「それじゃ行こうか。」
「あ、はい。純さんまた後ほど。」
「はいはーい。」
俺と魂魄はそう言うとエスカレーターの方へ向かって行った。
1階
化粧品やお洒落道具を見回っていたが彼女はあまりそういう物に興味を示さなかったため、ぐるりと一周してから再びエスカレーターに乗った。
2階
レディースの服が売っていたが少し年代が違ったためここもぐるりと回って上の階に上がるだけだった。彼女は幻想郷には服が多くあったので先程の階よりもキョロキョロと辺りを見渡していた。
3階
「ここら辺で魂魄の服は買おうと思ってるよ。」
俺はそう言うと店員の方へと向かっていき事情を話した。俺の話を聞いた店員は彼女に怪しげな視線を送っていたが彼女が帽子をとると少しのあいだ見とれ、ニコニコしながら店の奥へと手を引いて行った。
「お客様?もしかしてあの方は恋人ですか?」
「こ、こ、こ、恋人!?ち、違いますよ!!!」
私は手を引かれた女性に突然そう言われ大きな声を出してしまいました。
「えーっ?違うんですか?てっきりそうかと思いましたよ。」
「えぇ!じゃ、じゃあ私達はそういう関係に見られていたって訳ですか!?」
会ってから間も無い人とそ、そんな風に思われてたなんて……
「いや、別にそういう風には見えなかったわ。」
帽子のせいで男だとばかり思ってたしねーなどとも言われた。なら一体何故?
「でもね。女性が服を買う時に男性が一緒だって分かるとそういう関係だって世間一般では思われてしまいますよ?(作者の偏見)」
「い、いやでもそれには訳が……。」
「別に服が無いとか、こういう施設を知らないって訳じゃないんでしょ……?。」
「…………。」
いやまさにそれです。って言いたかったのですが言ったら怪しまれてしまうので辞めておきます……。
「さて。」
その女性はパンと手を叩いてから何やら怪しい表情で近付いてきました。
「私が彼をメロメロにする服を選んであげるから任せておきなさい!」
そしてその細い腕からでは考えられない程の力でさらに奥へと私を引っ張っていきました。
「ちょっと凛さん!助けてくださーい!!」
そんな声も虚しく私は奥へ奥へと飲み込まれて行きました。
この世界で生きていくのも大変そうです……。