シャルモンにやってくると、城乃内秀保が接客をしていた。
相変わらず、人気の高いこの店は、ほとんどの席が客で埋まっていた。
城乃内は僕とザックはわざと、目立たない奥の席に案内さする。恐らく何かあったと気付いたんだろう。
「凰蓮さん呼んでくる。その顔はなんか起ってるということだろ?」
「頼む」
ザックがそういうと、そそくさとはけていく。
僕とザックは暇だったので、周りの客を見つめていた。
女性客の何人かは、DJクロスのトレードマークである黒い仮面がかたどられたキーホルダーをつけている。
最近、あの謎のDJクロスの人気が高く、ある意味心酔している人が増えている。
「あの声がいいよね…安らぐって感じ」
「わかる」
女子大生らしい二人の会話に、正直僕とザックはうんざりしていた。ああやってインベスゲームを囃し立てられるだけで迷惑な話だ。鎧武のメンバーやバロンも、ただダンスを踊ってパフォーマンスを見せれる場を守りたいだけなのに、インベスゲームのためにビートライダーズが存在している感じになっている。
「あと、永久の花という宗教団体知っている?」
「ああ、ネットで今流行ってるやつ?なんかその教祖がカッコいいってよく聞くけど」
「そうそう、その宗教にDJクロスは入ってるって聞いたよ。なんかクロス様に会いに、何人か入信したとか」
「へえ…クロスってそうなんだ」
あとはとりとめない会話をしている。
しかし、今の話は僕もザックも初耳だった。
「永久の花ってなんだ?」
ザックにそう聞かれたが、僕自身初耳だ。
「さあ、宗教団体って言ってましたね。僕も今初めて聞いた。…永久の花か。ちょっと調べてみる」
すぐさまスマホで、調べていく。するとすぐさまその永久の花なるものにたどり着いた。
そのページを開くと、黒いページに白い花が咲き、その上に黄金のリンゴが宙を浮いている、そんなトップページに嫌な予感がしていた。
「これは、まさかあの果実を…」
そう言って僕が見せたトップページに、ザックは目を見開いて頷いていた。
「ああ、知恵の実。この宗教団体怪しいな」
わざわざ知恵の実を表に置いているなんて、明らかに怪しい。
「どうしたの坊や達」
少し不機嫌そうに、僕たちの前に現れたのは凰蓮ピエールアルフォンゾ。そうこの店のオーナーにしてパティシエ。何より元傭兵にしてアーマードライダーだった男。
戦闘に関しては僕たちよりも知識がある。
「配信については知っているのか?」
「ウィ。もちろんよ。あんだけ話題になっているとさすがにね。それで、どうしたの?」
僕はザックとともに頷いて、今まで起ったことをすべて話す。さすがに凰蓮も驚いていた。
「葛葉と角居裕也なら、この店にこないだ来ていた。チーム鎧武のメンバーで。正直驚いたけど、昔のあいつその者だったな。…しかし、厄介だな。自らヘルヘイムを呼び込もうとする連中がいるなんて」
「やっとここまで平和に戻ってきたのに、蒸し返すなんてありえないことだわね」
そう、やっとここまで戻ってきた。復興にはかなりの時間がかかっている。特に兄さんはずっと頑張っていた。
そこへまた沢芽市に危機が訪れたら…考えるだけで恐ろしい。
「問題はその永久の花。潜入する必要がありそうだな」
城乃内がくいっと眼鏡を上げた。
バシン
凰蓮が後頭部からお盆で殴り、城乃内が倒れている。
「そんなの坊やにいちいち説明されなくても、わかっているわよ。そもそも、誰が潜入するの?ザックと光実は顔が割れている。やるのは坊やしか残ってないわね」
「え…えええええ。俺はさすがに」
城乃内の言葉に、3人そろってため息をつく。
確かに凰蓮のいう通り、城乃内が適任だが当人がこれでは期待できない。
「やはり僕が上手く潜入するしかなさそうですね」
この中で言っちゃ悪いが、僕がそういうことに慣れている。ただ、呉島貴虎の弟だということが相手にとってネックになるだろうが。
「坊やの場合、メロンの君のことがあるから難しいわね。潜入だとすぐにばれてしまうわ。…やはり坊や、ここで男を見せるのよ」
「いや、凰蓮さん…確かに、守らなきゃならないのも、誰かがやらないとういけないのもわかるんですけど、俺にできるかどうか」
そう言っている城乃内の方を凰蓮はポンと叩いていた。そこには師弟関係で今まで頑張ってきた二人の絆を見た気がする。
「しっかりなさい。貴方は昔と違って成長したんでしょ?だったら、行ってきなさい。ワテクシは坊やを信じている」
「凰蓮さん…わかりました。俺やってみます」
「盗聴器などはワテクシに任せて。…他の坊や達は、そのロックシードが実験だったとすれば失敗に終わっているから、新たな手で出てくると思われるわ。そこを見張っといたほうがいいと思うわよ」
「それか、そろそろインベスゲームを新たなステージにするか…どちらにしろ、確かに動向を見守っていた方がよさそうですね。兄さんも探ってくれているので」
「だよな・・・もう一度、その錠前ディーラー探ってみるか。今度は二人掛りで」
確かに一人だったからこそ、見逃したところはある。ただ、煙のように姿を消したのは本当にきがかりではあるが。
「そうですね。今度こそ尻尾を掴みましょう。追跡装置がだめだったから、新たな手を考えたほうがよさそうですが」
「そんな安易なものだから、きづかれたのよ。レシィ、任せなさい。ワテクシを誰だと思ってるの」
そう言って胸をはっている。本当に仲間になってくれると心強い。
「お願いします」
「また、できたら連絡するわね。さあ、他のお客様の迷惑になるから、そろそろ出てくれないかしら」
確かにこれ以上この二人の邪魔をするのも申し訳ない。
僕とザックはシャルモンをあとにした。
その帰り道、僕の携帯がなる。
「兄さんだ…なんだろう?」
僕はすぐに電話をとると、兄さんがいそいだ様子で話しかけてくる。
『まず、戦極ドライバーを4台、なんとか用意ができた。家に取りに来てくれ』
「わかりました。…その様子だと他にも何かあったみたいですね。僕たちも色々と情報が手に入ったので、家で合流しましょう」
『ああ…そのほうがよさそうだ。光実、待っている』
その電話が終わると、僕はザックにその話をし二人そろって呉島家に急いだ。
こちらも徐々に敵の尻尾を掴み始めた。だがその敵もまた新たに動き出そうとしている。
奴らの真意は一体。こんだけ沢芽市を混乱の渦に巻き込んでいるんだ、とんでもないことを計画しているに違いない。