怪しい施設の前まできて、僕達が侵入方法を模索している時だ。
「ここだ。ここに見覚えある…ついてきてくれ」
そう言って紘汰さんが立ち上がって、急に案内をはじめた。
僕と兄さんは互いに顔を見合わせていた。そもそも関わりがあるというのも驚きだが、ここを知っているというのはどういうことだ?
「光実、一応警戒は怠るな」
「そうですね。紘汰さん何かされてる可能性もあります。…でもそれって、あの力に気がついたということですか?」
「わからないが、どう転んでもいいようにな。…あれはどう見ても葛葉であることは、間違いない。だからこそ、何かされているのなら、助け出す必要がある」
「そうですね。もう、紘汰さんを失いたくはないですから」
そう、鎧武のためにも、僕自身のためにも。本当は大丈夫だと言い聞かせていたのに、やはりいなくなって寂しかった。あの日常を今でも思い出したりしている。前に進んでいても、やはりあの二人は特別な存在だった。
一応警戒をしながら、紘汰さんの案内のもと奥にある扉にたどり着いた。裏口のような扉には何か指紋認証のような装置がついている。
「確かこうすれば」
紘汰さんが手を翳すとその扉が開いた。やはり、紘汰さんは、この施設に捕まっていたと考えるべきなのか。つまり、紘汰さんの記憶はここで失われた。まさか、あの力もここに?
「大丈夫、中に何もいない。どうするんだ?」
紘汰さんが確認してそう言っている。紘汰さんの様子から、悪気があってではなさそうだが…罠があるとみて間違いない。
「どのみち、罠を突破しなければたどり着けない。光実、いつでも変身できる用意をしておけ」
「分かりました。気を付けましょう」
紘汰さんのあとを追いかけて中に入ると、そこには誰もいなかった。紘汰さんは目を閉じて何やら考え始めている。
やはり、何かにあやつられているのか?
僕と兄さんはこっそり構えていた。
「さあ、いこう。…どうしたんだ?二人とも」
「紘汰さん、何でこの場所を知っている上に簡単に入れたんですか?」
光実の言葉に、紘汰さんは驚いた顔を見せていた。
「いや、それは…」
そう紘汰さんが言いかけたときだった。
紘汰さんがそのまま膝をつき倒れたのは…
「こ…紘汰さん」
僕が駆け寄ろうとするのを、兄さんが止めていた。 紘汰さんが、立っていた背後にいたのは、白い鳥を肩に乗せた、ルキアというあの少年だった。少年の爪が鋭いものに変化していて、紘汰さんの背中の傷に合っている。
「どういうことか、説明してもらおうか」
兄さんの言葉に怒りが感じられた。
白い鳥は前とは違い、冷たい目を紘汰さんに向けている。まるで汚らわしいものを見る目で。
「こいつを始末したら、ゆっくり話す。…ルキア、やれ。こいつまだ動ける」
「白い鳥様、分かりました」
このままじゃ、紘汰さんは。
僕と兄さんは同時に変身し、僕はブドウ龍砲を兄さんは無双セイバーを構え、銃を放つ。
だが、その銃弾は届くことなく、ルキアの爪は紘汰さんを引き裂いた。
「何をするんだ」
「貴様…よくも葛葉を」
僕と兄さんが飛びかかろうとしたとき、地面からヘルヘイムの蔦がはえ、僕達の動きを封じていた。
「ルキア、そいつから離れろ。爆発する」
ルキアは、白い鳥に言われるままさっと後ろに飛ぶと、紘汰さんは爆発した。辺りには機械の部品のようなものが散乱している。
「正直、あんた達をずっと見てた訳じゃないから知らなかったが、こんな奴、よく信頼したな」
「なにがだ…お前に紘汰さんの何がわかるんだ。やっと戻ってきたのに。こんなことって…」
僕は怒りでヘルヘイムの植物を引きちぎると、すぐさまブドウ龍砲を白い鳥に放った。白い鳥が防御のバリアを張っていたが、その圧力に吹き飛ばされていた。
ルキアが焦って、白い鳥をおいかける。
「何をするんだ。大丈夫ですか?…この方になんかあれば、お前達も」
ルキアがそう言いかけたとき、ルキアの掌にいた白い鳥が飛び上がる。
「ルキア、大丈夫だから落ち着け。お前らも、そいつをよく見ろ。それから俺を攻撃してこい」
そう言って、兄さんの植物を解錠していた。僕はまだ戦おうとしていたが、兄さんがさっととめ、紘汰さんのいたあの場所に冷静に向かう。
「なるほど…凰蓮達が危ないな」
「冷静に判断してくれてよかった。…大丈夫、あっちにはローズとルクアが行っている。片付けている頃合いだ。一応連絡してみればいい」
何故兄さんがここまで冷静でいられるのか、僕は正直わからなかった。兄さんは何やら凰蓮さんと話し込むと、頷いて白い鳥を見つめた。
「確かに、大丈夫なようだ。…光実、冷静になってもう一度この地面をみろ。そうすれば、なぜそこのオーバーロード達が、この物体を処理しなきゃいけなかったかわかる」
冷静な判断と言われても、僕は取り合えず兄さんに言われたとおり、紘汰さんのいた場所にいく。
そこに、残されているものに一瞬なんのことか分からなくなっていた。
だが、色々考えていくうちに、ある結論に達していた。
「紘汰さんじゃない?じゃああのドライバーは?」
「奴等はユグドラシルの情報を手にいれている。似せてつくったのだろう。…どこで気がついたんだ?」
「あの訳のわからない集会で奴等を追い詰めたが、逃げられて、そろそろあんた達が掴んでいるだろうと思って、後をつけさせてもらったら…そこにあいつらがいて。もっと早くに気づいていたら、とっとと片付けておいたんだが。あいつらからは、生きているものの気配がしなかったから、俺らはすぐに気がついた」
機械生命体ということか。
確かに城乃内の話だと、スタッフの何人かがそうだったとか。
「じゃあ紘汰さんは?」
「さあな。そいつ自体俺はしらないが、恐らくは生きているんだろ?何処か別の場所で。あいつはあくまで偽物だから。どうかしたか?」
白い鳥の言葉に救われた気がしていた。そうか、元々紘汰さんはここにいない。つまり、生きているということか。本当は会いたいけど、そうもいかない。しかし、敵も何をしたかったのか?
「何で紘汰さんに変化していたんでしょう?」
「それは、あんた達が詳しいんだろ?それなりの理由があるということだろ?…俺に言われてもな。さてと、オーバーロードについては、俺達に任せろ。最初から仲間を探しだしたあとは、俺達で蹴りをつけるつもりだった。まあ、あんたらがあいつらを庇うなら別だが」
そこには怒りの感情が目に見えてわかった。特にルキアはかなり頭が来ているようだ。
「本当にお前達は、敵にはならないようだな」
「興味ないだけだ。敵にはならない。…さてと、俺達はこれで。あいつらを追い込むのが俺達の仕事。だから、あんた達は自分の信じる道を貫いてほしい」
そう言って、白い鳥は姿を消していた。結局こいつらはなんなのかわからないまま、僕達は自分の仕事を終わらせるため、先に進む。
オーバーロード達はあのまま姿を消していた。
そう、それがこいつらの道のようだ。