内容は一緒なので、この話は飛ばしていただいても通じます。
「言っとくけど、何があっても俺がいいという奴以外とは戦うなよ。頼むから」
ローズにそう忠告をしておいた。じゃないと、こいつは俺を襲ってきた相手と勝手に戦ってしまう。
まあ、かなりの使い手だから本当にシャレにならない。俺もこの姿だし、止めると言っても限度がある。
「わかっていますよ、主様」
本当にわかっているのか正直心配だった。そう言って人の事を無視して暴走することもよくある。
いま俺はすこしだがヘルヘイムの力を感じた場所に飛んでいた。
まあ、そこにミッチがいるとは思わなかったけど。
持っているあのロックシード、あれに恐らく閉じ込められている。その気配を感じることが出来た。
「それを渡して頂きましょうか?…貴方方が扱っていい代物では御座いませんので」
ローズがそう声をかけた。
ミッチには申し訳ないが、そのロックシードだけは扱わせるわけにはいかない。
「断る…あんたが何者かもわからないのに、これを渡せない」
ミッチの言葉に、ローズは深くため息をついている。
まあ、こんな怪しい俺達にミッチが簡単に渡すわけないよな。
「では、どちらが勝つか勝負で決めましょう」
いやあ、ローズそりゃ無茶だろう。あのなあ、いくらなんでも俺でもそれは断る。
「何故わざわざ、あんたらの誘いにのらなきゃいけないんだ」
案の定か、なら仕方ない少々手荒な真似になるけど、怪我されるよりはましだ。おれはミッチの目の前に現れ、さっと光った。
その眩しさに、ミッチが目をとじる。その瞬間、さっきまで握りしめていた、ロックシードを俺はくわえて、飛んでいく。
「主様、わざわざご自分で行かれなくても、わたくしがあなた様のために動きましたのに…」
そう言われても、こいつをミッチに使わせるわけにはいかないんだ。恐らく入っているルキアは普通の状態じゃないはずだ。かなり危険がおよんでしまう。
「変身」
その言葉に嫌な予感がしていた。かといって、これを外すわけにはいかない。しっかしこいつのせいで、上手く力が使いこなせない。移動がこんなに困難になるとは…ルキアの力か。
思った通り、ミッチはアーマードライダー龍玄に変身し、ブドウ龍砲で俺を撃った。
「主様…貴様、主様をよくも」
ローズが起こっている。こいつこのままじゃ暴走する。
止めなきゃいけない。そもそも、なんとか自分へのバリアは張ることが出来たから俺は無傷だ。
もっとも代わりにロックシードを落としてしまったが。
「大丈夫だ。この程度自分で防げる。ローズお前は動くな」
俺がロックシードを落としたことに気づいた龍玄が、拾い上げようとしていた。
ほんとうに危険なんだ。
ローズの力か、ヘルヘイムの植物が龍玄を止めていた。
「オーバーロードなのか」
龍玄がさっとブドウ龍砲をローズに向ける。
これ以上刺激したら駄目だ。あいつは別にお前と戦おうとしているわけじゃないんだ、ミッチ。
「これ以上やめておけ。俺達はそのような事をのぞまない。目的はこのロックシードの中にいる者だ。この世界を侵略に来たわけでも脅かしに来たわけでもない。…ローズ、お前もやめろ。最初に言ったはずだよな。俺がいいって奴以外は手を出すなとな」
俺はしかたなく龍玄の肩に乗り、そう耳元でつぶやいた。
正直、こんな形で再開したくなかった。確かにミッチは俺のオーバーロードとしての姿を唯一見ている。だから名乗ってもいいかもしれない。でも、それも危険だとビルスに止められている。
少しでも自分の事を隠せ、それが自分の仲間たちを守る事になると…
「しかし、主様にもしものことが」
ローズ、お前はわかってんだろう。おれのこの体はあくまで仮初の者。本体はあっちの世界にいることも。
第一、俺にもしもの事なんて、ありえない事も。仕方ない…
「こっちに何かあっても、少々怪我を負う程度だ。そもそも、人に俺は殺せないよ。…さてと、あんた。これほど実力の違いがある。あんたは賢そうだ。その辺はわかるだろ?誰も、俺達の味方をしてくれなんて頼んでない。このロックシードを渡してくれるだけでいい。他のロックシードを盗ろうというわけではない。だから変身をといてくれないか?」
これでミッチ、わかってくれればいいんだけどな。
「とけば、あんた達が何者か聞かせてくれるのか?」
「何者かは、わかっているんだろ?まあいい。目的のそのロックシードの正体がなんなのかも見せよう」
今何が起こっているか、ミッチにも知る必要があるよな。多分、何がおきているのかそれすらも理解できてないだろうし。それに俺達の目的を知っていてほしい。
俺達は決してミッチの敵でない事も。
その思いが通じたのか、ミッチが変身を解いてくれた。正直、安心する。
本当にもう二度とミッチとは戦いたくない。あんな思いはもうしたくない。
俺にとって、ミッチはずっと仲間なんだ。そこはどんなに離れていようと変わってない。
「教えてもらいましょうか?」
「まず、そこのロックシードに入っている者を説明しよう。ただ、それはあんたら人間が触っていい代物ではない。…ローズ、解放してくれ」
「了解です。主様」
先程の戦いにおいて地面に置かれたままのロックシードを拾い上げると、ローズはさっとロックシードを解除した。
そのロックシードからヘルヘイムの植物が流れ込んでくる。それと共にロックシードを持っているローズの手がヘルヘイムの植物で覆われていた。
やはりか…
入っているルキアがやっているんだろう。これは本当にやばいな。
「な・・・なんなんだ?」
ミッチが驚愕している。
そりゃそうだろう。いきなりこんな力を見せられたら。普通はそうなるよな。
「落ち着きなさい。そもそも、勝手に飛び出したあなた達も悪いんです。主様もいらっしゃいますから、怒りを鎮めなさい」
ヘルヘイムの植物がローズから立ち退くと、さっとその植物が人型に覆われる。
そこに現れたのは、白髪に赤い目に青いローブ風の服を身に着けている少年、俺達のなかまであるルキアだ。
怒りで赤い目が激しく光っている。
「許さない…許さない…」
ルキアがそう言ったとともに、ヘルヘイムの植物が地面を覆っていく。
そこまで、怒りでわれを忘れているのか?
ルキアは三兄弟の中でも一番しっかりしていて、長男のルクアを抑えている。正直俺も頼りにしているしょうねんだ。それがこんなになっちまうなんて。
俺は正直、これを起こした連中を許せそうにない。
俺はさっと飛び立ち、ルキアの肩に乗ろうとした。だが、ルキアはさっとその爪を緑の長い爪に変化させ、俺に攻撃を加える。
「ルキア、落ち着け。俺だ」
俺の言葉に全く耳を貸さず、攻撃を仕掛けようとする。
こんなになっちまうまで…なんで。
ローズはため息をつくと、その姿を変化させた。
赤い薔薇のような頭に白い蝋人形のような顔。赤いバラをモチーフにした体をもつ化物だ。手には緑色の鞭のようなものが握られていた。そうこれはローズの戦闘形態だ。
さっとその鞭をルキアに向って放つ。
だから、お前は…
俺はすぐさまその鞭を自分の体で防ぐ。ルキアを傷つけるわけにはいかない。
「あ…主様。何を…」
「それはこっちのセリフだ。いいから、のけてくれ」
俺はその背に鋭い痛みを感じた。
「ぐ・・・ル…キ…ア…目を…さま…せ…」
そのまま俺は落ちてしまう。
やはりこの形態じゃ限界のようだ。
力を思い通りに使いこなすことが出来ない。
「主様・・・」
ローズがそっと近寄ろうとして瞬間、俺はその姿を変化させた。
白い鎧に白い鳥の頭をもつ美しい鳥の化け物に。先ほどの傷も消えてなくなっている。
俺は美しい黄金の瞳を、さっとルキアに向ける。
「ルキア、いい加減落ち着け。お前を傷つけたくはない。さあ、俺達の家に戻ろう。…なあ、ルキア」
そう言って、俺はそっと放心状態になっているルキアを抱きしめていた。
いまはルキアを落ち着かせることが大切だ。
この子は悪い子じゃない。だからこそ、元に戻ってほしい。
「主様、その形態はあまり…」
ローズのいう通りだ。
あくまで俺の分身であり、核にしているのもあれだ。力に限りがある。
この形態でいれば、それだけ負担がかかる。この世界でいられる時間も減ることも…。
「わかっている。今の俺には負担でしかないことも…でも、ルキアのためなら俺は」
抱きかかえられたルキアは泣き始めた。
もはや、少年のその姿にもどると、ずっと俺の胸で。
もともと少年なんだ。こんなことをさせるなんて…。
こんなことをした連中、見つけたらただじゃおかない。
「あの…そろそろ説明してもらえないか?」
ミッチに突っ込まれ、俺はようやく気付いた。
そういやあ、ミッチにとっては何のことかもわからないだろうな。
「ああ、そうだな。ルキア、落ち着いた?」
「はい…えっと、なんてお呼びすれば?」
いつものあの赤い目を向けている。正直安心した。
「白い鳥でいい。俺は元に戻る。こっちはかなり力を浪費するからな」
さっと先ほどまでの戦闘形態から、白い鳥へと姿を戻していた。それと同じく、ローズもただの赤いドレスの女の姿へ戻っていた。俺が説明しようとしたら、ローズがさっととめ口を開いた。
「わたくしから説明を。恐らくわかっていると思いますが、主様はあなた方で言うオーバーロードという存在です。わたくしやルキアは厳密に言えば少し違いますがオーバーロードのような存在と思っていただいて大丈夫です。ここまではお分かりいただけますか?」
「まあ、そこはなんとなく。さっきのを見ていればわかる。…で、なんでそのルキアとか言う少年がロックシードに?」
ローズが話そうとした瞬間、ルキアがさっと止めた。
ルキアは、恐らく自分たちが悪かったからとそう考えたんだろう。そこはルキアの自由にさせてあげよう。
俺はこの子たちを縛るつもりはない。
「僕から話します。白い鳥様やローズ様は、僕たちを探しに来てくれているだけなので。…僕たち三兄弟なんですけど、兄のルクアがどうしてもこの世界に来たいと駄々をこねて、白い鳥様が止めたのを聞かず、ばれないように弟のルシアとともに、こちらの世界に来てしまったんです。僕は二人を止めるためにこちらに来たんですが、その際、訳の分からない人間に話しかけられ、ついて行くとそのまま気を失い…気付くとそのロックシードと呼ばれるものの中に閉じ込められてしまったのです。僕はその中で、ずっと人間を憎めと聞かされ、最初に近づいてきたものを殺せとそうつぶやかれ続けて…おかしくなっていました。本当に申し訳ありません。白い鳥様」
やっぱ操られていたというか、怒りを増幅させられていたのか…
本当に最低な連中だな。
それよりも、ここは突っ込んでおかないと。
「いや、だから様付はやめろって。俺はそんなに偉くないしな。…それに、ルクアを止められなかったのは俺にも責任がある。だから、気にしなくていい」
そう俺が悪い。気付いていながら、ちゃんと止めることができなかったのだから。
ちゃんとルクアを叱らなきゃいけないというのもわかった。ただの優しさだけじゃいけない。
ほんと、ビルスのいう通りになってしまっている。
「他のロックシードは、まずい連中の手の中にある。解放されたら沢芽市が」
ミッチ、なるほど…
このロックシードは他のチームが持っているわけか。
「確かにな。ローズ、止めに行くぞ。…すまないが、そのロックシードを渡された連中が行きそうな場所教えてくれないか?俺達の問題だ。自分たちで解決する」
「別にあんた達を信用したわけじゃない。だから、僕も行く」
その言葉にローズはじっと、俺を見つめていた。ルキアも同じようにしている。
まあ、俺の判断に従うという事だろうな。
「いや、あんたには他にやるべきことがあるだろう。信用するとかしないとかそう言う問題じゃない。沢芽市を本気で守りたいなら、こんなことを企んでいる連中を探し出せ。そうじゃなきゃ、もっと厄介な事になる。…心配するな。俺達がその気になれば簡単にこの世界なんて落とせる。…だが、それを望まないからこんなまどろっこしいことしてんだ。あと、もういい。すでにヘルヘイムの気配を感じ取った。その厄介なやつのどちらかがロックシードを解除したようだ。そっちは任せろ。…本当に沢芽市を守りたいなら、お前はそうしてくれ。頼む」
そう、最悪な事態が起ってしまったようだ。誰かがロックシードを解放させた。ルクアが暴れている気配を感じることができた。
ルキアなんて、焦っている。
「な…あんたはなぜそんなに?関係ない世界じゃあ?」
「そうだよな。関係ない世界だ。…だからこそ、自分の世界の仲間が迷惑をかけるのが許せないだけだ。…じゃあな」
本当は関係あるんだけどな。この世界を守りたいという気持ちは俺達ずっと変わっちゃいない。
それはミッチ、お前の事を思う気持ちもな…
みんなを守るためにも、俺達が頑張るしかない。
俺はそっと力を使って、ミッチの前からその姿を消した。