悪意再び    作:夢幻鎧武

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一応第7話の白い鳥の視点です。
内容は一緒なので、この話は飛ばしていただいても通じます。



第19話

「言っとくけど、何があっても俺がいいという奴以外とは戦うなよ。頼むから」

 

 ローズにそう忠告をしておいた。じゃないと、こいつは俺を襲ってきた相手と勝手に戦ってしまう。

 まあ、かなりの使い手だから本当にシャレにならない。俺もこの姿だし、止めると言っても限度がある。

 

「わかっていますよ、主様」

 

 本当にわかっているのか正直心配だった。そう言って人の事を無視して暴走することもよくある。

 いま俺はすこしだがヘルヘイムの力を感じた場所に飛んでいた。

 まあ、そこにミッチがいるとは思わなかったけど。

 持っているあのロックシード、あれに恐らく閉じ込められている。その気配を感じることが出来た。

 

「それを渡して頂きましょうか?…貴方方が扱っていい代物では御座いませんので」

 

 ローズがそう声をかけた。

 ミッチには申し訳ないが、そのロックシードだけは扱わせるわけにはいかない。

 

「断る…あんたが何者かもわからないのに、これを渡せない」

 

 ミッチの言葉に、ローズは深くため息をついている。

 まあ、こんな怪しい俺達にミッチが簡単に渡すわけないよな。

 

「では、どちらが勝つか勝負で決めましょう」

 

 いやあ、ローズそりゃ無茶だろう。あのなあ、いくらなんでも俺でもそれは断る。

 

「何故わざわざ、あんたらの誘いにのらなきゃいけないんだ」

 

 案の定か、なら仕方ない少々手荒な真似になるけど、怪我されるよりはましだ。おれはミッチの目の前に現れ、さっと光った。

 その眩しさに、ミッチが目をとじる。その瞬間、さっきまで握りしめていた、ロックシードを俺はくわえて、飛んでいく。

 

「主様、わざわざご自分で行かれなくても、わたくしがあなた様のために動きましたのに…」

 

 そう言われても、こいつをミッチに使わせるわけにはいかないんだ。恐らく入っているルキアは普通の状態じゃないはずだ。かなり危険がおよんでしまう。

 

「変身」

 

 その言葉に嫌な予感がしていた。かといって、これを外すわけにはいかない。しっかしこいつのせいで、上手く力が使いこなせない。移動がこんなに困難になるとは…ルキアの力か。

 思った通り、ミッチはアーマードライダー龍玄に変身し、ブドウ龍砲で俺を撃った。

 

「主様…貴様、主様をよくも」

 

 ローズが起こっている。こいつこのままじゃ暴走する。

 止めなきゃいけない。そもそも、なんとか自分へのバリアは張ることが出来たから俺は無傷だ。

 もっとも代わりにロックシードを落としてしまったが。

 

「大丈夫だ。この程度自分で防げる。ローズお前は動くな」

 

 俺がロックシードを落としたことに気づいた龍玄が、拾い上げようとしていた。

 ほんとうに危険なんだ。

 ローズの力か、ヘルヘイムの植物が龍玄を止めていた。

 

「オーバーロードなのか」

 

 龍玄がさっとブドウ龍砲をローズに向ける。

 これ以上刺激したら駄目だ。あいつは別にお前と戦おうとしているわけじゃないんだ、ミッチ。

 

「これ以上やめておけ。俺達はそのような事をのぞまない。目的はこのロックシードの中にいる者だ。この世界を侵略に来たわけでも脅かしに来たわけでもない。…ローズ、お前もやめろ。最初に言ったはずだよな。俺がいいって奴以外は手を出すなとな」

 

 俺はしかたなく龍玄の肩に乗り、そう耳元でつぶやいた。

 正直、こんな形で再開したくなかった。確かにミッチは俺のオーバーロードとしての姿を唯一見ている。だから名乗ってもいいかもしれない。でも、それも危険だとビルスに止められている。

 少しでも自分の事を隠せ、それが自分の仲間たちを守る事になると…

 

「しかし、主様にもしものことが」

 

 ローズ、お前はわかってんだろう。おれのこの体はあくまで仮初の者。本体はあっちの世界にいることも。

 第一、俺にもしもの事なんて、ありえない事も。仕方ない…

 

「こっちに何かあっても、少々怪我を負う程度だ。そもそも、人に俺は殺せないよ。…さてと、あんた。これほど実力の違いがある。あんたは賢そうだ。その辺はわかるだろ?誰も、俺達の味方をしてくれなんて頼んでない。このロックシードを渡してくれるだけでいい。他のロックシードを盗ろうというわけではない。だから変身をといてくれないか?」

 

 これでミッチ、わかってくれればいいんだけどな。

 

「とけば、あんた達が何者か聞かせてくれるのか?」

 

「何者かは、わかっているんだろ?まあいい。目的のそのロックシードの正体がなんなのかも見せよう」

 

 今何が起こっているか、ミッチにも知る必要があるよな。多分、何がおきているのかそれすらも理解できてないだろうし。それに俺達の目的を知っていてほしい。

 俺達は決してミッチの敵でない事も。

 その思いが通じたのか、ミッチが変身を解いてくれた。正直、安心する。

 本当にもう二度とミッチとは戦いたくない。あんな思いはもうしたくない。

 俺にとって、ミッチはずっと仲間なんだ。そこはどんなに離れていようと変わってない。

 

「教えてもらいましょうか?」

 

「まず、そこのロックシードに入っている者を説明しよう。ただ、それはあんたら人間が触っていい代物ではない。…ローズ、解放してくれ」

 

「了解です。主様」

 

 先程の戦いにおいて地面に置かれたままのロックシードを拾い上げると、ローズはさっとロックシードを解除した。

 そのロックシードからヘルヘイムの植物が流れ込んでくる。それと共にロックシードを持っているローズの手がヘルヘイムの植物で覆われていた。

 やはりか…

 入っているルキアがやっているんだろう。これは本当にやばいな。

 

「な・・・なんなんだ?」

 

 ミッチが驚愕している。

 そりゃそうだろう。いきなりこんな力を見せられたら。普通はそうなるよな。

 

「落ち着きなさい。そもそも、勝手に飛び出したあなた達も悪いんです。主様もいらっしゃいますから、怒りを鎮めなさい」

 

 ヘルヘイムの植物がローズから立ち退くと、さっとその植物が人型に覆われる。

 そこに現れたのは、白髪に赤い目に青いローブ風の服を身に着けている少年、俺達のなかまであるルキアだ。

 怒りで赤い目が激しく光っている。

 

「許さない…許さない…」

 

 ルキアがそう言ったとともに、ヘルヘイムの植物が地面を覆っていく。

 そこまで、怒りでわれを忘れているのか?

 ルキアは三兄弟の中でも一番しっかりしていて、長男のルクアを抑えている。正直俺も頼りにしているしょうねんだ。それがこんなになっちまうなんて。

 俺は正直、これを起こした連中を許せそうにない。

 俺はさっと飛び立ち、ルキアの肩に乗ろうとした。だが、ルキアはさっとその爪を緑の長い爪に変化させ、俺に攻撃を加える。

 

「ルキア、落ち着け。俺だ」

 

 俺の言葉に全く耳を貸さず、攻撃を仕掛けようとする。

 こんなになっちまうまで…なんで。

 ローズはため息をつくと、その姿を変化させた。

 赤い薔薇のような頭に白い蝋人形のような顔。赤いバラをモチーフにした体をもつ化物だ。手には緑色の鞭のようなものが握られていた。そうこれはローズの戦闘形態だ。

 さっとその鞭をルキアに向って放つ。

 だから、お前は…

 俺はすぐさまその鞭を自分の体で防ぐ。ルキアを傷つけるわけにはいかない。

 

「あ…主様。何を…」

 

「それはこっちのセリフだ。いいから、のけてくれ」

 

 俺はその背に鋭い痛みを感じた。

 

「ぐ・・・ル…キ…ア…目を…さま…せ…」

 

 そのまま俺は落ちてしまう。

 やはりこの形態じゃ限界のようだ。

 力を思い通りに使いこなすことが出来ない。

 

「主様・・・」

 

 ローズがそっと近寄ろうとして瞬間、俺はその姿を変化させた。

 白い鎧に白い鳥の頭をもつ美しい鳥の化け物に。先ほどの傷も消えてなくなっている。

 俺は美しい黄金の瞳を、さっとルキアに向ける。

 

「ルキア、いい加減落ち着け。お前を傷つけたくはない。さあ、俺達の家に戻ろう。…なあ、ルキア」

 

 そう言って、俺はそっと放心状態になっているルキアを抱きしめていた。

 いまはルキアを落ち着かせることが大切だ。

 この子は悪い子じゃない。だからこそ、元に戻ってほしい。

 

「主様、その形態はあまり…」

 

 ローズのいう通りだ。

 あくまで俺の分身であり、核にしているのもあれだ。力に限りがある。

 この形態でいれば、それだけ負担がかかる。この世界でいられる時間も減ることも…。

 

「わかっている。今の俺には負担でしかないことも…でも、ルキアのためなら俺は」

 

 抱きかかえられたルキアは泣き始めた。

 もはや、少年のその姿にもどると、ずっと俺の胸で。

 もともと少年なんだ。こんなことをさせるなんて…。

 こんなことをした連中、見つけたらただじゃおかない。

 

「あの…そろそろ説明してもらえないか?」

 

 ミッチに突っ込まれ、俺はようやく気付いた。

 そういやあ、ミッチにとっては何のことかもわからないだろうな。

 

「ああ、そうだな。ルキア、落ち着いた?」

 

「はい…えっと、なんてお呼びすれば?」

 

 いつものあの赤い目を向けている。正直安心した。

 

「白い鳥でいい。俺は元に戻る。こっちはかなり力を浪費するからな」

 

 さっと先ほどまでの戦闘形態から、白い鳥へと姿を戻していた。それと同じく、ローズもただの赤いドレスの女の姿へ戻っていた。俺が説明しようとしたら、ローズがさっととめ口を開いた。

 

「わたくしから説明を。恐らくわかっていると思いますが、主様はあなた方で言うオーバーロードという存在です。わたくしやルキアは厳密に言えば少し違いますがオーバーロードのような存在と思っていただいて大丈夫です。ここまではお分かりいただけますか?」

 

「まあ、そこはなんとなく。さっきのを見ていればわかる。…で、なんでそのルキアとか言う少年がロックシードに?」

 

 ローズが話そうとした瞬間、ルキアがさっと止めた。

 ルキアは、恐らく自分たちが悪かったからとそう考えたんだろう。そこはルキアの自由にさせてあげよう。

 俺はこの子たちを縛るつもりはない。

 

「僕から話します。白い鳥様やローズ様は、僕たちを探しに来てくれているだけなので。…僕たち三兄弟なんですけど、兄のルクアがどうしてもこの世界に来たいと駄々をこねて、白い鳥様が止めたのを聞かず、ばれないように弟のルシアとともに、こちらの世界に来てしまったんです。僕は二人を止めるためにこちらに来たんですが、その際、訳の分からない人間に話しかけられ、ついて行くとそのまま気を失い…気付くとそのロックシードと呼ばれるものの中に閉じ込められてしまったのです。僕はその中で、ずっと人間を憎めと聞かされ、最初に近づいてきたものを殺せとそうつぶやかれ続けて…おかしくなっていました。本当に申し訳ありません。白い鳥様」

 

 やっぱ操られていたというか、怒りを増幅させられていたのか…

 本当に最低な連中だな。

 それよりも、ここは突っ込んでおかないと。

 

「いや、だから様付はやめろって。俺はそんなに偉くないしな。…それに、ルクアを止められなかったのは俺にも責任がある。だから、気にしなくていい」

 

 そう俺が悪い。気付いていながら、ちゃんと止めることができなかったのだから。

 ちゃんとルクアを叱らなきゃいけないというのもわかった。ただの優しさだけじゃいけない。

 ほんと、ビルスのいう通りになってしまっている。 

 

「他のロックシードは、まずい連中の手の中にある。解放されたら沢芽市が」

 

 ミッチ、なるほど…

 このロックシードは他のチームが持っているわけか。

 

「確かにな。ローズ、止めに行くぞ。…すまないが、そのロックシードを渡された連中が行きそうな場所教えてくれないか?俺達の問題だ。自分たちで解決する」

 

「別にあんた達を信用したわけじゃない。だから、僕も行く」

 

 その言葉にローズはじっと、俺を見つめていた。ルキアも同じようにしている。

 まあ、俺の判断に従うという事だろうな。

 

「いや、あんたには他にやるべきことがあるだろう。信用するとかしないとかそう言う問題じゃない。沢芽市を本気で守りたいなら、こんなことを企んでいる連中を探し出せ。そうじゃなきゃ、もっと厄介な事になる。…心配するな。俺達がその気になれば簡単にこの世界なんて落とせる。…だが、それを望まないからこんなまどろっこしいことしてんだ。あと、もういい。すでにヘルヘイムの気配を感じ取った。その厄介なやつのどちらかがロックシードを解除したようだ。そっちは任せろ。…本当に沢芽市を守りたいなら、お前はそうしてくれ。頼む」

 

 そう、最悪な事態が起ってしまったようだ。誰かがロックシードを解放させた。ルクアが暴れている気配を感じることができた。

 ルキアなんて、焦っている。

 

「な…あんたはなぜそんなに?関係ない世界じゃあ?」

 

「そうだよな。関係ない世界だ。…だからこそ、自分の世界の仲間が迷惑をかけるのが許せないだけだ。…じゃあな」

 

 本当は関係あるんだけどな。この世界を守りたいという気持ちは俺達ずっと変わっちゃいない。

 それはミッチ、お前の事を思う気持ちもな…

 みんなを守るためにも、俺達が頑張るしかない。

 俺はそっと力を使って、ミッチの前からその姿を消した。

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