俺達はその場所を見て、正直怒りの感情しか湧き上がらなかった。こいつのやっている事を許せるはずがない。
罪のない人たちをヘルヘイムの植物を操って襲うなんて、許されることではない。
「ほほう、ついに会うことが出来たな。謎のオーバーロード。あんたの事をずっと探していた」
こいつは一体何者だ?俺達を探しているだと?
俺としては決して会いたくもないがな。
「最低だな。そこのあんた、早く人間を逃がせ。俺達がヘルヘイムの植物を止めている間に」
城乃内、おまえなら任せられる。変身できているのを見ると、貴虎から戦極ドライバーとロックシードを受け取ったというところか?
相変わらず、城乃内って感じだけど、お前に任せる。ほんと、信頼できるのは仲間だよな。
「オーバーロードだろ?襲ったりしないのか?」
城乃内の言葉に俺は、ため息をついていた。
まあ、ただのオーバーロードにしか見えないだろうからな。
「別に興味ないためだ。今回も俺達の仲間をこいつらが連れ去っているから、どこにいるか聞きにきただけだからな。そのついでって奴だ。さあ、気が変わらないうちに早く逃がせ」
城乃内は恐らく信頼したわけじゃなさそうだが、動いてくれた。
これで、皆を逃がしてくれるはずだ。ここからは俺達の仕事。
オーバーロード同士なら遠慮はいらない。
「珍しいタイプのオーバーロードだな。たかが人間になぜ情けをかける」
気が合うはずねえな。おれと真逆なこいつと話していると俺の方が頭痛くなりそうだ。
「情けをかけるなんて、お前はなんでそんなに上から言えるんだ?まずは聞きたいんだが、お前はつまり異世界のオーバーロードか?」
こんなことを平気でやり、人間を馬鹿にするなんてその系統としか考えられない。
「ふははははは・・・そんなはずないだろ?それならこんなもんですんでないだろ。俺達はあんた達のおかげで、進化することが出来た」
さっき進化っていってなかったか?
進化って、オーバーロードに?
その一言に、俺は驚愕してしばらく理解が出来なかった。
「あの少年は実に使える。あの少年の組織とプロフェッサーZの頭脳があれば、この世界を創りかえることが可能だ。…残念ながら、われらが神はこの世界をつくり変えなかった。黄金の果実という最強の力を持ちながらな」
こいつらそれすらも…まあ、戦極凌馬関連のデータを持っているという事か。ただ、戦極凌馬は俺と戒斗の戦いを知らないまま、死んでいる。つまり、誰が持っているかまでは知らないはず。
まして目の前にいる俺の本体が、その力を持っていることも。そして俺がその欠片を使っての分身であることも…
しかし、こいつらほんとにルシアを使って、オーバーロードになっているというのか。
「その神とか果実についてはどうでもいい。…お前はルシアをそんなことに使っているのか。ルシアは俺の仲間だ。許せねえ」
ルシア、怖いさせてごめんな。
すぐに迎えに行ってやる。あいつもあっちの世界でずっと心配している。
「話し合えると思ったのだがな。残念だ」
「ローズ、こいつになら本気を出して大丈夫だ。ただし、あれのことは忘れるな」
「主様の仰せのままに」
俺が飛び立つとともにローズはその姿を戦闘形態へと変える。
この姿でいる際は、その力を最大限に引き出せる。いまのローズなら、こんな奴に負けない。ルキア、ルクアもヘルヘイムの植物を逆に操って、この訳の分からない仮面の男へ攻撃しかける。
その間に、俺はここらあたりに繁殖しているヘルヘイムの植物を鎮静化した。すこしでも時間を稼がないと城乃内が危ない。
さっと城乃内に目をやると、怪しい連中と戦っている。
あいつらからは生気を感じない。…機械か?でも、シャルモンのおっさんに鍛えられてか、城乃内は強くなっている。あれなら任せて大丈夫そうだ。
「さすがは本物のオーバーロード。我らでは役不足化。…今回はここまで。次また会おう」
仮面の男がローズが追いかけようとするのを、閃光弾のようなもので光らせ姿をくらませる。
ルキア、ルクアはそのいなくなった後を睨みつけていた。
俺はそっと、いなくなったその場所で自分の力を使って追ってみるが、どうやら完全に逃げられたようだ。痕跡を追いかけられなかった。
「これ以上ここにいると目立つ。…あとは、貴虎達が足取りを掴むころだろう。ちょっと頼ってみるか」
「主様はかなり信頼されているんですね」
「みんながいなかったら、俺はここまでやってこれてない。…さあ、行こう」
ローズはその形態を通常の人型にもどし、さっとその場から姿をけした。
俺は今までわざと、いかなかった…いや行きづらくて行けなかった場所に行く。
ドルーパーズ、阪東さんにはかなり世話になったな。最後はバイトとして雇ってくれたし。あの時は正直助かった。
そもそも、何かあるごとにここに集まっていた。あの頃が本当に懐かしい。
俺はそっとドルーパーズ近くの物陰で、自分の力を使って盗み見る。
光り輝く画面にいまのドルーパーズの内部の様子が映し出された。
ただそこに映った人物に、驚愕していた。
「主様…これはどういう事です?」
ローズに聞かれたが、一番驚いているのは俺自身だ。
明らかにあり得ない現象が起こっている。
「いや、わからない。だがあれは、俺が言うのもなんだけど、葛葉紘汰じゃない。俺の本体はちゃんとあっちにいる。となれば、偽物としかありえない。…それに、裕也は俺がこの手で…だからありえないことだ」
他の懐かしい面々は想像ついたが、まさか裕也や葛葉紘汰がいるなんて…
もっと早くに気付いていれば、気付かれずに対処したのに。
みんなが向ける顔を見てたら、なんだか悲しくなってきた。信頼をしている顔。
みんな、俺がどうなったのか知っているのに、それでも信頼してくれている。それをあいつが。
「双子だったとかはないよな」
「姉ちゃんと二人しか家族がいない。だから、双子はありえない。こんなの仕込んでくるなんて、よほど果実を誰が掴んだのか知りたいようだな。…しかしなぜ戒斗の偽物はいないんだ?」
そう手っ取り早いのは、戒斗も作れば早い。
でも、すこし見ていて想像がついた。なんせ、紘汰として話しているこいつが、昔の俺と同じ記憶を持っている。おそらくはユグドラシルでモルモットとして集めたあのデータを使っているのだろう。
つまり、俺は扱いやすかったけど、戒斗をあの性格のまま戻したところ意のままにならなかった。逆にかみついてきたとか。まあ、戒斗ならあり得る話だ。
だから、もう一体情報を集めるのに選んだのが裕也だったとか?まあ、そんなとこだろうな。
しかし、見るだけで怒りが込み上げる。
ここは、俺やあいつだって戻りたくても戻れない場所なんだ。それをこんな風に穢されるなんて。
『光実と城乃内からの情報を検討して、地下のあるそれらしい場所を絞っていくと、2箇所にまで範囲を絞れた。恐らくどちらかが研究施設、どちらかがその宗教団体の本部と言ったところだろう』
2箇所か…こっちも別れる必要性がありそうだな。
『つまり、2チームに別れるということですか?』
『別れ方としては、やはり凰蓮、ザック、城乃内の3人と、私と光実、葛葉というのが理想だろう。あくまで撹乱だ。さらに情報を手にいれることであって、無闇にオーバーロードへ手を出さないようにすることだ』
確かにあのオーバーロードは本当に危険だ。貴虎、しかし気付いてほしかった。ミッチもそうだ。
なんでよりによってあんな奴を信用する。
なんか自分で言ったら悲しくなるけど…
さて、大体位置の確認は出来た。
「こっちも別れよう。ローズはルクアと行ってくれ。どうせルクアは俺と一緒は嫌だろ?だから」
「この女とも嫌だが、まあお前といるよりはましだ」
そう言うと思った。こいつはいつもこうだ。
「ルキア、よろしくな」
「いえ、白い鳥様を守れるのは嬉しいです」
「嫌、だから様付はやめてくれ。それに俺がちゃんと守る。…ローズ、そっちは頼む。手筈通りな。あと、あの機械人形は好きにしていい。見ているだけで気分が悪い。どっちがいても遠慮なくやってくれ」
「でも、葛葉紘汰には当たりたくないですね。裕也という方にはわたくし思い入れもありませんので。…主様どうぞお気をつけて」
「その言葉そっくり返す。ローズ、無事にルシア取り戻して帰ろう。あの世界で待っているからな」
今回は無理に倒す必要はない。包囲網は整いつつある。
そう、ビルスの作戦通りに進んでいるという事だ。
望みどおり決着をつけてやる。俺達はお前たちを許せない。容赦するつもりはない。
まあ、この世界には迷惑かけるつもりはないけどな。
俺達はそれぞれの場所に移動した。