悪意再び    作:夢幻鎧武

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あくまで、オリジナル設定ですので、ご了承ください。
先に書いた通り、映画の要素はないので映画とはまた違う未来です。
そして、ある方の戦闘はありません。
ご了承ください。


第23話

 青き美しい世界。

 植物が生い茂り、見たことのない色とりどりの花々が美しく咲き誇る。

 空には美しい羽根をもつ鳥が飛んでいた。

 この世界にいるのは、インベスから進化したもの達、それかインベスから変化して動物に近い状態になったもの達だ。

 動物に見えるかもしれないが、食事もこの世界の食べ物でなければ受け付けない。この世界の果実は全てヘルヘイムの果実を変化させたものだ。

 だからこそ、動物とオーバーロードの俺達、更に似た存在であるローズやビルス達が生きていける。

 弱いものを虐げることのない世界、それを目標に作り上げた世界なのだが、今また戦闘に巻き込まれている。

 

「お帰り…ただ、流石に使いすぎたな」

 

 俺はそっと、もはや青白く光っている白い鳥を向い入れた。左手にのったその鳥は、さっとその姿を変化させる。

 極ロックシード

 そう俺のもつ知恵の実の欠片。それが、この鳥の正体だ。

 流石に使いすぎたためか、何故か黒く変色している。まあ、俺と融合すればなんとかなるだろうけど、隣にたつ男が先程から、かなり鋭い目を向けている。

 言ってくる内容は予測ついている。

 

「お前は…いい加減にしろ」

 

 不機嫌そうに自慢の黒縁眼鏡をくいっと上げながら、予想通りの言葉を言ってくる。

 この男こそ、ビルスだ。紫色の髪に紫の目を持つ男。右手には何が書いてあるのか知らないが手帳を持っている。格好は黒いスーツ姿で、一見どこかの執事っぽく見える上に、普段は微笑を浮かべつつ優しそうに見えるかもしれないが、性格はかなり問題がある。

 

「仕方ないだろ?分身だと余裕がないんだからさ。…ちゃんとお前の思い通りに、奴等をこの世界に封じ込めたんだ、文句ないはずじゃあ」

 

 なんせ本体で行きたかったのを我慢するは、皆を助けたいのもぎりぎりのところまで我慢せざる終えなかったし、名乗りもできないから怪しいものだと思われるし、ほんと最悪だった。

 

「大有りだ。陛下ともあって、お前がしっかりしなきゃいけないこのときにフラフラしているなんて、最悪だ。後先考えないその行動を悔い改めよ」

 

 うっ!

 でも、言い返せない。

 確かに影響を受けてしまっている。今も普通にこうしてこの、始まりの男とよばれる姿でいることでさえギリギリだ。それがバレていたということか。

 

「それでも、俺は戦える。第一、今までインベス退治を皆に任せてきてて、申し訳なかったんだ」

 

 そう、そもそもインベスをあいつらが差し向けてきていた。それもあって俺は余計にこの世界を離れることができなかった。だからこそ戦いたいのに、いつもこうだ。

 

「戦うだと?…お前は自分の状況も理解できていないようだな。確かに舞様やお前の力でこの世界から、あの連中は出ることが出来ない。だが、もし何かの方法でお前と舞様のことを向こうの世界に情報として送られたら、今までの苦労も無意味だ。…心配するな。我々が出るんだから、負けることはあり得ない」

 

 そう言って、またビルスは眼鏡をくいっと上げる。

 そう言われても俺は…

 

「結界は安定させたから大丈夫。って、紘汰あんた大丈夫なの?かなり体調悪そうだけど」

 

 金色の髪に、右目だけ赤い始まりの女と呼ばれる姿をした舞が、心配そうに俺のことを見ている。ということは、バレるくらいフラフラしているのか俺?

 

「大丈夫。少ししたら動けるから。…舞はどこかに隠れてろ。俺は」

 

 ゴスン

 戦うと言おうとする俺の頭を、ビルスは手に持つ手帳で叩いていた。

 正直痛い…

 こういう場合わざわざ自分を守るために力を使うのも馬鹿らしいから、使ってなかったのが悪かった。

 俺が頭をさすっていると、ビルスは不服そうにこちらをみている。

 

「少しくらい、人の忠告を聞け。お前も舞様と一緒にここにいろ。ここなら状況もみえるだろ?少しは我々を信頼して頼れ」

 

「信頼しているし、大切だからこそ俺は…」

 

 その言葉にビルスのため息がこちらまで聞こえてきた。なんか、かなり機嫌も悪そうだ。

 最近、こいついつもこんな感じだ。

 

「お前は」

 

 そう言って、俺に掴みかかってくるビルスを、舞が止める。舞は少し笑みを浮かべながらビルスに話した。

 

「紘汰がこんな性格なのは、よく知っていることでしょ?馬鹿がつくくらいお人好しなのも。それを今さら言ってもどうしようもない。…ビルス、貴方の気持ちもわかるけど、こういう奴なんだから、諦めて。ただ、紘汰も今回は大人しくしなさい。それくらい顔色悪いから。わかった?」

 

 そんなに顔色悪いのか?なんか舞に言われるとな。

 これ以上我儘は言えないか…

 

「わかった。ただ、危なくなったら俺は止められても出るからな」

 

 そう、この世界やこの世界に住むみんなの事は俺が守ると決めている。そもそも、守られるなんて性に合わない。

 

「危なくなるようなことなど、我々にあるはずがない。お前の側近としてこの戦いは勝つ」

 

「ビルス、だから俺はお前達のことを下に見たこともない。仲間だと思っている。いい加減その言い方止めてくれ」

 

 そう、こいつはわざとなのか、配下だの側近だの陛下だの使ってくる。

 こっちはそういうのを嫌いだということを知っておきながら。

 

「お前の側につくとき、ちゃんと宣言したはずだ。私はお前をこの世界の王に仕立上げるとな。諦めろ陛下。それでは行ってくる」

 

 そう言って姿を消したビルスに、俺はため息をついていた。

 いつも言い負かされている。

 

「紘汰、大丈夫。ビルスは分かっていっているから。ああ見えて、あんたのやりたい事は理解していると思うから」

 

「分かっているよ、舞。でもやっぱり、俺にとっては仲間だから。…まあ、信頼もしている。今回は大人しくしとこう」

 

 だからこそ、最近まともに戦ったことはない。だから、俺の実力を知らないものも少なくない。典型的なのはあのルクア達兄弟か。

 まあ、何を言われても気にしないけど…

 とりあえず、戦況を見てみるか。本当は戦いたくてしょうがないけどな。

 みんなが傷つくくらいならおれが…

 自然と俺のこぶしに力が入っている。それを見ていた舞がそっと、俺のこぶしを握っていた。

 

「紘汰、あんたの気持ちはわかるけど、皆を信じよ。…ここであなたが出て行ったら、今まで頑張ってきた皆が無意味になるんだから」

 

「わかってる。わかってるんだけど…」

 

 ほんと、もやもやしている。

 

 

 

 あの黒い仮面と対峙しているのは、いつも自慢してくる白い髭に青い目を持ち、黒い鎧を身に纏い、とんでもない重さの大きな金属製の鎚を軽々と持っている。ちなみに頭はスキンヘッド。彼の名はゼクス。黒い狼の異名をもつ者、そしてその隣にいる、赤い燃えるような長い髪に、金色の目をもつ少女、リクシアだ。

 

「頭の命令で容赦はしない」

 

「右に同じく、陛下のご命令でお命頂戴します」

 

 そう言ってリクシアは、大きな鉄扇を構える。リクシアは主に風を操ることを得意としている。

 だからこそ、今もリクシアの周りに風が渦巻いていた。

 

「なるほど、この世界の王様にはぜひ会ってみたいものだ」

 

 そう言って黒い仮面の男がその姿を黒い牛のような姿に変化させる。手にはのこぎりのようなギザギザがついた剣を持っている。

 ゼクスはにやりと笑うと、その鎚を振り下ろす。

 その衝撃波を仮面の男は剣で防ぐ。

 

「さすがは本物のオーバーロード。強いな…あのさ、俺達はあんた達の敵じゃない」

 

「心配しなくていい。陛下は貴方を敵として見ていますので。遠慮なく攻撃させていただきます」

 

 リクシアは冷たい目を仮面の男に向けていた。

 リクシアは、俺以外の頼みは聞かない。あのビルスでさえ手を焼く少女だ。まあ、いい子なんだけどな。

 あんま俺は命令するなんて好きじゃないから、いつもお願いをしている。

 

「話す余地はないと?」

 

「リクシアじゃないが、この世界は頭の者。お前なんぞの言葉に惑わされるものはいねえよ」

 

 そう言いながら、リクシアと連携して鎚を振り下ろす。黒仮面は剣でなんとか防いでいたが、防ぎきれなくなっている。

 まあ、この世界の中で力においては一番強いだろうゼクスと、風を自在に操るリクシアの二人だ。まあ、力の差が歴然としている。

 

「なぜだ…我らは人を選ぶのだぞ。我らが頂点にたてるのだ。誰にも馬鹿にされない。誰もが認める者になれるんだ。お前たちはわからないかもしれないが、あんな最低な世界は一度再編されるべきだ」

 

「だから、興味ないので。私はただ陛下より託された任務を遂行するのみ」

 

「俺もそういうの考えるの不得意でな。そういうのは、ビルスにでも言ってくれ。…まあ、その前に消えてもらうけどな」

 

 リクシアが巻き起こした風に巻き込まれ、黒仮面の男は宙に浮いてしまう。その隙に、ゼクスの鎚が黒仮面を捕えた。

 黒仮面は圧倒的な力に、光と共に消滅していた。

 

「弱っちいな」

 

「まあ、強い弱いなどは関係ありません。陛下の御心のままに」

 

 

 こっちは終わったか、となればもう一つ、あのプロフェッサーZは?

 そうやって見ていると、ローズとビルスが当たっている。

 

「あんたも形態を変えなさい」

 

 ローズがビルスに叫んでいる。いつもながら、相変わらず仲が悪い。

 

「誰が好き好んでこのような弱い連中に自分の本来の姿を見せなければならない」

 

 性格最悪同士のコンビ、上手くいくはずないけど。ほんと、仲良くできないのかと思ってしまう。

 

「喧嘩しているところ申し訳ないが、君たちのデータがほしいのだ。できれば本気で戦ってもらえないか?」

 

 プロフェッサーZの言葉に、ビルスが嘲笑している。

 

「人じゃないからと馬鹿にしていないか?言ったことばを理解できないのか、人間というものは。誰が自分の手の内をあかす馬鹿がいる。そもそも、お前程度なら、この姿でも十分相手できる」

 

 そういやあ、この二人ある意味似ている。両方ともそう簡単に尻尾を掴ませない。力より頭脳を使うことを選ぶ。だからこそなのか、一人戦闘形態になっているローズがいらいらしていた。

 

「どうでもいいわよ。とにかく主様のためにも消えなさい。はっきり言って邪魔なので」

 

「じゃあ、その手伝いでもするか。一応陛下と呼んでる手前、ちゃんとあの男を立てるとしよう」

 

 その言葉を聞いて俺は戦いに行こうとしたが、そこはがっしり舞に抑えられる。仕方なく、この見たくない戦いを見つめた。間違えなくビルスが戦闘形態をとればすぐに終わる。それほどビルスは強い。

 ローズは不服ながら、その鞭をしっかりと使ってプロフェッサーZを攻撃していく。

 

 もっともそれを軽々とプロフェッサーZがよけている。ローズはキッとその目でにらみつけている。

 相も変わらず、援護ということでビルスがヘルヘイムの植物を操ったり、雷を出すだけで一向に自ら戦おうとはしない。まあ、ローズも負けそうにはないが、これはしばらく時間がかかりそうだ。

 手の空いていたあの、ゼクス、リクシアは周りのインベス退治に行ってしまっているし…正直待つしかない。

 

 そしたもう一方では、錠前ディーラーとルクア、ルキア、ルシアの三兄弟と緑色の髪に緑色の瞳。緑色のワンピースを着ている、サリアというビルスの配下の女が戦っている。

 この女もまた、ルクアとルシアの二人と同じく俺の事を馬鹿にしている。まあ、別に力をみせるつもりもないし、そう思われていても気にしないけど、ローズやリクシアとぶつかっているのが難点だ。

 サリアはさっとその恰好を戦闘形態に変化する。

 みどりの蛇の鱗のようなドレスに、まるでメデューサのような緑の蛇のような髪。異様に赤い唇。大きな鎌を持つその姿に。

 まあこう見えて、ローズほどではないけど結構強い。さらに三兄弟が協力して戦っているから、錠前ディーラー

を抑え込んでいる。時間はかかりそうだが、こっちも何とかなりそうだ。

 

 

 ほっと一息ついたそんな時だ、背後から気配を感じたのは。

 

「舞、隠れてろ。何かいる」

 

 明らかに敵意を感じる。オーバーロードの類だろう。

 俺はさっと舞を守るように立つ。舞は俺の背に隠れていた。

 

「そこにいるのは誰だ?この世界の住民ではないな」

 

 ガサガサ

 

 そう木の陰から現れたのは、最後に見たあの青年だった。恐らく赤いジャケットにチームロゴが書かれている恰好から見たら、ビートライダーズのどこかのチームに所属しているようだ。もっとも、見覚えのない衣装だが。

 

「この世界の王はお前か?」

 

 その青年はそう言って、俺の顔を見てなぜか驚いていた。

 こっちは見覚えがないけど、あっちは見たことがあるという事か?

 

「さあ、俺は王だなんて思っちゃいないけどな。あんたは何者だ?オーバーロードということはわかるが」

 

「チームブラッド、影岡修羅だ。鎧武の葛葉紘汰だよな?」

 

 なぜそれを?もしかして、あの機械人形と混同されているのか。なら納得できる。

 ヘルヘイムの浸食の際、チームブラッドなんてなかったし、影岡修羅なんていうこの男を知らない。

 

「昔は鎧武にいたけど、今はあの世界そのものにいないしな。お前が言っているのは連中が作った機械人形のことだろ?一緒にされたら困る」

 

 あんな気色悪いもんと同じに見られたらたまったもんじゃない。どうせ、俺のデータ入れて似せてはあっても、決して俺ではないしな。

 

「機械人形?…そうか、奴らが言ってた人類を救済せず捨てた神は貴様だったという事か」

 

 捨てたとは…なんでそんなことになってんだ?捨てた覚えはないんだけどな。

 

「どうせばれたのなら仕方ない。神かどうかは知らないけど、それに近い力を最後に手に入れたのは俺だ。ただ、あの世界にいられなくなっただけで、捨てた覚えはない」

 

「奴らが言っていた。貴様は神でありながら変革をもたらさず、逃げて行ったとな。最強の力を持ちながら逃げ出すなんて、ありえない」

 

 修羅の赤い目がこちらに向けられる。

 

「変革をもたらすなんて簡単に口にしてほしくない。俺の持つ力は全てをつくり変えてしまう力だ。いままで守ってきた大切なものを滅ぼし、その先の未来を創る力。俺はあの世界にいる大切な人を守りたい。だから、あえてあそこに残らずここに来た。それを間違いだったなんて決めるのはお前ではない。そもそも、その選択が間違っていないと俺はいまだに信じている」

 

 そう、力を手に入れたのは俺だ。この力をどう使うか決めるのも俺だから、たとえ周りにどう思われようと平気だ。

 

「じゃあ力の持ち腐れじゃないか。どうせ使わない力なら、俺様に渡せ」

 

「生憎、もう決まった力だ。渡せないし、渡すつもりもない。それに、俺はこの力がまだまだ必要なんだ。この世界をつくり変えるのも途中なんだ。…そもそも、例えこの力をあんたが手に入れたとして、なんに使うつもりだ」

 

 この青年、なんでこんなに悲しい目をしている。こいつは何を考えている。

 力を求めているが戒斗のそれとは違っている。それに、支配をしたいためでもないようだ。

 

「それは…力さえあれば、だれにも馬鹿にされない。今回の事で特にそう感じた。力がなかったら仲間にさえ裏切られる。所詮力を示さなければ、誰にも認められない。力は示し続けなければならない。…だから、あいつの口車にのったのに」

 

 何の話だよ。こいつは結局何が言いたいんだ?

 

「あいつって?そもそも、何が言いたいんだ?」

 

「あいつはあのDJクロスだ。あいつが力を与えるからと俺様を…そしたら、俺様の意志じゃなく動き始めて。それに、オーバーロードとかいう訳の分からないもんになって、どうしたらいいんだ?そもそも勝手に変な世界に連れてこられたし。…だから俺様は力があればなんとかなるんじゃないかと」

 

 その言葉に、後ろに隠れていた舞が苦笑しながら前に出てきた。

 こいつは結局いいように使われて、こうなったというわけか。

 

「私たちにオーバーロードになってものを元に戻す力はないの。だから力をもとめてもどうにもならない」

 

 無情に伝えたその言葉に、ショックを受けている。さっきから聞いている内容から、こいつは混乱してるんだろう。気付いたらとんでもないことになってしまっていたから。

 

「そんな…って、あんたは誰だ?嘘ついてんだよな。神の力だろ?」

 

「舞は嘘を言っていない。それに、そんなことできるなら俺は舞を元に戻している。姿をあの頃の姿に戻すとかならできるけど、中身まで戻るわけじゃない。…もうあっちの食事ものどを通らない。それがオーバーロードの真実。もはや人ではない存在」

 

 自分たちが実感しているのだから、ここは無情でもちゃんと伝えておいた。

 

「じゃあ、俺様はどうすりゃいいんだ?このまま俺様は一人なのか?」

 

「一人になることを怯えているのか?…選択肢は3つだ。オーバーロードとしてこの世界に住む。俺達の力で新たな生命体になる。最後はまあ、言いたくない。言っとくがあの世界に帰ることは無理だ。もはやあんたも、あの世界から排斥されるものになってしまったから、俺達がそれを許さない」

 

 自分で言いながら、無情だとおもう。俺でも覚悟するのに時間がかかってしまった。それを、覚悟もなくオーバーロードになって、決めなきゃいけないんだから。

 

「私達は歓迎する。事情も事情だし、この世界では皆同じような存在。排斥されることもない。力も無理に求める必要もない。認めてほしかったんでしょ?貴方自身を」

 

 そう言って差し出した舞の手を、修羅は払いのけていた。

 そう簡単に受け入れられないか…

 

「まあ、考えて答えを出したらいい。急かすつもりもないしな。…みんなには手をだすなと伝えておくから。ただし、この世界の住民をあんたが傷つけたら別だ。その時は俺がこの手で。それが俺の責任ってやつだからな」

 

 そう、俺はこの世界を守る者だから。

 舞もそっと立ち上がると俺の傍にやってきていた。

 

「なんで、俺様を殺さない。何かするかもしれないんだぞ?」

 

「その気ならすでにしているだろ?まあした瞬間、俺が止めているけどな。…信じるよ。あんたを」

 

 なぜだとその目を向けている。俺はその問いに答えられない。

 

「こういう奴だから、紘汰って。昔っから変わってない。…でも紘汰、ビルスにはなんて説明するの?」

 

「ちゃんと伝える。あいつに何を言われようが、決めるのは俺だからな。そう言えば、あいつも言い返せないだろうし」

 

 舞はその言葉に苦笑していた。俺がちゃんと決めたら曲げない事を、舞が一番知っているからだろう。

 

「じゃあ、待ってくれ。ちゃんと考える時間をくれ。俺様は混乱してて。こう・・・」

 

「いいんじゃないか?悩んでも。いったろ?ここに手を出さない限り、俺達はあんたに危害を加えないって」

 

 そう言って俺が笑うと、少し安心したのか、そのままどこかへ行った。まあ、この世界の事は俺と舞で監視できる。それに、あいつは何もしないだろう。

 あの目は、本当に力を求めているんじゃない。さびしそうな目をしていた。

 救えるものなら救ってやりたい。それは俺と舞からの願いなのかもしれない。

 




ついに次で最終話です。
長々とおつきあいありがとうございました。
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