悪意再び    作:夢幻鎧武

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第3話

 ラットと光実は急いで、角居裕也と葛葉紘汰のもとへ駆け寄った。双子のルーとメイは、ガレージに飾れている写真でしか見たことがないが、話は聞いていた。

 そのため不思議そうな視線を向けている。

 

「おかえりなさい。裕也さん、紘汰さん」

 

 ラットなんて大喜びで迎え入れている。もともと、裕也もリーダーだけあって面倒見がいい。ナンバー2の葛葉紘汰もまた、自分より人の事を考えてしまう性格柄か、頼りにされていた。

 本当はみんな帰ってきてほしいと思っていた二人だ。

 そう、僕もその気持ちは一緒だが、それができない事情をみんなと違って知ってしまっている。

 あの時舞さんと紘汰さんは、裕也さんの事を黙っていた。

 インベスになって紘汰さんが倒したなんて、口が裂けても言えなかったのだろう。紘汰さんは、ずっとその事実を知ってから悩んでいたようだけど。あの頃はヘルヘイムの浸食によって、それどころじゃなくなっていたというのもあるのだろう。

 だから、今もなお行方不明になっていると、鎧武のメンバーは思っていたはずだ。

 それに、紘汰さん自身も本来そう簡単に帰ってくるはずがない。

 だが、今の様子を見ると何かあったから仕方なしというよりも、鎧武のメンバーとして二人とも普通に帰ってきている。

 だからこそ、光実は困惑していた。

 

「皆元気そうでよかった」

 

 そう言って笑っている裕也と紘汰を見て、光実はさらにどうしていいのか、混乱する。正直こういう時の対処の仕方なんて、考え付かない。

 

「どこ行ってたんだよ。裕也さんも紘汰さんも」

 

 ラットの問いかけに、裕也と紘汰が互いに顔を見合わせて首を捻っている。

 その様子は、本当にわかっていないようだ。

 

「ごめん、その辺が分からないんだ。いなくなってたってことは、なんとなくわかってるんだけど、なんでいなくなったのか…どこ行ってたんだか…本当にわからないんだ」

 

 紘汰がそう言って、何とも言えない顔をしている。

 裕也も同じような顔になった。

 つまり、何かあって戻ってきたというより、何かの力がはたらいたのか?

 でも、紘汰さんをそう簡単に?そもそも紘汰さんに影響する力なんて、どんな力だ?

 そもそも、裕也さんだって…死んだ人間を戻すなんて可能なのか?

 光実はそんなことを考え込んでいた。

 

「そっか、でも戻ってきてくれたんだから、いいんじゃない。…それより紘汰さん。舞は?」

 

 チャッキーにそう言われた紘汰が、考え込んでいる。

 やはり、その辺もわからないようだ。

 

「舞はどこかへ行ったのか?俺は気付いたら裕也と二人きりだったからな」

 

「ああ。気付いたら紘汰と二人だけだった。舞は知らない」

 

 裕也と紘汰の言葉に、残りのメンバーが残念そうな顔をしていた。

 てっきり舞も一緒だと思っていたに違いない。

 

「紘汰さんとともに消えたんだけど…そっか。別々なんだね」

 

 しかし、舞さんが?

 舞さんは紘汰さんとともにいるはず。

 なんせ、舞さんも紘汰さんもオーバーロードに…

 でも、今の紘汰さんを見ているとそんな感じがしない。沢芽市にいや鎧武の用心棒をやっていたあの頃と同じだ。

 どうすればいいんだろう?

 やっぱり、話すのなら兄さんやザックだよな…

 そもそも、紘汰さんがなぜ消えたのかまで皆は知らない。

 光実が一人そんなことを考えていたその時、ポンポンと肩を叩かれた。

 さっと、見ると心配そうな顔をしている紘汰さんがそこにいた。

 

「大丈夫か、ミッチ?なんか知らないけど、すっげえ怖い顔してたぞ」

 

 そう言って覗き込んでいる顔は、あの頃の紘汰そのものだ。

 本当に何も知らなかったら、手放しに喜んでいたに違いない。

 

「すいません。なんでも…あの、紘汰さんはどこまで覚えているんですか?」

 

 紘汰は、頭のうしろを掻いていた。

 どうやら思い出そうとしているようだ。

 

「うーん、そうだな…裕也を探していたのは覚えているんだけどな…あと鎧武に用心棒として戻ったのも…その辺しか、思い出せない」

 

 ヘルヘイムの浸食をしるはじめの方だな…

 その後、ユグドラシルのゴタゴタや、ヘルヘイムの浸食、オーバーロードが沢芽市に…などとあったが、その記憶もないのか。

 そもそも、自分がオーバーロード化したということも今は知らないのだろう。

 

「じゃあ、ロックシードは?」

 

「えっと、オレンジ、パイン、イチゴはもっている」

 

 最悪だ…

 一番重要なものを持っていないという事か。

 あれは黄金の果実の欠片…まさか、それがないとは。今どこにあるんだ?

 

「そうですか…あの、僕はこれで。兄さんのところに戻らないと。約束があるので…」

 

 なんかこのままここにいるのが、本当につらくなってきていた。

 それに、これ以上情報はなさそうだ。記憶もそこで途絶えているようだし。

 それなら、一度兄さんに相談しないといけない。ザックにも来てもらおう。

 これ以上、皆を巻き込めるわけない。あの笑顔を見ているとつらすぎる。

 

「何かあったら、また連絡する」

 

「頼みます」

 

 光実は足早にその場を去って行った。

 

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