ラットと光実は急いで、角居裕也と葛葉紘汰のもとへ駆け寄った。双子のルーとメイは、ガレージに飾れている写真でしか見たことがないが、話は聞いていた。
そのため不思議そうな視線を向けている。
「おかえりなさい。裕也さん、紘汰さん」
ラットなんて大喜びで迎え入れている。もともと、裕也もリーダーだけあって面倒見がいい。ナンバー2の葛葉紘汰もまた、自分より人の事を考えてしまう性格柄か、頼りにされていた。
本当はみんな帰ってきてほしいと思っていた二人だ。
そう、僕もその気持ちは一緒だが、それができない事情をみんなと違って知ってしまっている。
あの時舞さんと紘汰さんは、裕也さんの事を黙っていた。
インベスになって紘汰さんが倒したなんて、口が裂けても言えなかったのだろう。紘汰さんは、ずっとその事実を知ってから悩んでいたようだけど。あの頃はヘルヘイムの浸食によって、それどころじゃなくなっていたというのもあるのだろう。
だから、今もなお行方不明になっていると、鎧武のメンバーは思っていたはずだ。
それに、紘汰さん自身も本来そう簡単に帰ってくるはずがない。
だが、今の様子を見ると何かあったから仕方なしというよりも、鎧武のメンバーとして二人とも普通に帰ってきている。
だからこそ、光実は困惑していた。
「皆元気そうでよかった」
そう言って笑っている裕也と紘汰を見て、光実はさらにどうしていいのか、混乱する。正直こういう時の対処の仕方なんて、考え付かない。
「どこ行ってたんだよ。裕也さんも紘汰さんも」
ラットの問いかけに、裕也と紘汰が互いに顔を見合わせて首を捻っている。
その様子は、本当にわかっていないようだ。
「ごめん、その辺が分からないんだ。いなくなってたってことは、なんとなくわかってるんだけど、なんでいなくなったのか…どこ行ってたんだか…本当にわからないんだ」
紘汰がそう言って、何とも言えない顔をしている。
裕也も同じような顔になった。
つまり、何かあって戻ってきたというより、何かの力がはたらいたのか?
でも、紘汰さんをそう簡単に?そもそも紘汰さんに影響する力なんて、どんな力だ?
そもそも、裕也さんだって…死んだ人間を戻すなんて可能なのか?
光実はそんなことを考え込んでいた。
「そっか、でも戻ってきてくれたんだから、いいんじゃない。…それより紘汰さん。舞は?」
チャッキーにそう言われた紘汰が、考え込んでいる。
やはり、その辺もわからないようだ。
「舞はどこかへ行ったのか?俺は気付いたら裕也と二人きりだったからな」
「ああ。気付いたら紘汰と二人だけだった。舞は知らない」
裕也と紘汰の言葉に、残りのメンバーが残念そうな顔をしていた。
てっきり舞も一緒だと思っていたに違いない。
「紘汰さんとともに消えたんだけど…そっか。別々なんだね」
しかし、舞さんが?
舞さんは紘汰さんとともにいるはず。
なんせ、舞さんも紘汰さんもオーバーロードに…
でも、今の紘汰さんを見ているとそんな感じがしない。沢芽市にいや鎧武の用心棒をやっていたあの頃と同じだ。
どうすればいいんだろう?
やっぱり、話すのなら兄さんやザックだよな…
そもそも、紘汰さんがなぜ消えたのかまで皆は知らない。
光実が一人そんなことを考えていたその時、ポンポンと肩を叩かれた。
さっと、見ると心配そうな顔をしている紘汰さんがそこにいた。
「大丈夫か、ミッチ?なんか知らないけど、すっげえ怖い顔してたぞ」
そう言って覗き込んでいる顔は、あの頃の紘汰そのものだ。
本当に何も知らなかったら、手放しに喜んでいたに違いない。
「すいません。なんでも…あの、紘汰さんはどこまで覚えているんですか?」
紘汰は、頭のうしろを掻いていた。
どうやら思い出そうとしているようだ。
「うーん、そうだな…裕也を探していたのは覚えているんだけどな…あと鎧武に用心棒として戻ったのも…その辺しか、思い出せない」
ヘルヘイムの浸食をしるはじめの方だな…
その後、ユグドラシルのゴタゴタや、ヘルヘイムの浸食、オーバーロードが沢芽市に…などとあったが、その記憶もないのか。
そもそも、自分がオーバーロード化したということも今は知らないのだろう。
「じゃあ、ロックシードは?」
「えっと、オレンジ、パイン、イチゴはもっている」
最悪だ…
一番重要なものを持っていないという事か。
あれは黄金の果実の欠片…まさか、それがないとは。今どこにあるんだ?
「そうですか…あの、僕はこれで。兄さんのところに戻らないと。約束があるので…」
なんかこのままここにいるのが、本当につらくなってきていた。
それに、これ以上情報はなさそうだ。記憶もそこで途絶えているようだし。
それなら、一度兄さんに相談しないといけない。ザックにも来てもらおう。
これ以上、皆を巻き込めるわけない。あの笑顔を見ているとつらすぎる。
「何かあったら、また連絡する」
「頼みます」
光実は足早にその場を去って行った。