兄である貴虎に電話をかけ、今まであった出来事を話した後、光実は鎧武のガレージにやってきていた。
鎧武のガレージでは、普通に紘汰や裕也、それにラットたちが思い思いの場所に座っている。
「あれ、ミッチどうしたんだ?」
ガレージの入り口を開けた僕に、紘汰さんがそう話しかけてきた。
皆もじっと見つめている。
「いえ、ブラッドの連中ここに来ませんでした?」
「いや、来てないよ。奴ら恐れをなしてこないんじゃないか?」
ラットの言葉に光実は、そんなはずはないと少し考えていた。
そもそも、奴らはこの鎧武を一番目の敵にしている。
となれば、あれはレッドホットが使ったということか?
「そうですか。ならよかったんですけど」
なんでこんなに居心地が悪いんだ?
昔と違って、誰も裏切ってないのに…
僕はとりあえず空いている席座った。裕也さんが、さっと水を僕に持ってきてくれる。
「あのさ、ミッチに聞きたかったんだけどな」
なんだろう改まって。
裕也さんは僕の前に座ってじっと見つめてくる。
「なんですか?」
「ほら、軽く皆に話聞いたんだけど、沢芽市って大変な事になってたんだよな」
「ええ、ヘルヘイムが浸食してきて。それがどうかしたんですか?」
大体の事はここにいるメンバーに聞いたんじゃないのか?
「それで、なんでヘルヘイムだっけ?その浸食が収まったんだ?誰に聞いてもわからなくて。バロンの戒斗がおかしくなって、そして紘汰と舞がいなくなったと聞いたんだけど」
「その通りですが、僕もどうしてヘルヘイムが消滅したのかまでは…すいません」
黙っておかないと。これ以上先の事は。
僕は最後にオーバーロード化した紘汰さんにあっている。だからこそ、全て知っているんだけど。
「そうだよな。紘汰、やっぱり思い出せないよな」
ブランコに座っていた紘汰さんが、悩んでいる。
まあ、思い出さないほうが幸せな事もある。さっきから水を飲んだり、食べ物を食べたりしているところを見る限り、オーバーロード化していないようだ。
「思い出せない。何より舞の事が気になるんだけどな」
そうやってブランコをこいでいる紘汰さんを見て、何とも言えない。
言ったほうがいいんだろうか…でも、そもそも舞さんがどこにいるかなんて僕にもわからない。
紘汰さんが戻ってきたということは、舞さんにも何かがあったと考えるべきだろうが…
その時だ、テレビにDJクロスの生配信が映し出される。
『ヘイ、沢芽シティーのみんな元気にしてたかい?今日はなんとあのロックシードを、レッドバロンが使ったって言うんだから、おどろきだ。さあ、その様子をチェゲラ」
そう言ったのち、映し出されたのはレッドバロンの曽野村だ。
曽野村がロックシードを解除したその時、ヘルヘイムの植物が巻き付いていく。
「な・・・なんだ・・・これ。助けてくれよ…ぎゃあ」
右手に何重にもヘルヘイムの植物が巻き付き一向に離れない。曽野村は必死で暴れている。
それと共に、白髪に赤い目の少年が現れた。
さっきいたルキアという少年よりは背の高いその少年は、じっと赤い目を光らせている。
「くだんねえ…何がこの世界を守りたい。最低な世界じゃないか」
少年はルキアと違い、そう吐き捨てるとさっと右手を翳している。意識をもったままやっている。
自分の意志ということか…最悪だな。
「た…たすけてくれ。…頼むよ」
「下らねえって言っただろ?誰が人間なんか助けるか。…そもそも、俺を閉じ込めた連中のなかまなんだろ?許す分けねえよ」
そう言って赤い目を光らせると、どんどん曽野村の体に巻き付いていく。
そこに、あの白い鳥とローズ、ルキアが姿を現した。
「やめて兄さん」
「ちっ…あんたも来たのか。で、鳥とでも呼べばいいのか?」
明らかに白い鳥に反応している。
「ああ、鳥でもいいから、さっさとそこにいる奴のヘルヘイムの植物外してやれ」
「いくらあんたに言われても、外せないね」
その一言に、ルキアがため息をつくと、そっと曽野村に近づいていくヘルヘイムの植物に手を翳す。
すると、スルスルとヘルヘイムの植物が引いて行った。
「毒は注入されてません。早く逃げたほうがいいですよ…しかし、兄さん。白い鳥様の言葉すら聞かないなんて」
「だから、その呼び名はやめてくれ…ルクア、今回の件帰ってからな。言っとくが、さすがに許さないからな。…あとそこのお前、あんまそういうことばっかりやってると、俺達が相手になるが」
レッドホット達はすぐに逃げ去っていく。
それと共にその映像は終わっていた。
『さあさあ、あいつらは一体何者だったんだ?これからも目が離せないぜ』
それを見ていた一同が、驚愕している。
「あれって、オーバーロードとかいう連中じゃあ」
ラットの言葉に、メンバーがさすがに動揺している。みんなレデュエやロシュオの事を知っているからだろう。
「オーバーロードってなんなんだ?」
そうか、そこまで話はしてなかったのか…
紘汰さんと裕也さんは訳が分からず互いに顔を見合わせている。
「インベスでありながら、知識や言葉、武器を扱う存在。正確にはヘルヘイムの環境下に適応し、新たなる進化をもたらしたもの。駆門戒斗が最後そうなってました」
「それって、とんでもない化け物ってことじゃないか。…あんな連中を野放しにしてるなんて、大丈夫なのか?俺は行ってくる」
「待ってください、紘汰さん」
みんなが止めたが、紘汰さんはそのままガレージを出ていく。
僕と裕也さんはすぐさま紘汰さんを追いかけて行った。
みんなはとりあえず、鎧武のガレージに残ってもらったが…