光実が外に出て走っていくと、紘汰がそこで止まっていた。
目の前には、チームブラッドの連中がいる。その手にはあのロックシードが握られていた。
「お前ら…さっきのをみなかったのか?」
紘汰さんの言葉に、影岡修羅が嘲笑う。まるでその発言が馬鹿らしいという感じだ。
「見た、何が問題だ?…素晴らしき力には犠牲が必要だよな。その覚悟がなければこの場に立つな」
もはや狂っている…
こいつらは何を考えているんだろ。
「あんな状態になってまで、その力を求めるのか?なら、覚悟とかそんな問題じゃない。…おまえらただの馬鹿じゃないか。そんなんで争って一体何になるんだ?」
「力こそ正義…力なきものは滅びるのみ。簡単な断りだ。俺はだからこそ、限界を超えたその先にある力を手にいれる。さあて、お前らが泣きわめかなければいいがな」
そう言って、影岡修羅はロックシードを取り出した。目の前に構えると、なれた手つきでロックシードを解除する。
「さあいでよ。俺に新たな力を…」
修羅がそう言ったが、何も変化がおこらなかった。
この現状に、当の修羅が驚いている。
「何故だ…あの映像みたいに出てこないのか?」
修羅は泣きそうになりながら、そのロックシードをただただ見つめている。
何も変化が起こらないことに、他のチームブラッドのメンバーが危機感を募らせ、急いで逃げていく。
「てめえら、俺を置いていくのか?…くそ、出てこいよ」
叫び声だけがこの空間にこだまする。もはや、何も出来ないでいる修羅は、さっと目の前の紘汰を見つめた。
紘汰もため息をついている。まあ、紘汰さんの性格上、こういうパターンになると同情するんだろうな…。
「もう諦めろ。化け物になってまで力を求めたその先に何があるんだ?守るためにこそ使うのが力だろ」
「紘汰さんのいう通り。そもそもロックシードを使ってのゲームだって、遊びじゃすまされない。自らの命を懸けるゲームになる。だから、こんなこともうやめろ。チーム鎧武は元々、ダンスをする場所を守れればいいと思っているんだから」
「フハハハハハ」
僕の答えに、修羅が笑っている。
その声が静かなこの空間にやけに響く。
「そこだ、そこが弱いと言ってんだ。力をもってんのに上を目指さなくてどうする。守るための力だと?力は破壊するもの…それが守るだと…どんだけおめでたいんだお前ら」
「おまえ…いい加減にしろ。はっきり言っとくが、これ以上チーム鎧武に手を出すな。俺達はそんなこと望んじゃいない。され」
裕也さんの言葉に、修羅は睨みつけながら走って去って行った。
そんな様子を見ながら、僕は疑問を感じていた。
「なぜ、錠前ディーラーは空のロックシードをあの男に?」
その疑問に、紘汰は笑ってポンと光実の肩を叩いた。
なんかその手が温かった。優しいその手が。
「ミッチ、力はいりすぎだ。確かに、あんなロックシードほっとけない。でも、そんなに力んだらしんどいだけだぞ…それに俺としては、あそこにいたあのオーバーロードだっけ、あの連中が気になる。あんなの放置したら、沢芽市がどうなるか」
「そうですね」
何とも言えなかった。オーバーロードとしてもかなりの力があるようだ。
特にあの白い鳥は未知数。案だけやられた傷を、オーバーロードとしての姿に変わった途端、治すなんて。
それに、あの子供たちでさえ、ヘルヘイムの植物を操ることが出来る。
あんだけの力を持っていながら、沢芽市に手を出さない…あれが信用できる存在なのか…
「とりあえず、俺はあの場所に行ってみる。まあ、時間がたったからもういないかもしれないけど。それでも何か手がかりがあるかもしれないしな」
「そうだな紘汰。だが、あんま無茶するな。あいつらは危険だ」
「大丈夫だって。それに、ミッチもいるしな」
「はい、紘汰さん」
なんかこうやって頼られるのが、本当に久しぶりで正直嬉しかった。
昔はこれが当たり前だった。それを壊してしまったのも僕自身の弱さだった。
この時を、本当に守りたい。
そのためにも、僕はこのロックシードをばら撒いている連中の狙いとそいつら自身を特定する必要がある。
光実達があの場所についた時、やはりそこには誰もいなかった。
広がっていたヘルヘイムの植物もそこには残されていない。
「よう、ミッチ。それに…本当に戻ってきたんだな、紘汰」
ザックだ。あの映像を見て気になってきたんだろう。
あの頃よく邪魔をしていたバロンがそうやって話しかけてくることに、紘汰さんと裕也さんは戸惑いがあるようだ。
「大丈夫ですよ。ザックは仲間ですから…そっちはどうなんだ?」
「相変わらず。まあ、昔の恨みを晴らそうとよく狙ってくる。一応ロックシードは揃えているけど…正直あんま使いたいもんじゃないんだけどな」
「ですね…それより、配信に映っていたオーバーロード達見ませんでした?」
ザックも苦笑している。どうやら紘汰さんと同じく、奴らを狙ってここにきたということか。
「残念ながら。…一体何が起こってんだ?これじゃまるで、あの頃と同じじゃないか」
「いえ、あの頃との違いは理由なき悪意でなく、人為的な何かが働いている。だからこそ、それを特定する必要がある」
その言葉に、ザックのみならず、紘汰と裕也も反応する。
「まるで、何かを知ってるみたいだな。ミッチ」
「知っていたら、すでに解決しています。錠前ディーラーがあのロックシードを配っている。追いかけていったら、奴はまるで煙のように姿を消した。そのあと、あのオーバーロードに会ったんだ。奴らの狙いはあのロックシードに入っていた、自分たちの仲間。みただろ?あの少年のようなオーバーロードだ。三兄弟と言っていたからあと一人、捕まっているということだ。…捕まえた連中と、ロックシードを配りインベスゲームを流行らせているは同じ。だからこそ、そいつらを特定し止めないと。また同じことが起こってしまう。いや、それ以上かもしれない」
その言葉に、ザックが驚愕している。あの頃の記憶がない紘汰さんや、それすら知らない裕也さんは訳がわかっていないようだが。
「最悪だな…でも、アーマードライダーが二人いる上、俺達もいる。俺は今からシャルモンに行ってくる。シャルモンのおっさんなら、なんか手を思いつくかもしれないしな」
「凰蓮って誰なんだ?シャルモンって?」
紘汰と裕也は互いに顔を見合わせている。
「まあ、元アーマードライダーの仲間って奴だ。心配すんな。信頼できるし強いからな。ミッチ、そっちは貴虎に」
「兄さんにはすでに連絡している。今頃動いていると思う。僕もシャルモンに行きます。一度話をあわせておかないと。裕也さん、紘汰さんはガレージに。また連中が来たら困るので」
「任せろミッチ」
「俺達のチームだからな。ミッチ、ちゃんと戻ってこいよ」
僕はそんな二人に頷くと、ザックと共にシャルモンに向った。
鎧武をまもれるなら…あの二人があのままいてくれるのなら、僕は頑張れる。
そう、紘汰さんが僕たちを守ってくれていたように僕も、紘汰さんを…それが紘汰さんへの罪滅ぼしに。まあ、こんなことで許されると思っていない。でも、これくらいはせめて…