主神に恋い焦がれるのは間違っているだろうか   作:sophia

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2話

この日アドミーラには仕事が一切なかった。

彼はオラリオの中でも椿に続いて有名な鍛冶師であり、二つ名である魔剣創造(スペシャリスト)の名の通り魔剣に関しては隣に出るものはいないというほどの人物なのである。噂ではあの魔剣で有名なグロッゾの家系にも劣らないという話である。なぜそこまで有名でものすごいうわさまで経っている彼が暇なのかと言えば原因はいたって簡単なことであった。

一つは彼は鍛冶師としてかなり優秀な部類だが、大金はたいて剣を作ってもらうなら団長である椿に作ってもらう方が少しいい剣を作ってもらえる。団長である椿が副団長のアドミーラよりいい剣を作るというのはある意味オラリオでは有名な話で値段もあまり変わらないので剣を作ってもらう場合は彼女に頼んだ方がいいのである。

 

そしてもう一つは彼の二つ名を見れば察することができるかもしれないが、彼は魔剣を作ることに関してはオラリオ1であると言ってもいいほどの存在なのだ。彼の魔剣はクロッゾの家系の剣をも超えるという噂もあり、更にレベル5になったと同時にオラリオでは数少ない発展アビリティ【神秘】を手に入れた存在なのだ。現在【神秘】が付与された武具は一切出回っていないものの、魔剣に神秘が付与された場合のその剣の価値は今では計り知れないのだ。

一つの目理由は聞けば何となく理解はできるが二つ目の理由は殆どの人が「何故この理由で暇なのか?」と疑問に持つ人もいるだろう。よく考えてほしい、魔剣という存在は確かに強いがそんなに頻繁に使うものなのか、と。魔剣という存在は一定回数使ってしまえば壊れてしまう存在、更に一つ一つの魔剣は魔法のような攻撃ができるとはいえかなり高価なものなのだ。いくら強くとも数回使えば壊れてしまう存在をたかがそこらへんのダンジョン攻略で使うような馬鹿がいるはずがない、使うとしてもそれは自身が死んでしまうほどに窮地に立たされているか、遠征などでかなり危険な階に行っているかしかないのだ。

【神秘】があるからみんな買いたいと思うかもしれないが、現状で一級冒険者が高いと言える品であるのにそこに【神秘】が付与されたらとんでもない額になるので試しに買うということもできないのだ。更に【神秘】が付与された武器が出回っていないためどのような武具になるかもわかっていない

このようなことにより彼に来る依頼はとても少なく、暇が比較的に多いので日々主神であるヘファイストに会いに行くか剣を好きなように作るかの二択なのである。

 

そんなアドミーラは今日もヘファイストスに会いに行くことを決め、着替えて出かける準備をする。

着替えている最中に彼はふと思った。

 

「(最近普通に会いに行っている)」

 

普通に会いに行く以外何があるのだと馬鹿げてしまうが彼にとって主神ヘファイストスは愛する人柱(ひと)なのだからサプライズの一つや二つをしたいのだろう。彼は顎に手を当て何かないかと考えながら外を見る。いつもの様に活気のあるオラリオが見える

 

何かないものかときょろきょろと色々な所を見ていると彼の目にとある赤いものが目に留まった。綺麗であるのに棘がある花、薔薇である。これをプレゼントしようと急いで花屋の店先に行き、そこにあるだけの薔薇を全て買い占めた。花屋のお姉さんは少し驚いたものの買い手がアドミーラ・チェルノイフであると気が付くとヘファイストスに渡すのだと直ぐに気が付き少し顔が緩み笑った。アドミーラは薔薇を買い直ぐにヘファイストスの元に行こうとしたが此処である小さな疑問ができた。

 

「(この大量の薔薇をどうやって運ぼうか)」

 

両手では抱えることができないほどの量を買ってしまい、周りに荷台のようなものがないかと探すが見つからない。計画なく物を買い困るのは彼にとっていつものことだが、今回は少しいつもより量が多く、無理矢理抱えてしまうと薔薇の花弁が崩れてしまうかもしれないのでどうすることもできない。花屋の前で大量の購入した薔薇を背に困り果てていた。

 

「あの、大丈夫ですか」

 

アドミーラは後ろから声をかけられた事に気が付き後ろを向くとそこには金髪ロングの少女がいた。その姿は殆どの男どもがじっと見てしまうほどに美しいと言えるだろう

 

「花を買いすぎてしまいまして、どうやって持ち運ぼうかと考えていたんですよ」

 

少し恥ずかしそうに指で頬を小さくかきながらアドミーラは話す。誰が考えても買う前に分かるようなことをアドミーラは考えもせずに買ってしまったのだから

 

「手伝い、ましょうか?」

 

「え?いいんですか?」

 

これはアドミーラも思ってもいなかったことであった。見ず知らずの美少女が声をかけてくれるというだけでも殆どありえないのに手伝ってくれるとまで言い出したのだ。アドミーラは悪い気がしながらもここで断ってしまうと恐らく自分一人で往復して運ばなければならなくなってしまうのでお願いすることにした。

 

目の前の少女は少し口元を緩ませてから了承してくれた。

 

彼女は相当な実力者であったそうで、いとも簡単に目の前の薔薇の束を半分も持ってくれた。袋に包まれているとはいえ棘があるのであまりたくさんの薔薇を持たせたくはなかったアドミーラだが彼女は「大丈夫」と言って半分そのまま持ってしまった。

 

「なんで、こんなに、花を買ったの?」

 

「私がいかにあの一柱(ヒト)のことが好きかということをわかってもらうためです」

 

「ロマンチスト、なんだね」

 

彼を知っているものが【ロマンチスト】という言葉を聞けば皆が首を横に振るだろう、ただの無計画で買っているだけなのだから

しかしアドミーラはそんな言葉を言われたことがあまりないので少し恥ずかしくなってしまうが、そう思ってくれる人がいるということが少しは嬉しかったのだ。愛する主神は自身の体を布で覆い見えないようにしている。それは彼女自身が醜いのだと思っているせいである、故に彼女はそんな自分が誰かと恋愛をするのはおかしいと思いアドミーラの愛の言葉を全て無視しているのだ。ヘファイストスがそう思い続けている限り恋が成就することはないと解りきっているが、それでも彼は愚直なまでに真っ直ぐな気持ちでヘファイストスを愛するのである

 

「君には好きな人はいないのかい?」

 

「私には、まだ、いません」

 

目の前の少女は見た目からしても恋多き歳であると言っても過言ではないだろうが、それがまだないのだろうとアドミーラは思った

 

「決してかなわない恋など存在しない。俺はそう思っています」

 

アドミーラの言葉に女の子は気になりアドミーラの顔を見る

 

「もし、恋をして無理だと言われても恋をし続ければいずれ望んでいた未来へと進めるはずです。私は切にそう願っています」

 

初めて会った少女でもこの言葉にはなぜか説得力があると思ってしまうほどの話であった。それと同時にもし、自身も恋をする時は彼のように一途な恋をしてみたいと思った。

 

その後も他愛もない会話を続けていると目的地であるヘファイストス・ファミリアの元へと着いた。いっしょに運んでくれた彼女は目的地が此処であったことに驚いて少し固まっていた。そんな彼女をよそにアドミーラはごそごそと何かをしていた。

アドミーラは彼女のほうへと振り向き、可愛らしい紙で包んだ一輪の薔薇を彼女へと差し出した。

 

「今日は手伝ってくれてありがとう。これはお礼だよ」

 

そのまま女の子は薔薇を受け取り少し嬉しそうにした。

アドミーラはそのまま「それと…」と続けた

 

「君は冒険者かい?」

 

彼女はその言葉に少しきょとんとした後に頷いた。

それはよかったとアドミーラはニッコリと笑い腰につけていたとても小さな剣を手に取った。

 

「これをあげよう、とても小さくて切れ味は少しいい剣だけどすごい力が篭っている。もしも君自身や誰かが危ないと思ったら地面に突き立てて敵のほうを見るんだ」

 

女の子に渡された剣は本当に小さい剣、アクセサリーぐらいの小さな剣はどう見ても剣としての使い道がない。お礼であるので女の子はその小さな剣を貰った。

アドミーラは剣を渡したと同時にファミリアの中にいる仲間を二人呼んで花を持たせてヘファイトスの元へと向かった。

 

女の子も薔薇と小さな剣をもって自身の所属しているファミリアへと帰って行った。

 

薔薇を主神の部屋の前まで仲間とともに持っていき、部屋の前に置いてもらった。やることを終えたファミリアの仲間にお礼を言うと「いつものことだからなぁ」と呟きながらもといた場所へと帰って行った。扉を数回ノックをすると返事が返ってきた。

 

「失礼します」

 

ドアを少し開け、両手いっぱいに薔薇を持ち中へと入る。中にはヘファイストス以外にヘファイストスの友であるヘスティアもいた。彼女は現在ファミリアに誰も入団されず、ヘファイストスに厄介になっているのである。

ヘファイストスは目の前の光景は(アドミーラが何かしらの物を大量に持ってくること)いつものことだと少しため息を吐いたが、よく見れば手に持っている薔薇以外に扉に向こうにもいくらかの薔薇があったのを見てもう一度ため息を吐いた、今度の溜息は先程よりも明らかに大きいため息だ。そんな反応を見せるヘファイストスの横にいたヘスティアは「おぉ」と声を出して驚いていた。

 

「そんなに買ってきてもここには飾れないぞ」

 

「あ…」

 

普通に考えればわかるようなものを彼は考えず、愛の印として大量に買ったのだ。ではどうしようかと考えるもいい案が浮かばない。

 

「申し訳ないです、何かプレゼントをしようと思った時に大量の薔薇が目の前に入ったので」

 

「それはうれしいけどもう少し考えて」

 

呆れながらヘファイストスはアドミーラに言う。

取りあえずアドミーラは薔薇を全て部屋の中に入れてコーヒーを作る

 

「僕も子供達にこんなプレゼントをもらいたいものだよ!」

 

「度が過ぎているけどね」

 

ニヤニヤしながら言うヘスティアに対していつものことであるためもう特に思わなくなってきているヘファイストス。取りあえず何輪かは部屋に飾り、残りは廊下の花瓶に飾ることにした。数は少ないので全部は入りきらないが取りあえず入れることにしたヘファイストスはファミリアの子供達を呼んで薔薇を持たせて飾らせに行かせた。受け取った者達はみんなクスクスと笑いながら部屋から出ていった。

 

「プレゼントは嬉しいけどいい加減量を考えて、前も食べ物を大量に買ってきてファミリアで処理できなかった時が合ったでしょう」

 

ヘファイストスがこの世界に降り立った日は祝い事をしようとアドミーラは考え、記念にとヘファイストスの好きな食べ物を大量にアドミーラが買ってきたときがあったのだが、量が多すぎてヘファイストス・ファミリアだけでは処理できず、結果、周りのファミリアにあげてどうにか処理したのだ。

 

「俺がいかに愛しているかを伝えようと思うとついたくさん買ってしまうんですよ」

 

笑いながら言うアドミーラに対して顔を少し赤くするヘファイストス、その光景を見てニヤニヤするヘスティア

 

「こ、今後はこんなにたくさん買わないでね」

 

そういいながらクルッと窓の方を向いて赤くなっている顔を見せようとしないヘファイストスに少し和んでしまう。

 

その後ヘスティアが弄ってそれに対する反応がとても乙女らしくてもっとその反応が見たいアドミーラが便乗して弄ってしまい、ヘファイストスが怒ってしまうのはちょっとした出来事である。

 

 

 

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「アイズ、その薔薇どうしたの?」

 

「貰った」

 

金髪で長髪の女の子、アイズ・ヴァレンシュタインは素直に言った。その言葉に対してティオネは勝手に盛り上がり、アイズは「どうしたの?」と疑問に思った

 

「アイズ告白されたんでしょ!」

 

女という存在は何歳であろうと恋の話が大好きな存在である。ティオネは薔薇を持っていることを見て告白と同時に渡されたのだと勘違いをしてしまったのだ。違う、と反論をしようとアイズは喋ろうとする

 

「だれだれ?どんな人だった!?」

 

彼女に喋る隙を与えないほどにティオネの姉であるティオナが話に参加して来る。()()アイズ・ヴァレンシュタインに告白する馬鹿がいるなど誰が考えるか、周りのロキファミリアの者達も集まり、話を聞こうと盛り上がっている。その中一人、そわそわしながら俺には関係ないとぼそぼそ言いながら耳を確実にアイズの方向へと向かせて話を聞こうとしているベートが一人いたが皆見向きもしていなかったのは当然の話である。

 

アマゾネス姉妹によるマシンガントークにより喋るタイミングが一向に出てこなくどうすればいいのかと迷っているところに助け舟が出される

 

「お前ら、少しは落ち着け。まずはアイズの話を聞こう」

 

ロキ・ファミリアを立ち上げたときにいた最古のメンバー、リヴェリア・リヨス・アールヴが冷静ですと言わんばかりにこの場の一旦静まらせるが、アイズは彼女にとって大切な存在であるので実際は内心では聞きたくてしょうがなく、早く言えと言わんばかりであった。

 

「今日、歩いてたら、困ってる人がいた」

 

この言葉を聞いたときに全員の心が「えっ?」という疑問で一つになった。恋バナだったと思ったら出だしが行き成り変であったのだから当然である

 

「薔薇買いすぎて、運べなかったから、手伝った。その時に、貰った」

 

アイズ以外全員がティオネをじっと見た。ただの勘違いであったのだ

誰か一人が「かいさーん」といったと同時にみんなもといた場所へと戻って行った。ベートだけはその場で「アイズが告白されてもOKするはずもねぇわな」と内心少し焦りながら大声で誰に向かってでもなく喋っていた

 

「あと、この剣、貰った」

 

その剣を見たときの反応はみんなアクセサリーだろう程度だったが、一人だけアイズのもとへと駆け寄りその剣をまじまじと見た。その者はフィン・ディムナ

 

「アイズ、手伝った人はどこが目的地だった?」

 

「ヘファイストス・ファミリア」

 

やっぱりと言いながら剣を見続けた。

 

「薔薇をたくさん買ってヘファイストス・ファミリアに行く。多分アドミーラだろうね、ちゃんと彼が剣を作るときにするサインのようなものがある」

 

其処にいる全員、アイズも含めてその名前を聞いたことがあった。

 

「この剣は小さいけど恐らく魔剣の類だろう、今度聞いておいた方がいいな」

 

魔剣創造(スペシャリスト)の魔剣は実際にロキ・ファミリアも使用しているが、他のどの鍛冶師の者よりも一つ威力が上で実際に遠征などでの際では彼の魔剣が一番役に立っていると言える。そんな人物の剣をただで貰ったのだ、驚かないわけがない

 

「今度、お礼、言いに行こう」

 

「あぁ、それがいいと思うよ」

 

アイズの言葉に対してフィンが賛成する、なにせ物を運んだだけの対価で魔剣というのは大きすぎるのだ。しかし、アドミーラにとっては渡せるものがそれしかなかったのだから逆に別にお礼を言われても困る話なのだが、冒険者であり、何回も彼の剣に救われている者達にとっては大きすぎるものなのだ。

後日、会うことをアイズは決めた

 

 




5000字こえようと何となくアイズのその後書いたけどこれいらんかったかも
もしかしたら蛇足としてこの部分消して書き直すかもかも

因みに主人公じゃ主神一択ですしこの作品自体ハーレムにする必要ないと思っているのでフラグなんてものは立ちませんよ。ただこの先、話によっては恋愛がはいらずヘファイストスも出てこないかもしれないのでそん時の為に先に謝っておきます。
ごめんなさい

因みに書くのが遅くなってた理由は単に私が日常系の話を描くのが苦手なだけです。前に他の作品とか書いてたこともあったんですけど殆ど戦闘とか作戦会議ばっかでしたし
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