エドワードの率いるトロイトチームはエンプティの抜けた第8チームとリーダーを喪った第5チームの2人ずつから構成された。書士隊メンバーにはパオがつく。第5チームの書士隊メンバーであったウク・ウォンはパオとは同郷の後輩であり彼女には頭が上がらないのだ。もっとも書士隊としての知識と意見もあってのことだと彼女は言い張るが。
チームの再編された日、両チームの顔合わせが行われた。エドワードとアリスはこれから出会う第5の2名の名前を見て少し緊張していた。
「ま、まさか君たちと一緒とはね……よろしく、カスチェイ・デ・キリコさんと、ガロくん」
「おおっオマエがエドか! いやーガッキーから話はよく聞いてるよー」
エドワードは苦笑いに口端を歪めながらカスチェイと呼ばれた女性に声をかけた。彼女の手はエドワードに負けじとゴツゴツしており、笑顔を振りまくその顔にも数々の死線を越えたと思われる勲章がいくつか見える。サバサバした性格なのかカスチェイは初対面のエドワードとも親しげにスキンシップをとる。彼女の故郷ではあいさつのようなものなのだろう。そんなスキンシップをアリス・オットが脇から怪訝そうに見つめる。
ガロやガッキーと呼ばれた男はキャンプ地にいながら常に頭部の防具をかぶっていて素顔が見えない。エドワードは彼の顔を見たことがあるが、彼が頭部のベリオXヘルムを外すのは非常に稀なのだ。
「エド……その、すみません」
「えっ……どうして謝るの?」
エドワードはミナガルデにいた頃から第5チームの2人のことを知っていた。一緒に狩りをする仲間がことごとく災難に見舞われる「貧乏神」の名は街中のハンターの知るところだったからだ。
「明日は我が身か」の言葉がこれ以上ないほど似合うミナガルデのGクラスハンター集会所。より強固な連携が、狩りにおいて生死を分ける戦いの鍵となる。ほとんどのハンター達はGクラスに昇格するまでにそれぞれのスタイルを確立していて、敢えて他の仲間と組むような冒険はソロハンターを除いて見られない。実際調査隊に志願したハンター達も、ミナガルデのハンターでナンバーワンとされてきたセルゲイや、最年少最短記録でGクラスに上り詰めたロロアなどがそれなりに名を知られているくらいで、Gクラスハンター同士の交流があまり無い。そんな殺伐とした空気の中、噂話すら鉛のように地を這うような場所でさえ、彼らの呪われた噂話は空気のようにミナガルデハンターズギルドに漂う。
「やれやれまたか」
「あいつらには近づかない方がいい」
彼女をめぐる噂はいつもネガティブだ。彼女の相棒、ガロッキア・バールストンの性格のように。
「第5のリーダーがやられたのも遠まわしに多分この人のせいだろうな。全く、いくら人手不足だからって国王もこんなやつを調査隊に選抜するなんてどうかしてる。縁起でもない」
一度2人と別れた後、エドワードは彼女らのことをハンターの事情に詳しくないパオにも話した。
「行動を共にするとことごとく不幸が訪れる……ですか、こりゃまたアクの強いのが仲間になりましたね。いつもお疲れ様です、エドワード」
「まるで人事ねパオ……あなたにも火の粉が降りかかること間違いなしよ。分かってるの?」
「大丈夫ですよ。エドワードは頼りないですけど、持ち前の運の良さがありますからね。フェニスクスに向かう森を抜ける時だって……」
「ま、まあそれはともかく……気をつけた方がいいですよ。ホントに災害レベルですからあいつは……」
「そう、まさしく災害なのよ。あいつのせいで何人のベテランハンターがそのドクロを土にうずめる事になったか……うう、考えただけで恐ろしい」
(心配しすぎだと思うけどなあ……)
打ち合わせたかのような2人のリアクションを見てパオは運というものがそこまで命に関わるものか、と首を傾げるしかなかった。
***
見事に不幸は訪れた。新種の現れると予測されていた地域からは離れていたはずのトロイトチームの所へと、その黒いモンスターは現れたのだ。
「狭い所で戦うのは危険」とパオの指示を受けて4人は一旦新種から距離をとることにした。途中から雨まで降り出し、ぬかるんだ地面に途中足を取られそうになりながらも彼らは地図に見た先の広場へ一目散に走っていた。
ガロッキア・バールストンは走りながら後ろを振り返った。四股を使って走る漆黒の獣のような竜が、行く手を阻む木や草をなぎ倒して迫ってくる。黒い翼は外套のように雨風になびき、暗闇に紛れる暗殺者の如く静かな殺意を感じさせる。そして本来あるであろう部分、目が頭部に見られない。正確には目と思わしき部分はしっかりと閉じられている、まるで退化しているかのように。
「古龍種……?」
「ガロもそう思うかい?」
「四股を持っていて、目を持っていないに関わらず俺たちのことを認識している……視覚以外で俺たちの位置を探るセンサーを持っているに違いないですね、どうです書士隊?」
「は、話すとお腹痛くなるぅ……ぜぇぜぇ」
走り始めて数分、普段デスクワークの多いパオには限界がきていた。ヨロヨロと足がもつれだした彼女をガロッキアが後ろから支えると、そのまま彼女をだき抱えたまま走り続ける。
「俺は装備が軽いので……」
「あ、ど……どうも」
突然だき抱えられたので、パオは頬を赤くしてガロッキアに礼を言った。幾分か周りの見えてきたパオは前方に古代の遺跡の10メートルはあろうかという巨大な石柱があるのを発見した。
「エドワード! あの石柱まで走るのよ!」
「……なるほど。わかりましたよ!」
すぐそこまで新種のモンスターが迫ってきている。その距離僅か5,6メートル。なんとか石柱までたどり着くとエドワードは背中の「流弩ガノシュトローム」の銃口を石柱に向けた。本来銃身についたダイヤルを回すと、中の弾倉が回転する。お目当ての弾丸にダイヤルをセットすると、エドワードは銃口から大きな衝撃音とともに爆発が怒り、石柱のヒビが広がる。
黒い爪が彼らに襲いかかる直前に、石柱から爆発が起こると、そのまま新種の上に倒れかかった。突然の脇からの襲撃に意表をつかれた黒い新種のモンスターは石柱の下敷きになり身動きが取れなくなった。あと少し遅かったら、この足止めは失敗しただろう。
(き、昨日リミッター解除しておいて良かった……)
石柱の下でもがく黒い竜を尻目に5人はさらに走り続けた。走り去る際にパオはもう一度だけ黒い竜を一瞥した。何か不審な点を目撃したのか、驚いて目を見開いたが、他のハンター達に遅れまいと走り始めた。
「いやー危機一髪だったねえリーダーさん」
「全く。噂通りの不幸体質だね、あなたは……」
「さっさとこの場を離れましょう、ほらカスチェイも……」
「心配症だなあガッキーは」
「君が大丈夫でも、君の周りが大丈夫じゃないんですよそれだと……」
「あ、あの! もう下ろしていただいて結構です……」
「?ああ、すみません書士隊さん」
(パオさんがあんな顔をするとはね……ガロくんも天然たらしというかなんというか……)
雑木林を抜けると5人は広い草地に出た。かつての古代文明のものと思われる石だたみの広場は注意しなければ分からないほどにひび割れ、隙間から雑草が生える。雨音のせいで周りの音は聞こえにくいが、パオはすぐさま滝の流れる音を聞き取ったらしい。
「近くに滝が流れてます、雨で増水しているかも……ここも早いところ離れるべきでしょう」
「川が氾濫したら新種どころではありませんからね……」
「……どうやら、それはできねえ相談らしいぞ」
カスチェイが雑木林の向こうを指すと、植物は明らかに風によるものとは違う動きを見せていた。次第に足音が強くなっていき、林の影からあの漆黒の竜が再び現れた。もがいていた時に柱の一部を砕いたのか、白い石の破片が黒い外套にまとわりついている。
「まさかほとんど時間稼ぎにもならないなんてね……どうするこれ?」
冷静さを装うとするもエドワードの声は僅かに震えていた。あれだけの大きさの石柱の下敷きになって、直ぐに脱出するほどの怪力の持ち主であるらしいということを彼は一瞬で理解した。
「どうするも何もやるしかないでしょ?」
「ほんと、うちのカスチェイがすみません……」
「心外だなー。またアタイのせいかよ」
アリスは既にやる気のようで背中のクロームレイザーに手をかけている。その後ろでガロッキアがため息をついて謝ると、反論するカスチェイ。
「ちょ、ちょっと皆さん。本気ですか? 相手は未知の存在ですよ! もしかしたら古龍種並のやばいやつかも知れないんですよ!」
「そんなこと言ったって、もう逃げられないでしょ。あちらさんもやる気みたいだし、ここは戦うにはうってつけの環境だと思いますよ?」
焦りをあらわにするパオをよそにエドワードは淡々とした口調で答えた。依然として声は震えたままだが。
「それに、最近僕もアリスも飽き飽きしてきたとこなんですよ。刺激が欲しくてね。ロロアたちに負けたくないんだ。第5のリーダーを屠ったその実力、気になるでしょ?」
「そういうことだから、あなたはさっさとあのモンスターの分析を始めなさい!」
「へへっひと暴れするぜ!」
「……すみません」
エドワードの問いかけに他のハンター3人も呼応した。それぞれの武器に手をかけて、黒い竜に向かって走り出した。
「普段は皆を止める立場のエドワードがね……どういう風の吹き回しですか?」
パオは呆れ顔で呟いた。ローブのしたから双眼鏡を取り出すと、黒い新種をじっくりと観察し始める。見れば見るほど稀有な外見をしており、四股を持っているという点を除いてそれまで彼女が見たことのあるどの種族にも程遠いという点はすぐにわかる。
(見た目は飛竜種か古龍種って所ね、それにしても全く似ている存在が思い浮かばないなんて。この地方にしかいない珍しい種なのかしら? ……それからあいつの周りでゆらゆらしてるのは何?)
四股を地面にしっかりと立たせ、低く唸る黒い竜。雨風に翼と思われる黒い外套が軽々しくなびき、水が滴る。
黒い竜の口から黒く怪しく光る何かが吐き出される。質量があるかも曖昧に蠢く黒い煙は鈍いカーブを描きながら地をはうように迫る。一番乗りに走り込んでいたカスチェイが煙を避けようと回り込もうとするが、カーブの動きを読めずに黒い煙に包まれてしまった。
「うぎゃっ!」
煙に包まれた瞬間、カスチェイの体に鋭い痛みが走る。注射針のようなもので刺すような感覚だ。痛みに反応して彼女は小さな悲鳴を上げる。
「早速食らっちまった! なんかやばいぞあの煙!」
カスチェイは素っ頓狂な声をあげてガロッキア達に説明する。
「ほんと、うちのカスチェイがすみません……」
「い、いや……いちいち謝らなくていいよガロ」
後ろからガロッキアが追いついて、膝をついたカスチェイに緑色の液体、回復薬グレートが入った瓶を渡した。左手にサーブルスパイクを持ったまま右手のみで瓶の蓋を器用に開けると、液体をカスチェイに飲ませる。
「んっ……ふぅ。ありがとよ相棒」
「もっと頭を使わないと死ぬよ、分かってんの?」
「心配すんな、アタイは不死身だ」
「君が不死身なのは俺がサポートしてるからでしょうが」
カスチェイの頭を拳でコツんと叩くと、ガロッキアは再びカスチェイから離れていく。
黒い竜は次に猛スピードで走り出し、さらにカスチェイを狙って突進する。それを脇にとんで回避するカスチェイ、今度はかわしきる。なおも彼女を狙って向きを変えるが、その黒く長い首がカスチェイの方を向いた時には彼女の「ダイダロス」斧が振り降ろされていた。
だが、脇から突然弾丸が黒い竜の腕に直撃し、その黒い体が脇にそれると彼女の斧の一撃は不運にも地面を深く抉るのみ。
「あ、しまった……!」
エドワードの放った弾丸で、カスチェイの渾身の抜刀切りがすかされてしまう。結果としてチャンスは続くが、恨めしそうに彼女はエドワードを睨みつけた。
「ご、ごめん。 いつもの癖で」
(普段のエンプティと違って、カスチェイはガンガン懐に飛び込もうとするからなあ……)
第8チームでは敵の攻撃を受けていた盾役のエンプティがいたため、エドワードはこれまで彼のサポートのためにモンスターのバランスを崩すような撃ち方をしていたのだ。その癖で攻撃一辺倒のカスチェイの邪魔をしてしまった。
エドワードはチラと後ろに立っていたパオを見た。彼女も今ので状況を察したらしく、ぶつぶつと何かをつぶやきながら作戦を考えているようだ。
「迷うことはありません、エドは気にせず存分に撃ちまくればいいのです」
エドワードに声をかけたのはガロッキアだった。
「えっ、でも大丈夫なのかい?」
「カスチェイなら大丈夫でしょう……多分」
曖昧ですみません、と消え入るような声でガロッキアは言い放った。これまでカスチェイについてきた彼の経験によるものなのか、適当にそう言っただけなのかエドワードには確信が無かったが、今度は黒い竜がガロッキアに向かって突進していくのを見て反射的に頷いて次の行動を起こすことにした。
流弩ガノシュトロームの銃身から装填レバーとは別のレバーを引くと、弾倉が不恰好な形で飛び出した。そのケースのひとつひとつに通常弾、貫通弾、と大量の弾を詰め込んでいく。
リミッター解除と呼ばれる手法で改造されたライトボウガンは速射機構(これもライトボウガン独自の特徴である。弾丸を数発連続で撃ちだすことができる)と呼ばれるパーツを取り外すことで弾倉の保有スペースが増え、一度の装填数を格段に増やすことが出来る。ライトボウガンを扱うものはその特徴を理解し、クエストのコンディションによってこの手法を使いこなす。
「遠慮は無しだ」
銃口は黒く長いその首に向けられた。スコープ越しに竜とエドワードの目が合う。こんな風にモンスター目を合わせることが、これまでサポートに徹していた彼にとっては新鮮に思えた。
「すごく、楽しいね!」
「なんかエド、ロロアに似てきたわね……」
パオやアリスにも見せたことのないような不敵な笑みを浮かべて、エドワードは立ち上がった。
「さあてアタイらも……ん? なんだコレ?」
「さっきの黒い煙か?……大丈夫?」
「そうじゃなくてさ。これ見ろよ」
カスチェイはジャギィXアームに付着した黒い煤のようなものをもう片方の手ですくってガロッキアに見せた。
「……粉?」
「ああ、それは鱗粉だよ」
「鱗粉?」
「鱗粉っていうのは……」
「ちょっとそこの2人! 集中してください!」
モンスターを前に呑気に会話を始めているのでパオが忠告しようとするが彼らは話をやめようとしない。
「……というわけだ。いいね?」
「へえーそりゃ知らなかった!」
「……そういえばあなた達、あのモンスターに第5のリーダーをやられたんでしょ? 何かその時のこと覚えてないの?」
「?」
カスチェイとガロッキアは首を傾げて、肩をすくめて否定する。
「へっ?」
「いや、あんな奴アタイは見たことないぞ?」
「すみません、私も見覚えが……新種のモンスターかと思っているのですが」
「ちょ、ちょっと待って!」
パオはすっかり動揺を抑えられなくなり、あわてふためいて事情を追求しようとした。しかし、そんな3人に対して黒い竜が再び噛み付こうと猛スピードで迫る。
「パオさん!」
エドワードが背後から通常弾を放つが、モンスターの動きを止めるには不十分である。
「ちょ、ちょっと!」
「無駄話は後にしましょう……」
再びガロッキアがパオの体をだき抱えると、突進のコースから軽々と跳びのいた。続いてカスチェイもガロッキアとは反対側に飛び退いてこれをかわした。
(無駄話じゃないわよ!というかこの人はいつもいつもレディの体をぞんざいに持ち上げて……!)
同時にパオの頭にもう一つの疑問が浮かび上がる。第5チームのリーダーを襲ったのが黒い新種のモンスターだと報告を受けていた。さっきも逃亡中に見たそのモンスターの特徴は、報告に受けたものと異なることに気づく。
(どういうこと? ウク・ウォンの報告ミス? それともまさか……)
「しっかし、新種がもう1頭いたなんて話、アタイは聞いてねーぞ」
パオの疑問はその直後ボソッと聞こえたカスチェイの愚痴によって答えが導かれる。
「カスチェイ? 今なんて?」
「はぁ? だから新種がもう1頭いたなんてアタイらは聞いてないって話!」
「新種って……あの黒いやつが新種でしょ? あなた達第5チームのリーダーを襲った……」
その問いかけはさしずめパオにとって願望の意味が含まれていたが無常にも彼女は首を横にふる。
「あれじゃねーな。別モンだよ」
「そ、そんな……」
笑えないわ、と言いかけたが彼女は声が出なかった。
あらゆる強敵の跳梁跋扈するこの混戦極まる危険な土地で、彼女は持ち前の悪運でよりによってさらに新種のモンスターに出くわす芸当をして見せたらしい。
「つまり、新種は新種でもコイツは第5を襲ったものとは別ってことか……全く最高についてないよ君たちは……!」
そんな話があるか、とエドワードは半ば自暴自棄に笑う。目が笑っていなかった。
「へっ、今更なーに言ってやがる!」
カスチェイの背後から長い首が迫る。その牙が今にも彼女に噛み付こうとするが、カスチェイは手に持ったダイダロスを剣モードに変形させると、振り向きざまにその剣先を黒い口にくわえさせた。突進の勢いを殺すことが出来ずにカスチェイの体はズルズルと地面を後ろに滑っていくが、新種の突進にせり負けていない。ダイダロスの持つ手が震えているが、カスチェイの顔もまた、大胆不敵に笑っている。
「新種を初めてこの手で狩猟できる。これぐらいのチャンスを与えてくだすって、むしろ感謝しろ!このアタイの運の良さに!」
カスチェイがダイダロスの取っ手についたレバーを握ると、取り付けられていた強撃ビンから薬品が刃に向かって噴出される。その薬品が次第に量を増していくと、ダイダロスは振動でガタガタと震え出す。
「運の良さ、か……全く君って人は」
エドワードはカスチェイのもう一つの顔を思い出した。彼女とパーティを組むハンターが尽く危険な目に会うその理由、それは彼女が向かうクエスト行く先々で大型モンスターの乱入に合うというということ。どういうわけか彼女はモンスターの、それもかなり強力な連中の人気者らしい。
(そうそう、Gクラスってのはこういうネジの抜けた連中の集まりだったってとこをすっかり忘れていたよ……!)
「す、すみませんエドワード……」
「謝ってすむか……って言いたいところだけど。アイツの挑発でわかったよ。あれ見てみな」
カスチェイの剣先で爆発が起こると赤い薬品が飛散した。その爆発を受けた黒い竜は突然の出来事に驚いてひるみ、後退する。頭部の損傷から金色の光がチラと見えたのをパオは見逃さなかった。
「属性解放突き、とくと味わえクソ野郎!」
「金色……?」
パオは新種のモンスターの剥がれた頭部を見て首をかしげた。まるで脱皮するとでもいうかのようだ。
「アリス! カスチェイには負けないよ。あの新種をやっつけるのは僕達さ」
「もう……どうにでもなれって感じね?どのみちこいつをなんとかしないと、先へは進めないみたいだし……いっちょひと暴れするわよ!」
エドワードは再び銃口をモンスターに向ける。アリスはクロームレイザーを背中にとめて走る。それを見ていたカスチェイは満足げに頷くと、属性解放した剣先を取っ手側に戻し、斧モードに武器をもどした。
「すみません、パオ……ハンターとはこういう生き物なのです。命知らずで、目の前の未知に手を出さずにはいられない。書士隊のあなたなら分かって下さると思いますが……」
ガロッキアがパオに近づいて、恐る恐る声をかける。
「……ちっとも分かんないわね。遠巻きに観察するのとは訳が違いますから……」
やれやれとため息をつくパオ、それとは裏腹に彼女の眼鏡の奥に見えた目の色が変わったことにガロッキアも気がつく。何かを悟ったか、あるいはやけくそか、その真意までは分からないが、
「何にせよ、覚悟は決まったみたいですね」
「こんなの私のやり方とは違うけど……」
ローブの下から書士隊のサーベルを取り出す。せめて少しは、自分の身ぐらい自分で守るというのが彼女のモットーだ。
「しょうがないから、たまにはあなた達の脳筋プレーに付き合ってあげます!」
「の、脳筋プレー……」
「ちょっと! 聞こえてるわよ!」
副業にプロデューサー始めたら結局いつもとペース変わらなくてすみませんorz
明日続けて3-11も投稿予定。いよいよ秘境が近づいてきた!?