狩人達の軌跡   作:SHIPS

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4-2 ギルドナイツの憂鬱/ロロアのメッセージ

「……それで、今回の招集は一体何の要件ですか?」

「新たな同僚を二名、紹介しようと思ってな。本来は未開拓地調査の前に紹介するつもりだったが、貴様の予定が合わないせいで遅くなってしまった。何をしていたんだベッキー?」

「そりゃあドリスの教育に……」

「酔いつぶれた先輩の介抱を教えることが、われわれギルドナイツの招集よりも重要か。たいした女だな」

 

 完全に舐められている上司への態度に頭を抱えながらも、威厳を示すために珍しく全身を蒼の礼装に整えたその人物は低い声で教会に響き渡る声で全員と向き合う。

 

 古びてはいるが清掃が隅々にまでいきわたっているこの広間で、ホセ・シャイロックを含む人間が、一堂に会していた。ミナガルデに常勤する9名のギルドナイツ。蒼・小隊と呼ばれる彼らの執務はむしろ社会の裏で行われる諜報活動やブラックリストの処理が多い。欠席者もいるものの、7人でも彼らがこうして集まるのは非常にまれなことである。それこそ、一分隊のリーダーでもあり統括も兼ねているホセの招集命令でもなければ、の話である。最高12人のみが選ばれるこのメンバーは狩りの腕以外にも暗殺術や生態把握、諜報に優れた人員が選ばれ、任務に応じて統括であるホセがそれぞれの能力をみて隊を組む。

 

 書士隊、将軍、ハンター、受付嬢、果ては商業ギルドの重役とそのバラエティは実に豊富である。

 

「シャイロック統括、そちらが新人の子ですか? ……もう一人は?」

「目の前に立っているではないか……ああ、そうだ。こいつは一応『新人』という扱いにしておいてくれ。復隊というケースは極めて特殊でな。国王とギルドマスターに打診した結果だ」

 

 ホセの後ろに並んで立つ二名の人物。うち一名の方は何人かには見覚えがあった。以前は後ろでまとめられていた髪の毛は短く切られ、無精ひげがそられてすっきりしたその東方風の男は、かつてギルドナイツの中で最強と謳われていた人物であった。対照的に背の低く、幼さの残る少女もまた、周囲の人間の得意な視線を集めた。世間一般からすれば汚れ仕事が多い(と思われている)ギルドナイツの中で、子どもがまじるのは稀なことなのだ。

 

「えーと、皆お久しぶりでござる。このザトー・ムラマサ、本日よりギルドナイツに復帰するでござるよ」

「マリア・アーサー。私は執行部というよりは諜報活動が主になります。以後お見知りおきを」

 

 長身の男と、少女が横に二人並んで数人のギルドナイツの前で軽く会釈する。彼らのざわめきは意外な男の復帰と少女のアーサーというファミリーネームについて二手に分かれる。

 

「アーサーって……ジョン・アーサーの子ゼヨか?」

 

 ギルドナイツの中から一人の中年の男がしわがれた声で尋ねる。

 

「孫娘だ。彼女は現在、王立古生物書士隊の中級書記官も兼任している。ベッキー、しばらくドリスを玩具にするのはやめて、マリアにギルドナイツの何たるかを教育してやれ」

「了解! フフフ、よろしくねマリアちゃん!」

 

 ベッキーがにこやかに挨拶するがマリアは一切無視した。

 

「ええと統括……それで拙者はこれから何をすれば?」

「ひとまずは火の国との交渉のために、国王護衛の任務がある。俺様がメンバーを選抜し、温暖期の第三節には王都で火の国の長を迎え入れる準備を行うとしよう」

 

 突然ギルドナイツの中から腕が上がる。六角形の複雑な幾何学模様の面をかぶった男が暗いトーンでホセに尋ねる。

 

「火の国との交渉ってそれほど大変なのか?」

「ドラベッラは内務が多かったからな、知らないのも無理はない。われわれシュレイドの支配下にある属国の中では現在一番勢力が強い。火山帯が近いこともあって燃石炭等の資源をふんだんに有しているし、グラビモスやアグナコトルなどの強力なモンスターへ対抗するために軍隊やハンターの教育にも熱心だ。最近になって一大勢力として国王が危惧するまでに成長している」

「わしが昔もぐりこんだ時には心底レベルの低さにあきれたものだ。このご時世に生贄なんぞばかげとる。いつの間に彼らは……」

 

 しわがれた声の男が遠い目をしてつぶやく。

 

「現在の当主であるあの姫君の力が大きいな。竜人を招いて鍛冶技術や、動力機関など様々な技術を取り入れてることに成功したと聞く。技術革新ってやつだな」

「なるほど、そしてこの交渉はシュレイドによる火の国へのけん制、ということになるのですね」

 

 眼鏡をかけた青年が合点がいったと手をたたく。

 

「その通りだニムロデ。われわれは王国とギルドのパイプになる。懸念事項の排除のために、諜報中のノノとカムにも声をかけている。そしてムラマサ、ドラベッラ。貴様たちにもさっそく動いてもらおう」

 

 ホセが小さいメモを取り出すと、名前を呼ばれて前へ出てきた仮面の男とムラマサにその内容を見せた。

 

「この人物に逮捕状が出ている。拘束して本部に連れていけ。本部からはベッキーと俺様の仕事。カイエンとニムロデは引き続きブラックリストの人物を上から削除していけ。できる限り内治はよくしておきたい」

 

「承知したゼヨ」

「お任せを」

 

「マリアは待機だ。ベッキーからギルドナイツのことを教わりつつ、書士隊の動きに探りを入れろ。招集できなかったほかのメンバーについては俺が直接コンタクトを取りに行く。解散しろ」

 

 ギルドナイツたちがそれぞれ散り散りになろうかというとき、ムラマサだけが目を見開いたままその場に立ち尽くす。

 

「……どうした、知り合いだったか? なんなら貴様の代わりにカイエンを……」

 

 ホセは今しがた自身が手渡した封筒、その中に収められていた人物のデータを見て、ムラマサ同様に愕然とした。いつだっただろうか、ゲリョスの討伐の際にムラマサやロロア・ロレンスとパーティを組んでいたそのブロンドヘアの美しい女性ハンターの顔写真が乗せられていたのだ。

 

「どうしてこのようなことに……?」

 

 次第に顔に浮かぶ、ムラマサの怒り。ホセもまた状況を把握したようで彼のことを気の毒そうに見つめる。

 

「こいつはお前の仲間だったな……俺様の方でも掛け合ってみよう。だがまずは表向きにも、『国王サイド』の人間のために、仕事をこなしたと

 

いう誠意を見せなければならない。俺たちの意志で動くのはその後だ」

 

 一度覚えた内容はすぐに消さなければならない。ムラマサは手にした書類を必要以上に力強く丸めると、暖炉の中へと放り込んだ。肩を震わせながらも、彼は自分の仕事をこなすべく広間を出た。

 

(国王の思惑が気になる。自ら任を出しておいて、ネロ・アンドレを殺したのが拙者だと気づかないはずがあろうか? ……しかし)

 

 ふと頭をよぎるのは調査隊を終えてからのメンバーたちの動向である。さきほどムラマサとともに名前を呼ばれたドラベッラが不思議そうに彼を見つめる中、指を折りながら思索する。

 

(セルゲイ殿は忽然と姿を消し、ほかのメンバーも引退や休養を余儀なくされ、外部拠点からの志願であったファティマ殿もドルコンやエリフ殿とともに信仰の旅へと出て行ってしまった。あの後も主要なメンバーの中で現役としているのはエドワード殿のみ……か)

 

「ムラマサ?」

「あ、ああ! すまぬ。あまりの出来事に少々驚いてしまって……」

「復帰後初仕事とはいえ、しっかりしてくれよ。その女を取り逃して国王の機嫌を損ねるのが一番まずい。あのジジイは何考えてるのか本当にわかんねぇ」

「国王がギルドに対してここまで介入するのは確かに異常であるのう……」

「調査隊にいたお前なら、何か知ってるんじゃないのか?」

「……拙者は何も知らぬ」

「ふーん? まあそれならいいけどよ」

 

 薄暗い黒塗りの教会を出ると、日差しがより眩しく見えた。

 

「ここもいい加減趣味が悪いよなぁ……」 

「気味悪がって誰も近づかないことに意味があるのだろう。特に我々の部隊は」

「王都勤めの紅・小隊が羨ましいぜ、ったくよう。さてさて、まずは作戦を練りに飲みに行くか?」

「……さすがに飲む気にはなれないでござる……」

 

 まだまだ考えなければならないことは多い。目先の出来事に集中すると同時に、選択肢の結末にも気を配らなければならない。

 

「一度ヴェロニカと腹を割って話すべきだろうな……ロロア殿のこともある」

「何か言ったか?」

「いやなに独り言でござるよ。彼女はおそらく居住区にいる。すぐに向かうとしよう」

「やる気みたいで何よりだぜ」

「すこぶる胃の調子は悪いでござるよ……彼女の反応が怖い」

 

 

 

 自身の恋人に逮捕状が出ているにもかかわらず、ムラマサは至って冷静だった。それはギルドナイツとしての自身の精神の強さからというものもあるが、それ以上に再び帰ってきた自身の居場所というものへの安心感が強かった。彼らと一緒なら何とかなるだろう。そんな根拠の無い自信が湧き上がる。

 

 かつて湿地帯の寒村で事件が起こり、自分が除隊命令をくだされた時のことを彼は思い出した。結果は散々なものであったが、それでもムラマサの保身をかけて奮闘してくれたあの上司の事を彼は忘れていない。

 

「刎頸ノ友を得たり、とでも言うのだろうな……」

 

 ギルドナイツは市街地へと向かう。彼らの思惑もまた、ひとつの終着点へと向かうのである。

 

 

 

***

 

 

 

 狩人たちの故郷といえば、この広い世界でもココット村と答える者は少なくない。その村はハンターを中心に作られていた。彼らの心の拠り所となるべく成長したその拠点は、彼らのための設備に豊富で充実している。幾度となる繰り広げられるモンスターとの戦いですり減った心を癒やすものがそこには多くある。

 

 その中のアイディアの一つ、ココット村の集会所は食事をおこなったり、友と複数人向けのクエストを斡旋したりするために建てられていた。ミナガルデからのお下がりという名目ではあるが、中にはGクラスのモンスターを相手にするクエストも受注できる。

 

 クラウスもまた何度かここの下位カウンターを利用したことがあった。主にルガ・バレットのリハビリの付き添いに、ではあったが。

 

 セルゲイにつづいて前後に開く簡素な扉を開くと、古い木の香りや食材の芳醇な匂いに包まれる。窓は少なく中は薄暗いがろうそくの明かりが目に心地よい。ホールの片隅では盲目の老人が民族楽器のようなものでパフォーマンスをしていて、砂上船の旅客達がそこへ銅貨を投げている。

 

 四人座りのテーブルの片隅でクラウスを待っていたのは、これもセルゲイと同じく旅客風のぼろい外套を身にまとったままの小さな少年だった。肌は日に焼けていて硬そうな黒い前髪を中心から分けてある特徴的な髪型だ。そして丸メガネをかけている。少年はセルゲイに続いてやってきたクラウスの姿を見て一瞬微妙そうな顔をするものの、すぐに気を取り直して彼らを迎えた。

 

「あなたがクラウス・クローゼですね。はじめまして、僕はパスカル・ロジェール」

 

 少年は落ち着いた声で右手を差し出し、クラウスもそれに応じた。

 

「えーと……初めましてだよな? 俺に話があるってどういうことなんだ?」

 

 不思議そうに彼が尋ねると、パスカルも「疑問に思われるのはもっともです」と前置きし、座るように促すと、さっそく本題を切り出した。

 

 

 

「調査隊で何が起こったのか、まずはそれをあなたに知らせなければならない。僕とセルゲイは今、こうして調査隊で犠牲になった人々の遺族に、その最後を伝えるべく回っているのです。今回の未開拓地調査は、あまりにも犠牲者を出しすぎた。少なくとも、遺族には真実を知る権利があると考え、僕らは自主的に旅をしているというわけです」 

「真実……」

 

 

 そう言ってクラウスを見つめるパスカルの目はとても力強く、また据わっていて落ち着いていた。その口から出た言葉にも一切の虚飾をなしに彼は続ける。

 

「単刀直入に申し上げますと、『アクラ地方』のことです――」

 

 そう言いながら、少年は絶対にこの男の動揺を見逃すまいと目を見張った。そして「アクラ地方」という言葉に彼がわずかに反応していることを見ぬいた。クラウスの眉がわずかに動いたのを彼は見逃さなかった。

 

「アクラ地方について、やはりご存知のようでしたか」

「ま、まだ何も言ってないんだが!」

「いえ、ロロアがあなたを指名したのだからむしろ知ってて当然でしょうね……彼女は僕に言ったのです。『あなたを頼れ』と。あの地の因縁を解き明かすには、あの『冒険譚』をもう一度はじめから読み解く必要があると」

「……」

 

 

 

 クラウスはこの少年を前に言葉が出ず、また心底恐怖した。視界が定まらず、体が震える。そしてこの少年の瞳の奥にある一人の女ハンターの存在をたしかに感じ取っていた。

 

 今はなき彼女も見抜いているのだろう。そしてこのてん末をすべて終わらせるために自分の力が必要とされていることにこの少年は気づいている。

 

「あなたの力が必要なんだ。我々と一緒に、来る日、秘境へ赴くのです」

「ちょ、ちょっと待ってくれ!」

 

 テーブルを叩く音が嫌に響くと、それまで流れていた異国の音楽も途絶え、集会所にいた人間の視線がクラウスに集まった。しかしやがてしばらくすると、何もなかったかのように再びあたりは音で溢れかえる。

 

「やっぱり分からない。あの地の因縁ってどういうことだ? ただの未開拓地調査にどうしてそこで俺が出てくるんだ?」

「お前はミナガルデへ来たことがないから、そうした事情を知らないのも無理は無いな」

 

 口を挟んだのはセルゲイであった。「やれやれ青いな」とテーブルに置いてあった飲み残しの酒を手にとりながら解説する。

 

「王立古生物調査隊と各拠点に存在するハンターズギルド。王立の機関と独立したギルドの共同作業には、互いの思惑が紛れている。未開拓地調査などと体のいい組織はあるが、今ではその実、互いの陣営の探り合いという意味合いも強い。残念ながらな」

 

 セルゲイがうつむく。カドワキとの理想が生み出したその調査隊の一つの形がこのような形で利用されることになるとは、彼らにも考えが及ばなかっただろう。

 

「現在ハンターズギルドの影響力は絶大だ。その気になれば反乱を起こすことも難しいことではない。そこで王国は、ギルドのお目付け役の意味合いも兼ねて彼らを調査隊に送り込むことを考えたのだ」

「それが僕達王立古生物書士隊の仕事。僕たちは新天地でのギルドの横暴を監視、制御する役目を持っていた」 

「この調査隊は、未開拓地の調査なんてものよりもっと根本的に、政治的に重要な役割があるってこった。気づかない奴らはたくさんいるがな。古参のハンターたちはそれを嫌って、憂さ晴らしに書士隊をいびっているんだろうが……」

 

 ルガがちらっとセルゲイを見ると、彼も予想通りのリアクションをとったので、彼女もがっかりしてグラスの飲み残しを仰いだ。

 

「その調子だと、まだ続けてるのか……」

「溝は深まるばかりだな……」

「その未開拓地調査ってのがそんなに重要なイベントであるということを知ったとして、やっぱりまだつながらないんだが……」

 

 クラウスが話を本筋に戻そうと新たに疑問点を上げるが、パスカルは少しショックを受けて付け加える。

 

「まだ分からないのですか? 国王はアクラ地方を我が物にしようとしているのですよ」

「我が物にするって……侵略するってことか?」

「あの国王ならやりかねないだろうな……」

 

 

 

 

 

 

「それが何か問題なのか?」

 

 少しの沈黙の後、口を最初に開いたのはルガであった。パスカルやセルゲイは目を見開いて彼女の方を向いた。少しの苛立ちを含んで。けんか腰になりそうな雰囲気をとめようとクラウスがたしなめようとするが彼女は止めなかった。

 

「し、師匠」

「シュレイド王国の世界征服なんて、今に始まった話じゃないだろ? この旧大陸だってほぼすべての国があの王様に跪いてる。今更その均衡が崩れるとも思えない……アクラ地方を手に入れるのも時間の問題だろう。多数の犠牲を得た上で、だがな」

 

 ルガ・バレットは冷静に答えた。ある程度の自治は認めているとはいえ、王国の支配政策は決して緩い物ではない。この旧大陸の中枢で長い間ハンター家業をしていたルガやセルゲイだからこそ分かる話ではある。

 

「要するに、今更国王がアクラディ・アウス・レグヌムを手中に収めたところで、俺たちの暮らしに変わりはない、と言いたいのだな?」

 

 セルゲイが確認すると、ルガも彼の態度に不信になりながらもうなずいた。

 

「アクラディ・アウス・レグヌム?」

「アクラ地方の秘境。僕たちはそこで『神話』の舞台にたどり着いた」

 

 パスカルの声が低く小さくなる。

 

 

 

「ルガ・バレットさん。あなたも王都やミナガルデにいたことがあるなら、王国の歴史についても少なからず知見があることでしょう。王国が裏で今までどのようなことをしてきていたのかも……」

「……どういうことだ?」

 

 ルガとパスカルの視線が合う。彼女はこの少年の数倍も生きているというのに、その覚悟の座った目の強さに息をのむ。この少年は新天地でいったい何を見てきたのか、計り知れない冒険の記憶がそこに宿っていた。

 

 

 

「王国の均衡を覆すほどの闇がそこに眠っていて、今でも彼らがそれを握っているとしたら?」

 

 

 

 この小さな少年の言葉に、誰も反論することができなかった。事情を知らない人間にとってみれば、それこそ冒険譚のような夢のような話だと一蹴されることだろう。だが、クラウス・クローゼにはそれがただの仮説でないことを真に理解した。体を震わせて、彼らの身に起こっていることを理解した。

 

「僕たちはその協定に再びアクラの地に赴く必要がある。あなたの力が必要だ。来る2年後の未開拓地調査隊、そのメンバーに選ばれるためにあなたはミナガルデで名声を上げ、Gクラスの殿堂を目指してほしい」 

「俺がGクラスに……?」

「いくらなんでもそりゃあ無茶な話だ! 今日から数えてもわずか2年だと? それじゃあ……」

 

 

 

 

 

「ミナガルデの最年少Gクラスハンター、ロロア・ロレンスの記録をさらに上回るスピードだ」

 

 ルガが指折りで数えるよりも前に、セルゲイはその無茶な要求の具体的な例をさらっと口にする。

 

「ロロアの……」

「無茶だと言うことは重々承知しています。でもこれはロロアがあなたに託したことなんだ。きっとロロアは、あなたならできると、これから後のことを頼んだに違いない。だからこうして僕たちは真っ先にここへ訪れた」

 

 そこまで言ってパスカルは口をつぐむ。クラウスはといえば、急に明らかにされてきたこれまでの経緯にただただ呆然としている。

 

(ロロアを越えなくちゃならないだって? 俺が、あいつを?)

 

 周囲の時間が止まっているかのような感覚に陥る。このテーブルで今、これからの王国に絶大な影響を与える出来事の話し合いが行われていることに彼は未だ自覚がなかった。

 

 パスカルとセルゲイが他の遺族に会いに行くとココット村を出て行った後も、彼の頭にはその出来事がずっとのしかかっていた。しかしやがて村長から与えられたミナガルデ行きネコタクエクスプレスのチケットと推薦状を手にすると、クラウスも少しは覚悟を決めたのか、いよいよ新たな狩り場の舞台へと足を運ぶべく、長い間お世話になった人と家に別れを告げて、山間の都市を目指した。

 




 メリークリスマス。クリスマス企画を書けるなんて能力はわたしにはないので、寂しく本編更新です。いつもより遅くなってしまって申し訳ございません。実家のパソコンはいつも使ってるのと変換機能が違うから使いづらい……王都って打つと嘔吐って何度も出るw

 さて、今回登場したベッキーとドリスというのは原作キャラでございます。MH4Gのエピソードクエスト、MHXのココット村で受付嬢としても登場した赤いドレスが目印の初代受付嬢の名前です。

 そしてMHXでは彼女のとなりに時々立っている青いドレスの女性がドリスです。こちらはMHGで集会所のG級カウンターの受付嬢をしておりました。奔放な先輩のベッキーの態度に振り回されている様子。

 ちなみにベッキーがギルドナイツであるという話は公式設定ではありません(ノベル版ではギルドナイツだったけど……このあたりちゃんと明言されていないことが多いんですよね)

 調査隊の真実や、この小説でのシュレイド王国の設定について、ベテランのルガやセルゲイから語られています。割と重要な話ですので、難しいとは思いつつ知っていただければと思います。というか四章は全体的にターニングポイントが多いです。

 本当は設定集として一話ぽんと出そうと思ってたんですけど、たとえ回りくどくともキャラの口からしゃべらせたい、というのが本音でして。なんか冷めちゃうんですよね何でもかんでも解説されちゃうと。すみませんが細かい設定集は完結後にすべて出します。これも要望があればですが。

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