不死鳥
「どうしたんですか、朱乃先輩」
「いえ、少し考えごとを……」
最近朱乃先輩の様子がおかしい。……いや、様子がおかしいと言えば部長もか。イッセーくんが心配してたな。僕が原因を聞くも、大丈夫と言って教えてくれない。ただ、体調でも悪かっただけなのかな。
「アイチ、朱乃さんに何かしたんでしょ!」
「あははは……」
この後、勘違いしているエミを説得するのに、苦労した。
「おい、アイチ。一誠の奴が浮の空なんだが、何か知ってるか」
「そうなんだよ。お宝のエロ本見せても反応しないんだ」
「それが、僕も話し掛けたんだけど、ダメだったよ」
朝朱乃さんと登校して教室に着くと、まさに魂が抜けているようなイッセーくんがいた。声を掛けても反応なし。元浜くんや松田くんたちも話し掛けたけど、反応がなかったらしい。昨日の部活のときは普通だったから、夜に何かあったのかな?
放課後になり、今日は掃除当番だっので旧校舎に行くのが遅くなった。扉を開けると、そこにはいつもと違い、着崩れた服を着ているホストみたいな人がいる。そしてなんか暑い。これ一体どういう状況だろう。
「おい、何でここに人間がいる?」
「彼は先導アイチ。神器持ちで、オカルト研究部の一員よ」
「どうも……」
「ふん、人間ごときを仲間に入れるとはな……。それよりリアス、いい加減覚悟はできたか?」
「いい加減にして。以前にも言ったはずよライザー、私はあなたとは結婚しない。私の婿は自分で決めるわ」
なんか、ただならぬ関係のようだ。
「あのー、部長とはどういう関係で……」
僕はおそるおそると言った感じで、聞いてみる。
「ライザー様はリアス様の婚約者であらせられます」
……っえ。
僕の疑問に、近くにいたメイドさんは簡潔に答えてくれる。
「「えーーー!!」」
僕とイッセーくんは同時に、驚愕の声を上げた。
話を聞くに、このホストのような人は、純血悪魔であるフェニックス家の三男で、ライザー・フェニックス、メイドさんはグレイフィアさんという名前らしい。それで、純血の悪魔は大事らしく、そのために親同士で決めた結婚なんだけど、部長が反対だとか。
「それは前にも聞いたよ、リアス。だがそういう訳にもいかないだろ? 既にグレモリー家に純血の跡取りを残せるのは君一人なんだから。まぁ、君のご両親が子を成す可能性も無いわけでもないが……」
ライザーは悠々と語る。すかさず、部長も反論した。
「理解しているわ。婿養子を迎える事だって認めている」
「だったら……」
「それでも、あなたとは絶対に結婚しないわ」
なるほど……誰でも嫌だよな、こんな人と結婚するの。
ライザーは部長の反論を聞くと、呆れた表情をして、直ぐに言い返す。
「リアス、俺もフェニックスの看板を背負っている純血悪魔なんだよ。その名に泥をかけられる訳にはいかない。俺はこの場にいるお前の眷属たちを燃やしつくしてでも、君を連れていくぞ」
ライザーは立ち上がり、奴の周囲から炎と殺気が広がる。僕たちも神器を出したり、魔力を出してそれぞれ臨戦体制をとった。僕はマロンにライドする。
「両者お止めください」
そこに、グレイフィアさんから一喝がはいる。僕はその声と共に、ライドを解除した。
「最強の女王に言われては、止めざる得ないな」
最強の女王……どのくらい、強いのだろうか。
「こんな事にはなろうかと、最終手段を用意しております」
「最終手段?」
「レーティングゲームでございます。本来なら成熟した悪魔しか参加できませんが、非公式の純血同士でなら、半人前でも問題なく参加は可能です。勝った方のご意思を尊重する。それが両家の出した結論でございます」
「なるほど、部長が勝てば、この婚約はちゃらと」
「その通りでございます」
グレイフィアさんが、冷静に告げる。それを聞いたイッセーくんは、ガッツポーズしていた。だけどイッセーくん……これは圧倒的に不利だ。
「いいわ。受けて立ちましょう。ライザー、あなたをレーティングゲームで消し飛ばしてあげる」
「おいおい、正気かリアス。 俺はもう成熟した悪魔だから、ゲームには参加している。それに勝ち星の方が多い。それでも本当に俺と戦うのか?」
「もちろんよ」
「OK。じゃあ俺が勝ったら、即結婚だ」
ライザーの言葉に、リアスは強きで頷いた。
「それより、リアス。そこにいる人間を除いて、眷属はそれだけか?」
「そうよ……」
ライザーはリアスの言葉を聞くと、指をパチッと鳴らし、彼の後ろに十五名の様々な美少女たちが現れる。恐らく、彼の眷属悪魔たちなのだろう。
「なんだと……」
僕は何故か反射的にイッセーくんに、振り向く。そこには案の定号泣しているイッセーくんの姿があった。きっと、ハーレムの部分に感動しているのだろう。本当にぶれないな……。
その後、ライザーは部長に一誠が泣いている理由を聞くと、バカにして、眷属の一人と見せつけるようにキスをした。思わず、僕も顔を赤くしてしまった。
「ふぅ。どうだったかな下級悪魔君? まぁ、どうせ君にはこんな事は一生無理だろうけどな」
「うるせー!余計なお世話だ。来い、ブーステッドギア!」
イッセーくんは泣きながら、神器を発動させる。
……泣かないでイッセーくん、いつかできるよ……きっと。
ここで、ライザーが眷属の一人に指示を出す。
指示を出された眷属は手に持っていた棍棒で、イッセーくんを吹き飛ばした。
「一誠!」
「ミラはうちで一番弱い兵士だ。解かったか下級悪魔君? それが今のお前の実力だという事だ。もし俺が自分で手を下していれば腕一本くらいは消し飛んでしまっていただろうな。まぁ神器は左腕だし、右手は無くても発動するだろ?」
「糞が……」
イッセーくんが、苦しそうに声を出す。
「だが、赤龍帝の籠手の力への興味もある。そうだな……十日、十日の猶予をやろう。どうかなリアス?」
「……私にハンデをくれるって言うの?」
「なに、その方が素直に諦めがつくだろう。もっとハンデをつけてもいいが?」
「結構よ。十日でライザー、あなたを消し飛ばしてあげるわ」
「決まりだな」
こうして、部長たちとライザーとのレーティングゲームが決まったのであった。今回は僕が人間ということで、参加できないが、何か力になれることが、あればいいんだけど。
しかし、人数も少ない、経験もない。さらに、相手はあのフェニックス……まるで、ファイトでグレード1が、グレード3に挑むようなものだ。恐らく……いや間違いなく、大変な戦いになるだろう。僕はこれから行われるレーティングゲームに大きな不安を抱いていた。