「……んーっ!!くっ……あぁ……。」
朝6時。俺こと『虚井 廿楽(ウツロイ ツヅラ)』の一日は、そんなあくびとも伸びともとれぬ声から始まる。
「……あー……。」
そしてしばし停止。低血圧のため、俺の朝はいつも辛いのである。休日であらば、ここからまた少しづつ意識が遠ざかり、気が付けば二度寝を始めているところだが、この日はそうもいかない。なぜならば、俺の高校生活二年目が始まりを告げる日だからだ。それはすなわち、これから再び騒がしい奴らに囲まれてそれなりに楽しく暮らす日々が始まるという事を意味していて、それを思うと俺は
「Zzz……。」
異常な眠気に襲われた。
ピンポーン
ピンポーン
ピンピンピンポポピンポンポピンピピピピピ
「やかましゃあぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
けたたましいチャイム音と共に無理やり再びたたき起こされた。
「……あぃ」
制服を適当に着てドアを開ける。
「にひ!!うっちゃん、学校いこ!!」
そこにはヘラヘラと笑顔を浮かべる幼馴染『道前 進(ドウマエ ススム)』の姿がある。今までの人生で何度も何度も拝んできた顔だ。
「……」
俺はいつものようにしばしその顔を死んだ目で数秒見つめると
「……」
無言でドアを閉め
ガキャアア!!
れない
振り返るとドアの隙間に差し込まれたハリセン。明らかにハリセンから出ていい音では無かったが、いつもの事なので慣れたもんである。
「うっちゃん!!学校!!」
「……分かってるけどさ、お前朝っぱらからチャイムガシガシ押すのやめてくれない?俺朝つれーんだよ。」
「分かってるけどチャイム一回しか鳴らさなかったらうっちゃん家の中から30分以上出て来ないじゃん。学校遠いんだから、それじゃあ間に合わないって~。」
俺と進が通う学校はここから歩いて50分程かかる『文月学園』という学園である。時刻は午前6時10分。今から行って到着は7時くらいか……
「結論」
「うん。」
「今から20分ほど二度寝しても問題なし。」
そして俺は再びドアを閉め
ガキャアアアア!!
れない
あれ何だこの既視感
――――文月学園正門前――――
微妙に上り坂になっている文月学園へと通じる道。その両脇には、生徒達を明るく迎えるため、美しい桜が咲き誇っている。ヒラヒラと舞い落ちる花びらを、ブオンブオンと薙ぎ払いながら歩く進の姿はとても似合っているとは言いにくいが。
「……む、おお道前に虚井!!今日も随分早い登校じゃないか。まあ虚井は道前にたたき起こされたんだろうが、まあいい。お早う!!」
「西村先生おっはよーでーっす!!」
「……です。」
「うむ。虚井はともかく元気な挨拶ご苦労!!さて、これがお前たちのクラスの振り分けだ。」
そう言って俺達に封筒を手渡してきたのは『鉄人』こと西村先生。下の名前は忘れた。振り分けは事前に行われたテストの結果により決まるのだが、この封筒の中にその結果が書かれているとのこと。
「んにゃあー!?」
突如猫のような悲鳴を上げる進。どうしたのかと覗いてみると、でかでかと書かれた『F』の文字。
「フッ」
「あーっ笑った!!じゃあうっちゃんはどーなのさ!」
やれやれ。俺は勿論Aクラ
『虚井 廿楽
Fクラス』
「なにゆえ」
「答案用紙のほとんどが白紙だったのに何故そこまで自信を持てていたんだ虚井」
「やったー!!うっちゃんとおんなじクラスだーわははははは!!」
なにゆえ
――――――――――――――
第一問 以下の問いに答えなさい
『調理の為に火にかける鍋を製作する際、重量が軽いのでマグネシウムを材料に選んだのだが、調理を始めると問題が発生した。この時の問題点とマグネシウムの代わりに用いるべき金属合金の例を一つ上げなさい』
姫路 瑞希の答え
『問題点……マグネシウムは火にかけると激しく酸素と反応する為危険であるという点
合金の例……ジュラルミン』
教師のコメント
正解です。合金なので『鉄』では駄目という引っ掛け問題なのですが、姫路さんは引っ掛かりませんでしたね。
虚井 廿楽の答え
『問題点……燃える
合金の例……ジュラ』
教師のコメント
もう少しなんですから頑張って下さい
土屋 康太の答え
『問題点……ガス代を払っていなかったこと』
教師のコメント
そこは問題じゃありません。
道前 進の答え
『問題点……軽すぎて火のいきおいで吹っ飛んだ
合金の例……てつ』
教師のコメント
問題点が問題点満載ですが、合金の例は非常に惜しかったです。合金なので『鉄』ではハズレですよ。
吉井 明久の答え
『合金の例……未来合金(←すごく強い)』
教師のコメント
すごく強いと言われても。