「よう明久。まずはお前のその指へし折らせろ」
「何故だっ!!僕は何もしていない!!」
「嘘つけじゃああの放送は何だっ!!」
教室に戻るなり、雄二は明久にいい感じに関節技をキメはじめた。ところで須川君は何処にいるのかな折角調理室から持ってきた包丁の切れ味を試したいんだけど。
「僕が放送を指示したのは確かだけどあんな内容は言ってない!!ていうか僕だったら僕の名前は使わずに雄二だけをじわじわ苦しめられる内容にするに決まってるじゃないか!!」
「お取込み中すまんが雄二君、須川君はどこかね?」
「あ?そういやもうすぐ戻ってくるはずだぞ。」
「それは良かった。やったな明久。一緒に須川君の歓迎会の準備を始めよう。」
「うん!!一生懸命作ったプレゼント(靴下に砂をつめたもの)もあるし、須川君きっと喜ぶね!!」
『フヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ』
「あ、廿楽と明久関連は俺の指示な」
『まずは貴様だァっ!!』
俺は右わき腹へ、大振りにならぬよう細心の注意をはらい鋭く包丁を突き出し、明久は死角になりやすい左上から包丁と同時に着弾できるような速度で振り下ろす。
『おーい、船越先生が明久達を探しにこっち向かってるぞー?』
「チイッ!!お前ら出撃しろ!Dクラスは適当にいなしとけ!!」
「撤退だ!!」
「おのれ雄二船越先生に助けられたな!!」
俺達三人はそれぞれが掃除道具いれ、教卓の裏、黒板脇に置かれた戸棚の中に身を隠す。
『あ、船越先生が来たってのは嘘だよ。それと言っておかなくちゃいけないと思ったが』
……ん?この声どっかで
『三人全員巻き込んだ放送内容は俺の独断で決定しました』
『須川ァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!!』
俺達三人は同時に教室を飛び出した。
教室の中に進を残して
「え?え?えーっと、……うっちゃん待ってー!!!」
―――――――――――――――――――――
「須川ッ!!須川てめえ俺の指示してない内容を勝手にィィィッ!!」
「須川くーんあっそびーましょーアヒャヒャヒャ」
「須川君の指一本、二本、三本、四本」
そんな感じで(どんな感じだ)戦場にたどり着く。俺達三人の醸し出す異様な雰囲気に、今までわずかに押していたと思われるDクラスの面々が怖気づきはじめる。
『な、何だアイツらっ!?』
『修羅だ、修羅がいる!!』
『ヒイイッ!!』
「ん、敵が怖気づいてるな。動きが固まってる今のうちに囲め!!」
雄二の指示で、FクラスのみんながDクラスを囲むように陣形を取る。
「これ以上逃げられても面倒だからな。一気に押しつぶす!!」
『おおーっ!!』
しかしこっちは確実に士気が上がっている。数の面ではこちらがわずかに優っているしな。
「援護に来たぞ!!もう大丈夫だ!!囲まれている奴らはとにかく一点突破、こちらに合流しろ!!」
すると、奥の方から声が聞こえた。Dクラス代表、平賀の声だ。
「チッ。Dクラス本隊か。そろそろだとは思ったがついに来たか。」
「雄二、ここは俺の出番か?」
「まあな。それがお前の役目だ。適当に潰して来い。」
「へいへい。了解指揮官様。」
俺は雄二の指示に従い、包囲の輪から抜け出しDクラス本隊の目前に一人で突撃した。
『あ、あれは虚井!?何故Fクラスに!!』
「まずいな。Aクラス級の実力者。見間違いだと思ったが、本当にいたか虚井……!!」
「平賀、悪いが負けてもらうぞ。Aクラスのリクライニングシートを手に入れるために。俺の安息のために。サモン」
「クソッ……仕方がない。数で押しつぶせ!!どう抗っても質では敵わないからな!!」
「分かってるじゃねえか」
『Dクラス、宮本健一、行きます!』
『同じく倉井重蔵行きます!』
『同じく畑井賢介行きます』
『『『サモン!!』』』
《Dクラス 宮本健一 VS Fクラス 虚井廿楽
物理 99点
Dクラス 倉井重蔵
物理 101点 VS 323点
Dクラス 畑井賢介
物理 89点 》
「うっちゃん、大丈夫!?私も、私も行くよ!!」
「す、進?」
「サモン!!」
《Fクラス 道前 進
物理 42点 》
進め、無茶しやがって全く……しゃあねえ守りながら戦ってやる。
進の武器はハリセン。リーチは短すぎる。とにかくリーチの長い得物を持ってる奴から潰す。三人の中で一番獲物が長いのは倉井の槍か。よりによって一番点数が高い奴かよ。
「フッ!!」
一気に接近、斬馬刀を一本地面に突き立て、一本をそのまま振り上げて下ろす。躱されたが、そこで地面に突き立てておいた斬馬刀で下から斬り上げる。再び回避するも、体勢を崩した倉井の召喚獣を、上から斬馬刀を振り下ろして倒す。しかしこの隙に他の二人が進に向かって突撃し始めた。
「チッ!!」
「う、うっちゃんの足手まといになんか、なるもんかー!!」
ハリセンで宮本の刀を受け止める。しかし、その間に進の後ろに畑井が回り込んだ。
「進、イナバウアー!!」
「へ?こ、こう?」
すると、進の召喚獣が後ろに体勢を反らす。宮本の体勢が崩れ、丁度宮本と畑井の召喚獣が直線上に重なった。
「ナイスガッツ、そしてナイス引き付けだ進。」
その直線上に、俺は斬馬刀を一本投げつける。それは宮本と畑井の召喚獣を貫き、消滅させた。
「う、うっちゃん凄い!!凄いよー!!」
「進もナイス。お前が居なきゃもうちょい時間かかってたかもな。」
「え、わ、私役に立った!?にひひひっ!!」
はにかんだように笑う進。……うん、やっぱこう見ると可愛いなコイツ。
「くそっ、三人が一人に潰されるとは……。しかし!!」
後ろを振り返ると、一点突破で包囲から脱出した数人のDクラス生徒が。
「何やってんだ雄二。」
「無茶言うな。一点突破してくんのをこの時間持たせただけ有りがたいと思え!!」
「まあ、確かにな。出てきたのは……三人か。しかも手負い。このくらいなら……。」
「包囲から脱出した三人はそのまま虚井へ突撃!!玉砕してもいい、アイツだけは潰せ!!そうすればFクラスは烏合の衆だ!!こっちからも増援を出す!!」
「平賀……チッ!!」
《Dクラス 鎌田正人 18点 虚井廿楽 Fクラス
数学 大原達也 21点
美丘裕 19点 159点
山田仁志 86点 VS
真中隆星 88点 道前 進
宮岡勤 96点 38点 》
「クソッ、数学かよ……!!」
『よしっ!!虚井は数学が苦手だったか!!いけるぞ!!』
「う、うっちゃん!!どうしよう!」
「心配すんな。俺の後ろにいろ。」
斬馬刀を構えて待つ。こちらから攻めるのは数的に不利だし、下手すれば進が集中砲火を受ける。すると、鎌田、大原、美丘の手負い三人組が突っ込んでくる。鎌田は鎖鎌、大原は……鍬か?美丘は鉄パイプが得物。……これは鎌田が一番面倒だな。潰す。
まずは突っ込んできた大原を軽く斬馬刀で叩き、そのまま鎖鎌を進に投擲しようとしていた鎌田を斬り伏せる。しかし美丘が進の目前に迫る。
「クッ、進!!」
「わ、私だって、役立たずじゃあ無いもん!!」
すると進は、少し足を縮めてしゃがみこむ。その頭めがけ振り下ろされた鉄パイプを、思い切り跳躍してハリセンで弾いた。そしてそのまま着地ざまにハリセンで美丘の召喚獣を叩く!!これで美丘の召喚獣は消滅した。
「やるじゃねえか。」
「うっちゃん!私だって活躍出来るんだよー!!」
しかし、万全な体勢の三人の処理が面倒だ。宮岡とか言う奴がやけに冷静なせいで、他二人がこちらに突出してこない。
「廿楽君!!吉井明久、ただいま援軍として参上!!」
「明久!正直助かる。助太刀頼む。」
「任せといて!!正直今回の数学は、結構出来た方なんだよ!!」
「あ、なんかもう期待できなくなった」
「なにゆえ!?」
「いや、フラグ的な意味で」
「馬鹿にして、後悔しても知らないぞ!!サモン!!」
《Fクラス 観察処分者
数学 4点 》
「何しに来た観察処分者」
「名前欄がバグってるよー!!」
しかしこれは本当にどうするか。平賀の周囲にDクラスの奴はほとんどいない。勝負を仕掛ける事さえ出来れば……。
その時
平賀の横に桃色の髪を持つ容姿端麗な少女が現れた。補充試験を終え、後方で待機していた切り札。
「あ、あの、姫路瑞希です。」
「え?あれ?姫路さん、Aクラスはこの廊下は通らなかったはずだけど、それとも道にでも迷っちゃった?」
「い、いえ、その、え、Fクラスの姫路瑞希です。よろしくお願いします」
「え、あ、こちらこそ。」
「えと、Dクラス平賀君に、現代国語勝負を申し込みます」
「……はい?」
「さ、サモンです!」
《Fクラス 姫路瑞希 VS Dクラス 平賀源二
現代国語 479点 VS 129点 》
「え、はれ?はい?」
明らかに状況が呑み込めていない平賀。まあそりゃあそうだろ。俺だけならともかく、姫路までいるとは思わないだろうからな。
「美味しいとこだけ持っていきやがって、姫路め。」
「ご、ごめんなさい!!」
大剣で平賀の召喚獣を一刀両断にする姫路。それは、この戦いの終結を意味していた。