『Dクラス代表平賀源二、討死!!』
立会人としてその場にいた教師が、大きな声で告げる。それと同時に、Dクラス生徒達からは悲鳴が、Fクラス生徒達からは歓声が沸き起こる。
『勝った!!勝ったぞー!!』
『すげえ、Dクラスに勝ったぞ!!夢じゃなかろうか!!』
『女子は補充されないのか!?』
『坂本ってやっぱすごい奴だったんだな!!』
『代表万歳!!Fクラス万歳ー!!』
あー騒がしい騒がしい。頭が痛いだろ全く。頭痛に耐えながら、取り敢えず近くの壁に寄りかかり、雄二達の様子をうかがう。
「聞いてないよ、虚井だけならまだしも、姫路さんまでFクラスなんて……。」
気持ちは分かるぞ平賀。お前はよく指揮していたと思うぞ?
「雄二お疲れ!!」
そう言いながら雄二に近づく明久。その手に握っている物は何だ?……いいぞ明久やっちまえ
「雄二、僕とも握手してよ!!」
「ぬおお!!(ガシイッ)」
「雄二、どうして僕の手首を、掴むのかな?」
「掴むに……決まってんだろ!!フンッ!!」
雄二に手首をひねられ、明久の手から零れ落ちる包丁。チッ!!惜しい!!いやまだだ、明久お前の敵は俺が必ず!!
「おーい雄二落し物だぞ……っとぉ!!」
雄二の背後にしゃがみ、ものを拾うふりをして、そのまま予備動作を介さず袖に隠していたバタフライナイフを突き出す。放送内容が須川の独断だったとはいえ、俺まで巻き込んだ罪は重いぞ糞野郎!!
「ぬんっ!!」
しかし雄二に突き刺さろうかという直前で腕を押さえつけられてしまう。
「……おやおや、どうしたのかね、雄二君。ほら、落し物のバタフライナイフだよ。」
「そうかいじゃあこのナイフは俺の物だからこれでお前を突き刺してもいいという事だな?」
「ハハハハ何を言っているのやらなあ明久」
「全く雄二誤解だよー廿楽君はただ純粋に落し物を拾ってあげただけだよぉぬああああい!!」
いつの間にか再び拾い上げていた包丁で雄二を攻撃、しかしこれも雄二に手首を掴まれ防御されてしまった。
「うっちゃん危ないよー!!(パコーン)」
「おげふう」
いつの間にか後ろに立っていた進のハリセンが背中に炸裂。むむむ、中々やりおるで。
「関節が折れるッ!!!」
気が付くと、いつの間にか明久が雄二に関節技を食らっていた。それ以上はいけない
「やれやれ……完敗だね。姫路さんの出現は完全に予想外だったよ……。」
ふいに背後から声がして振り返ると、ヨロヨロと平賀が近づいてきた。姫路の方を見ると申し訳なさそうにおどおどしている。気にしなくてもいいんじゃねえかな。
「ルールに則って、教室を明け渡すよ。ただ今日はこんな時間だし、作業は明日でいいかい?」
「いや待て待て。雄二。お前何か考えがあるだろ?」
今Dクラスの設備を貰ったら、クラスメイト達はそれに満足してAクラス戦で士気が下がってしまうかもしれない。明久も、おそらくは姫路が普通以上の設備で勉強が出来ればいいと考えてるだけだから、これで満足してしまう可能性もある。
「ああ。虚井が考えている通り。今回は設備を交換しない。」
「何言ってるのさバカ雄二」
「バカはお前だ。いいか?俺達の目的はあくまでもAクラスの設備だろ。Dクラスの設備を先に貰って、戦意が下がらない可能性が100%だとでも言う気か?」
「ん、確かにそれはそうか……。」
「そのくらいのことも分からないとは。これだからお前は近所の中学生に『馬鹿なお兄ちゃん』なんて呼ばれるんだ。」
「な!そんな半端にリアルな嘘つかないでよ!!」
「そうだぞ雄二。小学生だろ。」
「……人違いです」
「え、おい明久まさか本当に……?」
「人違いですっ!!」
涙目にならなくても
「しかし、それは俺達にとってはありがたいが……本当にそれでいいのか?」
「勿論条件はある。」
まあ当然だな無条件で解放なんてする訳が無い。
「一応聞かせてもらおうか。」
「簡単な話だ。一つ目は、俺達が合図したら、窓の外にあるアレを動かなくしてもらいたい。」
雄二が示す先には、エアコンの室外機がある。ただしこれはDクラスの物では無い。Bクラスが所有するものだ。
「教師とかには目をつけられるだろうし、Bクラスからの印象も悪くなるだろう。だが、あの教室に行くよりは幾分かマシな提案だろう?」
「まあ、確かに。一つ目って事は他にもあるんだろう?」
「ああ。あと一つだけ。もう一つは、これから三日間ほどの間、Fクラスの周りをバレないように見張っていてほしい。怪しい動きをする奴は即刻取り押さえろ。たとえどんな奴でもな。」
「?何を考えてるのかは知らないが、分かった。数人がかりで見張りに当たらせよう。他にはないか?あの教室にいかなくて済むんだ。いくらでも聞いてやる。」
「そうか、じゃあ遠慮なくこき使って……と言いたいところだが、良かったな。条件はこの二つだけだ。この二つを守るだけで今の教室を維持できる。」
少し不審がる素振りを見せた平賀だが、すぐに「分かった」と答えた。変に勘ぐるのは危険だと判断したのだろう。……しかし、教室の周囲を見張らせるってのはどういう事だ?
「よし。交渉成立だな。早速今日から、生徒の最後の一人が下校するまで最低一人は残って見張りをしてもらおう。」
「急な話だな。まあ了解したよ。」
平賀が雄二に握手を求め、雄二もそれに応じる。
「Aクラスとの戦争、勝てる事を祈ってるよ」
「て、社交辞令だろ?」
「まあな。純粋な戦力を見れば、勝てるようには思えない。正面からぶつかれば、だろうが。」
「ああ。勝てるはずがない」
「正面からはぶつからないんだろ?どうせ。」
「勿論だ。俺は勝つぞ。搦め手でもなんでも使ってな。お前らも俺の道具だ。」
「ハハッ。言ってくれる。」
そうして俺達は解散し、各々教室へと戻って行った。
「代表、お疲れ様です。」
「ああ、宮岡。お疲れさん。ところで門ちゃんがいないみたいだけど?」
「ああ、あいつはまだ補習室にいます。鉄人にえらく気に入られたみたいで。泣きながら勉強している姿が目撃されたとのこと。」
「やれやれ、アイツも難儀だな。……ところで、今日は君に見張りしてもらっていいかな。俺は帰らないといけないからさ。用事がね。」
「了解です代表。」
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「あぁ、今日は疲れたな。」
「うん。私もうへとへとだよ~。」
俺と進は帰路へとついていた。今日は色々あり過ぎたから、二人とも挨拶もそこそこに足早に教室を後にしたのだ。
「今日は家ついたらもう寝よう……さっきから頭が痛い。」
「うっちゃん大丈夫?私ご飯作ってあげようか!!」
「んー、いやいいよ。今日は食欲ないし。腹減ったらするめいかの残り食べるから」
「もー。うっちゃん不健康ー。」
「うっせー。」
家の前につく。およそ一人暮らしするには立派すぎる一軒家。進と別れ、俺は鍵を開けて家に入った。
「ただいま」
返事は無い。一人暮らしなのだから当然だが、未だに癖で言ってしまう。俺の両親は、それぞれの理由で家から離れている。父親はアメリカへ単身赴任。母親も母親でヨーロッパの会社に勤めている。俺はどちらかについていくという選択肢もあったが、その当時は祖父母が健在だったこともあり、俺はこの家に残る事になった。祖父母が他界した今でも、今更海外に行くと言うのも勇気が無く。だらだらと一人毎日を過ごしている。
進は両親祖父母、全員元気に日本で暮らしている。時々家に料理を作りに来てくれることもあるが、進の親は俺と一緒にいることに反対しているらしく。泊まりに来ることはない。
「あー、頭痛い。」
自分の部屋にフラフラと向かい、荷物を適当に投げ捨てベッドに倒れ込む。この瞬間、俺が一日でためた疲れが一気に襲いかかってくる。視界が歪み、まぶたが自然と重くなる。
「……着替え着替え。」
いくらなんでも制服のまま寝る訳にはいかない。ユラユラと立ち上がり、俺はクローゼットを開けた。