バカと低血圧とポジティブとテストと召喚獣   作:虚っさん

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いつもの文字数から考えれば、今回は前後編に分けるところですが、今回はノーカットでお送りします(ニッコリ)


恐怖と混乱の昼

俺は……地獄を見ているのだろうか?

目の前には、泡を吹きながら白目を剥き気絶する戦友と、足を未だにガタガタと震わせながら必死に敵に立ち向かおうとする仲間、敵の恐怖に打ち震えながらも、それを敵に悟られまいとする親友。

そして仲間達をそこまでうちのめした敵が、今、恐ろしくも美しい笑顔を浮かべ俺に迫っているのだ。

 

事の発端は、数十分前にさかのぼる……。

―――――――――――――――――――――――

「はあ……終わった……」

「うあー、づがれだー」

 

今日は、昨日の戦争で失った点数を補充するテストが行われた。今ちょうど四教科のテストが終わり、俺達はそれぞれの疲労感により突っ伏している。

 

「疲れたのう……。」

 

いつの間にか隣に倒れ込んでいた秀吉。別に暑くは無いのだが、何時間も教室に詰まっていたせいで、心なしか汗ばんだ肌に髪の毛が張り付いてとても目が潤う光景だ。

 

「…………(カシャカシャ)」

 

その秀吉をかなり近めのアングルから一心不乱に撮影し続けるムッツリーニと

 

「……うっちゃーん。」

 

俺の背中をむくれながら見つめる幼馴染。仕方ないだろ俺は今時の男子高校生なんだから。ムッツリーニ、その写真1ダース買おう。

 

「よし!!飯食いに行くかー!!今日はラーメンとカツ丼と炒飯とカレーにすっかな!!」

 

全く疲れを感じさせない様子ですっくと立ち上がる雄二。俺からしたら吐き気を催しそうなラインナップを軽々と口にする。何を隠そう雄二は結構な大食漢なのである。

 

「ああ、俺もそろそろ飯食うか……。」

「うっちゃん、お弁当持ってきた?」

「あー、弁当じゃなくて食堂で済まそうと思ったから持ってきてねえな」

「ん?食堂に行くの?だったら一緒してもいい?」

「ああ、島田。まあ別にいいんじゃねえかな。」

「それじゃ、混ぜてもらうわね」

 

やれやれ、結局いつもの面子が自然と集まるのか。つか、今日は飯何食おう。焼き魚とかもいいかもな……。

 

「じゃ、僕も贅沢にソルトウォーターあたりを……」

「あ、あの。皆さん……。」

 

明久が堂々と塩水を昼食にする事を発表しかけていたら、唐突に姫路が何かを言いたげに立ち上がった。

 

「どうした姫路。一緒に食堂でも行くか?」

「い、いえあの、お昼、昨日の約束の……。」

「おお、もしや弁当かの?」

 

ああ、そう言えば昨日姫路が弁当を作ってくるって言ってたな。

 

「は、はい!もし迷惑でなければ、どうぞ!」

「迷惑な訳あるか。つかこの量、俺の分も含めてマジで全員分作ったのか。凄いな姫路。」

「ありがとう姫路さん!!これで僕はもう少し長生きできそうだよ!」

「ああそうだな。ありがたい。」

「そうですか?良かったぁ~。」

「しかし俺の分はいいって言ったんだがな。」

「いえ、やっぱり仲間外れは、そのぉ……。」

「うっちゃん言い方酷いよー!罰として、ちゃんといっぱい食べてあげる事ー!!」

「う、あまり食欲は無いけど……まあいいか。ありがとうな姫路。」

 

しかし、姫路の手料理とは初めてだ。まあメインは明久で俺達はついでだろうがな。積極的に来るようになったのがお兄さん嬉しくて嬉しくて。

 

「むーっ……瑞希って案外積極的なのね……。」

「島田だって作ってくれば良かっただろ。」

「……だって、吉井の好きなものとか分からないし……(ボソボソ)」

 

おお、体が痒い。むずがゆいぞー。進も何やらニコニコしながら明久と島田を見ている。

 

「それでは、折角のご馳走じゃし、こんな教室じゃなくて屋上にでも行くかのう」

「そうだな。」

「それがいいね」

 

折角の手料理、こんな所で食うもんじゃあない。景色のいいところでゆっくり味わうのがいい。

 

「ん、そうか。それならお前ら先に言っててくれ。」

「雄二、どっか行くの?」

「飲み物でも買ってくる。昨日頑張ってくれた礼も含めてな」

「あ、それならウチも行く!一人じゃ持ちきれないでしょ。」

「私も手伝うよー。」

「いいのか道前?虚井から離れて」

「別に俺は進の保護者でもねえだろ」

「そーそー!!どっちかってゆーと私が保護者だし!」

「言うじゃねえの」

 

そういう訳で、雄二島田進達飲み物調達組と俺達先行組に分かれる事になった。

――――――――(勝○声で)ペル○ナッ!(違う――――――――

「天気が良くて何よりじゃな」

「ああ、そうだな。マジで天気良すぎるが。」

 

屋上には、いい感じに日差しが降り注ぎ、今がお昼であることを教えてくれる。

 

「あ、シートも持ってきたんですよ。」

 

そう言うと姫路はバッグから可愛らしい猫の柄のシートを取り出す。ピクニックとかに使う奴か。

 

「気持ちいいねー」

「………(コクリ)」

 

足を投げ出しシートに座る明久達。俺もそれに倣う。確かに、日差しと風が心地いい。さっきまであの教室に閉じこもっていたから余計に。

 

「その、あまり自信はないんですけど……」

 

そう言って重箱を開ける姫路。

 

『おおーっ』

 

そこには、エビフライにカラフルな具材のおにぎり、卵焼きやからあげ、アスパラ巻きなど、お弁当ではおなじみの料理が所せましと並んでいた。しかも丁寧にカラフルなようじもついている。これは作るのにかなり時間がかかったことだろう。

 

「それじゃ、雄二には悪いけど先に――」

「………(ヒョイパクッ)」

「あ、ずるいぞムッツリーニ!」

 

誰よりも先に卵焼きを口に運んだムッツリーニ。……懐かしいな、こういうのも。さて、俺も何か食べるか。からあげとか……。

 

「…………!!(バタン、ガタガタガタガタガタガタ)」

 

 

 

 

 

 

……え?

そこには、口を抑え、顔を青くして倒れ込み全身を痙攣させるムッツリーニの姿が……。

 

(ここからが本当の地獄だ……!!)

 

どこぞの星の王子様の声が聞こえた気がした。

 

「お、おいムッツリーニ?」

「わわっ!!土屋君大丈夫ですか!?」

「どうしたのさムッツリーニ!!」

 

顔を見合わせる男性陣、慌てて配ろうとしていた割り箸を落とす姫路。

 

「……………(ムクリ)」

 

そんな中体を起こすムッツリーニ

 

「……………(グッ)」

 

そして姫路に向け親指を立てる。『凄くおいしい』とでも言いたいのだろうか。するとそれが伝わったのか、姫路が

 

「あ、お口に合いましたか?良かったですー」

 

と、ホッとしたような可愛らしい笑顔で言う。

しかし俺は見逃さない。いや見逃せない。ムッツリーニ、その痙攣し続ける両手両足はなんだ?

 

「よかったらどんどん食べて下さいね」

 

心配がなくなったような明るい笑顔。この笑顔を見てしまったら、さっきのムッツリーニの姿も霞みそうになる。……しかし再びムッツリーニを見ると、そこには未だに口を時々膨らませながらも、青い顔で必死に吐くのを我慢する健気な少年の姿が……。

そして、文月学園男子のみに可能なアイコンタクト会議が始まった。

 

(……秀吉、あれどう思う?)

(……どう見ても演技には見えん)

(だよね、ヤバいよね)

(しかし残すわけにもいかんだろうどうすりゃいいんだこれ)

(明久、お主体は頑丈か?)

(正直胃袋には自信が無いよ。食事の回数が少なすぎて退化してるから)

(退化ってお前……。)

(そういう廿楽君はどうなのさ)

(俺は一応そこそこ丈夫だとは思うが……。あのムッツリーニの姿を見たら自信が欠片も無いな)

 

このアイコンタクト中も、表情はニコニコと通常時の顔を崩さない。俺に至ってはどれを食おうかな、と視線を重箱のなかで左右させるほどの厳重な演技ぶりだ。

 

(むむ……ならば、ここはワシに任せてもらおう)

(……!?いかん秀吉、それはいくらなんでも危険すぎる。勇気と無謀は違うぞ!)

(そうだよ!危ないよ!)

(大丈夫じゃ。ワシは存外丈夫な胃袋をしていてな。ジャガイモの芽程度なら食べてもビクともせんのじゃ)

 

確かジャガイモの芽は毒だったはずだ。それを食べても平気とは。秀吉って案外タフな胃袋を持ってるんだな。

 

(でも……)

(安心せい。ワシの鉄の胃袋を信じて)

 

と、秀吉が誰よりも男らしい台詞を言おうとしたところで、屋上のドアがガチャリと開いた。

 

「よう。飲み物だけどよ、お茶とかで良いか?適当に買ってきた……お、こりゃあ美味そうじゃねえか。どれどれ一つ(ヒョイパクッ)」

「あ、待て雄二」

 

静止も空しく俺の手は宙を掻き

 

「ほうほうこりゃあなかな(バタンガタガタガタガタ)」

 

飲み物をぶちまけながら、ムッツリーニと同じように顔面から地面に倒れ込んだ。

 

「さ、坂本!?ちょっと、大丈夫!?」

「雄二君!!??」

 

慌てて雄二に駆け寄る遅れてやってきた女子組。

 

…………こりゃあ、ヤベェな。

 

倒れ込んだままこちらに向けアイコンタクトをしてくる雄二

 

『毒を盛ったな』

 

『違うよ、姫路さんの実力だよ』と、明久がアイコンタクトで返す。すると雄二は至って平静を装いながらゆっくりと立ち上がり言った。

 

「あ、足を、攣ってな」

「全く雄二、姫路の料理が楽しみだからって慌てて階段を上ってくるからだ」

「本当だよ全くアッハッハ!!」

 

咄嗟にこの連携が出来る俺達三人は親友だ

 

「ところで島田さん、その手をついてるあたりにさ」

 

引き続き俺達は、余計な事を言いかねない女子組を引き離しにかかる。

 

「ん?何?」

「さっき虫の死骸が落ちてたよ」

「ええ!?早く言ってよ!!」

 

慌てて手を洗いに降りていく島田。さて俺も

 

「進、いきなりで悪いんだが、確か俺のちゃぶ台の近くにポケットティッシュを落としてきたはずなんだ。取ってきてくれないか?俺はほら、御覧の通りもう靴脱いでリラックスモードに入っちゃってるからさ。」

「もー、仕方ないなー。」

 

進も島田の後を追い、屋上から出ていった。

 

(明久、今度はお前が行け!!)

(む、無理だよ!僕だったらきっと死んじゃう!)

(流石にワシもさっきのを見てしまったら決意がにぶる……)

(おい待て秀吉なぜ俺を見る。おいおい俺は体が弱いんだぞマジで死ぬから)

(もう雄二がいきなよ!姫路さんだって雄二に食べてもらいたいはずだよ!)

(そうかのう?姫路はどちらかというと明久に食べてもらいたそうじゃが)

(そんな事無いよ!!乙女心が分かってないね!)

(分かってないのはお前だが、俺は流石に人を殺す気にはなれない。)

(いや、どちらかというと分かってないのはお前のことだと――)

(ええい、往生際が悪い!)

(雄二すまん!お前なら何があっても生きて帰ってくると信じている!)

(え、お前ら、ちょ)

「姫路!!アレは一体なんだと思う!?」

「わあ!!姫路さん一体あれはなんだろう!!」

「え、何ですか?」

 

俺達は恐ろしい連携を以て、姫路の視線を明後日の方向へ誘導、未だにもがく雄二の口を俺がこじ開け、明久がその口に姫路のお手製弁当を放り込んだ。

 

咄嗟にこの連携が取れる俺達は親友だ

 

「ふう、これでよし」

「すまんな雄二。俺は明久を殺す事は出来ないんだ。」

「……お主ら、存外鬼畜じゃな」

 

秀吉の声はこの際気にしない。

雄二の痙攣が一層激しくなったがこの際気にしない。

 

「あー、わりい、見間違いだったみたいだな。」

「そうだね廿楽君。ごめん姫路さん、勘違いだった」

「あ、そうだったんですか」

 

姫路が単純で良かった。

 

「弁当美味かったぜ。特にからあげが絶品だった。」

「僕はエビフライが好きだなー。ご馳走様でした。」

「うむ。大変良い腕じゃ」

 

俺達親友三人組の大活躍で、弁当は見事処理された。

 

「あ、早いですね。もう食べちゃったんですか」

「ああ。特に雄二がやっぱり腹減ってたみたいでな。恐ろしい勢いでかっこみやがった。羨ましいぜコイツ」

 

言いながら、軽く雄二の肩を蹴る。早く起きろ。

 

「そうですかー!嬉しいです!」

「いや、礼を言うのはこっちだよ姫路。美味い飯をありがとうな。なあ雄二、そう思うよな」

 

蹴られたおかげで意識を取り戻した雄二は、未だ青い顔で必死に笑顔を形作り

 

「あ……ぁ……うまか、美味かった、ぜ、姫路……ありが、とと、うな……。」

 

明らかに焦点の合っていない瞳で言った。……すまん雄二、お前はこの場においては英雄だ。

 

「……そういや、こないだ駅前に新しい喫茶店が出来たよな。」

 

必死に話題を逸らしにかかる。これ以上弁当の話題を続けたら、下手をすれば『また作ってきますね』なんて流れになりかねない。姫路の為にもそれだけは避けねばならない。

 

「ああ!!出来たよね!!美味しかった記憶があるよ!」

 

その意図に気付いた明久も乗ってくる。秀吉も乗っかり、とりとめのない会話を続けている間に、雄二も何とか復活する。

その時だ。

笑顔で会話していると、唐突に姫路がポンと手を叩いた。

 

「そういえば、デザートも作ってきたんです」

「姫路あれはなんだ!?」

「わあなんだアレは不思議な物体が空中にー!!!!」

「え、何処ですか?」

「せええい!!」

「待て明久次は俺でもきっと死ぬ!」

 

両手で明久を抑え込み全力で作戦を止めにかかる雄二。どうして諦めるんだそこで!!雄二お前なら絶対出来る出来る出来るって信じろよ!!

 

(てめえら俺を殺す気か!!)

(安心しろお前なら何があっても死なない。寿命が来ても三途の川を泳いで帰ってきそうなヤツだからな)

(お前は俺を悪い方向に過大評価しすぎだ!)

(仕方がないんだよ!!こんな作戦、雄二にしか頼めないんだ!)

(馬鹿言うな俺だって一応人間だぞ!)

 

俺達親友三人組がアイコンタクトで罵り合っていると、秀吉が神妙そうな面持ちで会議に参加してきた。

 

(……ワシが行こう。)

(秀吉!?無茶だよ死んじゃうよ!)

(秀吉いいか?勇気と無謀は似ているようで違うんだぞ)

(お前ら俺の時と反応が違い過ぎねえか!?)

 

しかし秀吉は、汗一つ流さずに言った。

 

(大丈夫じゃ。ワシの胃袋はかなりの強度を誇る。せいぜい消化不良程度じゃろう)

 

確かに……ジャガイモの毒すら無効化する秀吉ならば、もしかしたらワンチャンあるか……?

 

「……?何処にもおかしいものなんてありませんけど……。」

 

グダグダと会議をしていると、謎の物体を見つけられない姫路がこちらに振りかえってしまう。

 

「どうしました?」

「ああいや、何でもない。」

「あ、もしかして……。」

 

いかん、流石に気づかれたか?

 

「ごめんなさい!!スプーンを教室においてきちゃいました!!取ってきますね!」

 

確かに、デザート(と思われる物体)はヨーグルト(のようなもの)にフルーツ(かもしれない)をいれたもの(に見える)。これは箸で食べるのは至難の業だろう(色々な意味で)。

スカートを翻し、降りていく姫路。

 

「……さて、今のうちに頂いてしまうとするかの」

 

武士のような神妙な面持ちで秀吉がタッパーを手に取る。

 

「……すまない。秀吉。必ず救ってみせるからな」

「……恩に着る」

「ごめん。ありがとう。」

 

俺達に明るく笑いかける秀吉

 

「何も死ぬ訳じゃあるまい。軽く食べてみせる。」

「あ、ああ。そうだな。たかがデザートだ。大丈夫さ」

「ああ。俺が食ったのに比べれば平気だろ」

「それもそうだね!じゃあよろしく秀吉!」

「うむ。任せておけ。では、頂きます。」

 

丁寧に両手を合わせてタッパーを口に近づける。そしてそのままタッパーを傾け、箸も使って器用にかきこむ!!

 

「むぐむぐ。ん?なんじゃ意外と普通ゴブフウッ!!」

 

バタンガタガタガタガタガタガタ

 

「……雄二」

「……ごめん」

「……分かってくれればいいさ。」

 

自称『鉄の胃袋』は、開始数秒でダウンした。

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