バカと低血圧とポジティブとテストと召喚獣   作:虚っさん

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昼飯の時間

「騙されたぁっ!!」

 

数分後、突如としてあけられたドア。そこには必死の形相で立つ明久の姿があった。……うん、知ってた。面倒に関わりたくないからついていかなかったが、どうやら正解だったようだ。南無南無。そんな明久の姿を見た雄二は

 

「やはりそう来たか」

 

知っていたとでも言うような台詞をはいた。

 

「やはりってなんだやはりって!!やっぱり使者への暴行は予想通りだったんじゃないか!!」

「その程度、俺からすればすぐに予想できる。」

「少しは悪びれろ!!」

 

雄二にはやはり悪役が似合うな。いや明久が正義という訳ではないが。しかし明久よ、そろそろ学習したらどうだ。

 

「廿楽君もその顔、知ってたんだよね……。」

「そのくらい余裕(ピース)」

「畜生僕の友人はこんな奴ばっかりだ!!」

 

何を今更。俺達三人の関係がただの友人に収まらない悪友だって事は分かり切ってただろう。

 

「よ、吉井君!?大丈夫ですか!?」

 

慌てたように明久に駆け寄る姫路。心配そうな表情で、慌ててポケットに入れていた絆創膏を明久の傷にはりつけていく。ケッ羨ましい。

 

「吉井、本当に大丈夫?」

 

なんと、あの島田まで明久を心配するとは。

 

「うん。平気だよ。心配してくれてありがとう」

「そう、良かった……ウチが殴る余地はまだあるんだ……。」

「ああっ!!もうダメ、死にそう!!」

 

島田……まあ知ってたが、もうちょい柔らかくなんねえと明久を射止める事なんざ出来ないぞ。

 

「色々話したいことがある。作戦のことについてとかな。屋上にでも行くか。」

「ねえ雄二、僕のこの状況に関してもう少し何か反応してもいいんじゃないかな!?」

「雄二が反応すると思うのか?」

「思わない」

「だろ。諦めろ」

 

先に教室を出ていった雄二に続いて、姫路が明久を心配そうに見つめながらついていった。

 

「大変じゃったの。」

 

秀吉が明久の方をポンポンと叩く。

 

「…………(サスサス)」

 

自分の頬をさすりながら教室を出るムッツリーニ。何をしてんだアイツ。

 

「ムッツリーニ、覗いていた時の畳の痕ならもう消えてるよ?」

「…………!!(ブンブン)」

 

成程

 

「いや、今更否定されても。ムッツリーニがむっつりスケベなのはみんな知ってるから。」

「…………!!(ブンブン)」

「ここまでバレてるのに否定し続けるなんて、ある意味凄いと思う。」

「……………………!!!!(ブンブンブンブン)」

「ムッツリーニ。何色だった。」

「みずいろ」

 

ほう

あ、ちょっと待て進俺の左腕はそれ以上後ろには曲がらないからその辺りで止めとこう。

 

「うっちゃんスケベー!!」

「待てこれはこの歳の青少年なら誰もが気になる話題でな」

「やっぱりムッツリーニは色んな意味で凄いよ」

「…………!!(ブンブン)」

 

廊下で立ち止まって話し続ける俺達。すると後ろから島田がやってきた。

 

「ほら吉井、アンタも行くの!!」

 

ガシッと明久の腕を掴みズンズンと先へ進んでいく。俺達もそれについていく。

 

そんなこんなで会話しながら歩いていると、屋上へ出た。そこには既についていた雄二、姫路ら先行組が待っていた。

 

「いい天気だな。」

「俺はあまり天気が良すぎるのはキツイ。眩しいんだよ……。まあ曇ってても体調が悪くなるんだが。」

「一度うっちゃん熱中症と低血圧同時に来て倒れ込んで、保健室に直行したことあるもんねー。」

「あったなあそんな事も。まあ取り敢えず座れ座れ。」

 

それぞれが適当な場所に腰を下ろす。

 

「さて明久。お前、ちゃんと宣戦布告はしてきたな?」

「うん。一応今日の午後開戦って伝えておいたけど」

「それじゃ、先にお昼御飯だね!!」

「……あ、俺昼飯忘れた。」

「大丈夫、うっちゃんの分も持ってきたよー!!」

「わりい。」

「明久、今日の昼飯ぐらいはまともな物食えよ?」

「そう言うならパンでも奢ってくれると嬉しいんだけど」

 

パンぐらい自分で買えよ、と言いたくなるが、そうはいかないのが明久である。なぜなら色々事情があり……。

 

「え?吉井君ってお昼食べない人なんですか?」

 

姫路がびっくりしたように言う。いや、そういう訳じゃあないんだよ。

 

「いや、一応食べてるよ?」

「あれは食べてると言えるのか?」

 

雄二の横やり。

 

「何が言いたいのさ」

「いや、お前の主食って……水と塩だろ?」

 

雄二のセリフと同時に、周囲の空気が固まる。俺は知ってたが、進は目を丸くして固まっている。

 

「きちんと砂糖だって食べているさ!!」

「あの、吉井君、水と塩と砂糖って、食べるとは言いませんよ……?」

「舐める、が表現としては正解じゃろうな」

 

皆が憐れみの眼で明久を見つめる。いかんな俺も冷静に考えてたら何故か涙が。進に至っては自分の弁当からどのくらいなら明久に分けられるかを弁当箱と明久を交互に見比べながら計算し始めてるし。

 

「……あの、良かったら私がお弁当作ってきましょうか?」

「ゑ?」

 

きょとんとした表情を浮かべる明久。俺も今きょとんとしている。姫路、ついに直接的にアプローチを仕掛けていくようになったのか……成長したなぁ!!

 

「本当にいいの!?僕、塩と砂糖以外の物を食べるなんて久しぶりだよ!」

 

哀れ

 

「はい。明日のお昼で良ければ」

「良かったじゃないか明久。手作り弁当だぞ?」

「うん!」

 

キラキラとした生気が明久に宿る。と、その生気のキラキラした気配に、横から迫る青紫色の念。

 

「……ふーん。瑞希って随分優しいんだね。吉井『だけ』に作ってくるなんて」

 

嫉妬かね。はは、若い若い。いいねぇ若いパワー。

 

「うっちゃんおじさんぽいよ」

「……そうかね。」

 

しかし、島田もアプローチすりゃあいいのにな。姫路に負けちまうぞ。

 

「あ、いえ!その、皆さんにも……」

「俺達にも?いいのか?」

「はい。嫌じゃなかったら。」

 

やれやれ。これじゃあまだ当分先だな。色々と。

 

「それは楽しみじゃのう」

「…………(コクコク)」

「……お手並み拝見ね」

 

島田……お前も弁当でも持って来たらどうだ?明久の事だから満腹でもかっこむと思うぞ。

 

「分かりました。それじゃあ、皆さんに作ってきますね」

「あ、俺の分はいいぞ。俺は自分で飯作れるし、進が飯持ってくるかもしれないからな。食いきれなかったら失礼だろ。」

「そうですか。分かりました。じゃあお二人以外の皆さんの分、持ってきますね。」

 

まあ、正直言うと明久に悪いってのが多少強いがな。折角の姫路の手料理、俺達に気を遣わずしっかり食え食え。

 

「姫路さんって優しいね」

「そ、そんな……」

 

……おや、いい雰囲気。お兄さん微笑ましいな

 

「うっちゃん、おじさいぽいよー……。」

「俺も歳取ったからな。うん。」

 

「今だから言うけど、僕、初めて会う前から君の事好き――」

「明久、今振られたら弁当の話なくなるぞ。」

「――にしたいと思ってました!!」

 

雄二、渾身のファインプレー。

いや、ねーよ明久。このタイミングでの告白はねーよ。てか途切れる前の文面からして明らかに危険人物だよ。まあ言い直しした内容が致命的だが。

 

「明久、それでは欲望をカミングアウトした、ただの変態じゃぞ」

 

秀吉の的確なツッコミ。

 

「だって……お弁当が……!!」

 

あ、こっちもかなり切実だ。

 

「さて、かなり話が逸れたな。試召戦争の話だ。」

「ああ、完全に忘れてた。」

「仕方ねぇよ。」

「雄二、一つ気になってたんじゃが、どうしてDクラスなんじゃ?段階を踏んでいくならEクラスじゃろうし、勝負に出るならAクラスじゃろう?」

「そういえば、確かにそうだね~。なんで?」

「まあな。当然理由はあってのことだ。」

 

雄二がうなずく。

 

「どんな考えよ?」

「色々と理由はあるんだが、取り敢えずEクラスを攻めない理由は簡単だ。戦うまでも無い相手だからな。」

「まぁ、確かにそれはそうだな。」

「え?でも僕らよりはクラスが上だよ?」

 

これだから明久は……。

 

「振り分け試験の時点では確かに向こうが上だったかもしれないけどな。けど実際のところは違う。オマエの周りにいる面子をよく見てみろ。」

「えーっと……」

 

周囲を見回す明久。

 

「美少女二人と馬鹿が二人と格闘家が一人と低血圧が一人とムッツリが一人いるね。」

「俺が美少女って……冗談でもひくわー。」

「なぜ廿楽君が美少女に反応するの!?」

「び、美少女ってそんな、正直ねもう吉井ったら!!」

「し、島田さん!?」

「ワシは格闘家を演じたことはあるが……実際はそこまで出来ぬぞ?」

「秀吉は美少女だよ!!」

「…………低血圧じゃ、ない」

「知ってるよ!!ムッツリーニじゃなくて低血圧は廿楽君だよ!!ああもう僕一人じゃ突っ込み切れない!!」

 

ぎゃあぎゃあ騒ぐ俺達を進と姫路がまあまあ、と落ち着かせる。

 

「……ゲフン!!まあ、要するにだ。」

 

雄二が説明を再開する。

 

「姫路に問題が無い今、正面からやりあってもEクラスには勝てる。Aクラスが目標である以上はEクラスなんかと戦っても意味が無いってことだ」

「?それならDクラスとは正面からぶつかると厳しいの?」

「ああ。確実に勝てるとは言えないな。」

「だったら、最初から目標のAクラスに挑もうよ。」

「馬鹿だな明久。最初の試召戦争なんだ。派手にやって、今後の景気づけもしたいだろ?それに、雄二にはほかにも考えがあるんだろ。」

「まあな。打倒Aクラスへの一つのプロセスだ。」

 

一呼吸置く。そして雄二はゆっくりと告げた。

 

「いいな。うちのクラスは――最強だ」

 

やれやれ。こいつの台詞はいちいち面倒臭いぜ。まあ説得力があるんだがな。

 

「いいわね。面白そうじゃない!!」

「そうじゃな。Aクラスの連中を、引きずりおろしてやるかの」

「…………(グッ)」

「が、頑張ります!!」

「うおー!!燃えてきたぞー!!」

「あんま騒ぐな、頭が……。」

 

やれやれ、今日から忙しくなりそうだ。

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