「うっちゃん!!戦線が、た、大変なんだよ!!」
「……へいへい。俺も行くよ。」
門構えを撃破した俺たちは、明久達戦闘部隊がいる廊下へ歩き出した。
『工藤信也、戦死!』
『西村雄一郎、総合残り40点です!』
『森川が戻ってこない、やられたか!?』
前線に到着すると、あちらこちらからそんな声が聞こえてきた。どうやらこちらが劣勢のようだ。
「明久、手ぇかそうか?」
「あ、廿楽君!!船越先生に会いに行かなくていいの?」
「安心しろ後でお前を送り届けてやる。つかあの放送もしかして須川の独断か」
そう問いかけると、
「僕が指示した」
ふむそうか。しかしならば何故明久までもが生贄に……いや、その部分は須川の独断なのかもしれんな。
「明久、虚井、もう少し耐えてろ。今行く。」
背後から雄二の声。
雄二が増援を派遣してきた。合流さえ出来れば押し返せるかもしれない。
『援軍だ!合流される前に吉井達を全滅させるぞ!!』
『おー!!』
「まずいな。これ以上押し込まれたら……仕方ねぇ。行くか。」
前線に出ていこうとすると、明久に止められた。
「フッ。廿楽君の手を煩わせるまでも無い。ここにはこの僕がいる。まずは僕に任せて……。」
「それって世に言う死亡フラグだよな」
しかし明久がそう言うのならば仕方ない。俺はDクラス親衛隊に対する切り込み隊長の役割も持ってるらしいからな。
『西村雄一郎、戦死!!』
しかしこれでこちらは俺を含め5人。きつくないか?
『田中明、戦死!!』
おい、これどうすんだ。俺も戦った方がいいんじゃねえのか?
『目つき悪い奴、勝負だ!!Dクラス鈴木一郎、行きます!!』
「おい俺かよ。明久、これは戦っていいよな。」
「後ろには僕がいる!!安心して玉砕しろ!!」
「安心できねえしそっちこそ安心しろ。俺は戦死なんざしねえよ。サモン」
《Dクラス 鈴木一郎 VS Fクラス 虚井廿楽
化学 25点 VS 388点 》
『えっ』
『な、なんだあの点数!?Aクラス級!?』
『おい塚本聞いてねえぞ誰だアイツ!!』
『う、虚井!?虚井って確か、幻の学年一位事件の、あの虚井かぁ!?』
やれやれ。俺も何か有名みたいね。
「すごいよ廿楽君!!僕の十倍以上の点数じゃないか!」
「それを堂々と公言できるお前の精神力が俺は羨ましい。」
『く、クソッ!!だが舐めるなよ!!得点数の違いが戦力の決定的差ではないという事を、教えてやる!!』
「分かってんじゃん。」
刀を持って突撃してくる鈴木の召喚獣。俺の召喚獣はそれを闘牛士のように避け、躱しざまに斬馬刀を胴体に叩きこむ。一瞬で消滅する鈴木の召喚獣。
『戦死者はぁ~』
『ギャアァアアアアアア』
『補習ゥ~!!』
『嫌だ、助けて、誰か、俺はまだ死にたくないィ(バタンガチャン)』
……南無。つか鉄人こえーよ。
『あいつは無理だ!!吉井を!!吉井を先に狙え!!』
Dクラス塚本の声に従うように明久に突撃していく敵。
『吉井明久、その首級もらったぁ!!』
「クッ、こうなったらやるしかないか!!負けるかぁ!!サモン!!』
明久の召喚獣、特別製のそれが姿を現す。学ランに木刀を持った明久だ。
「Fクラス中堅部隊隊長、吉井明久。貴公の相手を」
「いいから行け」
明久の召喚獣の背中を押して前に突き出す
「ちょ、待って待ってこの位置取りは!」
『援護ごくろぉハッハッハァ!くらええええ!!』
『やっちまえ笹島ァ!!』
『笹島圭吾、戦死!!』
一瞬の事だった。そう、恐ろしい早業。おれでなきゃ見逃しちゃ
「うっちゃん何々!?何が起こったの!?説明して!!」
「進、俺は今渾身のネタを言おうとしてたんだがな」
要するに簡単な事である。
明久の召喚獣は、相手の太刀筋にあわせ、勢いよくわざと飛び出した。笹島の懐に素早くもぐりこみ、恐ろしい速度で木刀での連撃を叩きこんだ、それだけの事。冷静に考えれば恐ろしく単純明快である。
しかしそれは簡単な事では無い。召喚獣は基本的にはそれ単体である。召喚者はよほど扱いに慣れてでもいない限り、自分の手足のように扱う事は出来ない。しかし明久は、明久の召喚獣の『召喚者と感覚をある程度共有する』という性質は、明久自身のコントロールセンスと合わさるとその効果を存分に発揮する。
つまり簡単に言ってしまえば
「見たか!!これが僕の本気だ!!」
吉井明久は、召喚獣の扱いにおいては、実質最強なのである。
「って事。分かった?」
「つまり明久君って強いの?」
「強いな。召喚獣の扱いに関しては間違いなく俺より上だし。」
『くそっ!!数だ!!こっちの方が数は上なんだ!!押しつぶせ!!』
塚本の号令に続き、残っていたDクラスの生徒が続々と明久に襲いかかる。
「ああっ!!霧島さんのスカートが捲れている!!」
『何ィッ!?』
「何ィッ!?」
「うっちゃん反応しちゃだめー!!」
「待て待て今のは健全な男子生徒としてはだなごく普通の事なんだだからそれ以上曲がるはずのない俺の肩がいい感じに後ろに曲がり続けている現状を何とかしてくれないかな」
霧島、というのはAクラス主席、霧島翔子の事だ。学年主席であり、才色兼備。こんな人のスカートが捲れていて覗こうとしない男子はいない。そうだろうお前ら。
「うっちゃん誰に向かっていってるの?」
「気にするなメタメタな話だ」
「よっしゃあ今のうち!!」
明久が叫び、近くにある窓へ一気に上靴を叩きつけた
バリイイイイイン!!
破壊音を鳴らしながら砕け散る窓ガラス。
『な、なんだ!?何事だ!?』
成程、上手いじゃないか。霧島から窓ガラスへと、次々にDクラスの注意が逸れていく。次は召喚獣で斬りこむってわけだな?
「うわっ!島田さん、そんなものをどうする気なんだ!!」
……え?今島田いないよな。
小芝居を打ちながら、明久は近場の消火器を手に取り……っておいお前まさか
ブシャアアアッ!!
『う、うわ!?なんだこれ!!』
『消火器の粉末じゃねえか!!』
『くそ、前が見えない!!』
ゲッホゲッホ!!ゲッホゲホゲホオッ!!あ、明久、後で、後で覚えておけよ……!!
「島田さん、キミはなんてことを!!」
島田哀れなり……。
『Fクラスの島田か!!なんて卑怯な奴だ!!』
『許せねえ!!彼女にしたくないランキングに載せてやるからな!!』
『そうだ!!在学中には彼氏が出来ないようにしてやる!!』
いや、島田本当に哀れなり
俺が心の中で黙とうをささげていたら、後方から来ていた雄二達がすぐ後ろまで迫っていた。しかしこの煙の中じゃあ合流しても……。
プシュウウウウウウ
と、突然視界が晴れはじめた。明久が空の消火器をスプリンクラーにぶつけたのか!!……やるじゃん明久。まあ後で折檻だろうが。
「待たせたな吉井!!五十嵐先生!!Fクラス、近藤吉宗が行きます!!」
雄二率いるFクラス本隊の一人、近藤が召喚獣を呼び出す。
《Dクラス 中野健太 VS Fクラス 近藤吉宗
化学 43点 VS 91点 》
『くっ!!ここは退くぞ!!全員遅れるな!!』
塚本の撤退命令が聞こえる。それに従い逃げていくDクラスの面々。へえ。いい退き際じゃないか。潔い。
「敵ながらやるな。深追いはするなよお前ら。適当に残党処理して俺達も戻る!」
雄二の号令で、適当に残党を処理しながら、俺達も教室へと戻って行った。