リリカルなのはVS夜都賀波岐   作:天狗道の射干

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後書き

 これにて当作、リリカルなのはVS夜都賀波岐は完結となります。

 初投稿から二年と四ヶ月。本当に長い間、お付き合い下さりありがとうございました。

 

 完結を記念してと言う訳ではありませんが、幾つか設定や裏話でも垂れ流して行こうかと思います。

 大した内容となる事はないと思いますので、まあ軽い気持ちで流し読んで貰えればそれで十分でしょう。

 

 

 先ず初めに、当作を始めようと決めた動機に付いて。一言で言えば、PSVITA版の「神咒神威神楽」OPで夜刀様が格好良かったから。

 やっべぇ、かっけぇ。この方をラスボスにしてぇ。そんな気持ちで設定を練り始めたのが最初、先ずはKKKの二次創作にしようかと思った物の、煮詰める途中で断念。

 

 本編イフだとどう思考しても、夜刀様をラスボスには出来ない。覇吐ソードや覇吐シールドを持たせれば波旬退治は出来るけど、そこで無間地獄が流れ出してしまう。

 それを回避する為には波旬撃破後の夜刀様を倒せる誰かを置くしかないが、夜刀様が波旬と戦うと仮定するとKKK主人公勢はどう考えてもそれ以前に全滅してる。そうじゃないと、夜刀様が勝てない。

 

 そんなこんなで、波旬撃破後の夜刀様を倒す為にオリキャラでも出すかと考えて、其処で漸くに思い至る。

 ……主人公勢を捏造するくらいだったらいっそ、他作品とクロスさせれば良いんじゃね? その発想から、当作は始まりました。

 

 

 クロスさせると決めた上で、折角ならば夜都賀波岐を全員使おうと思い付く。その上でどの作品と混ぜるか、選定開始。

 条件として先ず上げたのは、“戦力バランスが取れていない”作品。KKKと比較すれば、絶対に負けると誰もが断じる様な物。

 

 何故、そう限定したのかと言えば理由は二つ。一つは最強談義が面倒だから、どっちが勝つか分からないクロスだと絶対に荒れると確信した。

 そして感想が荒れるよりも重要なのが、もう一つの理由。それは夜都賀波岐を描く上で、絶対に守らないといけないと作者が感じる二つの要因。

 

 穢土・夜都賀波岐とは、物語の冒頭においては絶対の脅威としてなければならない。圧倒的な力と共に、恐怖を叩き込んでくる者らでなくてはいけない。

 その上で、彼らは正しくないといけない。夜都賀波岐は単純な悪ではなく、確かな正当性を持つ者達。彼らは鬼畜外道でなく、確かな想いを抱いた過去の英雄なのである。

 

 序盤に彼らが蹂躙するからこそ、彼らは正しくとも納得は出来ない。そんな感情を抱いて、主人公側も正当性を其処に持てる。

 奪った彼らを倒すのだ。そんな理由がなければきっと、夜都賀波岐を倒す事は称賛されない。戦力バランスが保ててしまうと、クロス側が悪役になってしまう。

 

 そんな懸念や拘りがあったので、クロスをさせる上での選定は結構長く悩みました。

 最強談義が激しい奪還屋や、魔を断つ剣、永遠神剣など、戦闘が成り立ってしまう様な作品は全てアウト。

 最終的に候補に残ったのが、薬味少年な魔法先生、虚無が使い魔呼ぶ話、そして魔法少女リリカルなのはであったのです。

 

 リリカルなのはで落ち着いたのは、管理局とロストロギアの存在。最終的に戦力比は神座に混ぜてしまえばどうとでもなると考えていましたが、どうにもならないのが勢力図。

 それこそ一瞥で皆殺しにされる様な強敵を前にして、一枚岩ではない勢力では持たないと思えた事。そしてロストロギアの設定を使えば、幾らでも神座要素を混ぜれそうだったのが由縁です。

 

 

 クロス先が決まって、次に考えたのはリリカルなのはをどう利用するか。神座側を目立たせるだけではなく、どうやって活躍させていくか。

 ハッキリ言って、リリなのはキャラが多い。特にStSは多過ぎて、原作者でも扱い切れなかったと言われる程。二次創作者が使い熟せる訳がない。……良し、間引くか。

 

 そんな外道の発想で、キャラ削減を決意。元々、夜都賀波岐の脅威を見せる為、死者は幾人か出す想定だったので問題はなかった。

 最初に生かすキャラと死なせるキャラをバッサリ決める。必要なのは決戦メンバー。最終的に戦う相手を選び上げ、それ以外を排除可能なリストへ送る。

 

 主人公である高町なのはは絶対確定。彼女を使わないなら、リリカルなのはである必要はない。そう言うレベルで重要なキャラだと判断。それ以外のメンバーは、誰と戦わせるか、誰と戦わせたいかで選択。

 次に決まったのは優等生、ユーノ・スクライア。彼の原作での行動態度は、絶対に宿儺が嫌いそう。なら全力でバトルさせてみよう。優等生と不良の戦いとか考えると、中々面白い組み合わせになりそうだと。

 

 そうやって理由付けして、キャラを最低限に絞っていく。絞ったのならば出来る限り、そいつ等が目立つ様なシナリオを組み上げる。

 唯、死亡するキャラも雑に使いたくはなかった。なので極力、そう言ったキャラにも見せ場を増やして、夜都賀波岐が戦うに足る正当な理由も組み上げていく――あれ? 夜刀様息してねぇ。

 

 次々と問題点は発生したが、その都度最低限の補強と修正を加えていく。そうして第一弾のプロットさんは誕生しました。そしてイレインさんに殺されました。

 当初の予定では最終決戦メンバーだったフェイトちゃん。実は奴奈比売と戦う予定だったフェイトちゃん。作者が一番好きなキャラ。なのでつい、勢いが余ってしまった。

 

 その修正を仕上げた後、また同じ事がない様に対策。最初と最後だけを確定させておく、間は中抜きにして即興で書いていく。

 そんな今の形になったのは、細かく作っていくとノリで壊した時に修正できないから。そうして出来上がったのが、“リリカルなのはVS夜都賀波岐”な訳です。

 

 

 

○無印編について

 基本的に想定したのは、表と裏の二つのルート。なのはとフェイトが魔法少女してるのが表で、ユーノが夜都賀波岐に立ち向かうのが裏面。

 そう言う形で作っていたのが最初期のプロット。最初の段階から、無印の裏主人公はユーノ・スクライアになる想定であった。なので、時の庭園での反響は概ね予想の通り。

 

 ただし、プロット崩壊は多かった。実はイレインの核ぶっぱによるプロット崩壊だけではなく、他にも大きな変更をしないといけない場面がありました。

 

 当初の予定では、夜都賀波岐の理由説明はもっと後に回す心算だったのです。

 それも司狼が苛立ちながらにヒントを言う形ではなく、最高評議会に悪役っぽい形で説明させようと思っていました。

 

 そうならなかった理由は、感想欄が少し荒れたから。夜都賀波岐の人気を、作者が舐めていたからと言い換えても良い。

 作者の頭の中では理由があるから、多少は何をさせても問題はない。けれどその理由を説明されていない読者からすれば、キャラに合わない事をしている様にしか思えない。

 

 キャラ崩壊と言う意見を受けて、見返してみて自覚。彼我の意識に差がある事を実感して、此処で説明させないとダメだと判断しました。

 何故コイツらがこれ程に荒れているのか、何故に世界が詰んでいるのか、そう言った真相の断片。真実の断片と言う話を叩き込んだのは、そんな理由だったりします。

 

 そんな訳で、二度の大手術を迎えた無印編。プロットさんの死亡事故に盛大に巻き込まれたフェイトちゃんは、唯の被害者だったのです。

 

 

 

○空白期1について

 無印からA'sまでの、僅かな空白を描いた話。目的は、キャラクターの掘り下げと因縁作り。

 ミッドチルダ編は完全に予定の通り、ユーノの努力を描きながらに、現状を読者に伝える話を組み上げられたと思います。

 

 反面、地球編はかなり迷走していたかな、と。元々、地球編は日常話だけで終わらせる心算でした。

 なのはとはやてが出会う話。綾瀬の口伝を伝える話。此処でやろうと思っていた事をA's編の第一話に移動して、代わりに氷村遊の襲撃となりました。

 

 理由は作者が万仙陣をプレイして、次の空白期2で使おうと考えたから。A's編でリィンフォースが、ほぼ即死する事が決まっていたので、描写を増やしたくなったから。

 そんな理由によって、本来はもっと強くなってから遭遇する筈だった氷村の前倒し。同時に折角だからアリすずを巻き込んで、彼女達の関わる時期も前倒しにしてしまおう。

 

 結局、戦力的に氷村は倒せないし、超吸血鬼とか言う馬鹿な存在は消えましたが、ある意味これで良かったのではないかと今は思っています。

 ここで氷村が来なければ、アリサが炎に憧れるシーンが書けなかったし、ベイが夜の一族に興味を持つ流れにも持っていけなかった。そう言う点で、彼の存在は色々都合が良かった訳です。

 

 

 

○A's編について

 無印編がユーノの話だったので、此処で行う予定だったのはなのはの話。高町なのはの挫折と覚醒を描くのが、A's編の目的でした。

 そう言う意味では想定通り。天魔・奴奈比売との喧嘩。覚醒に至るシーンは本当に、やりたかった事が出来たと言う印象です。

 

 二度のプロット手術の経験から、余裕を持たせる事にした第三世代プロットさん。最初と最後だけ確定して、後は少しずつ埋めていくと言う構成の形。

 その恩恵か、最後は上手く進められたと思います。それでもそのデメリットと言う物か、悩んだのは途中の話。そして、最後に誰を残すべきかと言う判断。

 

 八神はやてと夜天の騎士達。ハッキリ言って彼女達は、最初から一人を残して全滅させる予定でした。

 

 はやては広域殲滅型であり、臣下が居ないと真価を発揮できない魔導師。唯でさえ数が多いのに、指揮官型はハッキリ言って使い辛い。

 シャマルは役割的に被るキャラが居るし、正直原作の描写が薄いので排除対象に。次いでとばかりにシグナムさんも、特に理由なく除外認定。

 

 個人的に守護騎士では一番好きなキャラであるヴィータか、夜刀様パワーで生き延びると言う設定的に一番適合しそうなザフィーラか。

 残すのは、このどちらか。少し悩んで、棚上げ決定。ノリと勢いで突き進んで、残せそうな方を残そう。その結果、何故か逆十字はやてちゃんが誕生してました。

 

 

 

○空白期2について

 前半の闇の残夢編は、万仙陣をプレイした影響。元々此処では、適当な中ボス相手にリリカル側の活躍を描く予定でした。

 夜都賀波岐には、まだまだ勝てない。だからこそ溜まるであろうストレスを、程よく打倒できる程度の強敵と味方の活躍を描く事で解消するのが目的でした。

 

 そう言う意味でも外道な氷村を相手にするより、派手な戦い方をするマテリアルズとの戦いの方が相応しかったと言えるでしょう。

 内面世界で一旦勝利するも、それで解決しないのも想定通り。最終的にザフィーラが奮起して、リィンフォースを打ち破るのも想定通り。ほぼ全て、目論見通りに行った数少ない場面です。

 

 後半の終焉の絶望編は、マッキーの登場回。最終決戦時でもどうすりゃ良いんだ、と思えるレベルの敵を大暴れさせる話。

 こちらも大凡想定通り。予定外と言えるのは、スカさんがデレた事くらいだと思います。あそこでデレたのは、完全なノリの産物でした。

 

 

 

○空白期3から、StS編について

 初期プロットさんの面影が全くない話。ぶっちゃけて言うと、実は初期のプロットではトーマ君すら出す気がなかった。

 年齢変更は極力したくなかったので、本来の登場予定はこの6年後。終焉の絶望編で顔見せした後は、Force編で再登場させる心算でした。

 

 なので、本来はここで真相解明をする心算でした。獣殿の槍を奪い合う中で、真実を知ると言う流れを想定していた。

 けれど真相説明を無印編でほぼ行っていたので、割と今更必要ない。となるとStS編で何をやろうかと、完全に持て余した状態。

 

 ならいっそ、Forceで予定していた事を前倒しにするか、と言う事でトーマ君の出番が確定。

 ナカジマ家に引き取らせて、スバルポジにしてしまえば良い。そうすれば自然と、ティアナの運用も決まる。

 

 トーマとティアナでStSの話を回して、なら敵は誰にしよう。ナンバースはちょっと数が多過ぎるので、代わりになる悪役が必要。

 そう言えば、エリオの話題出してたな。良し、エリオをライバルポジにしよう。後はその周りに花となるキャラを誰か――イクスヴェリアとアギトを投入。

 

 練炭パワー持ちなトーマに対抗する為に、パラロスからナハトを持ってきてエリオに憑依させる。

 その流れで、反天使揃えてしまえ。該当者は、原作StSのラスボスだから使いたいクアットロとヴィヴィオで良いや、と言うのが設定決定までにあった大体の流れ。

 

 トーマとエリオが戦いながら成長して、対立しながらも同じ願いを胸に抱く。StS編で目指したのはそんな形。故に彼ら二人が此処での主人公。

 クアットロが書いてて楽し過ぎて猛威を振るったが、それ以外は大凡三代目プロットさんの形を崩さずに進められたと思います。

 

 

 

○空白期4について

 最終決戦前に、物語を整理する為に必要だった話。神産み編も、楽土血染花編も、どちらも目的は同じく。

 トーマ誘拐までの間に、一端流出に辿り着いた描写を。そしてエリオとの決着と、穢土に侵攻しなくてはいけない理由を描いたのが前者。

 すずか覚醒までの流れと、残っていた敵対勢力の一掃。決戦に向かえるだけの戦力を磨き上げ、情勢を単純な形に纏め上げる。その為にあったのが後者。

 

 我ながら扱いが酷いなと感じたのは、百鬼空亡と菟弓華の二人。此処での犠牲者コンビである。

 

 百鬼空亡は救うか否か、ギリギリまで迷いました。流出一歩手前で妨害されたと言う描写が欲しくて、あの場で止まるのは確定事項。

 それでも最期、大獄に瞬殺されるのか。それとも違う形で眠らせようか。決め手となったのは、それまでの描写。名有りキャラを過去に殺害している事。

 

 幾ら自然現象の権化とは言え、登場人物を残酷な形で殺害する。そんなキャラが何もなしに救われて良い物か。

 エピローグで救われる形を描く代わりに、此処では何も出来ずに瞬殺されよう。それが禊にもなる筈だ。最終的に、そんな判断に落ち着きました。

 

 

 それと、莵弓華に付いて。元々、血染花編は氷村の犠牲者にすずかが糾弾されると言う流れにする予定でした。

 ですが唯のモブでは悲壮感がまるで足りない。けれどオリキャラは使いたくない。なので誰かネームドをと考えた時に、とらハ1のキャラ達ってどうしているかと思い返す。

 

 氷村遊の性格的に見逃すなんてあり得ない。絶対酷い目に合わされているよな。と思い至って、結果として弓華を持ってきました。

 元々ヒロイン勢で一番重い過去があり、だからこそ悲痛の中でも諦めない。そう言う意志の強さを持つのは、やはり彼女しかいなかったのです。

 

 その分、彼女には割を食わせてしまいましたが、お陰ですずかの覚悟完了が出来ました。そう言う意味でも、彼女には感謝しか出来ません。

 

 

 因みに作者の勝手な意見ですが、菟弓華さんはとらいあんぐるハートのヒロインではあるけれど、主人公・相川真一郎のヒロインではないと思う。

 

 弓華ルートは好きですけど、結局悲恋に終わる結末。もう二度と逢わないから、想い出を忘れない為に刻み込んで別れると言う最後。

 それ自体は綺麗なのですが、他ルートで御剣火影と恋仲になっていると言う設定。火影は戦闘能力があるからこそ、弓華と一緒に居る事も出来ると言う流れ。

 

 相川真一郎と結ばれる事は決してない。他の男ならば救える少女。そこがもにょると言うか何と言うか。やっぱり、間違った選択なんでしょうね。

 彼にとって彼女は、愛して良い人ではなかった。彼女にとって彼は、愛して良い人ではなかった。故にこそ、弓華は真一郎のヒロインではないのだ。――などと好き勝手に述べてみました。

 

 

 

○穢土・決戦編について

 実は一番最初にプロットが出来上がった話。初代も三代目も、決戦編から組み立てました。

 

 夜都賀波岐八柱の内、紅葉を途中で死亡させる事は決まってたので、残り七柱との決戦場面。

 その為に考えたのが、キャラクター同士の対応関係。因縁や性格や、その他の要素でこの相手と戦わなくてはいけないと言う相関関係。

 

 高町なのは≠天魔・大獄        始まりを告げる女と全てを終わらせる男。

 ユーノ・スクライア≠天魔・宿儺    真面目に生きる優等生と真面目に生きれない不良。

 クロノ・ハラオウン≠天魔・悪路    誰かと一緒に背負う男とたった一人で背負った男。

 守護騎士の生き残り≠天魔・母禮    罪故に守れぬ者と奪わなくてはならなかった女。

 リリィ・シュトロゼック≠天魔・常世  同じ男の別側面を、しかし同じく愛する乙女達。

 トーマ・ナカジマ≠天魔・夜刀     同じ魂を有する者であり、だが違う願いを抱けた者。

 

 因みに奴奈比売だけ、初期プロットと三代目とで対応キャラが変わっている。

 初期ではフェイトちゃん。時期的に入れ替わる形で友情の輪に入る予定だったので、その点をクローズアップする予定だった。

 

 言うなれば『友を選んだ女と友を選ばなかった女』みたいな対立関係になる想定だった。

 けれどフェイトちゃんが巻き込み事故で逝っちゃったので、奴奈比売の対立キャラはアリサちゃんに移行。相応しい謳い文句は浮かばなかった。

 

 因みに天魔も決戦前に犠牲者出しとくべきだよな、と言う判断で対立キャラがそもそも設定されてなかった天魔・紅葉。

 敢えて誰かを上げるなら、月村すずかが該当する。謳い文句は『共に情深き女』って感じだろうか。実際に戦わせると女の情念がドロドロしそうで、正直想像すらしたくない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

○おまけ 新世界流出後の等級項目(一部神格勢のみ、流出開始から百年後くらいを想定)

 

 

◇高町なのは

【等級】太極・生誕喝采

【宿星】太陽星

【数値】筋力48 体力52 気力72 魔力96 走力50 太極80~

【太極】

 彼女の理は生誕を肯定する。生命が産まれる事の素晴らしさを、他者に語り共感を求める物。

 そして共感を抱いた者は、その出産を妨げられない。如何なる法則、如何なる理を以ってしても妨害すら行えない。

 

 命の価値を知る限り、産み出す母を殺害する事など出来ない。してはならないと、誰もにそれを理解させる。

 本心から他者を見下す鬼畜外道であっても、生命に価値があると認めてしまうなら、彼女の力の一切は防げない。

 

 例外は生を認めぬ者。彼女の言葉を認識すらもしない者。或いは両面鬼の様に、産むだけなら神じゃなくても出来るだろうと返してくる者。

 そうした例外でない限り、高町なのはの蘇生と強化は止められない。母は子を産み育て上げるまでは決して、誰にも負けぬし滅びる事もないのである。

 

 

 

◇トーマ・ナカジマ

【等級】太極・宿世結公孫軒轅

【宿星】貪狼星

【数値】筋力72 体力75 気力70 魔力68 走力66 太極75

【流出】先駆せよ、超越に至る道

 人と人の縁を結び合わせて、親しい人と必ず出逢える世を織りなす法則。

 この世界に真の意味で、孤独と言う事象はない。誰しもが必ずや、大切と言える誰かと出逢う機会を得る。

 

 得た縁をどうするか、それは個々人の判断に委ねられる。この法則は自由型であるが故に。

 結んだ縁を繋ぎ続けるのも、拒絶し断ち切るのも当人次第。彼は唯、皆がより良き場所を目指して欲しいと願うだけなのだ。

 

 この法則を戦闘に用いた場合、己と縁を持つありとあらゆる存在を太極位階にまで引き上げる流出と化す。

 神は人々の縁を結ぶモノでもあるが故、事実上対象となる存在はこの世界に生きる生命の全て。全人類が該当する。

 

 この法則下で神と化した者は、トーマ本人よりも強くなる。誰もが彼を超える程に、故にこそこの法則は諸刃の剣だ。

 外敵に対しては強固な理として成立するが、内敵に対しては異常な程に弱い法。その欠陥は拭えない。だからこそ、守護者が必ず要るのである。

 

 

 なお彼の太極名については、常の彼が黄龍の背に乗って移動する事から後世において名付けられた物。

 黄金の龍と共に旅する神。時折、白百合を介して、人々を救う神。そんな彼が中国神話における黄帝と同一視された結果である。

 

 

 

◇エリオ・モンディアル

【等級】太極・炎帝神農蚩尤顕現

【宿星】紫微星

【数値】筋力72 体力66 気力70 魔力65 走力78 太極75

【流出】先駆せよ、超越に至る道

 流出名はトーマと同じく、彼らが至る世界はこれしかない。そしてその法則も、どこか似通う形となる。

 人の縁より、進歩する強さを優先する。故にこそ繋がる感覚は感じ難いが、確かに其処に存在しているのだ。

 

 大切な誰かと必ず出逢うからこそ、絆を守る為に強くなろうと思い描ける。

 人々は強くならねばと言う強迫観念を常に抱くが、決して立ち止まれない訳ではない。

 

 平穏は其処に。安らぎは確かに。先へ進む為に、一時の休息は許される。そんな形の世界となる。

 

 この法則を戦闘に用いた場合、己と縁を持つ者全てを従えた総軍の覇王として彼は顕現する。

 誰もが進み続ける世界。誰よりも先に進んでいるのは、神である彼であるから。誰もが彼の背を追い掛けるのだ。

 

 内面に対する諸刃がないと言う点では、トーマのそれより完成度が高いと言えるであろう。

 だが反面、トーマ程に外敵に強いと言う訳ではない。背負った彼が敗れれば、この世界は敗れるのだから。その点では、一般的な覇道神と変わらないであろう。

 

 

 なお彼の太極名は彼の自称による物。黄帝の敵対者である蚩尤を名乗る意図は、一体何処にあるのだろうか。

 君が黄帝なら、僕は蚩尤だ。皮肉気な笑みと共にそう語り、彼を手助けする姿。新世界においてそれは、余り珍しい事象ではないらしい。

 

 

 

◇天魔・夜刀

【等級】太極・無間大紅蓮地獄

【宿星】なし

【数値】筋力100 体力100 気力100 魔力100 走力100 太極100

【流出】新世界に語れ、超越の物語

 世界を託して消えた偉大な神。彼が消え去った後に、彼の宝石たちの断片が僅か残っていたのは恐らくは彼の仕業であろう。

 己の内から消え行く残滓が、僅か残った輪廻の法に溶け行く姿。涙を流す程に愛しながらも見送ったのは、彼らの次を祝福していたからに他ならない。

 

 新世界において、彼は残滓も残さず消滅している。戦い続けた超越者は、黄昏の腕で永久の眠りに落ちたのだ。

 同じく消滅したのは、終わりを求めた男だけ。それ以外の欠片たちは大きく形を変えながら、ほんの僅かな色だけを残して、新たな世界を生きて行く。

 

 

 

 

 


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