「ふぅ……緊張するな……。」
オレ、八神はオカルト研究部部室前にて、緊張して立っていた。
オカルトそのものには結構興味がある。けどこの部室の扉、なんか開けたらいけないみたいな雰囲気が出ているから、入学式の後に入部しに行く勇気が全く出てこなかったんだなコレが。
だって旧校舎の中で、窓からたまに見える部屋の中にチラリと見える魔法陣っぽい何かがある部室には行こうとは思えなかったんだ。
でも今日は兵藤の手を借りているんだよな。
だから引き下がるわけにはいかねぇな!
オレは一回深呼吸をしてから扉をノックする。
「二年C組、八神 柊です。この度、オカルト研究部に入部させていただき、ありがとうございます。
この部室の部長に呼ばれたと聞き、参上しました。」
とりあえず、クラスと名前。それから用件言っときゃ大丈夫だろ。
すると、中から女性の声がした。
「えぇ、入っていいわよ。」
「失礼します。」
オレはそっと扉を開ける。
そして、部屋の中身に驚かされることになった。
……何となく予想はしてたけど、コイツァスゲえな。
あちこちの壁に貼り付けられた魔法陣、明かりがついてるのに何故か暗い雰囲気の壁紙や天井、部屋の隅っこにある個室っぽい何か。
……ナニアレ?本当に気になるなあの個室。
って、そんな事より!先ずは挨拶だ。
オレは部屋の中央を見る。そこには、テーブルを囲むように長椅子が設置されており、部員と思われる人々が座っていた。
てか、今初めて全ての部員のメンバーが分かったんだが、コリャすげぇな。
三年の二大お姉様の二人、リアス・グレモリー先輩と姫島 朱乃先輩。
二年のイケメン王子、木場 祐斗
一年の学園のマスコット、塔城 小猫。
最後に変態三人組の一人、兵藤 一誠か。
この学園の有名人が全員集まってるし。
グレモリー先輩は一瞬顔を歪ませたが、すぐに元に戻り「どうぞ、座って」と、オレに座るように促してくれた。
「さて、まずは自己紹介でもしましょうか。私が最初にするわね。
三年B組のリアス・グレモリーよ。この部活の部長をしているわ。よろしくね。」
「あらあら、では次は私が。同じく三年B組の姫島 朱乃と申します。この部活の副部長を務めていますわ。よろしくお願いいたします。」
「じゃあ次は僕が、とは言ってももう知ってるよね?二年C組の木場 祐斗だよ。よろしく。」
「…一年A組、塔城 小猫……。よろしくお願いします……。」
「最後は俺だ!二年B組、兵藤 一誠!よろしくな、シュウ!」
部員の人たちが順番に自己紹介してくれた。
なら、オレも
「それでは、改めて僕も自己紹介します。二年C組、八神 柊といいます。よろしくお願いします。」
考えていた通りの文章を並べる。
よし、完ペキだ。
けど、よく見たら兵藤がなんかスッゲェ微妙な顔してる。どうした兵藤、何があった。
「な、なんかお前がそんな喋り方しているのを見ると、気持ちが悪いな」
……何だと?オメェそりゃどーいうこった。
心配しなくとも、オレの脳内では常に平常運転だ。
年上の方には丁寧に話すのは常識だろ?
「まぁ確かに、いつもの八神くんとは少し違う気ははするかな?」
木場までそう言うか。何だよオレがいつも下品な話し方をしているみたいな言い方しやがって。
「そうなの?普段の八神くん…シュウって呼ばせてもらうわね。シュウは、どういう喋り方なの?」
おい、部長。変なとこに食いつかんといてください。てかサラッと名前で呼び始めたな。一応名前で呼んでもいいか聞いてはきたけども、オレまだ答え言ってませんよ〜。
まぁ、別にいいけどね。
「何て言うか、もっと男っぽい話し方ですよ。こんなに丁寧な感じゃないですね。」
「そうなのね…、ねぇシュウ?それならあなたもいつも通りの話し方で大丈夫よ?
これからは私たちも同じ部活に所属する仲間になるんだから。」
部長がそう言ってきた。
先輩には常に丁寧にってのは、前世の先輩から教わった事なんだけどな?
やっぱり人それぞれで違うんだろうな〜。
ま、部長がそう言うなら!
「じゃあオレもいつも通りの口調で行かせてもらいます。
実際、慣れねぇ口調で話してたから結構苦しかったんすよ。」
的な事を話してみた。
なんか、先輩方二人と塔城さんが驚いてるんだが、なんかビックリする事あったか?
「…これが普段の話し方なのね。」
「先ほどは苦しかったでしょうね。」
「……全然違います…。」
「まぁ、意識して変えていましたから。兵藤とか木場は慣れてんだろうけど。」
「だから僕たちは最初の話し方にかなり違和感を感じたんですよ。」
「やっぱりこっちの話し方の方がシュウらしいな。」
嬉しいこと言ってくれんじゃねぇか兵藤。やっぱこいつ、根はいいやつだ。
変態だけどな。
「さて、それはともかく!」
部長が手を叩いて皆の視線を集める。
「今日からは新しい部員も増えたことだし、皆で仲良くして、オカルト研究部としての活動ももっと活性化させていきましょう!」
「「「「「はい!!」」」」」
こうして、オレの部活生活は始まったのである…。
ーーーーーーーーーー
オレがオカルト研究部に入部してからは、毎日の生活がホントに楽しいものになってきた。
各地の心霊スポットに関する週刊誌を見てみたり、皆でお茶を飲んでゆっくりしたり、学校生活の中でもよく話すようになった。
「なぁ、シュウ」
部活入る前は意識してなかったが、火曜日の三時間目の体育の時間は、塔城のクラスとグラウンドを分けて使っていたんだなぁ。
目があった時に、軽く会釈してくれるんだよ。
「おい、シュウ?」
いやぁ、こんな事なら最初から入っときゃよかったなぁ〜。めちゃくちゃ楽しいよ。
まぁ、あの部室にはなかなか慣れねぇけどさ…。
「おーい、聞こえないのかー?」
ただやっぱり分かんねぇのは、どうしてわざわざ神さんが部活に入るように勧めたのかって事だな。そこだけは理解できねぇままだ。
何らかの理由はあるとは思うんだが、一体何なんだろうな
「シュウ!返事しろ!」
「うわっ⁉︎いきなり耳元で叫ぶな兵藤!そこまでしなくても聞こえてるわ!」
「聞こえてるなら反応しろよ!なんで無視し続けるんだよ!」
「なんとなく!意味はない!」
「ムチャクチャじゃねぇか!」
オレ達は今日の分の部活を終えて、解散したところだ。
そこで、今はオレと兵藤、木場と塔城が一緒になって帰っている。
この面子で帰るのも、当たり前になってきたな〜。
「ははは…なんと言うか……。」
「……仲が良いですね、お二人とも……。」
「おっと、二人ともそれは違うぞ?こいつが勝手に付きまとってくるだけだ。」
「お前最近酷くね⁉︎」
いやぁだってこんなに友達できちまったら、テンション上がるじゃん?
だからだよ、単純な話。まぁ口に出しては言わねぇけどさ。
とか言っているうちに、塔城と木場との分かれ道に入った。
オレと兵藤はこの道を右に。小猫ちゃんと木場は左に行ったところだ。
「じゃあな、木場、塔城」
「お疲れさま!二人とも!」
「うん、またね八神くん、兵藤くん。」
「……失礼します、八神先輩、兵藤先輩。」
二人と別れて、オレ達は各自の家へ向かう。オレと兵藤も、兵藤の家の前で別れるんだけどな。
ほら、すぐそこのあの家。
「じゃあまた明日な、シュウ!」
「あぁ、お疲れ変態くん。」
「俺の名前は変態じゃねぇぞ⁉︎」
こいつはホントに終始やかましいやつだ。
……こんな楽しい日常が、毎日続くといいんだけどな
ーーーーーーーーーーーー
ある日の夕方、
オレと兵藤は部活を終わらせて、早めに帰路についていた。
塔城と木場は、何か用事があるらしく、先に帰っていてくれと頼んできたんだ。
ほんとなら四人で帰りたかったんだが、まぁ仕方ねぇな。
「そーいやさ兵藤?」
「ん?なんだよ。」
「お前、最近朝の寝起き悪りぃそうだな。お前の母ちゃんから聞いたぞ?」
「ん⁉︎あー、えーっと、アレだよ。
ちょっと朝日に弱くなってしまっただけだよ。」
「ハハッなんだそりゃ。朝日に弱いとか、お前は吸血鬼かなんかかよ。」
「う⁉︎うん、まぁ、そうだな〜アハハ。」
……なんかさっきからリアクションがオーバーすぎねぇか?
お前それなら俳優とか狙えるよ。顔は悪くないから。
まぁ、なったとしたら一番気をつけんのはマスコミだな。変態行為をうっかり撮られてたら大変だからな。
話しながら歩いていたからか、兵藤は完全に顔をこっちに向けている。
コラコラ、前を見て歩いてないと
「キャア!」ドサッ
ほら人にぶつかって…なかった。
ただ、女の人が勝手に転んだだけだったか。
それはいいんだが、女の人が転んだときに、持っていたカバンの中身が全部ひっくり返ってしまったようだ。
あーらら、コリャ大変だ。
「どーするよ、兵藤?」
「どうするって、決まってるだろ?助けに行ってやろうぜ。」
いよっ!さすがだぜ兵藤。女が困っているところには手を出さずにはいられない、いいやつだ。
男の時は、手を出したり出さなかったりだけどな。
オレたちは黙って荷物を集め始めた。
その間、転んだ女性は同じように荷物を集めながら何かブツブツ呟いてた。
「ほい、こっちはコレで全部だ。」
オレはオレの周辺にあった荷物を全部集めて女性に渡す。
改めて近くから見てみたが、コリャシスターってやつか?十字架のネックレスかけてるし。
「Merci!」
…はい?え、なんて?
え?メルシーって言ったよな今。てことは、何?まさかこいつ、北欧 フランス出身とか?
マジか…、前世で少しだけフランス語は習ったけど、チンプンカンプンなんだよなぁ…。
皆に一つオススメしておこう。大学では、英語とは別にもう一つ外国語を何か選択して授業受ける必要があるんだが、フランス語はよほど習いたいわけじゃないならやめた方がいい。アレは難しすぎる。
「えっと…『大丈夫ですか?』」
『はい!本当にありがとうございます!助かりました!』
あー待って待って、全く聞き取れねぇし分かんねぇや。
やべぇ全然ダメだ。助けになる事とか出来んのか?これ
兵藤も集め終わった荷物を持ってこっちに来た。
まぁ、一応通訳として頑張ってみるか。役にたたねぇ気がメチャするんだけどな。
『はい、どうぞ。コレで全部か?』
何…だと……?
今オレの目の前では、世界で一番驚くべき光景が広がっている。
兵藤がフランス語をペラッペラに話しているのだ。
まさかこいつが天才だったとは、夢にも思わなかった。
『はい!お二人とも、ありがとうございます!まさかこんな所であなた達のように優しい方々に巡り合えるなんて…!』
『なんか、苦労しているみたいだな。何か手伝えることはあるか?何でもするぞ?』
『え!いいんですか?
……それでは、道を聞いてもよろしいでしょうか?地図を見ても、私が今どこにいるのか分からなくて、でも言葉が通じないから、人に聞くこともできなかったんです。』
『あぁ、全然構わないぜ!どこにでも連れて行ってやる!』
……やべぇ、完全に置いてかれてる気分だ。
何でこんなに悠長にフランス語話すのこいつ?フランスに住んでたことでもあるの?
二人が全く聞き取れない会話をしている間、オレは端っこの方で大人しく座っておくことにした。
話が終わったのか、兵藤がオレを呼んだ。
兵藤が説明する事によると、このシスターは日本の教会に派遣された。その教会付近の地図は与えられたが、日本語が読めない彼女にとって、そんな物は役に立たなかった。だから適当に歩くしかなかった。結果、道に迷ってしまった。
だからオレ達が、その教会まで案内してやるってことらしい。
「そりゃ別にいいんだが、お前その教会までの道とか分かるのか?」
「あぁ、町外れにある結構古いやつがあるだろ?アレのことだよ。」
「あー、あのオンボロのヤツか。だったら分かるな。」
「だろ?さ、行こうぜ!」
オレと兵藤は歩き始めた。その後ろを、シスターが付いてくるのが分かる。
「お前さ、意外とスゲェんだな。
あんなペラペラフランス語喋るヤツとか、そうそういねぇぞ?」
「ん?フランス語?何のことだ?」
「は?お前さっき普通に喋ってたじゃねぇか。」
何だこいつ、やっぱり馬鹿なのか?
ついさっき自分が話していたことをもう忘れてやがる。
未だに首かしげてるし、ホントに何なんだよコイツ。天才なのか馬鹿なのか分かんねぇな。
そんな事思っているうちに、いつの間にか目的の教会に着いた。
『ほら、ここだよ。』
『わぁ、本当にありがとうございます!』
……また置いてけぼりです。
ほら、それがフランス語だよ、分かる?
『宜しければ、中でお茶して行かれませんか?お礼がしたいのですが…。』
『いや、俺はこの後用事があるから、すぐに帰らなきゃいけねぇんだ。「シュウはどうする?」』
「いきなりオレにフルな。てか、どういう状況なんだよ。聞き取れねぇこっちの事も考えろよ。
「だから、中でお茶しないかってこと。お礼がしたいんだってさ。」
「じゃあ遠慮させてもらうわ。」
言葉通じないのについて行っても、楽しくねぇし。
『じゃあ残念だけど、二人とも行かないってことでいいか?』
『そうですか…。それでは、お二人のお名前を伺ってもよろしいですか?私はアーシア・アルジェントと申します。』
『俺は兵藤 一誠!そしてあいつが』
……なんか話が途切れて二人ともこっち見てる。
まぁ、恐らく自己紹介だろうな。
兵藤が自分の名前言ってるのが聞こえたし、アーシア…何とかってのはあいつの名前だろ。
じゃあ、オレが名乗るのを待ってるわけだな。
「えっと…『八神 柊です』」
『分かりました。それでは…兵藤 一誠と八神 柊に、神のご加護があらん事を…。』
何言ってるのか分かんねぇけど、胸の前で両手を組んでいるから、多分オレたちにいいことありますようにみたいな事祈ってくれているんだろう。
…祈ってもらえたのは初めてだな。
シスターに祈ってもらえるのは気分がいいな〜。
ところで…。何で兵藤は頭抑えてんだ?そりゃ失礼ってもんだろ。
とにかく、オレたちはシスター、アルジェント(兵藤から聞いた)と別れて、またそれぞれの家に向かった。
そして、兵藤の家の前で兵藤とも別れたのだ……。
やっとアーシア登場です。
次の話では、はぐれ悪魔が出てくるので、そこで本格的に悪魔と絡ませようかなと考えています