閣下が生きるハイスクールな世界   作:佐竹 リン

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十話目

俺、兵藤 一誠は目の前で起こっている異常な光景に目を惹かれている。

 

突然現れたあの怪人は、今フリードと戦っているんだ。

 

フリードの動きはかなり素早く、俺の目には全くと言っていいほど捉えられないし、木場と戦ってもいい勝負じゃないかと思えるほど戦いのスキルがあるって素人目でも分かる。

 

けど、あいつはその全ての攻撃を受け流している。

どこかで聞いた話だけど、槍というのは本来遠距離から攻撃するもので、相手の攻撃範囲の中で戦うものじゃないらしい。

それなのに、あいつは刀の攻撃範囲である超至近距離で槍を自在に操り、フリードと戦っている。

 

 

 

……スゲぇ………。

 

 

 

 

戦いに見惚れていた俺の元にアーシアが近づいてきて、両手を俺の膝にかざした。

 

「アーシア、どうかしたのか?」

 

「兵藤さん、少しだけじっとしててください。」

 

すると、アーシアの掌から淡い光が灯り、俺の傷を照らす。

驚くことに、どんどんと傷が治っていった。

その時、俺の左手が、俺の神器が宿っている左手が疼いた。てことは、この能力は神器みたいだな。

 

「アーシア、その能力は?」

 

「治癒の力です。神様から授かった、大事なものなんです。」

 

そこまで説明してくれた時、アーシアの顔が一瞬曇ったのが見えた。

 

……なんか、苦労しているみたいだな…。

 

「…なぁ、さっきアーシアは俺のこと兵藤さんって言ってただろ?

名前で呼んでくれよ、俺たちは友達だろ?」

 

「……はい!」

 

俺の提案に、嬉しそうに答えてくれたアーシア。

……笑顔が可愛いな〜♡

 

 

 

その時、部屋の床が紅く光り、魔法陣が現れた。この紋章は、グレモリー家のものだ。

その魔法陣が消えた時には、その場に部長たちが立っていた。

 

「兵藤くん、助けに来たよ…。と言いたいけれど、敵は?」

 

「まさか、イッセーが倒しちゃったの?」

 

「いえ、違います。なんか、よく分かんない奴が代わりに戦っているところでして…。」

 

「よく分からない方?」

 

皆不思議そうな顔をする。俺もよく分かってないから当たり前か。

俺は窓に近づく。

 

「えっと…。あ、あそこです。あそこで戦っている人間じゃない方です。」

 

とりあえず、戦っている場所を指差し、誰の事かを示す。

窓に顔を寄せて、そこを注目する皆。

 

「! あ、あいつは…!」

 

戦っているヤツの姿が見えた時、部長が声を上げた。

…何か知ってる感じの声だったな?

 

丁度その時、決着が付いたようだ。

怪人の方がフリードのやつを突き飛ばし、気絶させた。

 

スゲェ、結局倒してしまったよあいつ。

 

すると、部長が窓を開けて外に走り出ていった。

 

「部、部長⁉︎待ってください!」

 

俺たちもすぐに後を追う。

 

部長は怪人の真後ろで立ちどまっていた。俺たちもその場に集合したところで、怪人は言った。

 

「久しいな、人間の少女よ。」

 

その声は、すごい威厳に満ちている太い声だった……。

 

ーーーーーーーーーー

【第三者視点】

 

フリードとの戦いを終わらせた異形、ゴ・ガドル・バは、リアス達に声をかける。

リアス以外はこの者に出会ったことがなく、ガドルが言った言葉の意味が分からず動揺している。

すると、彼女達を代表するように前に一歩踏み出たリアスがガドルに言い返すように言葉を放つ。

 

「えぇ、ご無沙汰しているわね異形の者さん。

あの時にあなたが守ってくれた子は、今では立派な悪魔となって活躍しているわ。」

 

ガドルとリアスが顔見知りであったことを初めて知った眷属の者たちは、驚愕の表情を浮かべている。

そして、兵藤はその言葉を聞いて、ある事を思い出した。

自分が天野 夕麻に襲われたあの日も、最後にガドルが助けてくれたのだ。

 

「……悪魔?貴様、人間ではなかったのか?」

 

「えぇ、あの時は嘘をつかせてもらったわ。あの時はあなたの正体が分からないままで私の正体だけ明かすというのも、危険だと判断したからね。

でも、今回は嘘はつかないわ。だって…」

 

そこまで言葉を放ち、リアスは一度深呼吸をする。

彼女には、ある確信があった。

 

 

 

 

 

 

「あなたの正体が分かったもの。あなた、グロンギでしょ?」

 

 

 

 

 

 

その言葉が発せられたと同時に、眷属達は戦闘態勢に入る。

グロンギと言えば、先日彼らを半壊目前まで追い詰めた種族。

その時の恐怖が、再びこの場にいるほとんどの者に襲いかかったのだ。

 

ガドルはその光景を、見届けている。

 

「詳しいな。いかにも、私はグロンギである。」

 

ガドルから放たれた言葉は肯定。つまり、自分が彼らにとって敵となりうる存在であると認めたのだ。

 

「部長!こいつ、どうすればいいですか⁉︎」

 

この中で、そのグロンギにこれまでに二度助けられた形になる兵藤は、迷いの意思があるらしく、リアスの決断に委ねる。

 

リアスも少し考えているのか、まだ決断の声は上がらない。

 

緊迫した空気がこの周囲に吹く。

 

 

 

しかし、時間はいつまでも続くわけでは無かった。

 

ガドルは遠い空を見上げる。

 

「二十…いや、三十はいるな。

貴様ら、いつまでもこんな所で遊んでいる暇は無いのではないか?」

 

その言葉を聞いた木場は、すぐに大量の堕天使の気配を感じ取った。

 

「部長!こちら側に大量の堕天使が接近しています!このままここに居れば、僕たちにも危険が!」

 

「分かったわ、朱乃!すぐに転送魔法の準備をして!」

 

「分かりました。」

 

リアスから指示が飛び、魔法の準備を整え始める朱乃。

 

「イッセー!行くわよ!」

 

「部長!アーシアも一緒にお願いします!」

 

アーシアも一緒に連れて行って欲しいと頼む兵藤。

彼は、アーシアをこのままこの場に残しておくのは危険だと判断したのである。

 

「ダメよ。私の魔法陣では、私の眷属しかとばせないの。」

 

しかし、現実は残酷であった。

兵藤は長い間悪魔として生活してきたため、今回は何とかジャンプできるだろう。

しかし、眷属でもなければ悪魔でもないアーシアは、ジャンプする事は不可能である。

 

「そんな…じゃあ、アーシアを置いていけって言うんですか⁉︎」

 

「いいんです…いいんですよ、イッセーさん。さぁ、速く行かれてください。」

 

「けど…それじゃアーシアが……!」

 

フリードは先ほど、再教育してやると言った。アーシアが何をされるか分からないから、このままにしておきたくはなかった。

 

しかし、どうしようもないのもまた事実である。

 

(どうすればいいんだ…どうすれば !!)

 

 

悩みを抱える兵藤に、とある言葉がかけられる。

 

 

「ならば、私がその娘を守ってやろう。それならば、少年も心置きなくいけるだろう?」

 

 

ガドルが、アーシアを守る。そう言ったのだ。

 

その言葉は、最初こそ信じられなかった。

先日、自分達を襲ったヤツと同じ種族である真実。それは、ガドルを信用しない十分な理由である。

 

しかし、兵藤の中では、段々とガドルに対する疑惑が薄れてきたのである。

何故かは分からない。最初に自分が守られたからか。

いや、それ以上に、なぜかこの異形を信頼し始めてきたのである。

 

 

「なら、頼むぜ!アーシアを泣かせたりしたら承知しないからな!」

 

「心得た。」

 

いつの間にか、兵藤はガドルにアーシアの事を頼んでしまった。

だが、不思議と不安は残らなかった。

兵藤はすぐに魔法陣の上に乗る。

 

「……感謝するわ、シスターさん。……それから、グロンギ。」

 

リアスの最後の一言の後、魔法陣に乗ったものはすぐに転送された。

 

 

ーーーーーーーーーーー

 

…ふぅ、やっぱ慣れねぇもんだな。人の目につくところにこの姿で現れるってのは。

皆は前のブウロに襲撃を受けて、グロンギ相手にはあまり好印象ではないようだ。現に今のオレの姿を見て、敵だと判断した。

 

…それでいい。オレは皆に危険を脅かすつもりは毛頭ないけれど、この姿のオレを味方だなんて認識しない方がいい。グロンギってのは、そういうヤバい連中の集まりなんだからな…。

 

 

 

『あ、あのぅ、カブト虫さん?』

 

 

おっと、そうだった。考え事をしているヒマは無ぇんだったな。

 

さて、どうするか…。

 

こいつの家に送ったり、教会に送り届けるのはダメだな。敵陣に宝を置きに行く事になる。

 

となると、まずは宿泊できる施設だな。それなりに姿を隠せる場所がいいだろう。

あと、フランス語を喋ることができる人がいりゃあいいんだが…、これは願望だな。

 

その条件でいけば、一つだけ心当たりがある。この街にそこそこの大きさのホテルがあるから、そこなら大丈夫だろう。

 

じゃあ、まずはそこまでアルジェントを送るとしますか!

 

オレは俊敏体に変わり、アルジェントを抱えてから、一気に走り出した。

 

『きゃあぁぁぁぁ!速いですぅぅぅぅ!』

 

アルジェントが何か叫んでいる。申し訳ない、分かりません!

最初に悲鳴をあげたし、速いという単語が聞こえたから、多分速すぎるという主張だろうが、無視だ無視!

 

走っている最中に、前からも堕天使どもが邪魔してきた。

堕天使の攻撃を避けつつ、時々水の錬金術で攻撃する。当たったり当たらなかったりだが、まずはホテルの近くまで送ることが最優先事項だ!

 

 

走り続けること三分。オレは目的のホテルの近くに着いた。

ここを左に曲がれば、この街一番のグランドホテルがある。そこなら、フランス語を話すやつがいるのは確実だが、あれはフェイクだ。

実際の目的はここを右に行ったとこにあるホテルだ。

一応ここで後ろにいる堕天使は殲滅するつもりだが、ここまで来たのを見た堕天使が運良く逃げ切ったとしても、まずは左のグランドホテルの方を探すだろう。

 

 

オレはアルジェントを下ろす。

アルジェントは、かなり疲れたようにハーハー息をしている。

君が無茶をする羽目になったのはオレの責任だ。だがオレは謝らない。

 

「そうだな…『お前、ホテル、泊まる、左、違う、右、正解』」

 

どうか伝わりますように!その願いを込めて、わかる単語を並べて説明する。

 

アルジェントは首を傾げながらも、オレの言った単語を聞いている。

 

『あ、分かりました!つまり、右にある宿泊施設に泊まればよろしいのですね?』

 

アルジェントは納得してくれたのか、オレに何かを尋ねてくる。

……何言ってんのかは分かんないけど、多分オレが言いたいことは伝わったんだろう。

オレが頷くと、アルジェントはすぐに行動に移す。

右に曲がってまっすぐ進み、オレが考えている通りのホテルに入っていった。

 

よかった、分かってくれたみてぇだな。

 

後ろを振り向くと、大勢の堕天使が飛んで来ているのが見える。

 

んじゃ、後はオレの仕事だ。

 

一応兵藤との約束だ。キッチリと果たしてやる。

オレは堕天使の軍勢に向かって、突撃していった。

一人、また一人と倒していき、最後はそこにオレ以外の誰も立っていなかった。




今日は二話連続投稿です。
余りにもヒマだったので…。
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