閣下が生きるハイスクールな世界   作:佐竹 リン

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十一話目

追っ手の堕天使を殲滅したオレは、

アルジェントが入ったホテルの様子を見る。あ、もちろん人間態ですよ。

 

フランス語が話せない人がいる確率が高いんだよな〜。そうなると、手続きもクソもねぇからな。

 

けど、ロビーにはすでにアルジェントはいなかった。

 

不思議に思ったオレは、そこの支配人に聞いてみる。

すると、アルジェントはすでに手続きを済ませて部屋に向かったと言われた。

 

よくフランス語が分かったな〜と感心していたが、どうやらそのホテルは、国内客ではどうしても近くのグランドホテルに負けるから、せめて国外客だけでもってことで、そこで働く人は何か一つバラバラの外国語を話せるようにしているそうです。

もちろん、フランス語担当の人もいるから、その人がアルジェントを案内したらしい。

 

……それって、あのグランドホテルがフェイクになんのか?

 

妙な心配を抱えたまま、オレはチラシ配りを再開した。

 

ーーーーーーーーーー

 

翌日の放課後の話だ。

 

「…そんな事があったんすか。」

 

オレは今部長から昨日の出来事の大体の説明を受けたところだ。

 

オレは昨日、チラシ配りを終わらせた後にそのまま帰ったことになっている。

だから、昨日あったことは知らない設定なんだ。

 

まぁ、昨日は他に特に何もないから、これといった異変は起きてねぇ。

 

強いて言うならば一つだけある。

 

「それで、兵藤は今日は休みなんすね。」

 

今日、兵藤が学校を休んだのだ。

あいつ、高校に入ってからは今まで無欠席だった。だから、コレはあいつの初めての欠席なんだ。

女子の着替えなるものを見るために、ハーレム作るために学校に来ているから、休もうとしたことがないってのが正確なんだけどな。

隣のクラスは当然だけど、学園中が大喜びしてた。着替えを覗かれずに済むってんでな。

 

兵藤が休んだ理由には、恐らく部長が兵藤に気ぃ使ってやったってのがあるんだろ。

まぁ、かなり疲れた顔してたからな…。

 

「えぇ、そうなの…」

 

 

……なんか今日、この人変だな。

なんか、意識ここにあらず〜、みたいな?

常にボーッとしてなんか考えてる

 

 

「…部長?他になんか悩み事っすか?」

 

一応、声をかけてみる。すると、部長はそれこそ悩みを打ち明けるように相談してきた。

 

「ねぇ、シュウ。グロンギって、全員が人間を殺すことを簡単にする非道なヤツらなのかしら?」

 

……その事か。

多分、この人は悩んでいるのかもな。オレ…と言うか、ガドルを攻撃対象として見るかどうかを。

オレ自身は攻撃されたくない。ガドルの姿でいるとき限定であっても、皆に敵と思われたくないってのは正直な気持ちではある。

 

…でも、だからと言ってグロンギという種族が皆にとっての敵であるのは間違いないんだ。皆にとっても。そして、オレにとっても…。

 

「…オレが見た中には、かなり外道なヤツもいました。その上、人間を殺すことに悲しみの感情を抱くようなヤツは逆に見たことありません。ほんの一部には人間と接触することに興味を持っていたヤツもいます。そいつぐらいのもんじゃないっすか?警戒心を若干軽くしても大丈夫なヤツは。

ですが、九割がたのグロンギは。いや九割九分九厘がたのグロンギは敵としてみた方がいいと思います。残りの一厘も、決して味方として見てはいけないと思います」

 

「そう…。分かったわ、ゴメンね変なこと聞いちゃって。」

 

「いえ、別に構いやしませんよ。」

 

 

ある程度話がひと段落ついたところで、部室の扉が乱暴に開けられた。

そこには、今日学校を休んだはずの兵藤が、息を切らせながら立っていた…。

 

ーーーーーーーーーーー

時は少し遡る…

 

 

俺は、部長から休みを取るように言われて今日は学校を休んだ。

けど、特にすることがなくて今は近くの公園のベンチに座っている。

 

…アーシアは無事だろうか、そのことをずっと気にしている。

 

あのグロンギ?にアーシアの事を頼んだけど、やっぱり心配なんだ。今はどこで何をしているのか、気にしだすとキリがないくらい。

 

「ハァ……。」

 

思わず、溜息を吐いてしまった。

 

顔を上げると、前のベンチにはかなりの金髪美少女が座っているのが見えた。

……あの子、可愛いな。

もしあの子がアーシアだったら、すぐに話しかけるんだけどな…。

 

 

 

……ん?

 

 

 

あれ?いやちょっと待って?

 

 

 

あそこに座っている子って……!

 

 

 

「アーシア⁉︎」

 

 

思わず、声をかけてしまった。

俺の前に座っていた金髪美少女は、ビックリしたように顔を上げる。

 

 

「イッセーさん!どうしてこちらに⁉︎」

 

 

その顔は、忘れもしないアーシアの顔そのものだった。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

「そっか、逃がしてもらえたのか。」

 

俺とアーシアは、今近くのファーストフード店にいる。

最初は食べ方が分からずに困惑していたアーシアも、今は夢中でハンバーガーを食べている。

 

……食べ方も可愛いな〜♡

 

アーシアから聞いた話では、昨日はあのグロンギがこの近くのホテルまで送ってくれたらしい。

頼りになるいいヤツだったみたいだ。

 

「はい!あのお方には、感謝してもしきれません。お陰で私も今、こうやってイッセーさんと食事ができるのですから。」

 

そう言うアーシアの顔は、どんどん暗くなっていく。

 

…何かしてやりたい、アーシアの為にも。

 

俺はいろいろ考えたけど、何もいい案が出てこない。……だったら!

 

「アーシア」

 

「え?はい、どうしたんですか?」

 

「せっかくだし、今日は思いっきり遊ぼうぜ!」

 

「……はい!」

 

アーシアは満面の笑みを浮かべて答えてくれた。

 

ーーーーーーーーーー

 

俺たちはあの後、ゲーセンに行って色々な遊びをした。

レーシングゲームをしたり、クレーンゲームしたり、プリクラを撮ったりした。

アーシアはホントに楽しそうに俺と遊んでくれた。

 

今は、さっきの公園に戻って二人で座っている。

ベンチで楽しく話している俺たちの目の前で、一人の男の子が転んだ。

膝を擦りむいたようで、泣いてしまった。

アーシアはすぐに立ち上がって、その子の膝に手を添える。

あの時に見せてくれたのと同じ、治癒の神器だ。

膝のキズがすっかり治った男の子は、また元気に走り出していった。

 

「凄いな、アーシアの神器は。俺も神器を持っているけど、能力はてんで分からないし、役に立っていないんだ。」

 

さりげなく話しかけてみる。

すると、アーシアは少し俯いてしまった。

どうしたのか声をかけようとしたところで、アーシアの目から涙が溢れたのが見えた。

 

どうして泣いてるのか色々考えているところに、アーシアの口から衝撃的な過去を告げられた。

アーシアはその治癒の力を持つことで、かつては聖女とまで呼ばれていたらしい。

けど、アーシアの近くで倒れていた悪魔を治療してしまった日から、教会の連中の態度が激変した。

聖女と呼ばれたアーシアは魔女に成り下がってしまい、教会から見放されてしまった。

そして、行き場がなかったためにフリード達の下についた。

 

…重すぎる。まさかアーシアにこんなに酷い出来事があったなんて…。

 

「イッセーさん、私には夢があるんです。普通に、お友達と買い物に行ったり、おじゃべりしたり、お友達と、いっぱい、色んな、ところに行ったり…」

 

嗚咽交じりにアーシアは語る。

 

…こんな時にはどうしたらいいんだろう。

木場なら、アーシアの心の闇を理解して、少しでもアーシアの心を軽くさせてやるだろう。

シュウなら、闇の原因となるものを駆除しに行くかもしれない。

けど、俺にはどちらも出来そうにない…。

 

……だったら、俺にできることでアーシアを元気付けてやる!

 

「だったら、俺が友達になってやるよ!今日はいっぱい遊んだ!これからも買い物でもおじゃべりでも、なんでも付き合ってやる!」

 

「イッセー…さん……?」

 

「だから…俺と!」

 

 

 

 

友達になってくれ。

 

 

 

 

 

その言葉を邪魔するかのように、冷たい言葉がかけられた。

 

 

 

 

 

「無理よ、そんなことはさせないわ。」

 

 

 

 

 

俺は声がかけられた方を見る。

そこには、かつての俺の彼女であり、俺を殺そうとした張本人の堕天使。天野 夕麻ことレイナーレがいた。

 

「こんなところで会えるなんてね。

あの変な化け物のせいで殺し損ねてしまったけど、まさか悪魔になっていたなんて…。」

 

レイナーレは、俺を馬鹿にするような口調で話しかけてくる。

 

その後、アーシアの方に向き直り、話を続けた。

 

「やっと見つけたわアーシア。さぁ、帰るわよ。」

 

「嫌です。人を簡単に殺すようなところには戻りたくありません。」

 

アーシアが珍しく暗い感情を込めてレイナーレの言葉に返す。

 

俺はアーシアの前に立つような形でアーシアを守ろうとする。

 

「どいてくれるかしら?その子は私の物なんだけど。」

 

「アーシアは物じゃない!一人の人間なんだ!お前みたいな、腐った頭した奴らに渡すものか!」

 

絶対にアーシアは渡さない。何があっても守ってやる!

 

「どうやら、本当にこの世界から消されたいようね。」

 

レイナーレが光の槍を作り出し、構える。

俺はすぐに自分の神器を発現させる。

すると、俺の左腕を覆うように籠手が形成された。

これが俺の神器、『龍の手』だ。

 

それを見たレイナーレは、突然笑い出した。

 

「何かと思えば、ただの龍の手じゃない。心配して損したわ。そんなありふれた神器、無視しとけばよかった。」

 

「例えありふれた神器でも、お前を倒す力にはなる!」

 

「ならないわよ、私とあなたではかなりの実力差がある。」

 

俺は神器の能力、所有者の力を倍加させる能力を使ってレイナーレの元に走り出し、パンチを繰り出す。

しかし、レイナーレはいとも簡単に避けてしまい、俺はレイナーレの姿を見失ってしまう

 

クソッどこに行った!

 

見失ったレイナーレを探すため、俺はあちこちを見回している

そして、俺はその愚行を恨むことになる。

 

「グハッ!!」

 

「イッセーさん!!」

 

レイナーレは、少し離れた距離から槍を投げて俺の腹を貫いたのだ。

 

……あの頃と同じ痛みだ…ヤベェ、痛え!

 

「分かった?一の力が二になったところで、私には勝てないのよ。」

 

皮肉と受け取れる言葉を放ち、レイナーレは再びアーシアに向き合う。

 

「さぁ、どうするの?あなたがもし大人しく着いてくるのなら、私は彼に手を出しはしないわ。

着いてこないのなら、残念だけど彼をこのまま殺すわよ。」

 

!…こいつ、俺を人質にしようってのか!

 

「ダメだ…アーシア……行ったら…もう……。」

 

俺はアーシアに言葉をかける。

けど、アーシアはレイナーレの方を見て、こう言った。

 

「…分かり…ました……。ですから、せめて、治療だけでも、やらせてください……。」

 

「……いいわよ。」

 

俺はこの会話を聞いて、俺の中の何かが崩れ落ちたのが分かった。

俺を治療してくれているアーシアは、泣いていた。

治療を終えて、去り際に言葉を残す。

 

「さようなら、イッセーさん…。楽しかったです……!」

 

そして、アーシアはレイナーレに連れて行かれた。

 

 

 

 

……何が、助けるだ!俺はまた、守れなかった……!

 

 

 

「チクショオォォォォォ!!」

 

 

誰もいない公園に、俺の声だけが響き渡った…。

 




今回は兵藤君がメインの話でした。
連れ去られていったアーシア…果たして、彼女の運命は⁉︎
て事で、次回!奴らの元に殴り込む話になります!
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