閣下が生きるハイスクールな世界   作:佐竹 リン

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十二話目

【第三者視点】

 

 

パン!

 

 

乾いた音が部室中に広がる。

どうやら、兵藤がリアスに叩かれたようだ。

兵藤はあの後、一度部室に戻り、リアス達に何があったのかを説明したのだ。

そして、アーシアを助けに行く許可を貰おうとしたが、リアスの口から出た答えはNoだった。

教会側、つまり神の派閥であるアーシアと、悪魔の派閥である兵藤は、これ以上関わりを持つことはどちらにとっても危険なことであるのは確かである。

ましてや兵藤はグレモリー眷属の一人。身勝手な行動で、魔界に影響を与えるようなことになってはならないのだ。

もちろんその答えに納得しない兵藤がリアスにしつこく詰め寄り、そして叩かれたのである。

 

「何度言ったら分かってくれるの?ダメなものはダメよ。あなたはグレモリー眷属なのよ?」

 

リアスは諭すように兵藤に説明する。しかし、兵藤はその程度では納得しない。

 

「だったら、俺を眷属から外してください。俺一人でもアーシアを助けに行きます。」

 

その言葉に、様々な反応をする他の眷属達。苦笑いをする者、呆れた視線を向ける者、顔をしかめる者。

そして、眷属ではない者は、兵藤がいる方とは真逆の方向を見て茶を飲んでいる。

彼らがそんな反応をするほど、今の彼の発言は愚かであった。

 

「できるわけないでしょう。」

 

リアスは眷属の者たちを何よりも大事に扱うことを信条とする。そんな簡単に見捨てることなど、できるはずがないのだ。

しかし、まだなお食い下がろうとする兵藤。

 

「俺って、チェスで言う兵士なんですよね?兵士のたった一人くらい抜けたところで」

 

 

ドンッ!!

 

 

そこまで言ったところで、彼の言葉は掻き消された。テーブルに叩きつけられた湯呑みが出す音によって。

 

その場にいる誰もが、その音の発生源を見る。

そこには、明らかな不快感をさらけ出している眷属ならざる者。八神が座っていた。

 

「……あんま図に乗んなよ?兵藤。」

 

八神は重く、そして鋭い声で兵藤に語りかける。

 

「お前さっきから黙って話聞いてりゃ、随分自分が強いみてぇなこと言ってくれてるよなぁ?

一人で助けに行ってきます?笑わせんな。テメェが一人で突っ込んで行って何になるってんだ?

悪魔になって日が浅く戦闘経験もロクにねぇお前一人と、長い間堕天使やってて戦闘経験もそれなりの軍勢が戦えば、どうなるか分かってんのか?お前百パーセント死ぬぞ。」

 

「…そんな事は分かってる。けど、それでもアーシアだけは!」

 

「さっきからアーシアアーシアって言ってるけどな、そんなにアルジェントが大切だってんなら、ちょっと考えてみろ。この国のお友達が、自分を助けにきてくれた結果死にましたってなりゃ、そいつは一体どう思うよ?

もう、アルジェントから笑いの表情が一切無くなるぞ?」

 

そこまで一気に畳み掛けたことで、兵藤は黙ってしまった。

他の部員たちは何も言わず、二人のこの後の会話を見届ける事にしたようだ。

 

「なぁ兵藤。お前さ、兵士はほとんど無駄な駒かなんかとか思ってねぇか?」

 

ふと、彼は声を元に戻して兵藤に問いかける。

兵藤は一瞬困惑したが、その後その意見を肯定するように

 

「……ちがうのか?」

 

と聞き返す。

八神は一度笑みを浮かべると、以下のように語った。

 

「ボードゲームには、無駄な駒なんかねぇんだよ。例えばトランプで大富豪する時、三は最弱のカードだ。だが革命さえ起こせば、ジョーカーの次に最強の手札になる。

兵士だって同じさ。」

 

八神はどこから取り出したのか、チェスの兵士、騎士、僧侶、戦車、女王の駒を指に挟む。

 

「兵士は前一歩しか進めねぇし、斜め前一マスの敵駒しか取れねぇようなヤツだよ。けど、他の駒と組み合わせて使えば、相手の王を追い詰める切り札にもなるんだ。」

 

そこまで説明し、指に挟んでいた駒を下ろした。

そのまま兵藤に向かって歩く。

真横に来て兵藤の肩を叩き、最後に呟いた。

 

「たった一人くらい抜けたところで云々とか、訳分かんねぇ言ってんじゃねぇよ。」

 

その言葉を聞いて、兵藤を除く部員たちは微笑む。

そして八神は、「すんません、ちょいと用事があるんで先に帰りますわ。」と言って、部室を出て行ってしまった。

その様子を見て、リアスは溜息をついて再び兵藤に向き合う。

 

「まぁ、大体はシュウが言ってくれたから省略するけど、あともう二つだけ言わせてもらうわね。

兵士には昇格っていう能力があるの。それは、敵本陣に乗り込んだときに他の駒の性質を使うことができるようになるもの。

もちろん、それは悪魔にも適応されるわ。敵本陣に行くことで、あなたは他の皆の力を使うことができるようになるわ。それこそ、教会とかにね。」

 

その言葉は、兵藤に少しだけ希望の光を見せた。

そして、リアスはその後も語り続ける。

 

「もう一つは、神器を使う時のアドバイスね。

神器は、想いの力に反応して能力を発揮するの。だから、神器で戦うときは常に想いなさい。なぜ戦うのか、その理由をね。」

 

「想いの…力に…。」

 

そう言ったところで、朱乃がリアスに何かを耳打ちする。だんだんとリアスの顔が険しくなっていった。

 

「私と朱乃は、急に用事ができたから少し席を外すわ。朱乃、魔法陣の準備を」

 

「分かりました。」

 

「部長!話はまだ終わって!」

 

「いいこと?たとえあなたが昇格したとしても、一人で戦って何とかなるほど堕天使は甘くないわ。」

 

リアスはその言葉を残し、朱乃と二人でどこかへ飛んで行ってしまった。

 

「……そんなこと、分かってますよ。」

 

兵藤は呟き、部室の扉に向かって歩き出す。

そこに、木場の声がかけられる。

 

「行くのかい?殺されてしまうよ?」

 

「そんな事は関係ない!何があっても、アーシアは逃がす!」

 

「それは、無謀というものだよ。」

 

「うるせぇ!」

 

勢いよく後ろを振り向くが、兵藤の視界に入ったのは剣を構えた木場と、右手の拳を左手で包む小猫だった。

 

「僕たちも行くよ。君だけだというのは危険すぎる。」

 

「……先輩達だけだと、不安です…。」

 

「…え……でも…。」

 

「部長はたとえ君が昇格してもっておっしゃっただろう?それはつまり、教会で昇格出来るようになったってことだ。部長が教会を敵本陣と認めたからね。

部長は、あそこに攻め入ることを許可してくださったんだよ。」

 

「…八神先輩もそうだと思います。

他の駒と組み合わせると言うのは、私たちと一緒に戦えば、という意味にも取れます……。」

 

「…二人とも…。ありがとう!」

 

 

こうして、三人は部室を出て、堕天使達の本拠地に向かっていった…。

 

 

ーーーーーーーー

 

俺、木場、小猫ちゃんは教会の前に立っている。

着いてみれば、中からかなりの殺気やら魔力やらが渦のようにうごめいているのが感じられた。

 

「…こんなトコに一人で来てたら本当に死んでたかもな。ありがとう、二人共。」

 

「いいんだよ、友達の戦いは僕の戦いなんだ。それに…」

 

その時、俺は木場から嫌な空気を感じた。

 

「個人的に、教会とかは好きじゃないんだ。憎いほどにね…。」

 

笑顔が消えた木場がそう言うのは、かなり怖かった。

 

…木場も、昔何かあったのかも知れないな……。

 

「って、小猫ちゃん?何してるの?」

 

俺たちが気付いたときには、小猫ちゃんが教会の正面玄関っぽい扉の前に立っていた。

 

「…恐らく、私達が来たことはバレているので……。」

 

そう言うと、思いっきり扉を蹴り飛ばした。

すごい音がして、扉は真っ直ぐに飛んで行った。

 

…流石にそんな堂々とやらなくてもいいんじゃ……?

 

中には、かなりの数の神父と堕天使がいた。

そして、俺は見知った顔を見つけてしまった。

 

「フリード!!」

 

あの時に会ってしまったクソ神父、フリードだ。

 

「やあやあ悪魔さんご機嫌麗しゅうございます。あん時にお前をぶっ殺して快感得ようとしたときに邪魔してくれちゃったあのカブト虫くんはいないのかい?今度こそあいつを切り刻んでやりてぇんだけど。

まぁ、いない奴ねだっても仕方ねえからそこにいる悪魔どもぶっころすことにしてやらあぁぁ!!」

 

あの時同様に、すらすらと虫唾が走る言葉を吐いて突っ込んできた。

迎え討とうとした所に、横から俺を守るように立ってくれた奴が一人。

 

「大丈夫?兵藤くん。」

 

「木場!」

 

木場だった。木場とフリードは、互いの獲物をぶつけ合いながら高速で移動する。あちこちに火花が散る。

フリードは木場に任せよう。じゃあ俺は他の堕天使達を相手してやる!

 

見ると、小猫ちゃんが教会にある椅子を投げながら堕天使達をなぎ倒していた。

 

俺もそこに参戦するため、走り出した…。

 

ーーーーーーーーーー

【第三者視点】

兵藤達が乗り込んだ教会の裏側の門に、突如紅い光とともに転移の魔法陣が現れた。光がおさまり、転移された人物が姿をあらわす。その人物はリアスと朱乃だった。

 

この二人は、用事を早く済ませてしまい、こうして兵藤達の援護にきたのである。

 

 

「悪魔さん二名ご来場でーす。」

 

見ると、堕天使と思われる女性が裏門に立っていた。

どうやら、門番のようだ。

 

「私は堕天使、ミッテルトと申す者です。短い間でしょうが、以後お見知り置きを。」

 

「あらあら、ご丁寧にありがとうございます。」

 

「裏門にも門番とは、かなり警戒しているようね。」

 

挨拶を交わすミッテルトと朱乃。そして、挑発するように言葉を放つリアス。

 

「警戒というか、こそこそ裏から入ってこようとする可能性大じゃね?って思ったから裏に来たってわけ。そしたら案の定あんたらが来たのよ。」

 

「あら、それは残念ね。すでに本命は表から入ったわよ?堂々と。」

 

「別にあんたら以外の連中はどうでもいいのよ。正直言って、あんたら以外なら中の神父達でもなんとかなるっしょ?」

 

「余りうちの下僕たちをバカにしないでちょうだい。」

 

兵藤達の事を軽く見られたことに腹を立てながら、リアスはミッテルトに言葉を放つ。

 

「ま、どーでもいい事はここまでとして、こっからが本番っすよ。出でよ!カラワーナ!ドーナシーク!」

 

その言葉とともに、二人の堕天使が続いて降り立った。男と女が一人ずつである。よって、今ここに二人の女、一人の男の堕天使が参上した。

 

「朱乃」「はい。」

 

リアスは朱乃に、名前だけを呼んで指示をする。

しかし、意思は伝わったようで、朱乃は雷を纏って戦いの準備に入った。

 

駒王学園の二大お姉様と、堕天使三人衆の戦いが始まった。

 




戦いは次回に続きます!
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