閣下が生きるハイスクールな世界   作:佐竹 リン

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十三話目

【第三者視点】

 

朱乃によって裏門に張られた結界の中の戦いは、とても凄まじい攻防であった。

朱乃は自分の異名『雷の巫女』にそって自由自在に雷を操って戦い、堕天使達は各々が作り出す光の槍を投げる。

そして、リアスはその戦いの展開を外から見守っていた。

と言うのも、この結界は堕天使達を逃さないようにするための檻の役目でもあるが、リアスを守るための盾の役目でもあるため、必然的にリアスは結界の外に出てしまうのだ。

 

「クソッ!やってくれるじゃない!」

 

「たかが一人の悪魔に!」

 

「…ミッテルト、カラワーナ。我に少し考えがある。」

 

女堕天使の二人は、結界の中の一人の悪魔、朱乃に攻撃を当てることに必死になっていたが、男堕天使のドーナシークは冷静に作戦を練っていた。

 

「考えって、何⁉︎」

 

「この結界はあの悪魔が張ったものだ。そして結界を破壊すれば、術者となるものにダメージを与える事が可能である。」

 

「確かにそうだが…!なるほどな。分かった。」

 

「え〜!何々⁉︎教えてよ〜!」

 

ドーナシークの説明により、カラワーナはその作戦の意図を理解する。

まだその考えが理解できていないミッテルトは必死にその作戦の意味を聞き出そうとする。

 

 

 

「つまりだな、この結界を先に破壊してしまえば、術者である雷の巫女に隙が生まれ、さらにグレモリーを狙うことも可能になるわけだ。」

 

 

 

この言葉によって、ミッテルトもその意図を理解した。

 

 

 

「では、行くぞ!」

 

三人は一気に各々の最大の力を込めた槍を作り出し、ある一点に向かって投げた。

槍と結界がぶつかり、結界に小さくヒビが入る。

そのヒビは、徐々に大きくなっていき、ついに結界を破壊してしまった。

 

「きゃあ!」

 

「朱乃⁉︎」

 

予想通り朱乃に隙が生まれ、リアスを守るものが無くなる。

 

「今が好機!」

 

三人は再び槍を作り、それぞれの獲物に向かって突き進む。

 

ドーナシークは朱乃を、他二人はリアスを狙っている。

 

 

「もらったぁ!」

 

 

勝利を確信した三人。

 

 

 

 

 

 

しかし、そう簡単にはいかなかった。

 

 

 

 

 

 

突如、大地が形を変えて棘のようになり、ドーナシークを貫く。

 

 

黒い魔力の球がカラワーナの羽根に当たり、羽根が消え失せる。

 

 

大きな雷が降り注ぎ、ミッテルトを焼き焦がす。

 

 

「グハッ…⁉︎」

「何…だと…?」

「アベベベベ!」

 

 

何が起きたのか、理解できなかった。

困惑する三人がいる場所に、声がかかる。

 

 

 

「すみません、ここに来ている途中で堕天使複数の妨害受けてて遅れちまいました。その分、キッチリと働かせてもらうんで許してください。」

 

「それは構わないわ。それより朱乃?私の方より貴方の方を心配しなさいよ。貴方攻撃されていたのよ?」

 

「シュウくんが私の方に向かって地面を叩くのが見えましたので、目の前の殿方を狙っているのが分かったんですの。ですから、部長をお守りしようと決めたんですわ。」

 

 

 

 

突然現れた八神。結界の外で傍観していたリアス。隙が生まれたはずの朱乃の順に話す。

 

この三人、案外余裕そうである。

 

 

「さて、オレはさっさと中入って兵藤の援助に回りてぇんで、この男やったらさっさと行かせてもらいますわ」

 

「ご自由にどうぞ。朱乃?二人なら行けるかしら?」

 

「えぇ、もちろんですわ。三人相手でも大丈夫でしたが。」

 

 

 

この時、朱乃の笑顔が黒くなっていたのは別のお話。

 

裏門の決戦、第二幕が始まる。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

「我が名はドーナシーク。貴様何者だ?見た所、悪魔ではなさそうだが…。」

 

別に名乗ってくれって頼んでもねぇのに名乗ってきやがったぞこのオッサン。

そんな事してる時間も惜しいんだよ、雑魚どもが大人数で攻めてきやがったおかげで。

 

「八神 柊。人間で高校二年生。兵藤君のお友達。以上終わり。」

 

オレは自己紹介を簡潔にする。

だって他に言うことねぇし。

怪しいオジちゃんには必要以上に話さない。これ、常識だ。

 

「そうか、ならば人間。我と勝負するのだろう?悪い事は言わぬ、止めておけ。

それに…」

 

こいつ完全に舐めくさってやがるな。

オレが戦えねぇヤツだとでも思ってんだろ。

よし、後悔させてやるか。オレを舐めてくれt「兵藤とか言う大バカ者のために、命を投げ出すなどしたくはなかろう?」

 

 

 

 

 

……さっきの自己紹介では分かんなかったけど、今の一言で分かったわ。

 

 

 

 

コイツ、シニテェラシイ!!

 

 

 

 

 

「丁重にお断りさせていただきます。テメェをさっさと殺して皆のところに向かうのがオレの仕事なんでね。

 

……それと、あんたに一つ忠告しといてやるよ。」

 

オッサンは顔をしかめてオレの話を聞こうとする。

 

 

 

「……あんま人のお友達の悪口は、言うもんじゃねぇよ?」

 

オレは手を一回だけパキリと鳴らす。

すると、あちこちにある木が形を変えて刃物っぽくなる。大地は円柱のようになり、底面になる部分をオッサンに向ける。

 

オッサンはびっくり仰天してるな。

んじゃ、

 

「リアルで天を仰いでこい!」

 

手をオッサンに向けて突き出すと、形が変わった木や大地がオッサンに向けて飛んで行った。

百発百中だ。あそこの中は相当グロいことになってっかもな。

仕方ねぇから地面に深い穴を開けてそこにオッサンをぶち込んでやったよ。

正確には、オッサンが入った木や岩の塊だけどな。

 

ここに向かっている途中、あちこちの木や岩をいつでも扱えるように触りまくっといたのは正解だったな。

おかげであっという間にケリがついた。

 

さて、次はアルジェントの方だ!

 

オレは裏門のドアを開けて中に入る。

 

 

 

え?朱乃先輩達はどうしたって?

 

……オレは何も見てませんよ?堕天使二人を滅茶苦茶なことにしていた朱乃先輩と、なんかスッゲェ怖いオーラ出して堕天使二人を消し炭にしてしまった部長なんてみてません。

えぇ、全く。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

中に入って廊下っぽいところを走り抜け、中央広場に出た。

中はだいぶヒデェことになってるな。

 

さて、兵藤たちはどこに…

 

兵藤達が向かった場所を探しているところに、聖堂に誰かが叫びながら走ってきた。

 

『アーシア!しっかりしろ!』

 

「兵藤⁉︎」

 

兵藤が、アルジェントを抱えている。

少し離れた位置からでもわかる。アルジェントはすでに虫の息であった。

オレは兵藤の元に駆け寄る。

 

「おい!兵藤!何があった⁉︎」

 

「シュウ!それが…、アーシアの神器が、レイナーレの奴に抜き取られてしまったんだ!」

 

神器が抜き取られた…。色んなところからチョコチョコ聞こえた儀式ってのは、その事だったのか!

 

「それで、木場から聞いた話だけど…!」

 

「分かってる。神器を強制的に抜かれた場合、このままだと死んじまうってことだ。」

 

神器ってのは、人間の身体に宿るもんだ。つまり、魂のような存在だ。

それが抜かれたんだ。

 

……残酷だが、これが事実、か…!

 

クソッ!間に合わなかったってのかよ!!

 

 

『アーシア!頼む!しっかりしてくれ!ここを出れば、お前は自由になれるんだ!』

 

『私…少しの間でも、お友達が出来て幸せでした……。』

 

兵藤の言葉に、アルジェントが微笑みながら答える。

…もう、こいつの身体からは生気が感じられねぇ。

 

『何言ってんだよ!まだ連れて行きたい所がたくさんあるんだ!映画館、カラオケ、ボーリング。ラッチュー君だってもっといっぱい取ってやる!

俺の友達も紹介したいんだよ。オカ研のみんなや、悪友の二人。そこにいるシュウだって…。』

 

兵藤…顔が笑ってるのに、涙が止まってねぇ。

 

『この国で生まれて、イッセーさんと一緒に学校に行けたら、どんなに良かったか…。』

 

『行こうぜ!いや、行くんだよ!』

 

『私のために…泣いてくれる……。それだけでも、私は幸せです……。』

 

アルジェントの手が、兵藤の頬を撫でる。

 

そして、今にも消えそうな声で囁いた。

 

 

『ありがとう』

 

 

その言葉を最期に、アルジェントは息を引き取った。

 

『アー、シア…』

 

…顔を背けたくなるな、この光景は。

兵藤の顔はまさに絶望している。普段が常に元気なやつだ。そいつがこんな顔をするのは、見たくねぇもんだ。

けど…それを実行する気にはなれねぇ。

 

 

 

「なぁ!神様!いるんだろ?アーシアを連れて行かないでくれよ!頼む!頼みます!まだ、まだアーシアを生かしてあげてください!」

 

 

 

…兵藤……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「悪魔が教会で神に願うって、笑えない冗談ね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

突然、後ろから声がする。

そこには、あの日。兵藤を殺した堕天使、レイナーレが立っていた。

 

「レイナーレ…!」

 

兵藤は憎しみを込めた声を出す。

 

「ほら、見て。ここに来る途中、あなた達の騎士にやられちゃったの。」

 

そう言って、レイナーレは少しだけ切れた腕の傷を見せる。

その傷に逆の手を被せると、緑色の光が灯って傷を治す。

 

……なるほどな、アレがアルジェントの神器か。堕天使が欲しがるわけだ。

 

「素晴らしいでしょう?この力。この力さえあれば、堕天使の総督であられるアザゼル様やシェムハザ様にお使えすることが出来るわ。」

 

…その程度の事で、こいつらは一人の少女の命を奪いやがったのか。

 

 

 

 

「……返せよ、その神器。」

 

 

 

 

兵藤がレイナーレに敵意むき出しで言葉を放つ。

 

「返す?元の持ち主は死んだでしょう?それに、人間がこの力を持つのは勿体無いでしょう?」

 

「そんなの関係ねぇ!その神器は、優しい人間だけが持っていい力だ!お前らみたいな、汚い奴らが使っていい力じゃねぇ!」

 

 

その時、オレは兵藤から凄まじい力を感じた。

何かが目覚めてきている。そんな感覚だ。

 

 

「……返せよ」

 

 

その力は、徐々にデカくなってきている。

 

てか…これは……⁉︎

 

 

「アーシアを返せよおおおおおお!!」

 

 

【Doragon Booster!!】

 

ーーーーーーーーーー

【第三者視点】

 

謎の音声が鳴り、兵藤の力が急に上昇した。

そのまま兵藤はレイナーレに殴りかかる。

 

「一の力が二になったくらいで!」

 

【Boost!!】

 

再び音声が鳴り、またもや兵藤の力が上がる。

 

「へぇ、ちょっとはマシになったみたいね!」

 

そこでレイナーレは光の槍を作り、兵藤に投げる。

 

「グアッ‼︎」

 

槍は深く兵藤にささり、苦痛の声を漏らす兵藤。

余裕の笑みを浮かべるレイナーレ。

 

しかし、兵藤は倒れなかった。

 

自分の足で踏み込み、体を支える。

その光景に、驚愕の表情を浮かべたレイナーレ。

 

「嘘よ!なんで倒れないのよ!悪魔にとって光は弱点のはずなのに!」

 

「あぁ、かなり痛えよ。けどな、こんな苦しみなんか」

 

【Boost!!】

 

「アーシアのそれと比べれば、何てことはねぇんだよ!!」

 

三度目の音声が鳴り、再び殴りかかる兵藤。今度はかなり速さも上がり、レイナーレも避けるのに思わず必死になるほどだった。

しかし、その攻撃が避けられると、兵藤は膝から崩れ落ちてしまった。

 

「はぁ、はぁ、どうやら、限界のようね。」

 

さすがに、体力が尽きてしまったようだ。

 

「それなら、ここでトドメを刺してあげるわ。さよなら、イッセー君」

 

光の槍を作り、イッセーに最期の攻撃を加えようとした。

これで兵藤は本当に消滅し、レイナーレの勝利になるはずだった。

 

 

 

 

 

そこに、乱入者が入らなければ。

 

ガキンッという音がして、槍が折れてしまう。

兵藤とレイナーレの間には、先日同じような状況に出現したあいつが立っていた。

 

 

 

 

 

 

 

「お前!あの時の…⁉︎」

 

「……グロンギ……?」

 

 

ガドルは後ろを振り返り、兵藤の方を見る。

 

「少年、もう終わりか?」

 

「…⁉︎」

 

ガドルは太く、そして何処か優しさが感じられる声で兵藤に問いかける。

 

「少年、貴様に三分時間をやろう。

もし貴様がこの堕天使と決着をつけたいのならば、その三分が経つまでに立ち上がれ。それが叶わなければ、私がこの者を片付ける。」

 

そう言うと、ガドルはレイナーレに向き直り、戦いを始めた……。




次回で決着、そして一章完結の予定です。
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