閣下が生きるハイスクールな世界   作:佐竹 リン

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十四話目

オレは兵藤の戦いをしばらく見届けることにしていたが、予定変更だ。

さすがにこいつも限界みてぇだしな。

まずは約束通り、三分間は兵藤を待つことにする。

それまでは、ひたすらレイナーレの攻撃を受け流すだけだ。

 

剛力体になり、オレはレイナーレと向き合う。

レイナーレは槍を作って切りかかってきたが、動きがてんで素人だな。どこを攻撃してくんのか、見え見えだ。

右から来た槍を右手で弾き、弾かれた槍を左手で掴んで握りつぶす。

レイナーレは自分の武器が破壊されて戸惑いの表情を一瞬浮かべたが、すぐに後ろに飛んでオレと距離を取る。

そしてかなりの数の槍を作って次から次へと投げてきた。

 

なるほど、近距離がダメなら遠距離か。その上、数で押そうってんだな?

 

 

いい戦法だ、感動的だな。だが無意味だ!

 

 

オレは胸の石を一つとる。すると、石は形を変えていき、一本の剣になる。

剣を手に持ち、飛んできた槍を一本一本叩き落とす。

全ての槍を叩き落とすと、レイナーレの顔は青ざめていく。

「あ…あんたは一体何なのよ!悪魔どもと一体何の関係があるの⁉︎」

 

お友達です。って言いてぇところだが、そんなこと言うのは色々マズイ。

この姿でのコイツラとの関係か…。

 

「ただ興味深いだけだ。後ろの少年も、ここに来ている者達も、な。」

 

 

 

ガタッ…。

 

 

 

後ろで何か物音がしたから、オレは後ろを振り向く。

まぁ、驚きはしたが、なんとなく分かっていたさ。

 

 

 

 

「少年よ、もう大丈夫なのか?」

 

「あぁ…代わってくれ!」

 

 

 

 

そこにはオレの幼なじみ、兵藤が立っていた。

 

さぁ、こっからは選手交代だ。

 

 

ーーーーーーーーーー

時は少しだけ遡る。

 

「ダメだよな…こんなんじゃ…。」

 

すぐそこでグロンギが戦っている時、俺はアーシアの体を抱えた形で座っていた。

 

…色々考えていたんだ。皆の事を。

 

俺にアーシアを助けに行く許可を出してくれた部長や朱乃さん。喝を入れてくれたシュウ。一緒に着いてきてくれた木場や小猫ちゃん。悪魔の俺にずっと笑いかけてくれたアーシア。立てるようになるまで時間をくれたあのグロンギ。

皆が俺を支えてくれている。

そんな状況で、支えられている本人が一番いつまでも倒れてる場合じゃねぇよな。

 

俺は眠っているアーシアの顔を覗く。

 

「悪いな、アーシア。ちょっとだけ、待っていてくれ。」

 

俺はガタガタ震える足で踏ん張り、立とうとする。

かなり痛くて、なかなか立つ事が出来ない。

 

「神様、じゃないな。悪魔だから魔王様か?いるよな、魔王様。」

 

不思議と、考えるより先に言葉が出る。

 

「俺も一応悪魔なんで、願いを叶えてください。

他には何もいらないんで…」

 

腹が痛む。足も安定しない。けど、少しずつだけど立てる。

 

「あいつを!一発だけ殴らせてください!!」

 

叫びと同時に気合が入り、俺は立つ事が出来た。

後ろを振り向くグロンギが、俺に問いかけてくる。

 

「少年よ、もう大丈夫なのか?」

 

「あぁ…代わってくれ!」

 

俺がそう答えると、あいつはそっと横にずれて俺に道を開ける。

 

「ウ…ウソよ!立ち上がれるはずがない!もう内側から焦げてしまっているはずだし、一度倒れるまで体力が尽きたはずでしょ⁉︎」

 

「あぁ、痛えしフラフラだよ。立ってるのも辛いくらいにな。

けど、それ以上に…」

 

確実に、一歩一歩レイナーレに進んでいく。

 

「それ以上に!テメェがムカつくんだよ!!」

 

【EXPLOSION!!】

 

俺の神器から新しい音声が鳴って、神器が形を変えていく。

ただ腕を覆うようにかぶさっていた神器が、肘まで覆うように大きくなり、露出していた指は竜の爪のように鋭くなる。

 

…だんだんと、力が湧き上がってくる。今までよりも、格段に力が上がっているのが感じられる。

 

これなら、あの堕天使を倒せる!!

 

「この魔力!中級、いや上級クラス⁉︎

あり得ない、そんな事は無い!ただの龍の手が、こんな!」

 

レイナーレが光の槍を作って俺に向かって投げる。

もう、こんな物くらう俺じゃねえ!

俺はその槍を横殴りで弾く。

その槍は粉々に砕けて無くなってしまう。

 

「ウ、ウソよ!」

 

あいつは羽を伸ばして逃げようとするが、そんな事はさせねえ!!

俺は走り出してレイナーレの足を掴み、俺の元に引き寄せる。

 

「私は!至高のー」

 

レイナーレはなんか言おうとしているが、そんなのどうだっていい!

 

「これで!終りだああぁぁぁ!!」

 

俺は全力でレイナーレの顔面を殴り飛ばす。

レイナーレはステンドグラスを突き破って彼方遠くまで飛ばされていった。

 

「…ざまーみろ。」

 

俺は最後にその言葉を吐く。

堕天使との戦いが終わった…。

 

ーーーーーーーーーー

 

あの場からこっそり少しだけ離れ、人間態に戻ったオレは、戦いが終わるのを見届けた。

ホントに堕天使に勝っちまうとはな。手助けする気満々だったけど、意味なかったみてぇだな。

 

オレは兵藤の元に近寄り、声をかける。

 

「やってくれんじゃねぇか、兵藤!」

 

「シュウ…ああ、俺、やったよ。」

 

やっぱ元気ねぇなこいつ。仕方ねぇんだがな。

 

…ホントはアルジェントを生き返らせてやりてぇんだけど、それは出来ねぇんだ。

 

術は無いわけじゃない。この場に水や炭があれば、それを錬成して肉体を作り、魂をその肉体に詰める。所謂人体錬成だ。

アルジェントの肉体はまだあるが、あの中に魂を詰めても無駄だろうな。肉体に負荷がかかり過ぎている。だから新しい肉体を作る方がいいだろう。

けどこれはリスクが高すぎる上に、成功確率は極めて低い。この場にいる全員の体が代償となる事だってあり得る。それは控えたい。

 

魂だけを呼び寄せることもできるが、それでも体の一部が代償で持っていかれるし、原作の鎧の弟が出来上がる。アレを女子にやらせんのは鬼畜ってもんだろ。

 

だから、どうしようもない…。

 

「お疲れ様、イッセー。」

 

「部長⁉︎」

 

すると、部長が向こうから歩み寄ってきた。

地下から出てきたってことは、あの後地下に飛んだみてぇだな。んで、地下の大掃除ってわけか。

 

「本当に良くやったわね。一人で堕天使を倒しちゃうなんて、素晴らしい事よ。」

 

「あ、それが俺だけじゃなくて…アレ?あいつは?」

 

周囲を見渡す兵藤。恐らくガドルとしてのオレを探しているんだろう。

もう人の姿に戻ったわけだし、ここにはいないんだけどな。

 

「イッセー?どうしたの?」

 

「いえ、その…なんというか…」

 

兵藤がこちらをチラチラと気にしたように視線を向けてくる。

オレの前じゃ、あいつの話はしづらいのかも。まあオレも聞きたくないんだけど。

 

「部長。連れてきました」

 

すると、小猫が玄関からあの堕天使を引きずって連れてきた。

…連れてきたっつーより、運んできたってのが正しい気がするなアレ。

 

「ひとまずはこの子を起こしましょうか。朱乃?頼める?」

 

「はい」

 

朱乃先輩が魔法で水を作る。そして作った水をレイナーレの顔に浴びせ、無理やり起こす。

 

「ゴホッゴホッ!」

 

かなりむせてるな。寝耳に水どころか、寝顔に水だもんな〜。

 

「ご機嫌よう。堕天使レイナーレ。」

 

部長が覇気のこもった顔でレイナーレに話しかけた。…怖ぇな側から見ると。

 

「その紅い髪…グレモリー家の者か。」

 

「ええ、そうよ。リアス・グレモリーと言うわ。短い間よろしくね。」

 

おぉ、怖い怖い。短い間ってシャレになってねぇよマジで。

 

「それから、あなたを支持していたミッテルト、カラワーナは既に消しとばしたわ。シュウ、ドーナシークはどうしたの?」

 

「あぁ、あいつは地下深くでただの肉の塊になってますよ。徹底的に潰しましたから。」

 

それを聞いた時、レイナーレの顔はどんどん曇っていく。自分も同じ運命をたどることが読めたんだろうな。

 

「ところで、あん時の部長の魔力って、何だったんすか?真っ黒でしたけど。」

 

「部長は『滅殺姫』という異名がありますわ。その名の通り、部長の魔力に当たった方は消し飛ばされるんですの。」

 

オレの質問に朱乃先輩が答えてくれた。てか滅殺て、ますますこの人が怖く見えてきたわ。

 

「イッセー、その神器は?」

 

「それが、途中で形が変わったんですよ。何だったんだ?」

 

今度は部長が兵藤に疑問をぶつけたが、兵藤自体よく分かっていないらしく、首を傾げている。

 

「赤い龍…なるほどね、分かったわ。」

 

何かの答えを見つけた部長は、再びレイナーレに視線を戻す。

 

「残念だったわね、この子の神器はただの龍の手じゃないわ。」

 

「何?」

 

「この子の神器は、持ち主の力を十秒ごとに倍化させる能力を持ち、一時的に神や魔王を超える力を持たせると言われている、世界に十三しかない『神滅具』【ロンギヌス】の一つ。『赤龍帝の籠手』【ブーステッドギア】よ。」

 

「…んな物騒なもん持ってたのかよ兵藤。」

 

「いや、俺も初めて知った。」

 

唖然とした顔をする一同。ま、そりゃそうだろうよ。こいつがそんなスッゲェ力持ってたとか、何ソレ⁉︎ってやつだ。

 

 

「さて、驚きの真実が分かったところで、そろそろ貴方には消えてもらいましょう。」

 

その言葉と同時に、レイナーレの顔が引きつる。

レイナーレは咄嗟に兵藤の方を向き、叫んだ。

 

 

 

「お願い!助けてイッセー君!」

 

天野 夕麻の声で。

 

 

 

「あんなこと言ってしまったけど、堕天使としての役目を果たすために仕方なかったの!私はあなたが大好きよ!」

 

「マズイ!小猫ちゃん!」

 

そこに木場と小猫が駆け寄ろうとする。

だが、オレが二人の前に立ち塞がった。

 

「八神くん⁉︎このままだと、兵藤くんが!」

 

「大丈夫だ。二人ともあいつを信用しろ。」

 

その言葉を聞いて、二人は緊張感を解いた。

さて、兵藤はどう出るか…?

 

 

「部長…頼みます。」

 

その言葉とともに、一気にレイナーレの顔が絶望に満ちる。

部長は頷いて魔力の弾を撃つ準備をした。

 

これで終わったな。

 

 

 

しかし、レイナーレは往生際が悪かった。

 

 

 

「兵藤 イッセェェェェ!」

 

 

 

最後に光の槍を作って兵藤の元に飛び出す。

不意を突かれて、兵藤は回避行動を起こせない。

他の皆も、フォローが間に合わない。

 

「せめて!あんただけでも!殺してやるわ!!」

 

槍が兵藤の元に辿り着き、兵藤の胸を貫く…

 

 

 

 

 

 

……事はなかった。

 

 

 

 

 

 

突如、水がレイナーレの顔を覆って、レイナーレの動きを鈍らせた。

その間に、兵藤は回避行動を起こすことができ、槍は空を切った。

 

「ゴホッ!一体、何が…⁉︎」

 

レイナーレは、手を自分の方に突き出したオレの姿を確認して、叫ぶ。

 

「まさか、貴様!あの時の…」

 

「私の下僕に言い寄るな!」

 

 

レイナーレの言葉は最後まで放たれることはなく、レイナーレは部長の魔力によって消し飛ばされてしまった…。

 

 

「ありがとな、助かったよ。」

 

「いいえ、お気になさらず〜。」

 

レイナーレを消しとばした後、兵藤が礼を言ってきた。

まぁ、偶々オレの立ち位置からあいつが槍を作ろうとしているのが見えたから助けられただけで、もしオレが別の場所に立っていたら間に合わたかったかもな。

 

さて、この話はここまでとして、だ。

 

レイナーレがいた所に、緑の光が宙を浮かんでいる。よく見ると、緑色の指輪がその光を発しているみたいだ。これがアルジェントの神器だろうな。

 

「さぁ、これを彼女に返してあげましょう。」

 

そう言って、部長はその指輪をとって兵藤に手渡す。

兵藤は指輪をアルジェントの指にはめた。

 

「部長、すいません。あんな事まで言った俺を、皆が守ってくれたのに、アーシアを守ることができませんでした。」

 

「いいのよ。あなたはまだ経験が足りなかっただけ。これから力をつけていけば、それでいいじゃない。」

 

「でも、俺は…」

 

泣きながらも謝罪の言葉を並べる兵藤に、部長は優しく声をかける。

でも、兵藤はアルジェントを助けてやれなかったことを悔やんでいるみたいだ。

 

「…前代未聞だけど、やってみる価値はあるわね。」

 

そう言うと、部長はチェスの僧侶の駒を取り出す。

 

……何する気なんだ?

 

「部長、それは?」

 

「悪魔の駒【イーヴィルピース】よ。これを使えば、このシスターを悪魔として転生させることができるの。」

 

なるほどな、それで兵藤が悪魔になったのか。

兵藤に使ったのは兵士、木場に使ったのは騎士、小猫に使ったのが戦車、朱乃先輩に使ったのが女王だったか?

 

「でも、死んでしまったやつにも効果あるんすか?」

 

「えぇ、あるわよ。」

 

そう言って、部長はアルジェントの下に紅い魔法陣を出した。

なにやら呪文のようなことを呟いている。

僧侶の駒はゆっくりとアルジェントの胸に沈んでいった。

 

すると、アルジェントの開かれることがない瞼が開いた。

 

「アーシア…。」

 

兵藤は嬉しそうな表情を浮かべている。

 

「私は悪魔を治療するその力が欲しかっただけよ。これからはあなたが先輩悪魔として、色々リードしてあげなさい。」

 

そこまで言うと、オレたちはその教会を後にした。

あとは、兵藤がアルジェントの世話をしっかりするだろう。

 

ーーーーーーーー

 

次の日、オレは部室に来て一番に始めたこと。それは何でしょうか?

 

ヒント、今日からアルジェントが眷属に加わり、必然的にこの学校に通うことになる。

 

分かったかな?そう、答えは

 

 

フランス語の猛勉強です。

 

もう必死よ必死。今日から仲間になるやつと話すことができないってのはマズすぎるだろ。

学校に来る途中の図書館でフランス語の参考書買って、今必死こいて覚えようとしてんの。

もち、難しいよ?

 

すると、部室の扉が開いて部長と兵藤が入ってきた。

オレの猛勉強の光景を見ている部長達は、しばらく固まっている。

 

「えっと…シュウ?何してるのかしら?」

 

「何って、フランス語の勉強っすよ。今日からアルジェントが学校に来るようになるんでしょ?だったら一言も話せないとか、嫌じゃないっすか。

あ、兵藤!来たならお前フランス語教えろ!」

 

それを聞いた部長は大きなため息をつく。兵藤はポカンとしてやがる。

 

「シュウ、その必要はないわよ。」

 

「え?何で?」

 

いやいや、何でそんなこと言うのよ。オレはアルジェントと話す必要はないってか?それは酷いよ。

 

「あ!八神さん!」

 

聞き覚えのあるようなないような声で、オレの名前が呼ばれた。

兵藤の後ろからモゾモゾ出てきたのは、あのシスター、アルジェントだった。

 

「八神さんもこの学園にいらっしゃったのですね!」

 

「……そうだけど」

 

え?アルジェントってこんなに日本語ペラペラなの?

いらっしゃったて、敬語まで使えんのかい。

 

「悪魔になるとね、例え外国語で話しかけてこられてもその言葉が自分の最も理解しやすい言葉に吹き替えられて聞こえてくるの。逆にこちらが日本語で話しかけたとしても、相手には相手の母国語になって聞こえるようになるの。

つまり、あなたが日本語で話しかけてもアーシアは理解できるし、アーシアがフランス語で話しかけてもあなたは理解できるようになるの。」

 

……そんな便利なシステムがあるのかよ。

 

「じゃあ、この参考書の意味は?」

 

「ないわね。せっかくだし、そのまま勉強してみれば?」

 

ニコリと笑ってひでぇ事言いやがった

 

 

「おはようございます。部長、シュウくん、イッセーくん、アーシアさん。」

 

「…おはようございます、部長、シュウ先輩、イッセー先輩、アーシア先輩。」

 

「おはようございます。部長、シュウくん、アーシアちゃん。」

 

順に木場、小猫、朱乃先輩が入ってきた。

ちょっと凹んでたオレの頭に、少し疑問が浮かんだ。

 

「お前ら、いつから兵藤とオレのこと名前で呼ぶようになったんだ?」

 

「昨日イッセーくんから頼まれてね。今日からイッセーと呼べって。

それなら、シュウくんも名前で呼ぼうかな?って思って。嫌かな?」

 

「いや、別に構わねぇさ。」

 

んじゃ、オレも合わせて行きますか。

 

「おはようございます、皆さん。

……それから、アーシア。」

 

 

「はい!おはようございます!皆さん!」

 

こうして、オカルト研究部に新しく明るい部員が加わった…。

 




やっと一章が終わった…。
次から二章に入りますが、最初はまた日常編になるかな?
なるべく早く本格的に二章を始めたいですね。
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