【第三者視点】
突然部室に現れた謎の男、名をライザー・フェニックスという者は、純血の上級悪魔であり、フェニックス家の三男である。
そして何より、グレモリー家の時期当主の婿、つまりリアスの婚約者である。
しかしこの二人、互いに愛し合ってはいない。むしろ、リアスに至ってはライザーを拒絶しているようにも見える。
ならば何故結婚するか?
そう。『政略結婚』だ。
グレモリー家もライザー家も、元は“七二柱”と呼ばれる爵位持ちの一族であり、大昔の戦争でも生き残った純潔悪魔の一族であった。
しかし、戦争で生き残った純潔悪魔は非常に数が少なく、近いうちに純潔悪魔が一人としていなくなることも考えられる。
そこで、グレモリー家とフェニックス家の間で縁談が持ちかけられたのだ。
今、兵藤 一誠らグレモリー眷属は、部室の片隅によって事の成り行きを見届けていた。
「ふう、リアスの女王が淹れてくれたお茶はとても美味しいな。」
「痛み入りますわ。」
ライザーに茶を出した朱乃は、ライザーの言葉に笑いかけながら答えるが、作り笑顔である事は眷属の全員が感じ取っている。
そんな事は露知らず、ライザーはリアスに対し過ぎたスキンシップをとっていた。
リアスの肩に手を回し、髪を触り、太ももをさする。
リアスの表情から、かなりの怒気が伝わってくる。
やがて、耐えられなくなったのかリアスは声に出してライザーを拒絶した。
「いい加減にしてちょうだい、ライザー。何度も言っているでしょう。私はあなたとは結婚しないって。」
「だがリアス、それはお前個人の意見だろ?お前の我儘が通るほどお前の家は余裕があるとでも思っているのか?」
「家を潰すつもりはないわ。婿養子だって迎え入れる。でも私は私がいいと思った男と結婚するわ。」
「純潔悪魔の血を絶やしてしまうのは魔界全体での問題であるのは分かるだろう?君の父上様やサーゼクス様も、未来を考えてこの縁談を持ち込んだんだ。」
「お父様もお兄様も焦りすぎなのよ。何度も言うわ、ライザー。」
そこでリアスはライザーの隣で座っていたソファから立ち上がり、全ての感情を込めて言い放つ。
「私はあなたとは結婚しない!」
その言葉を聞いたライザーは、徐々に機嫌が悪くなっていくのが読み取れる。
「俺だってな、リアス。フェニックスの看板を背負ってここまで来てるんだ。フェニックスの名前を汚すわけにはいかねえ。」
ライザーも同様に立ち上がり、リアスを睨みながら
「俺は君の下僕を全て焼き払ってでも君を持ち帰るぞ。」
と言う。
リアスもライザーを睨み返し、辺りいっぺんに敵意の空気が広がる。
その場にシンッと沈黙が走る…。
ガチャッ
「すんませーん、遅れまし…アレ?何この空気。」
「「「「「………」」」」」
…そこにKYが入り込んだ。
KYこと、八神は殺伐とした雰囲気を出す部室の中央にいる二人を見て、首を傾げる。
「なぁイッセー、何この状況」
「部長の婚約者が来た」
「そうなのか?へぇ〜、あれがね〜。」
近くにいた兵藤に現状を確認すると、兵藤は不機嫌な様子をさらけ出しながら答える。
婚約者と聞いた八神は、ジロジロとライザーの方を見る。
「趣味悪いっすね部長」
「「「「「「!!」」」」」」
爆弾発言である。
それを聞いたイッセー達は笑いそうになる衝動を抑える。
ライザーは顔を震わせ激怒している。
グレイフィアはこれから起こるであろうことに対応するための準備をする。
「羽虫が…俺に向かって何か言ったか!!?」
ライザーは手に炎の球を作って八神に向かって放つ。
グレイフィアがその炎の球を打ち消すために魔力を込めた。
しかし、その心配は杞憂に終わる。
八神が手を上に振りかざすことで、八神とライザーの間に水の壁が生成され、炎の球を消してしまった。
「な⁉︎」
ライザーは思わず、驚きの声を上げる。人間が自分の炎を消してしまうとは思わなかったからだ。
水の壁が無くなり、壁があった向こうから声を掛けられる。
「オレは羽虫じゃねぇよ。」
その余裕そうな顔を見て、更に怒ったライザーはもう一度手に魔力を込める。
八神は腕を曲げて戦闘態勢に入った。
「おやめくださいませ、ライザー様。これ以上はこのグレイフィアが許しません。」
しかし、そこでグレイフィアが仲裁に入る。
グレイフィアは覇気のこもった睨みをライザーに向ける。
ライザーは一度たじろぐが、一度大きくため息をついて
「…分かった。最強の女王と呼ばれる貴方に睨まれると、俺も怖いよ。」
と言う。ライザーは手の魔力を解き、最初のような顔に戻る。
それを見たグレイフィアは、今度は八神を向き
「申し訳ありませんでした。どうか、気をお納め下さい。」
と頭を下げる。
八神は気不味そうな顔を浮かべながらも、戦闘態勢を解いて手を下ろす。
「こうなるであろうことは、旦那様方も予測しておられました。ですので、最終手段を仰せつかっております。」
八神が手を下ろすのを見届けたグレイフィアは、リアス達に向き直って言った。
「最終手段?グレイフィア、どういう事?」
「お嬢様がご自分の意思を貫きたいのであれば、“レーティングゲーム”で決着を、との事です。」
グレイフィアが発した言葉に、兵藤とアーシアと八神以外は驚きの顔を浮かべる。
「なぁ、レーティングゲームってなんだ?」
「…レーティングゲームと言うのは、チェスのような戦いだよ。相手の王を倒したら勝ちという、シンプルなゲームさ。」
「しかし、本来はレーティングゲームは成人悪魔だけが参加できますの。」
「という事は、成人されてない部長さんは不利ということですか?」
「…それだけじゃなく、ライザーの方は既に勝ち数が多いです…。」
「ってことは、フェアに見えてアンフェアな試合ってことか。」
順に兵藤、木場、朱乃、アーシア、小猫、八神が発言する。
「それに、不利なのはそこだけじゃないです。」
「あぁ、だろうな。」
「え?何がだよ」
更に小猫が漏らした言葉に同意する八神と、疑問の声を上げる兵藤。
そんな眷属達の様子を見たライザーは嘲笑を浮かべ、リアスに問いかける。
「なあリアス、君の下僕達はあそこにいる者だけか?」
「だとしたら?」
ライザーの問いに、冷たい返答を返したリアス。
ライザーが高笑いしてパチンと指を鳴らす。
すると、先程と同じように炎とともに魔法陣が現れ、その中から複数の人影が姿を見せた。
「こちらは十五人、全員揃っているぞ?」
そこには、様々な服装をした人間、いや悪魔が立っていた。
体操服を着た少女、仮面をつけた女性、猫耳が生えた女性にチャイナドレスを着た女性。
要するに、全員が女性である。
「美女!美少女ばかりで十五人⁉︎」
「ショック受けんな馬鹿」
その手の事にマニアニックな兵藤が落ち込み、汚物を見るような顔をしていた八神が叩く。
しかし、兵藤は止まらない。
目の前で自分の理想を叶えている男を見てしまったのだ。
兵藤は膝から崩れ落ちて、嗚咽をこぼしながら泣いてしまった。
「おいおい、リアス。この下僕くん、俺を見て号泣してるんだが…。」
「その子の夢がハーレムなの。」
ライザーは号泣する兵藤を見てドン引きしながら質問すると、リアスは呆れたように答えた。
それを見たライザーは、ニヤリと笑みを浮かべると、
「ユーベルーナ」
と、一人の女性の名前を呼んだ。
その女性がライザーの元に近寄ると、ライザーは彼女の唇を唇で塞いだ。所謂、キスである。
それどころか、チュパチュパ嫌な音が聞こえるため、ディープの方であることが読める。
絶望する兵藤、しかめっ面を浮かべるリアス、眉間にしわを寄せる小猫、殺気が漂う朱乃、笑顔が消えた木場、赤面したアーシア。
この世の全ての汚い要素を合わせた不吉な物でも見てるかのような顔を浮かべる八神。
様々な反応をするリアス達を見て、ライザーは唇を離す。
やっと終わったと思った矢先に、今度は彼女の胸を揉みしだき始めた。
皆の反応は先ほどよりも物凄いことになっている。
「こんな事は一生できないだろうよ、下僕くん?」
「うるせぇ!ブーステッド・ギア!」
兵藤は嫉妬…いや、怒りの心を爆発させて神器を作り出す。
赤い装甲を纏った左手の指をライザーに突きつけて叫ぶ。
「どうせ部長と結婚した後も他の女の子とイチャコラするつもりなんだろ!ゲームなんかやらなくても、ここで全員倒してやる!」
他の眷属達が慌てて止めようとするが、兵藤はそんな事お構いなしにライザーに向けて走り出した。
「…ミラ」
ライザーがまた別の名前を呼ぶと、一人の女性が飛び出す。
長い棍を持った、童顔の女である。
「こんな女の子が相手か…やり難いな…!」
兵藤が言い終わった頃には、既に彼女は兵藤の懐に潜り込んでいた。
そのまま棍で突かれ、天井に叩きつけられた。
「ガハッ…!」
「イッセー!」
ダメージに苦しみ、咳き込む兵藤の元に駆け寄るリアス。
「イッセー!大丈夫⁉︎」
「はい…何とか…」
「ハハッ!情けないな今回の赤龍帝は!
今のは俺の下僕の中でも、最も戦闘に不向きな奴だというのにな!」
兵藤の無事を確認するリアスと、それに弱々しく応える兵藤。
その二人を見下しながら笑うライザー。
ライザーの笑いを受けながら、リアスは決心したように立ち上がる。
「…分かったわ。レーティングゲームで決着をつけましょう。」
「かしこまりました。」
「ライザー…必ずあなたを消しとばしてあげる!」
「楽しみにしてるよ、リアス。とは言っても、俺達とまともに戦えるのは君と雷の巫女ぐらいだろうけどな。
…まぁ、そこにいる人間が悪魔なら良かったがな。」
「オレ参加出来ないの?」
「レーティングゲームは悪魔でないと参加出来ないのです。」
ライザーの呟きに疑問の声を上げる八神に、朱乃が答える。
「それだと面白くないからな、そこの人間。お前もこのゲームに参加しろ。その方が少しはゲームになるだろう。
それから、ゲームの開始は十日後だ、精々頑張って修行でもやるんだな。」
余裕な顔でライザーは様々なルールを加えていく。
確かにこれぐらいのハンデがあれば、リアス達は今より強くなる事が出来るだろう。
「…分かったわ、ありがたく頂戴する事にするわ。」
「そうか。じゃあ、十日後まで御機嫌よう。」
そう言って、ライザーは来た時とは逆に魔法陣を通って魔界に帰っていった。
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オレは学校の屋上で考え事をしていた。
部活は既に解散したよ。明日から早速修行に出るからってことで、体を休めるための休日だ。
…オレを含めたリアスチームと、ライザーチームの戦闘能力でははっきりとした差が広がっている。今のまま戦ったとしても、あのホストが言っていたように部長と朱乃先輩がそこそこ戦えて、オレ一人が頑張ることになる。
この差を縮めようと思ったら、十日間はかなり苦しい修行になるだろうな。
この際だ。オレも修行したかったから丁度いい。
しっかりと鍛えてやるか!
「…ところでさ、いつまで隠れてるつもりなの?メイドさん。」
オレの背後から銀色の魔法陣が光り、一人の女性が現れた。
さっきまで部室にいたグレイフィアとか言うメイドさんだ。
「…一つ、聞いても宜しいですか?」
「ええ、どうぞ?」
グレイフィアさんの目から冷たい視線を感じる。
こんな怖い視線を向けられるような覚えは、一つだけある。
「貴方は何者なのですか?悪魔でも無ければ堕天使でも天使でも無い。人間でも無いですよね?」
これだ。オレがライザーの炎を消した時から、この人の視線を時々感じてたんだ。
「オレは人間ですよ?アイムヒューマンベリーマッチ。その他何もなし。」
「…貴方の中から人間ではない何かの力を感じます。それについてはなんと言い訳するのですか?
…ついでに、その英語はおかしいです。」
「英語がおかしいのは自覚済み、今のはジョークで言ったんだよ。
あんたがなんて言おうが、オレは人間だ。
…もういいか?下でユウト達が待ってる。」
オレはそう言ってグレイフィアの横を通り過ぎ、屋上の扉を開ける。
「…あの者と似た何かの気配を、最近よく感じる…。」
とか呟いていたが、オレは気にしてない風で下に降りていった。
明日から修行、頑張りますか!
やってみたかったこと
if.既に皆がシュウの正体を知っていれば
「羽虫が…俺に向かって何か言ったか!!?」
ライザーは手に炎の球を作って八神に向かって放つ。
グレイフィアがその炎の球を打ち消すために魔力を込めた。
しかし、その心配は杞憂に終わる。
八神が手を上に振りかざすことで、八神とライザーの間に水の壁が生成され、炎の球を消してしまった。
「な⁉︎」
ライザーは思わず、驚きの声を上げる。人間が自分の炎を消してしまうとは思わなかったからだ。
水の壁が無くなり、壁があった向こうから声を掛けられる。
「…羽虫だな、確かに」
「…は?」
八神が呟く言葉に、ライザーはつい情けない声を出してしまった。
「羽虫ね」「羽虫ですわ」「羽虫だね」「…羽虫」「羽虫だ」「羽虫なのでしょうか?」
「…お前らこの人間に対して酷くねぇか?」