閣下が生きるハイスクールな世界   作:佐竹 リン

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二十一話目

修行二日目

今日の朝は勉強の時間です。

確かにドラグ・ソ・ボールのマスター老師は言ってたよ。よく動き、よく学び、よく遊び、よく食べて、よく休むのが修行のやり方って。でも実践する必要はないと思います。

…あ〜、眠くなってきた。

 

「その大昔の戦争の影響で純粋悪魔の数は一気に減少していったの。そこで、この悪魔の駒を使って人間達を悪魔に転生させて、悪魔の数を増やしていったってわけ。

ねぇシュウ。聞いてる?」

 

「いいえ聞いてないです。難しすぎるんで。」

 

「悪魔とは関係がない貴方にとっては難しいと思うけど、これもちゃんと大切な事なんだからしっかり聞いて。分かった?」

 

「うぃーす」

 

「ほんとに分かったのかしら…。」

 

部長は溜息をつき、説明を続けた。

今はイッセーに問題を出している。天使側の最高位の名とか、魔王達の名前とか。イッセーはしっかり答えているが、堕天使のトップの名前はところどころ分からねぇみたいだ。

 

「それじゃ、少し休憩しましょうか。」

 

一時の休憩を挟み、次に行われた授業はシスターアーシアによる『聖』に関する授業だ。

唯一人間で、聖に対する拒絶反応がかからないオレが扱う事になってる。

 

「これが聖水です。製造法は後でお教えしますが、悪魔の皆さんは絶対に触らないでください。大変なことになります。」

 

「他人事じゃないのよ?貴女も悪魔なんだから。」

 

「うぅ、そうでした…。」

 

部長の突っ込みによって、アーシアは少し落ち込んでしまった。

オレは聖水が入ったビンの蓋を開け、鼻を近づける。

 

「…匂いとかは分からねぇな。透明度も高いし、スプレーとかで霧吹きされたら気付かねぇかもな。」

 

「悪魔の僕達は、聖水には敏感になるからね。例え水蒸気になってても何となく分かるんだ。」

 

ユウトの説明を受け、オレは聖水が入ったビンの蓋を閉める。

次にアーシアが取り出したのは一冊の本だ。

 

「これは聖書です。小さい頃からよく読んでいました。今は一行読むだけですごく頭痛がします。」

 

「「「「「悪魔」」」」」

 

「うう…。」

 

イッセー以外から同時に突っ込まれて、赤面するアーシア。

オレはその横で聖書を眺めている。

 

 

「なんかよく分かんねぇ文章だよな。特にこれ、〜〜〜だってよ。どういう意味だ?って、あ。」

 

 

うっかり読んでしまった。

顔を上げると、全員が頭を抑えて頭痛に耐えている。

 

「シュウ…貴方ワザと?」

 

「いえ、うっかりです。ゴメンなさい。」

 

 

ーーーーーーーーーー

 

修行七日目の昼

飛びすぎだ!とか言う発言はナンセンスだぜ?

 

オレは今、部長にとある頼みごとをしている。

その内容は

 

「部長、今日からオレは別の山で特訓させてください。」

 

というものだ。オレもグロンギ態とか錬成の力の特訓をしたいんだが、皆の前でやりたくない。

グロンギの姿は見せたくないし、錬成は皆を巻き込む可能性があるからな。

 

「構わないけど、ここに戻っては来るの?」

 

「ええ、夜になったら帰ってきますよ。折角皆で宿泊してんのに、オレだけ別の家で寝るのは嫌ですし。」

 

「そう、ならいいわ。好きなようにしてちょうだい。

あそこにある山は自由に使っていいから。」

 

「ありがとうございます。」

 

オレは部長からお許しをもらい、指定された山に向かっていった。

 

山に着いたオレは、早速姿をガドルの物に変えて特訓を始めた。

 

特訓内容は割愛します。

 

ーーーーーーーーーー

 

同日の夜

オレは不思議と眠れなかったから夜の散歩をしていた。風に揺られた木の葉がガサガサとなり、オレの心を落ち着かせる。

夜の山道ってのも、感慨深いものがあるよな〜。なんか出てきそうだけど。

 

 

 

 

「……すか、部長。」

 

?今の声、イッセーか?

しかも部長って言ったよな。部長とイッセーが一緒にいるのか?こんな時間に。

気になったオレは声がした方に向かって歩いていった。

別荘の窓が見えて、その窓に部長が腰かけているのが見えた。部長の前に立つように、イッセーもいる。

 

「…私は、グレモリーなのよ。」

 

部長が口を開く。自己紹介…な訳ないよな。何でそんな言葉が出てきたんだ?

 

「まぁ、はい。そうですね。」

 

イッセーも同じことを思ったのか、微妙な反応を返す。

 

「改めて名乗ったわけじゃないの。私は、あくまでグレモリー一族の一人で、どこまで行ってもその名前が付いてくるの。」

 

「…嫌なんですか?」

 

「いえ、誇りに思っているわ。でも、私自身を殺している事でもある。誰もが私のことを『グレモリーのリアス』としか見ていないの。

私は、リアス個人を見て欲しい。

だから、人間界に来た私は満たされていたと思うの。皆が私を個人として見てくれる。それが冥界では感じ取られないから…。」

 

それを聞いて、部長に関する記憶が浮かび上がる。堕天使の時も、あいつらは部長のことを『グレモリーの娘』と言っていた。

恐らく、ライザーもその類の一つなんだろう。『グレモリーのリアス』は愛することが出来るが、『リアス』個人を愛そうとはしていない。それが部長はたまらないんだろうな…。

 

 

 

……………

 

 

 

『何が人類の味方だ!あいつらと同じ種族のくせに!』

 

『いずれは俺達に襲いかかるに決まってる!』

 

『そんな奴をこの町、いや世界に置いとくな!』

 

 

………………

 

 

 

…ある意味、オレは部長の気持ちも何となくわかる。

種族や家柄を先に見られ、個人としての自分はなかなか見てもらえないというのは結構辛いものがある。

 

仕方ないと割り切れれば楽になるんだが、そこまで行くと今度は自分が自分を、個人の自分として認められなくなってくるんだ。

 

…それは部長には辛いことだろう。オレ自身も人としてのオレを見失いたくないと足掻き続けて、もう何年も経つ。アレは精神的にもなかなかキツいものがあるからな…。

 

 

「俺は部長の事、リアス部長として好きですよ。」

 

……イッセーか?今の。

オレがイッセー達がいる方を見ると、いつの間にかイッセーは部長の隣に立っていた。

 

「悪魔になったばかりの俺は、魔界の事情とかよく分かんねえし、グレモリー家の事は尚更です。ただ…」

 

言葉をためたイッセーは、部長の方に向き直り

 

「部長をそんな目で見ているような奴に、部長と結婚させはしない。絶対この勝負に勝って、これからも部長と一緒に学校に行けるようにしてやりますよ!」

 

ときたもんだ。

部長はドンドン顔が赤くなっていく。

あいつも言うようになったな〜。最初の変態三人組ん時とは大違いだ。

 

よし!イッセーにはもっと強くなってもらうために、オレも一肌脱ぐとしますか!

 

ーーーーーーーーーー

【第三者視点】

 

リアスとの話を終わらせた兵藤は、いつものように自主練をするために外に出た。

兵藤はこの合宿が始まって以来、こうして夜に自主練をしていたのである。

しかし、今日は一つ問題があった。

 

「もうアーシアも寝てしまったんだろうな〜」

 

そう、アーシアがいないのである。

これまでは、夜になって他の部員が寝付いた時、兵藤がまだ浅い眠りの状態のアーシアだけを起こし、アーシアに協力を得ながら自主練をしていたのだ。

しかし、今日はリアスと話したことにより、恐らくアーシアも深い眠りについているであろう。

つまり、協力者がいないのだ。

協力者がいない中での自主練は、限られたものになる。

とはいえ、アーシアがいたとしてもある事の修行しかしないのだが…。

 

「仕方ねえ。筋トレでもするか。」

 

そう言って、筋トレ用の道具を取りに行こうとした時であった。

 

 

「私でよければ、相手をするぞ?」

 

 

誰かから声をかけられる。

声をかけられた方を見ると、見慣れた者がそこにいた。

 

「久しいな、少年。あのシスターは息災か?」

 

「お前…グロンギ…。」

 

幾度となく助けられたグロンギ、ガドルが立っていた。

 

「大体の話しはすでに聞いている。負けられない戦いがあるのだろう?」

 

「…あぁ。てか、お前それをどこで?」

 

「少年達が窓際で話しているのを聞いてしまった。申し訳ない。

…それより、共に修行する者がいないのであろう?ならば、私が相手をしよう。得られる物も大きいぞ?」

 

ガドルの提案に、少し考えるように黙る兵藤。

やがて、意を決したように言う。

 

「ああ、頼む。」

 

「ならば、来い!貴様の全力を私に見せてみろ!」

 

ガドルの叫びと共に、兵藤は神器を発動させて走り出す。

ガドルは格闘体で兵藤を迎え撃つようだ。

 

【Boost!!】

 

最初の倍加が始まる。前回とは違って、元のスペックが高くなっているから倍加した時のスペックは以前より高くなっている。

 

「うおおぉぉ!」

 

兵藤は右手でパンチを繰り出すが、ガドルは易々と左手で受け止め、右手で兵藤の顎にアッパーを打とうとする。

それを読み取った兵藤は、ガドルの手を左手で受け止める。

 

【Boost!!】

 

二度目の倍加を利用して、両手を一気に引き抜く。

急な力の上昇に反応が遅れたガドルは前のめりの姿勢になる。

すかさず足払いをしてガドルを倒し、横になっている状態にかかと落としをした。

ガドルは手の力だけで後ろに飛び、かかと落としを避けた。その後すぐに足の力で兵藤の元に飛び、その勢いのまま蹴りを繰り出した。

その蹴りをモロに受けてしまった兵藤は、後ろに転がっていく。

 

「どうした!これまでの自主練の成果を見せてみよ!」

 

「お前にはやりたくない!」

 

何故かはっきりと否定した兵藤。

それもそのはず。もしこの技を彼にすれば…想像もしたくないことになる。

 

再びガドルの元に走り出し、ラッシュが始まる。

 

この模擬戦が終わったのは、それからかなりの時間が経ってからだった…。

 

ーーーーーーーーーー

【第三者視点】

 

「強くなったな、少年。」

 

この言葉は、ガドルの言葉でありその正体のシュウの言葉でもある。

全力では無かったとはいえ。この形態のシュウにかなりいい形の戦いが出来たのだ。

 

「お前に言われても嬉しくねえよ。」

 

「そう言うな。感心しているのは事実だ。」

 

今、ガドルと兵藤は広場で話している。流石に兵藤も限界だったようで、広場に座り込んでいる。

 

「そのまま力を伸ばしていけば、その大切な戦いには勝てるだろう。

貴様が王になる日も、ますます近くなるであろうな。」

 

ガドルは励ましの意味でこの言葉を発したようだ。しかし、兵藤はその意味を捉え違えたようだ。

 

「そうかなぁ?俺もハーレム王になる日が近づくのか〜。」

 

ゲスの顔を浮かべて喜ぶ兵藤。

ガドルは思わず、困惑の表情を浮かべてしまった。

 

「ハーレム王…か?」

 

「ああ!沢山の美女に囲まれて、ウハウハな毎日を過ごすのが俺の夢なんだ〜。」

 

そう、これが兵藤の夢である。なんとも格好悪い夢ではあるが、この夢を兵藤は小さい頃から抱き続けているのだ。

 

 

「…そうか、貴様も王になりたいのであれば一つ教えてやろう。」

 

何かを考え込んで、ガドルは庭の方を見ながら呟いた。

その言葉に反応して、兵藤はガドルの方を見る。

 

 

「《王は民無くしては有り得ない》とある国の王が、別の国の王に言った言葉だ。」

 

 

兵藤は意味が分からなかったらしく、口を開けてポカンとした表情をする。

その様子を見て、ガドルは説明を加える。

 

「王に必要なもの。それは絶対的な権力や軍力だけではない。その国の国民の支持があってこそ成り立つものだ。

この言葉を発した者は、たった一人の民でさえ全力で守ろうとした。

その心は、嘗て敵であった者までも感心させたほどだ。」

 

ガドルは兵藤の方を見やり、さらに言葉を繋げる。

 

「貴様も王になりたいのであれば、下に就く者一人一人を大切に思え。

貴様の王には、その心がある。」

 

ガドルは前に歩いて兵藤の元から離れていく。

広場の中央に立ったところで、兵藤に振り向き

 

「その王を、必ず守って見せよ。」

 

と言った。

その言葉を聞いた兵藤は

 

「ああ!やってやるよ!」

 

と叫んで返す。

 

その叫びを聞いたガドルは前を向いて飛び上がる。

辺り一面に土煙が舞い上がり、その煙が晴れた時にはすでにガドルの姿は見えなくなっていた。

 

兵藤は一度笑みを浮かべ、宿の部屋に戻っていった。

 

 

 

ーーーーーーーーーー

【第三者視点】

 

同刻、冥界のとある結界の中で…

 

一人の男が岩に座り込んで、通信機のようなもので指を弾きながら誰かと話していた。

 

「だがら言ってるだろ?彼らがハンデとして出場を認めたあの男は、ここにいる奴らじゃ倒せない。

だから僕がこのチームに助っ人として入ってあの男を殺す。そしてゲームに勝った暁には、王様はそこにいる男と結婚させてその部下達は僕の好きなように扱うことが出来るようにしてってさ〜。」

 

その男の通信機越しに、誰かが焦ったように話す声が聞こえる。

 

「だから僕一人に手も足も出ないような奴らが、あの男に勝てるわけないじゃん。

あまりゴチャゴチャ言ってると、そこにいる奴ら全員殺しちゃうよ?」

 

そう言う男の前には、先日グレモリー眷属と戦う事になったライザー眷属が全員倒れていた。

もちろん、ライザーも例外ではない。

 

「ク、クソ…化け物が…!」

 

ライザーは憎悪のこもった声で毒づくが、男はその言葉をどこ吹く風と聞き流している。

実はこの男が、たった一人でライザー眷属達を倒してしまったのである。

 

「フェニックスかどうかは関係ない。僕の針を使えば、どんな奴でも難なく殺すことができる。

そこにいるやつで実証してあげようか?」

 

少々怒気がこもった声を放つ。

すると、通信機の向こうの人物は観念したように言葉が暗くなる。

男は満足したような顔を浮かべ、通信機を切る。

そして、ライザー達の方を向いた。

 

「決定したよ。あの男は僕がやる。他の奴らは君達が好きなようにやっていいからさ。

それじゃ、これからはチームとして宜しくね。」

 

そして男は結界の外に出て行った。

 

「…ガドル、君はこの僕が倒す。」

 

男は目の前に現れた灰色のオーロラを通り、どこかへ去っていった…。

 

 

 




また一人のグロンギが出現!
果たしてこいつは誰なのだ⁉︎
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